今春、福山競馬からホッカイドウ競馬に移籍し、32勝でリーディング9位(9月26日現在)の松井伸也騎手(28)。移籍半年が経った現在の心境をお聞きしました。
斎藤:ホッカイドウ競馬に移籍することになったいきさつを教えてください。騎手以外の道を考えることもあったのでしょうか。
松井:騎手は、福山競馬が廃止になった後も続けたいと思っていました。ほかの競馬場の話もあったのですが、北海道にはずっと興味を持っていたんです。馬産地だし、2歳が多くレベルが高い。育成にも興味があるし、もちろん中央に遠征して乗ってみたいというのもありました。北海道で実況をしていた西田茂弘アナウンサーに齊藤先生を紹介してもらい、所属することになりました。
斎藤:実際来てみていかがですか。
松井:思った通りでした。レベルが高くて、どの馬に乗っても走りそう。全体のレベルが高いですね。馬、騎手......厩務員さんも上手な人が多いです。福山にもうまい騎手はいましたが、それぞれの競馬場にあったうまさがあるんです。
斎藤:門別競馬の印象は。
松井:広くて乗りやすいです。最初は仕掛けどころに悩みました。ナイターは好きですね。高知の時も好きでした。雰囲気が好きで、気持ちが盛り上がります。
斎藤:門別は、騎手の腕というよりは馬の実力通りに決まる印象があります。
松井:でも、それがそうでもないんです。
斎藤:初めてのJRA函館遠征はいかがでしたか。来年は札幌の遠征もあるかもしれませんね。
松井:芝に感動しました。気持ちいい! 札幌は、ダートコースをトレーニングセールで走ったんです。広いとかいう競馬場の印象よりは、2歳のレベルの高さに驚きました。育成は知らない世界だったので、いろいろな所に行って勉強したいです。
冬は、他地区に遠征に行きたい気持ちもあるのですが、先生には「今年は(1歳の)乗り慣らしをやってほしい」と言われています。馴致はやったことがないので勉強になる。不安もありますが......。
斎藤:北海道には知り合いはいたのですか?
松井:同期の笹木美典(元騎手)くらいですね。北海道の牧場にも、福山から同時に行った人はいないんです。でも、厩舎は雰囲気もいいし、若い厩務員が多いので助けられました。齊藤先生にはレースの後に話したり、アドバイスをもらったりしています。遠征にも積極的なので、いろいろと経験させていただいています。
斎藤:福山の人たちとは連絡を取っていますか?
松井:結構みんなと連絡を取っていますよ。仲がよかったのは池田敏樹、周藤直樹です。みんなの活躍は刺激になります。騎手免許の更新は福山で行ったので、その時に久しぶりに会いました。実はその次の日が函館遠征で、かなりバタバタしていたんですが、忙しいのはうれしいですね。
斎藤:初日は3戦目で初勝利でした。北海道では福山時代よりも勝率が高く、活躍も目立ちます。いろいろな厩舎から騎乗を頼まれていますね。
松井:いい馬に乗せてもらっているからです。初日は、早く1勝を、と思っていたのでほっとしました。緊張はしなかったですよ、楽しみでした。
最初はいろいろな厩舎に挨拶に行きました。今では、調教に乗っていない厩舎からも騎乗を頼まれるので、ありがたいです。
斎藤:北海道に来て、思い出に残る馬は。
松井:グランドラッチですね。北海道スプリントカップ(5着)は初の交流重賞。錚々たるメンバーで、独特な雰囲気があり、楽しんで乗れました。9月5日(オープンのステイゴールドプレミアムを勝利)はしびれました。クラスターカップ(8月14日・盛岡)が刺激になったようで、馬が変わりました。道営スプリントも楽しみです。
初勝利のサクラテイオーもですし、初めてフレッシュチャレンジを勝ったモリデンボスやシンワシュシュも思い出に残っています。
斎藤:普段の生活を教えてください。
松井:こっちにきてから、美味いものを食べ歩くようになりました。美味い食べ物がありすぎて......。減量は苦にはなりませんが、ちょっと太っちゃったかな(笑)。
函館に行った時に、JRAの荻野琢真騎手が寿司屋に連れていってくれて、そこで食べた寿司に感動しました。小樽に行った時も、鮭児(幻と呼ばれる鮭)の寿司を食べたんです。昔からの夢が叶いました。
肉も以前より食べるようになりましたね。むかわ町の「とんちゃん」はなんでもおいしい。
斎藤:とんちゃんには、ホッカイドウ競馬の騎手のサインがたくさん飾られていますよね。
松井:サインと写真もちゃんとあります。甘い物も大好きで、「ルタオ」が大好き。小樽で試食した「ナイアガラ」という生チョコレートは、一緒に行った美典、(伊藤)千尋、(石川)倭、全員ハマりました。「メルクーヘン」も美味しいですよ。あとは夕張メロンにピュアホワイト(とうもろこし)......もう、話していたらきりがないです(笑)
斎藤:半年経ちましたが、北海道の生活を振り返ってみていかがですか。
松井:自分でも、まさかここまで、と思うくらい充実しています。勝ち星とかいうより、遠征に行かせてもらったり、1年目からこんなに経験させてもらえるとは......。濃い半年でした。北海道に来てよかったです。
斎藤:うれしい言葉ですね。今後の目標を聞かせてください。
松井:2歳馬をもっと乗りこなせるようになりたいです。どんな動きをするかわからないし、ゲートも自分から出してあげないといけない。能検やゲート練習とレースは全然違いますね。福山にいた頃は、ゲート試験は年に2、3頭くらいだったかな......。今はだいぶわかってきたとはいえ、難しいです。冬に馴致や育成をすることによって、わかってくることもあるかと思います。馬に最初から手をかけられるのは楽しみです。
桑村君は2歳の乗りこなしがうまいですね。上手だと思うのは五十嵐さん、宮崎さん、阿部龍。福山の時は、岡田さん(現JRA)の騎乗が勉強になりました。
斎藤:ファンに一言お願いします。
松井:自分のセールスポイントである、追い込みと思いきった騎乗を見てもらいたい。福山で培ったこの部分は負けたくないです。福山魂をファンにみてほしい。
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※インタビュー / 斎藤友香 (写真:斎藤友香、小久保巌義)