デビュー2年目の昨年(2017年)、NARグランプリ・優秀新人騎手賞や、日本プロスポーツ大賞・新人賞を受賞した鈴木祐騎手。また昨年から始まったヤングジョッキーズシリーズではファイナルラウンドにも出場。その活躍を振り返るとともに、今後についても語ってもらった。
昨年の12月くらいからこの3月くらいまで、いろいろな事があって本当に忙しい数ヶ月だったと思います。そんな時期を改めて振り返ってみて、どうでしたか。
すごく忙しかったけれど充実した感じでした。いろいろな経験をさせていただいて良かったです。
"大変だった"のが先に立つかと思っていたけど、充実していたと言えるんだ?
名誉な賞をいただきましたしね。大変でもありましたけど、嬉しいとかありがたいとか、そういう気持ちの方が大きいですね。
ではその賞の話に行きましょう。NARグランプリの新人賞。前年がね、同期のライバル加藤聡一騎手(愛知)で、その彼に続いての受賞となりました。
正直言って"悔しい"と思いますね、同期に先に獲られたのは。むしろこれから先は負けずに頑張らないとっていう気持ちになりました。
NARグランプリ授賞式・共同インタビュー
こうやっていろいろな賞を貰って、たくさん取材を受けたりメディアに出たりという事も多かったわけですが、今の自分が注目されてきているなっていう意識はありますか?
んー、自分自身これまでそれほど注目されてきたと思っていなかったから、変化があったとはあまり感じないですね。ホントに自分はまだ何もできてないなと思う事の方が多くて。むしろ自分はまだまだと感じています。
そうか。自分でそう言うなら敢えて聞いてみるけど、こうやって露出が増えた分、周りのハードル、評価や比較の基準が上がっている面はあるよね。
やっぱり賞をもらうような人は素晴らしい技術を持っているだけでなく人間もできているんですよ。それに比べたら自分はまだまだだなって思いますし、頑張らなきゃなとも思います。
じゃあ賞を貰った事で、逆に自分ももっとレベルアップしていかないとと感じた、と。
そうですね。逆に今までの自分を見つめ直しました、自分がやってきた事とか今の自分のレベルとかを改めて考えましたね。
ここまでいくつも賞を貰ってきたわけですが、どれが一番嬉しい受賞だった?
どれも嬉しい賞なのですが、どれかひとつとするとプロスポーツ大賞(日本プロスポーツ大賞新人賞)かな。プロという枠でいろいろな競技の選手がいるじゃないですか。その中で"騎手代表"のような形で選ばれたのはやっぱりすごく嬉しいですよね。
日本プロスポーツ大賞表彰式
じゃあレースの方で。ヤングジョッキーズシリーズや高知の新人王と各地で騎乗する機会がありました。その中で一番印象に残っているものを挙げてもらうとすると?
一番となるとヤングジョッキー、中山競馬場で乗った事でしょうか。夢の競馬場っていうか、中山競馬場で競馬を見た事で騎手になろうと思った所ですからね。もう、その時の光景が頭に焼き付いて離れないです(笑)
小さい頃からの思い出の競馬場で乗れたのは、やっぱり感じるものがあった?
もういろいろ印象的でした。お客さんが多いなとかコースが広くてコーナーも広々してるなとか。緊張はしなかったですが驚く事がたくさんありました。
YJSファイナルラウンド中山第1戦(4着)
じゃあまた乗りに行きたい?
もちろんです。
次は勝ちたい?
もちろんです!
さて、そんな表彰ずくめの1年を終えて間もなく新しいシーズンがスタートします。これからの1年はどんな"鈴木祐"を目指しますか?。
今年の鈴木祐ですか......。そうですね、もっと上手くなりたいですね。今年は自分では勝負の年だと思っているので、もっともっとレベルアップしたいです。技術的にも人間的にも。
それは例えば具体的な数字で何勝とかじゃなくて、技術とかを向上させていきたい......っていう?
勝つ事はもちろん大事だと思うのですが、馬に乗る能力、技術というものが無いとこの先やっていけないでしょうから、そういう部分を身につけられる年にしたいなと。
では、今年ね、またヤングジョッキーのファイナルに行けたとしたら、どんなレースを見せたいですか。
それはもちろん勝ちたいです。勝つだけじゃなくて見ている人に"かっこいい!"と感じてもらえるようなレースを見せたいです。
もうひとつ。同期とか同世代の騎手たちと戦ってきて、新シーズン、そのライバルたちに挑戦状を叩きつけるとしたら。っていうか叩きつけて。
今年は恥ずかしい競馬をしない。ヤングの中で一番上手いんじゃないかって思わせる騎乗をしたいです。
最後にずいぶん大きく出たね!
もちろんです!夢は大きく!
YJSファイナルラウンド中山(左から4人目)
いつも通りというか、大きく話が膨らんで終わった鈴木祐騎手へのインタビューだったが、勝ちたい、若手の中で一番上手くなりたいと何度も口にしたのはやはり、各地を転戦した記憶がそう言わせたようだ。
「JRAの騎手はみんな綺麗に乗りますし、地方の騎手だって凄く上手くなっていました。このままじゃ置いていかれると感じました」とも言っていた鈴木祐騎手。同じ世代の騎手達と戦った事が自分を見つめ直すきっかけにもなったのだろう。来年の今頃はどんな結果を残しどんな事を言っているのか?期待しよう。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
2017年は2年連続で兵庫リーディングに輝くだけでなく、念願の全国リーディングのタイトルも獲得した下原理騎手。騎手激戦区の兵庫でトップを守るために心がけていること、恩師で3年前に急死した寺嶋正勝調教師から学んだこと、今後の目標を聞いた。
2年連続兵庫リーディングと初の全国リーディング、おめでとうございます。
ありがとうございます。2016年に初めて(兵庫で)リーディングジョッキーになって、2年連続になれるようにと考えてはいましたが、全国となると、開催日数など条件が違う地区との争いになるので、それほど意識はしていませんでした。周囲からは狙えと言われましたが、むしろ、その争いに加わっていることを楽しんでいるところもありました。
2年連続を達成できた要因は何ですか。
いつも通りのことをきっちりこなして、特別なことをしないように、平常心を保つことを心がけていましたが、それができたからかなと思っています。乗り手が気負うと馬に伝わって、力を出せないので、そこを大事にしてきました。
リーディングになる前と、なってからで、変わった点はありますか。
リーディングになってからは、あわてることが少なくなりました。勝つことが自信になり、落ち着きが出て、さらに次の勝利につながる好循環になっている感じです。これが勝つことへの近道だなと思います。
写真:兵庫県競馬組合
95年にデビューした下原騎手は12年目の06年に初めて年間100勝の壁を越えると、14年まで100勝台をキープ(左肩脱臼で長期離脱した12年は除く)。デビュー21年目の15年以降が年間200勝台。約10年単位でステップアップしています。
言われてみれば、そうですね(笑)。06年の100勝突破は岩田さんが中央に移籍して、15年も木村さん、田中さんが、けがで乗れなくなって、有力馬に乗せてもらったことが大きいと思います。
15年は上位騎手2人の長期離脱があったにせよ、2人が復帰してからも、復帰する前のペース以上で勝っていますよ。
自分では、まだまだと思っていますが、信用してもらえたんでしょうか(笑)。でも、田中さんも、川原さんもいますし、若い子も力をつけています。いつ抜かれてもおかしくないと思って乗っています。
今、期待している馬はいますか。
3月13日に昨年の(兵庫)最優秀2歳馬のコーナスフロリダに勝ったツルノシンは強かったですが、道営に戻るような話も聞きました。こちらにいたら菊水賞で期待できるんですが。3歳牝馬ならショコラパフェですね。1番人気だった1月の園田クイーンセレクションでは負けましたが、その後は連勝していますし、春の重賞では楽しみにしています。
今年でデビュー23年目ですが、1番の思い出の馬は?
やっぱり中央馬を破って佐賀記念を勝ったチャンストウライですね。中央馬に勝てる馬には、そう巡り会えませんからね。それに自厩舎の馬で、デビュー前から自分が乗っていましたので、思い入れも違います。帝王賞4着、アンタレスステークスでも5着、芝の阪神大賞典にも挑戦しました(10着)。あの馬との経験で自分も成長しました。それから、同じくらいの時期に地元と東海地区の短距離重賞を総なめにしたベストタイザンも忘れられません。
チャンストウライで佐賀記念を制覇(2008年2月11日)
自厩舎と言えば、師匠だった寺嶋正勝先生が急死したのが3年前(2015年)の3月10日でした。
今年も法要に行かせていただきました(取材日は3月14日)。先生の奥さんがお元気そうで、ホッとしました。
寺嶋先生から学んだこと、思い出すことも多いと思いますが。
僕がまだ教養センターにいる時は寺嶋先生は現役ジョッキーで、先生の師匠だった福地先生にお世話になっていました。福地先生の調教師引退と引き継ぐ寺嶋先生の厩舎開業と僕の騎手デビューが重なりました。寺嶋先生はレースの流れを考えずに、早めに仕掛けるようなバタバタする乗り方が嫌いで、そういう時には、もっと落ち着いて乗らないと、と注意されました。また、いいところをほめていただいて、もっと伸ばせとも言われました。あとは、汗取りにサウナをあまり使うなと言われました。若い時にはその意味が分からなかったですが、サウナで落としていると、年々落ちにくくなりますし、体力もそがれてしまいます。食べる量で調整していく方が楽で、レースにもいい体調で臨めるので、先生の仰っていた通りにしていて、良かったと思います。
勝負服の紫と白は寺嶋先生から引き継いだものですね。
はい、先生は胴袖紫の白山形で、僕は胴袖紫の白菱形で模様は違いますが。デビューする時に、先生に相談して、僕が決めました。僕の勝負服を見て、先生のことを思い出す方もいらっしゃると思いますし、先生から学んだことをしっかり受け継いでいかないといけませんね。
今後の目標を教えて下さい。
兵庫のリーディングも全国リーディングも守りたいですから、1つでも多く勝って勝ち鞍を伸ばしたいです。昨年は273勝でしたが、デビューしてから数年の勝てなかった時期を思うと正直、自分でもすごい数字だと思ってます。でも、岩田さんから先日、「300勝を狙え。オレは達成(2003年307勝、2004年324勝。中央も含む)したぞ」と言われました。300勝だと月25勝。昨年が月22~23勝ペースでしたから、そこから、さらに毎月2つを上乗せするのは、かなり大変です。でも近づけるようにはなりたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
2015年4月にデビューした山口以和(もちかず)騎手。昨年は45勝と勝ち星を伸ばし、通算勝利数でも2月25日現在97勝と、100勝が間近に迫っています。
騎手デビューして、新年度から4年目に入ります。
ここまで3年、山あり谷ありという感じで来ていますね。うーん、いや、山はあったかなあ。昨年の秋、(ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドの)園田で山が来たかなと思ったんですが......。あのときのことは一生、悔やむと思います(トライアルラウンド園田では2戦とも4着。どちらかで勝利していれば、ファイナルラウンドに進出できた)。それを含めて『なんか持っていないなあ』と思ったりして。もちろん、こういうのって気持ちひとつだとは思うんですよね。ただ、そうならないときもあるんです。競馬自体は楽しくできているのですが。
ということは、壁に当たっているような感じなのでしょうか?
この間、先生(所属の手島勝利調教師)にも「心がめげてる」と言われました。それでも積極的な競馬をしようと心がけていますよ。1300メートル、1400メートルのレースの1コーナーで内から3頭目を回るとかはしたくないですから。でも流れによってはジッとしすぎたり、かと思ったら早すぎたり、もちろんうまく仕掛けが決まるときもあるんですが、いまひとつ一定しない感じがするんです。
それでも昨年は600回以上も騎乗しています。
たくさん乗せてくださるのは本当にありがたいことだと思いますし、佐賀に来てよかったと思います。でも自分の技術ってどうなんでしょう。上手くなったのかなあ。デビュー当初のほうがもしかしたら上手かったかも。最初のころは何も考えずに積極的に行っていましたからね。それがよかったのかもしれないなとも思いますし。
とはいえ、それだけ乗っていれば経験値は確実に上がると思うのですが。
競馬はちょっとの差で結果が変わりますからね。デビュー当初は多少のロスがあってもとにかく前を狙っていましたが、減量が減っていくにつれて、それでは勝てなくなってきました。そのあたりで、考えかたが少しずつ変わってきました。
でも現在はちょっと悩みがあるというか。
そうですね。個人的にはインを回る競馬が落ち着いて乗れるというか理想というか、そういう感じに考えているのですが、今の馬場は外が伸びますからね。それを頭に入れていても、仕掛けられる時と仕掛けられないときがあるんです。そのせいか、最近は"うまくハマった"というか、馬の力と自分の力が合わさってギリギリ勝った、みたいなレースがあまりないように思うんですよね。そういうレースができたときは、あとで何回でも見たいじゃないですか。でも今はそれが少ないので、最近はレースVTRを見まくっています。ふがいなかったレースも含めて。
それでもデビューから3年で100勝近くという数字を残しました。
うーん、最初のころの想像よりは遅いペースですね。でもそれは、競馬の難しさが分かってきたからこそ、こういう思いになっているのだと思います。考えることはとても大切ですし、今はガマンの時かなと。だから、そんなにへこんでいるわけではないんです。悩む自分には悩んでいないといいますか(笑)。
普段の生活は以前と変わりない感じですか?
調教は夜の12時半から。自厩舎の馬にはほとんど乗ります。休みは週に1日ですが、最近は自分の部屋でゆっくりすることが多いですね。そうなると考える時間も増えることになるわけですが、これを越えていかないと。越えたらきっと、新しいものが見えてくるんだと思います。
正月はエスワンノホシで佐賀若駒賞を勝ちました。あれは会心の騎乗ではなかったのですか?
それ以降の2戦がいまひとつの結果ですから......。でも、まだ伸びしろがありますし、飛燕賞は着差があっても、そこまでの差ではないと思いますので、エスワンノホシで大きいところを狙いたいですね。そして今年は50勝という数字を目標にしています。落ち込んでいるところは人に見せたくないですし、これからうれしいところをいっぱい見せていきたいと思っています。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典