フジユージーン。2歳時は5戦5勝、3歳となった初戦のスプリングカップも圧勝して6戦6勝。地元ファンのみならず全国からも注目される存在になったこの馬の近況と今後を、管理する瀬戸幸一調教師にうかがった。
フジユージーンと瀬戸幸一調教師(左)まず前走のスプリングカップのお話からいきたいと思います。こちらが勝手にいろいろ期待を膨らませて見ていたんですけど(笑)、まずは良い結果だったと思いました。
そうですね、思った通りの、それ以上の走りをしてくれたので良かったなと思っています。
いったん時間を戻してですね、昨年の南部駒賞からスプリングカップまでの中間の状況や調整などを改めてお聞かせください。
去年の南部駒賞の後、ちょっと爪の方が心配で、少し早く切り上げる形にはなったんですけど、次のレースのためにと思って富士ファームさんの方に戻りました。最初は京浜盃に間に合えば......とも思っていたんですけどもね。1月の中旬から一カ月ほど那須の教養センターにもいたのですが、なかなか思うようにいかなくて。時期も時期でしたし、競馬場に戻して、馬をよく知っている厩務員さんや装蹄師さんで見ていこうと。
遠征馬との初対決になった南部駒賞も難なく通過した(2023年11月12日)
それが2月の中旬ですね。
そこからは順調に調整が進んでくれました。普段はおっとりしているんだけど馬場に入ると気持ちも入る馬ですので、そこからの調整は苦労しなかったですね。スプリングカップまでも順調に進める事ができました。
ここでもうちょっと話を戻すんですが、フジユージーンはオータムセールで補助馬として購買された馬で、瀬戸幸一調教師も馬を選んで決められたんですよね。セリの時はどんなところが決め手になったんでしょうか?
決め手はですね、脚先のさばきが凄く軽かったんですよ。セリの当時から大型馬で、体高なんか今とそんなに変わらなかったんじゃないかな。大きい馬は脚先が重い感じがある。のそのそっとしたね。この馬はそうじゃなかったんです。
こういうとなんですけど、父(ゴールデンバローズ)はその時点では活躍馬がいなかったですし母は岩手で未勝利馬。それでもこの馬が......というのはなぜだったのか?は思ったりします。
確かに血統的にはそうですけど若馬はどこでどう変わるか、どう走るか分からないですし、オーナーが乗馬クラブをやられているから、これだけ馬格がある馬なら丈夫であればどんな道にもいけるから、と。それくらいの気持ちでいたのがたまたま当たったのかな。
母デザイナーも岩手デビュー馬だった(2015年8月16日、盛岡新馬戦のパドック)
しかし、デビューする頃には「この馬走るよ」という話になったじゃないですか。
調教の動きを見ていて、やっぱり違っていましたね。競馬場に来る前にも富士ファームさんで動きを見たんですけど、しっかり動かせば軽い動きが出ていたから、「もしかしたらもしかするのかな」と思っていました。
そうするとデビュー後の走りは、その感触通り?
そうですね。でも私は新馬戦は正直あまり期待していなかったんですよ。
「850m向きではないかも」と言われていたのを覚えています。
距離が距離ですし、ビュッと行く馬にはかなわないのかな......とか思っていたらうちの馬が速かった。そんな感じでした。
水沢ダート850mの新馬戦を大差で圧勝(2023年6月4日)
その後は順調に勝ってきましたが、今にして思えばいろいろ苦労もあってと想像するのですが、3歳になってそんなところも解消されてきたと思っていいのでしょうか。
そうですね、レースであればスタート。他の馬と五分に出る事ができるようになったかなとか、身体がひとまわり大きくなって、付くべき所に筋肉が付いてきたとかですね。この馬の場合まだ余裕があるのでもうちょっと筋肉が付いてくるのかなって感じはします。2歳の時と今とはフットワークも違いますしね。一段と大きくなって。期待通りに仕上がってきているなと見ています。
2歳の時もレースで速いなと思っていましたが、スプリングカップの瞬発力はもう一段変わったなと感じましたものね。
普段の調教から迫力が増しました。2歳の時もフットワークがきれいだ、柔らかみがあって良いなと思っていましたけど、今の方が数段上だなという感じがします。
3歳初戦のスプリングカップは3度目の大差勝ちで順調な発進(2024年4月7日)
さて、ここまで割と"べた褒め"なので、この先に向けて課題というかもっと良くなってほしい点を無理矢理にでも挙げていただければ......。
今思っているのはもうちょっと腰の方に筋肉が付いてくれれば。それが一つ。そして大型馬ですから脚元の負担はね、小さくないと思っています。まだ成長段階ですし、そこは常に気を遣っています。
ダイヤモンドカップ直前というタイミングですのでそこに向けたお話も。
距離やコースは全く心配していないです。そこまで順調に行ってくれれば。
さらに先の話は、まだダメでしょうか?。
そこはまだですね(笑)。まずはダイヤモンドカップ次第。そこを順調に乗り越えてから考えます。
6戦6勝というだけでなく大差勝ちが3回。そんな走りを見せつけられては期待しない方がおかしいというもの。全国の舞台で力を試してほしいと思うのだが、それはあくまでも外野の期待であって、今はフジユージーンの着実な成長を見守りつつ楽しみにしているべきだろう。まずはダイヤモンドカップ。自身初の1800mでどんな走りを見せてくれるか?でこの後の路線も定まってくるはずだ。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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2023年11月21日の盛岡ラウンド、2024年3月8日の笠松ラウンドで争われたレディスジョッキーズシリーズ2023(以下LJS)で総合優勝を果たした木之前葵騎手(名古屋)に、喜びの声を伺いました。
LJS総合優勝おめでとうございます!
ありがとうございます。すごく嬉しかったです。レディスヴィクトリーラウンド(男性騎手も混じってのレースで、ポイントは女性騎手のみで競う)での総合優勝(2018年)は経験がありますが、LJSでは初めてで、今回は盛岡ラウンドで1位通過だったので、絶対に勝ちたいと思っていました。笠松でもいい馬が当たって運も良かったですし、頑張って走ってくれた馬たちや、乗せてくれた関係者の方々に感謝しています。
盛岡ラウンドから振り返っていただきたいのですが、まず前日に岩手入りして温泉に行ったそうですね。
そうなんです!濱(尚美)さんが前日入りすると聞いて、わたしもちょうど名古屋の全休日だったので、前日に移動することにしました。普段は泊りで旅行に行くようなお休みは取れないので、いろいろ調べて、露天風呂のある温泉と、美味しい焼肉を堪能しました。牛タンが最高に美味しかったです。
そしてレースは4着と1着でした。
左回りは慣れていないのですが、盛岡は広くて乗りやすいです。1戦目の馬もよく頑張ってくれましたし、2戦目は手ごたえ抜群で、早めに動いていく競馬で勝ち切ってくれました。馬が強かったです。
笠松ラウンドは3着と1着で総合優勝を飾りました。
笠松はよく乗りに行くので、いい馬にも乗せていただきチャンスはあると思っていました。ただ第1戦で(佐々木)世麗ちゃんが1着で、3ポイント差の2位になってしまって。2戦目は行きたかったけど行けなくて、内心やばいなと思いながら乗っていました。でも内が開いていたので、そこから上がって行くことができてラッキーでした。勝って総合優勝できたので、本当に嬉しかったです。周りの方々からも「おめでとう!」って言っていただきましたし、普段あまり話さない厩務員さんとかも言ってくれて、LJSを見てくれているんだと嬉しかったです。
笠松ラウンド第2戦をヨーコマイラヴで勝利
LJSはどんな存在ですか?
やっぱりいろいろなコースで騎乗できるというのは嬉しいです。今回は盛岡と笠松でしたが、前回は川崎で開催したり、いろいろな競馬場で乗れて勉強になります。わたしはヤングジョッキーズシリーズにギリギリ出られなかった世代なので、デビューからいろいろな競馬場で乗るチャンスがある今の若手が羨ましいなと思うこともあって。LJSで他地区を経験できるのはありがたいです。
女性騎手の皆さんが集結すると盛り上がりますね。
みんなが集まるとわいわい楽しいです。わたし含めて東海の3人(宮下瞳騎手、深澤杏花騎手)はよく同じレースに乗りますが、他の女性騎手と会える機会はなかなかないので嬉しいです。
木之前騎手は2013年デビューですから、今の女性騎手の中では宮下瞳騎手に次ぐベテランですね。
そうなんです。いつの間にか上から2番目になりました。最近は若い後輩が増えて、みんなかわいいです。葵さ~んて話しかけてくれて、嬉しいですね。
どんな話をするんですか?
使っている道具の話とか、馬乗りの話が多いです。各競馬場によっていろいろ違うので、こうやって仕事している、休日はこういう風に過ごして、みたいな。女性騎手が増えて嬉しいですし、みんなそれぞれ頑張っているなと思います。
デビューから12年目になりますが、いつも笑顔で楽しそうに馬に乗っているのが印象的です。
馬に乗るのが大好きで、すごく楽しいです。もちろん悲しいことや辛いこともありますけど、もっともっと馬のことを知りたいです。
デビュー当時と変化したところはありますか?
デビューの頃はキレイに乗りたいと考えていて、こうであるべき、みたいな型にはまった考え方だったかなと。今はとにかく馬を動かしたいと思っていて、勝って馬主さんやファンの方々を喜ばせたいという気持ちが強くなりました。
朝の調教は何頭くらい乗っていますか?
午前2時から9時くらいまで、25頭以上乗っています。ずっと右回りなので体が偏らないように、毎日ストレッチを念入りにしたり、週1でマッサージに行っています。日々の調教は大事ですし、思い切り乗るためにも自分のケアも大切にしています。
お休みの日は何をすることが多いですか?
最近は野球ですね。所属騎手で野球チームを作って活動していて、いい気分転換になっています。わたしはマネージャーというか見ているだけですが(笑)。X(名古屋競馬場野球部GOLD ORCAS 管理人木之前葵 @kinomae_aoi)で情報発信しているのでよかったら見てください。
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。名古屋はここ最近、若手騎手がどんどんデビューしていて、厩務員さんも若手が増えて、すごく活気があります。早いもので、わたしもデビューから12年目になりますが、これからも一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合、NAR)
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2023年は名古屋リーディング第2位、東海リーディング第4位の好成績を挙げた加藤聡一騎手。2016年のデビューから順調に勝ち星を重ね、今や東海を代表するジョッキーの一人に成長しました。
今年に入ってすでに重賞2勝と、昨年に引き続き好調ですね。
ありがとうございます。たくさんいい馬に乗せていただいているお陰です。重賞に関しては、スティールアクターがとても強いレースをしてくれて、頑張ってくれている馬にも、関係者の方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。
スプリングカップ(2月15日・名古屋1700m)も強かったですが、ジュニアグローリー(3月7日・笠松1400m)ではさらに強い勝ち方でした。
もともと素質の高い馬ですが、1戦ごとにどんどん強くなってくれて、こちらが思っていた以上のパフォーマンスを見せてくれています。先行しても控えても競馬ができるというのは大きな武器ですし、この馬と一緒に自分も成長していけたら嬉しいです。とにかく無事に、順調に進んで欲しいです。
名古屋・スプリングカップをスティールアクターで勝利
昨年の名古屋リーディング第2位というのは、自信になったのではないですか?
数字の上では岡部(誠)さんの次ですけど、技術的にはまだまだ課題があるので、もっと上手くなって勝つのが当たり前だと思ってもらえる騎手になりたいです。岡部さんや吉原(寛人)さん、森(泰斗)さんのような方は、1番人気馬に乗って、当たり前のように勝たせられるじゃないですか。若い頃はいかにそういう馬を負かすか、人気薄でどう勝つかということを必死に考えてきましたが、昨年くらいから意識が変わってきて、人気の馬に乗せてもらった時に結果を出す、というところに重きを置いています。もちろん人気薄でいかに勝つか、上位に持ってくるかというところも大事にしていますが、勝たせるのが当たり前の立場になっていかないといけないと思っています。
意識されている内容が相当ハイレベルですね。
昨年は151勝させていただいたんですけど、2着(137回)3着(125回)の数字を見ると、もう少し違う乗り方をしていたら、あと10勝や20勝はできたのではないかと。人気馬である程度は結果が出せた面もありますけど、客観的に見て岡部さんや丸野(勝虎)さん、今井(貴大)さんや柿原(翔)さんのような安定感はまだ自分にはないですよね。どうしても勝ちたい気持ちが勝ってしまう時があるので、その気持ちをどのくらい抑えられるかが勝負だと思います。
昨年あたりから意識が変わってきたというのは、何か理由があるのでしょうか。
いろいろな要素はありますけど、やはり競馬場の移転は大きいと思います。今は馬場の変化が大きいですし、1日1日しっかりと取り組まないと結果が出ないんですよね。リーディング上位に食い込ませていただく中で、今まで以上に調教から1頭1頭としっかり向き合って考えるようになりました。
スティールアクターでは笠松・ジュニアグローリーも勝利
名古屋は塚本征吾騎手や細川智史騎手など、若手の活躍も目立ちますね。
ここ何年か毎年のように新人騎手がデビューして、みんなそれぞれ一生懸命頑張っていますから、自分にとってもすごく刺激になります。後輩たちに負けていられないという気持ちと、岡部さんや丸野さんといったベテラン勢になんとか近づきたいという気持ちもあって、すごくいい環境で騎乗させていただいています。
他に意識している方はいますか?
たくさんいますね。JRAの方とも話をしますし、同期の保園(翔也)や岡村(健司)とも話します。笠松リーディングの(渡邊)竜也とは公私ともに仲良くしているんですけど、自分とは騎乗スタイルや性格的なタイプが真逆で、とても刺激をもらう存在ですね。彼の方が1期後輩なので、先に1000勝したいという気持ちはありますが、向こうはリーディングで勢いもすごいですから。負けていられないという気持ちで頑張ります。
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
いつも名古屋競馬を応援していただき、ありがとうございます。名古屋は元気のいい若手もたくさんいますし、技術力の高いベテラン勢も健在です。その中で自分はもっと上に行かないといけないと思っているので、それぞれが刺激し合って、切磋琢磨することで名古屋競馬を盛り上げていきたいです。
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:愛知県競馬組合/岐阜県地方競馬組合)
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