2018年4月に船橋から高知へ移籍した林謙佑騎手。初めて高知で通年騎乗している今年は、リーディング上位に迫る活躍を見せています。現在の心境をうかがいました。
今年は66勝(2019年10月24日現在)を挙げて好調を維持していますね。
今年は初めて1年間を通して高知で騎乗しているので、好調というか、たくさん乗せていただいていることが大きいです。いい馬にもたくさん乗せてもらっているので、本当はもっと勝たないといけないなと。
現在高知リーディング5位ですよ。
5位というのはありがたいですね。もう本当に馬たちのお陰です。順位というのは特に意識していなくて、高知には上手いジョッキーがたくさんいますし、その中で5位というのはとても光栄です。
4位の西川敏弘騎手とは1勝差につけています。
西川さんは本当に上手で、僕の前にいるのが当たり前の方なので、そこは気にしていないです。ただ、目の前のレースに勝ちたいという気持ちは強いですね。もっと上手くなって、たくさん勝てるようになりたいです。
林騎手は2015年に船橋でデビュー、2017年3月から1年間、高知で期間限定騎乗をしました。
レースに乗りたいという想いが強くて、たくさん乗せてもらえるように頑張って行きたいなと思って期間限定騎乗に行きました。高知は仕事がキツイって言われますけど、船橋の時もたくさん調教していましたし、それほど大変とは思わなかったですね。確かに時間的には仕事しっぱなしですけど、僕はゆっくりする時間があると寝てしまうので(笑)。
約1年の期間限定騎乗を終えて、2018年4月に完全移籍しました。大きな決断でしたね。
そうですね。当時はまだちょっと迷いがあって。南関東所属でデビューできたことはすごくありがたかったんですけど、やっぱりレースに乗れなかったら意味ないのかなと。周りの方に相談して、自分でも悩んで。どっちの方が自分が役に立てるか、活躍できるかということを考えて決めました。
昨年(2018年)の3月、完全移籍の直前には御厨人窟賞をセトノプロミスで勝利。初重賞制覇を果たしました。
重賞を勝つというのは大きいですね。あの時は3番人気だったんですけど、重賞の割には緊張しなかったんです。逆に最近の方が、1番人気に乗る時とか緊張します(笑)。馬が強くて、勝たせてもらった感じでしたが、ゴールした時は本当に嬉しかったですね。
重賞初制覇となった御厨人窟賞(2018年3月11日)
さらに昨年はトレノ賞も勝ちました。5着までがコンマ2秒差の大接戦でしたね。
あの時は初めてレースでサクラインザスカイに乗せていただいて、本当にギリギリでしたけど、外から差し切ったのは気持ちよかったです。今年はまだ重賞で勝てていなくて、スプリングガールでチャンスをいただいたのに、勝ち切れなくて悔しいです。
今年のトレノ賞で2着、そして金沢へ遠征した読売レディス杯でも2着でした。
特に金沢のレースが悔しいです。あの時、内に行ければもしかしたら勝っていたかもしれないのに、外を回ってロスしてしまったんです......。先生とも、「今日は雨馬場だし、内が使えないこともないな」という話をしていて、高知でも内を突いた経験があったのに。なんであの時、外に行ってしまったのかって。今でも悔しいです。
スプリングガールはどんな馬ですか?
攻め馬の時はちょっとハミを噛んで来るんですけど、レースは砂を被っても大丈夫だし、スタートも速いし、どこからでも競馬ができますね。癖がないし、自在に乗れるところが武器だと思います。
読売レディス杯のように、一緒に遠征に行けるというのは大きな経験でしたね。
そうなんですよ。遠征は(赤岡)修次さんが乗ることが多いですし、せっかくいただいたチャンスだったのに......。僕は修次さんと同じような馬に乗ることが多いんですけど、自分が乗っている時よりスタートもいいし、道中のスイッチの入り方も違うと思います。これは事実なので、しっかり分析して勉強していきたいです。
今後の目標は?
年間100勝してみたいですね。なかなか遠いですけど、頑張ります!
高知はすごく売り上げが上がって、注目度も上がっています。実感されていますか?
僕はいいタイミングで入らせていただいたので、ここまで築き上げてくれた方々に感謝しています。どん底から上がって来た方々に申し訳ないですし、迷惑を掛けるようなことはしたくないです。真面目にやって行きたいですね。
休みの日はどんな風に過ごしているんですか?
僕、意外と多趣味なんですよ。スポーツでいったら、休日だとゴルフに行ったり、平日で時間がある時は野球とかサッカー、テニスをします。休みの日で家にじっとしているというのはなかなかないかな。一時期ゲームにハマった時は家にいましたけど(笑)、今はほとんどないですね。
"高知の林謙佑騎手"もすっかり浸透して来ました。得意なレースを自己分析すると?
そうですね、レースは特に先行が好きです。逃げ馬の後ろくらいから行く感じで。あとは自分で言うのも何ですが、1番人気だとちょっとまだ緊張してしまうので、3、4番人気くらいだとリラックスして乗れます。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
まだ移籍してそれほど経っていないのですが、もっと上手くなってたくさん勝てるよう頑張ります。よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:高知県競馬組合)
2019年に門別競馬場でデビューした小野楓馬(おのふうま)騎手は、両親が日高の牧場スタッフという"馬産地競馬"ならではの出自。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンド門別当日(8月21日)にはその第2戦を含む1日5勝、翌週29日のリリーカップでは、デビューからわずか4カ月で重賞初制覇を果たすなど、1年目からめざましい活躍を見せています。
ご両親が牧場にお勤めとのことで、名前にも「馬」がついていますが、小さいころから馬には興味があったのでしょうか。
小さいころは父が勤めていた牧場の社宅に住んでいて、玄関を出たら目の前に牧場があるような環境でした。名前は両親が一緒に考えて、母が「楓」という字を使いたかったそうなんですけど、「馬」の字も自然とついたんでしょうね。この牧場で育った馬が将来競馬場を走るということは子どもながらに理解していましたし、小学1年生くらいのときから、テレビでディープインパクトや武豊さんを観て「強いんだなあ」と思っていました。その頃、家の近所にあったカントリー牧場で生まれたウオッカがダービーを勝ち、なおさら親近感が湧いてきましたよね。
騎手を目指したのも自然な流れだったんでしょうか。
もともと体が小さくて、両親から「ジョッキーになったら?」と勧められた影響もあって、4~5歳の頃から「大きくなったら騎手になる」と周囲に言い回っていました。小学生のころから三木田乗馬学校というところでポニーに乗っていて、馬に乗る楽しさは感じていたんですけど、本当に決意を固めたのは中学生になって進路を考え始めたときですね。小さい頃から言ってきたせいで周りからも「騎手になるんでしょ?」っていう雰囲気が固まっていて、今さら後に引けなかったのもあるんですけど(笑)。
最初は中央を目指していたんですけど、高2のはじめに母の知り合いから「小野望先生が騎手を欲しがっている」という話を聞いて、ホッカイドウ競馬に目が向くようになりました。ちょうど門別競馬場で子どもたちのポニーレースがあって、ゴールした馬を捕まえるバイトで行ったときにレースを観たんですけど、「地元から近くて、歓迎も応援もしてもらえるなら、ここで騎手になるのもいいな」とシンプルに思いましたね。
教養センター時代大変だったことを教えてください。
ホロシリ乗馬クラブや静内農業高校の馬術部でも経験があったので、乗馬に関しては未経験の子よりは余裕があったつもりでしたけど、だんだん技術が追いつかれるにつれて焦りを感じたことですね。自分がケガをして2週間くらい馬に乗れなかったときに、他の子たちはどんどん訓練を進めて巧くなっていきましたからね。そのぶん、自分ももっと頑張らなければと思えたのはプラスでしたし、同期とはお互い助け合って、一緒に高め合っていけるような関係でした。
デビュー当初はどうだったのでしょう。
デビュー戦(4月17日門別3R・ジェイドリームで2着)は田中淳司先生がいい馬を用意してくださったんですけど、馬に遊ばれてゴール前に差し返されてしまい、改めて自分の力不足に気づかされました。最初のころは緊張もしましたけど、周りからの歓声も届いていましたし、テレビで見ていた騎手の方々と一緒にレースをしているというのは新鮮な感覚で、そのとき騎手になった実感がわいてきましたね。
師匠の小野望調教師からはどのような指導を受けているのでしょう。
基本的に馬のリズムに合わせ、馬の気持ちを尊重することを教えていただいています。レース前には「この馬がこういうレースをするだろう」とか、レース後も「こうすればこうなるからこういう結果になる」と、1年目の自分でもイメージしやすいように馬のことやレースのことを教えてくださるのは本当にありがたいですね。自分が馬の上にいるだけでは気づかないような視点をいつも与えてくださっています。
1年目から当初の目標としていた30勝をクリア。8月にはプリモジョーカーとのコンビでリリーカップを制し、重賞も勝利しました。
キッカケを与えてくださった関係者の皆さんと馬に感謝というか、本当にいい経験をさせてもらっているということを実感しています。1年目から重賞に乗せてもらえるということ自体なかなかないことだと思いますし、馬が走ってくれたおかげというのはもちろん大きいですが、ひとつ重賞を勝たせてもらったおかげで、気持ちの面でも少しゆとりを持ってレースに臨めることができるようになった気がします。
プリモジョーカーのグランド牧場の伊藤社長は、自分が所属していた柔道の少年団で会長をなさっていて、社長のお子さんともよく一緒に練習していたんです。実績のある馬だったので、乗せていただけるという話を聞いたときはさすがにビックリしましたが、変に緊張とかプレッシャーとかを考えたりせず、角川(秀樹)先生から要求されたことを当たり前に実行して、馬の力を信じてさえいれば、少なくとも馬の能力を出し切ることはできるとすぐ切り替えたつもりです。
レースでは内目の枠から果敢に逃げました。
先生からは「最初はハナを取るつもりで出していって、自分よりも速い馬がいたら2番手でも仕方ないね」という話を聞いていましたが、この週はインコースが特に軽かったので、「行けるならハナへ行ってやろう」というつもりで乗っていました。ゲートを出てから自然といいハミがかりで行けたので、コーナーに入っても馬の邪魔をせず、気持ちだけは抜かさないようにすることをいちばんに意識していましたね。直線はとにかくしっかり追うことだけを考えていたんですけど、最初聞こえていたムチの音や足音がだんだん聞こえなくなってきたときは内心とても驚きましたし、馬に対して「お前すごいんだな」っていう思いを抱えながらゴールまで乗っていました。検量室で出迎えてくれた小野先生もすごく喜んでくれましたし、ほかのジョッキーからも「おめでとう」と声をかけられて、やっと緊張がほぐれて喜びを噛みしめられましたね。
プリモジョーカーでリリーカップを制し重賞初制覇
地元で行われたヤングジョッキーズシリーズでは第2戦を勝利。この日は5勝を挙げる活躍でした。
2戦目で騎乗したレルシュタープは転入初戦で、中央では馬なりでもハナに立つような競馬をしていたので、無理しなくても逃げられるかなと思っていましたが、2番手の馬が引っかかってきたので、流れは速かったですよね。道中はなるべくリラックスさせることに専念し、勝負どころで抑えていた手綱を放して「気持ちよく行ってもいいよ」と合図を出して最後は馬の力を信じたら、直線ではこちらの叱咤にもしっかり応えてくれました。
それまでの4勝は、人気になるような馬も多かったですからね。そういう馬を任せてもらえるのは本当にありがたく思いますし、だからこそ気をさらに引き締めて、期待に応えていくしかないと。ちょうど当日、同期の福原杏(浦和)もYJSに乗りに来ていて、「昨日ようやく楓馬に勝ち星で追いついたんだ」という話を聞いていたので、「自分も負けてられないぞ」と余計に燃えました(笑)。
YJSトライアルラウンド門別第2戦を制して、1日に5勝
次のトライアルラウンドは11月19日の川崎です。
門別で1回勝たせてもらって、いい位置にいさせてもらえる以上、ファイナルに残れるようにしたいですよね。川崎は最後のトライアルラウンドなので、あと何ポイント必要か計算しやすいのはありがたいです。左回りのレースはおそらく初めてになりますが、いい経験をさせてもらいながら、冷静に、ひとつでも上の着順を目指したいと思います。去年は(山本)咲希到さんと落合(玄太)さんがファイナルに進出されたので、自分もそれに続きたいです。
今シーズンもあと2か月を切りました。今後の目標と課題を教えてください。
当初の目標だった30勝は達成できましたが、これからも目の前の勝利を1つ1つ積み重ねていき、今度は50勝を目指したいですね。去年落合さんが1年目から57勝(門別のみ。ほか1勝)を挙げられたので、「もっと上がある」と考えられるのは、自分にとって恵まれた環境だと思います。まだ臨機応変さが足りないというか、レース中に慌てて、中途半端な位置取りになることもあるのが課題ですね。あとはやっぱりスタートですかね。ゲートの中で同じ体勢を取っても出たり出なかったり、「どうして今回は出なかったんだろう」とか試行錯誤しています。やっぱり考えて乗るのはいちばん大事だなと思います。
では、最後に、オッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
これからも馬主さんや厩舎スタッフの方、そしてファンの方に、見ていて面白いと思ってもらえるような、魅力ある騎乗を心がけたいです。乗せていただけることを当たり前だと思わず、謙虚に、ひとクラひとクラしっかりレースに臨みたいですね。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴