昨年、初めて全国リーディングに輝いた吉村智洋騎手。パワフルさ溢れる34歳のジョッキーは地元・兵庫でリーディングに輝くのも初めてながら、兵庫の騎手としての地方競馬年間最多勝記録も更新しました。現在も全国リーディングを走る吉村騎手に初のリーディングを獲得した気持ちとこれからについて伺いました。
2018年地方競馬全国リーディング、おめでとうございます!大晦日まで森泰斗騎手とのデットヒートが続きましたが、森騎手がJRAで挙げた7勝を加算したとしても最終的に4勝差の296勝でトップに輝きました。
ありがとうございます。途中からずっと追われる立場で、意識して数字は見ていました。ところが10月に自分のミスで騎乗停止になってしまい、ここで追い越されてしまいました。騎乗停止になったことはよくないことですが、それで気持ちが吹っ切れました。
前回、オッズパークのインタビューに出演いただいた時は地元リーディング4位。3年の間には師匠・橋本忠男調教師が引退されるなど様々な出来事がありました。
デビューからずっとがむしゃらにやってきて、それはこの3年間も同じです。師匠には競馬のイロハなどたくさん教えてもらうことがありました。競馬は生涯勉強なのでまだまだ学びきれていないこともありますが、師匠の最後の重賞レース(2017年1月3日新春賞)をエイシンニシパで勝ててよかったです。調教にも乗っていたのですが、渾身の仕上げで「負けへんな」とは思っていましたが、競馬は何があるか分からないので、今までで一番緊張しました。ゴール前で2着馬に迫られて、「勝ってくれ」と願いながら馬の首を前に押しましたが、残せたかどうか分からなかったです。検量委員が僕の番号を先に言って、「勝ったんやな」と分かりました。師匠が最後に重賞を勝てて、いい終わり方ができたかな、と思います。
2017年新春賞。馬の右が橋本忠男調教師(写真:兵庫県競馬組合)
師匠の引退後は飯田良弘厩舎に所属。覚悟を決めて所属になったそうですね。
ちょうど飯田厩舎も成績が伸びている時期だったので、僕が所属することで勝利数が減ってはいけない、と思っていました。だから、前年からの順位は落とせないっていう使命感がありました。去年は飯田厩舎も地元リーディングをとれてよかったです。
兵庫の調教師リーディング争いも年末まで接戦でしたが、見事に振り切りましたね。年末は吉村騎手にいつも以上の気迫を感じました。最終的に兵庫の騎手として年間最多勝記録を更新(地方競馬の勝利に限る)した一方で、あと4勝で大台の300勝でした。意識していましたか?
本当は300勝超えをしたかったですね。以前、年間99勝で終わった時に「あと1勝でしたね」とインタビューで言われたんです。その時に返した言葉が「あと101勝足りませんでした。200勝を目標にしていました」って。目標は「届かないやろうな」ってくらいのところに設定しておかないと、常に上がって行けないんじゃないかなと思っています。そうして自分にプレッシャーを与えています。
年明けに東京都内で行われたNARグランプリ授賞式にはご両親の姿もありました。
一生に一度しか行けない場かもしれないので、大阪に住む両親の衣装を一緒に買いに行って、東京に連れて行きました。母は全国リーディングが決まった時、嬉しくて泣いたと言っていました。これまで親孝行なんてしたことがなくて、僕にはこういうことしかできません。
NARグランプリ2018共同記者会見
2019年も4月22日時点で全国リーディングに立っています。ちなみに、2位はまたまた森泰斗騎手。今年も熱い戦いが見られそうですね。
すぐに追いつかれますし、抜かれる可能性もあると思っています。森泰斗さんとは昨年の秋、京都馬主協会会報誌の対談でお会いしました。南関東の方が開催日数は多いですが、4場ともコース形態が違いますし、馬も多いので、その中で勝つことってすごいことだと思います。
4月3日には地方通算1700勝も達成されました。通算2000勝以上の騎手が園田競馬場に集う『ゴールデンジョッキーカップ』への出場も見えてきましたね。
ホントですね。出たいですよね。ゴールデンばかりですから、「いつもはこんな馬やのに、違う感じに走っていた」とか学ぶべきものがたくさんあって、見ていて面白いです。そこに出てればもっと学べますから、来年出られたらいいですね。
今年の目標を教えてください。
ずっと心がけているのが、1年間フルで騎乗することです。怪我も騎乗停止もなく乗ることが一番の目標ですね。それで、300勝できればいいかなって思います。まだまだレースで雑な部分を自分自身で感じます。小回りで先手必勝なので、前で競馬を組み立てることを考えますが、それでも「この馬はそこまで前に行かなくてもよかったかな」と反省する時もあります。そういったたくさんある課題を少しずつ直していければと思います。
所属する飯田良弘厩舎のナナヨンハーバーで兵庫クイーンカップを勝利(2018年11月15日、写真:兵庫県競馬組合)
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いつもオッズパークで馬券を買っていただきありがとうございます。みなさんのおかげで地方競馬全体の売り上げが上がって、騎手一同モチベーションが上がっています。僕も、おかげさまで全国リーディングをとることができました。競馬場に来られない時はオッズパークで馬券を買っていただいて、時間に余裕がある時はぜひ競馬場に来て応援のほどよろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大恵陽子
地方競馬現役第3位の勝ち星を誇る、佐賀の鮫島克也騎手。キングシャークと呼ばれ、56歳になった今も活躍を続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。
地方競馬通算4855勝(2019/4/18現在)、現役第3位の勝ち星です。5000勝も射程圏内に入っていると思いますが、意識はしていますが?
周りからは「5000勝近いね」って言ってもらうんですけど、自分ではまったく意識していないというか、気になってないです(笑)。16歳でデビューして40年やってきて、本当にたくさんの馬たちに乗せていただきました。感謝の気持ちはありますが、数字自体にこだわりはないですね。今まで無事に乗ってこられて、本当にありがたいです。
デビューから40年。ここまで長かったですか?
長かったような気もするけれど、今になって思えば早かった気もします。本当にいろいろなことがありました。一番は?と聞かれたら、やっぱりワールドスーパージョッキーズシリーズ(以下WSJS)で優勝したことです。あの光景は一生忘れないですし、当時は「もう騎手を辞めてもいいかな」とまで思いました。そのくらいの達成感があったんです。その後、モチベーションを維持するのが難しい時期がありましたね。
WSJS優勝は2001年でした。そこからどうやって乗り越えたんですか?
モチベーションが下がったというより、どこを目標にしていったらいいんだろうという時期があって。もちろん1頭1頭の競馬が大事ですし、地元ですごくいい馬を任せていただけることもありがたい。それに、外の競馬場へ遠征に行ったり、今は地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップとして開催されているジョッキーレースに騎乗することが楽しくて。結局僕はレースがすごく好きなんですよ。馬に乗ってレースをしている時が一番楽しい。だから40年も続けて来られたんだなって思います。
2014年、地元佐賀で行われたSJTワイルドカードで優勝
5月21日に金沢で行われるチャレンジステージに出場予定。2014年にはワイルドカード(現チャレンジステージ)を優勝し、本戦でも第2位の成績でした。
あと一歩のところまで行けたので2位は悔しかったですが、また結果を出してワールドオールスタージョッキーズに出場したいです。今年の舞台は金沢なのですごく楽しみですし、まずは本戦に出場出来るように頑張ります。
以前インタビューした時には、親子3人(JRAの良太騎手、克駿騎手)でレースに乗るのが夢だと仰っていましたが、今やその夢は現実になりました。実際に騎乗してみていかがでしたか?
そうですね、夢が叶った時は嬉しかったです。息子たちと3人で一緒のレースに乗れることなんてなかなかないことですから。ただ自分としては、ジョッキーの楽しさも知っているけれど、辛さも知っているので。頑張っている姿を見るのは嬉しいですけど、大変だろうなって思います。デビュー当初は多少アドバイスもしましたが、今は言いませんね。それに、忙しいみたいで全然帰って来ないんですよ。まぁ、元気で頑張っていることはわかりますから、陰ながら応援しています。
では、次の夢は5000勝ですか?
だから、そこは別に夢ではないです(笑)。数字は全然気にしていないので。
ここ数年は騎乗数を絞っているのかなという印象がありますけれども。
絞っているわけではないけれど、今56歳ですし、若い頃のようにたくさん騎乗するというのは体力的に厳しいかなと。ただね、最近佐賀はジョッキーが一気に少なくなってしまって、やたら乗せられるんですよ(苦笑)。レースもそうですし、調教も。こればっかりは、本当にキツイです。
ケガで休んでいる方も多いですし、ジョッキー不足が深刻だと伺っています。
本当に深刻ですよ。みんな大変な状態で。調教もたくさん乗っているし、レースも騎乗制限ギリギリまで乗っているジョッキーが多いです。南関東や他地区から期間限定騎乗で来てくれるジョッキーもいるので助かります。もっとたくさんのジョッキーが来てくれたらありがたいですね。
船橋の岡村健司騎手は、約1年佐賀で騎乗して、地元に戻ってからも活躍していますね。
岡村君は上手くなりましたよね。本人も努力していたし、若手にとってたくさんレースに騎乗できるというのは成長できるチャンスですから。地元の若手はもちろん、他地区の子たちも成長していく姿を見るのは嬉しいですね。
でもまだ乗ったら若い子には負けない?
それは負けないですよ。馬乗りの技術ではまだまだ負けられないですね。でも体力的にはキツイので、早く若手に育って欲しい気持ちが強いです。ぜひ佐賀に乗りに来て、いいきっかけを掴んんで欲しいですね。
鮫島騎手といえば、名馬ウオッカの新馬戦でコンビを組んだことが有名ですが、残念ながら4月1日に天国へ旅立ってしまいました。
想い出の1頭なので淋しいです。僕はたまたま乗せていただいたんですけど、角居先生はじめ関係者に感謝しています。騎手として一生の財産になりましたから。
どんな印象が残っていますか?
もうパワーが違いましたね。返し馬からガーンと行かれて、「すっげえな」って。「押さえて行ってくれ」って言われたけどゲートがめちゃくちゃ速くて、抑えたけどもうとてもじゃないわという感じで。スッと手綱を緩めたら折り合って、本当に強かったです。ただ、ダービーを勝つとは思わなかったですね。だって道中あの掛かり方ですから、まさか2400mのダービーを勝つとは...。馬もものすごく強いし、角居厩舎の仕上げもすごいけれど、四位騎手が本当に上手く乗ったなと。そんなことも思い出したりしていました。
本当にたくさんの名馬とコンビを組んで来て、現在もグレイトパールというすごいお手馬がいますね。
最初の印象は「でっかいな」でした(笑)。JRAで重賞を連勝している実績馬で、佐賀に来ると聞いた時には驚きましたが嬉しかったです。あれだけの馬を任せてもらっているので、結果を出したいという気持ちが強いですね。
佐賀記念JpnIII(2月11日)に出走したグレイトパールは4着
現在の様子はいかがですか?
今は4月25日(木)のオグリキャップ記念に向けて調整しています。脚元と相談しながらの調教になるので、負荷の掛け方がなかなか難しいんですが、出るからには注目されますし、しっかり仕上げて挑みたいと思っています。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも佐賀競馬を応援していただき、ありがとうございます。今ジョッキーが少なくて大変な時期なのですが、みんなで頑張って盛り上げていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
ちなみに、キングシャークって呼ばれることはご自身ではいかがですか?
あれは佐賀の実況アナウンサーが勝手につけたので(笑)。でも別にイヤではないですよ。ファンの方にそう呼んでもらえたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋