今年2月に地方通算2000勝を達成した吉原寛人騎手。依頼があれば全国どこへでも乗りに行き、有力馬を任せられる、今や地方を代表するトップジョッキーです。今の心境を聞きました。
2月21日に地方通算2000勝を達成されました。率直なお気持ちは?
素直に嬉しかったですね。2000勝手前で意識してしまって足踏みしていた部分もあったので、達成した時はホッとしました。
デビューから16年でのこの数というのは、ご自身でどう評価しますか?
所属が冬場に開催のない金沢ということを考えると、こんなに勝たせてもらって有り難い数字ですね。
その中で思い出深い1勝をあげるとすると?
うーん、難しいですね。地方通算勝利数には含まれませんが騎手人生で要になったのは、1年目でJRAに遠征してトゥインチアズ(金沢)で勝ったレースですね。そこでJRAの森秀行調教師に目をかけてもらって、ドバイに連れていってもらったりするなど色々な経験に繋がりましたから。
その中央遠征がきっかけで、とても視野が広がったんでしょうね。
その通りです。その後、オーストラリアに修行に行ったりもして、小さな枠に捉われないという考えを若い時に学ぶことができました。ドバイに行った時から、先輩騎手にも負けないぞという気持ちを持つことができて、そこからしっかりリーディングを獲れました。
吉原騎手といえば、全国どこにでも乗りに行く騎手のパイオニアですが、今は他の騎手にとっても普通になってきていますよね。この状況はどうですか?
どうしても馬には連続で乗りたいですよね。ですから他地区の騎手でもその馬に乗り続け、夢を見られるように規定が変わってくれたことが本当に嬉しいです。僕自身も、全国の上手い騎手にお手馬をとられる可能性があるので怖い部分もありますが、そういうプレッシャーの中で、しっかり仕事ができたらなと思います。
2013年のインタビューの時は、ちょうど金沢から北海道や南関東へ行ったり来たりの状況でした。移動が大変で体調管理が難しいと仰っていましたが、今はいかがですか?
今はどれだけの体力で行って、どれだけ消耗するかというのが計算できるようになりました。いいサイクルになっていますよ。それに、新幹線ができて南関東への遠征がかなり楽になりました。僕にとっても北陸新幹線の開通は嬉しい出来事でしたね(笑)。
今年のNARグランプリ2016の表彰式には、年度代表馬の主戦騎手としてステージに立ちましたね。
優秀新人騎手賞でNARグランプリに行った時、年度代表馬の関係者の皆さんがすごく輝いて見えたんです。あぁ、すごいな...って。自分では手の届かない世界とだと思っていました。それが他地区の馬を任せられて、この表彰台に上れるなんて、ものすごく嬉しかったです。時代の流れもあると思いますが、有り難いことです。
ソルテでさきたま杯JpnIIを制し、NARグランプリ年度代表馬に
今年の目標を教えてください。
去年も目標にしていましたが、地方馬でジーワンを勝つことです。
これまで様々なことを成し遂げてきた吉原騎手ですが、これからの夢や野望はありますか?
逆に、それを教えてほしいです。どんな風になればよいのかを。今まで、手前の目標と、少し高い目標と、その先の目標と3つ持っていました。でも今は、こういうことをしたい!というイメージが沸かないんですよ。中央なのか、世界なのか...、でも地方での目標を達成していないからそれも違う気がする。自分でも、これからどんな方向に向かっていくのだろうという感じです。地方馬でジーワンを勝てた時に、それが明確になるのかもしれないですね。
では最後に、オッズパークの会員のみなさんにメッセージをお願いします。
オッズパークで馬券を買って、「吉原このやろー!」と温かい声援を送って頂けると有り難いです(笑)。これからもよろしくお願いします!
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※インタビュー / 秋田奈津子
長年トップジョッキーとして活躍する兵庫の田中学騎手は、2014年全国リーディングに輝いた直後、原因不明の痛みにより長期休養を余儀なくされました。無事回復して復帰を果たした今、当時のこと、そしてこれからのことをお聞きしました。
去年は192勝を挙げて全国10位。どんな1年でしたか?
前の年がケガで長く乗れなくて、去年も途中2か月くらい乗れなかったんですけど、その割には、自分で言うのもなんですけどがんばった年だったかなって思います。ものすごく長く休んだのに、そういう人間に乗せてくれる周りの方々のお陰ですよね。本当に有り難かったです。
2015年の長期休養は、どんな状態だったんですか?
何年か前のケガとは違って、原因がわからなかったんです。100メートル歩くのもやっとで、100メートル歩いて休憩して、また歩いて休憩して、という状態で。もう乗れないかもしれないと思いました。10か所くらい病院に行ったり、ハリとか整体とか、いいと聞くと行ってみたんですけど、治療後すぐだったり、帰りの車で同じ痛みが出て、「またか...」と落ち込みました。常にネットでいろいろ調べたり、何度も病院に相談に行ったり。検査を受けても全然異常がないってなって、もうどうしたらいいかわからなかったです。
相当キツかったですよね。
すっごく病みましたね。心の支えとかもなくなった感じで、とことん凹みました。本当に長かったです。最終的には、検査をした病院の先生が連絡をくれて、「異常はないけど、手術してみるか?」って言ってくれたんです。治るのは五分五分って言われたんですけど、治る可能性があるなら手術してくださいって言いました。それが良かったのかどうかは先生もわからないって言ってましたけど、結果的に復帰できて本当に良かったです。
長い間のムリが祟ったということなんですかね?
そうですね。痛みが出て悪くなるまでの間、あちこちの競馬場に呼んでもらってた時期だったんです。自分なりには乗れるうちが華、呼んでもらえたら嬉しい、がんばりたいと思って乗ってたんですけど、まさかあそこまで悪くなるとは...。ムリしすぎるのはダメですね。改めて、自分の体は大事にしなきゃいけないなと痛感しました。
実際に復帰した時はどうでしたか?
復帰できる嬉しさと、不安もありました。年齢も40を超えて、長期休んで、またもとに戻れるのかなって。実際に乗ったら今まで通りだったのでホッとしました。病院の先生にも感謝しています。親身になって治療してもらいましたから。
そして去年の5月12日、お父様である田中道夫先生の騎手時代の記録、3164勝を超えました。
僕はあんまり数字的な目標って立てないんですけど、父の記録は目標にしてたので、なんとかそこまでは乗りたいっていう気持ちでした。無事に達成した時は嬉しかったです。父のことは何ひとつ超えることができなかったので、今でも超えたとは思っていないですけど、ただ数字だけは超えることができて嬉しいですね。父も嬉しかったと思うんです。父からは、リーディング獲った時と同じで「おめでとう」と言われたくらいでしたけど、ひとつくらい親孝行できたかなと思います。
今後の目標というのは?
年齢的にもそんなに長くは続けられないので、あと1年か2年くらいという気持ちで乗っています。もちろん、その時になってみないとわからないですけど、そうなっても悔いのないよう、目の前のひとつひとつを大切に乗っていきたいです。木村(健)くんも腰で休んだりしているでしょう。お互いに、お前おらんようになったら寂しくなるなって言い合っているんですよ。俺らポンコツだなって(笑)。
お2人のいない園田は考えられません!
今そうやって、競馬場の人でも10人いたら9人がそう言ってくれるので嬉しいことです。ただ、僕たちが抜けたら抜けたで、今は下原(理)も勢いいいし、また下の子が育って来ますから。僕らがそうだったみたいに、下が出てくるんですよ。僕が言うのもなんですけど、園田は層が厚いんでね、レースも厳しいし、園田の乗り役はレベル高いと思います。どこでも突っ込んでくるし(笑)。
ゆくゆくは調教師というお考えですか?
頭には入っています。ただ、今は目の前のレースに全力投球したいですね。今までは僕が僕がっていうのが強くて、とにかく勝ちたい気持ちが強かったんですけど、今は自分がミスしなければ、おのずとこの子は走ってくれると、余裕ではないですけど、冷静に考えられるようになりました。最近は穏やかな気持ちで、怒ることもなくなったかな(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
今、地方競馬が上がってきているじゃないですか。それは本当にネットで買ってくれている皆さんのお陰なので、とても感謝しています。それがなかったら今どうなってるんだろうって思いますよね。売り上げがあがるとモチベーションも上がるし、がんばり甲斐があります。
少しずつ、若い子らが上を目指せる環境になってきたと思うし、僕らはまだまだ若い子たちには負けないように、切磋琢磨しながらがんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋
ベテラン勢が活躍を見せている高知競馬で、デビュー8年目を迎えた岡村卓弥騎手も奮闘中。昨年の秋は門別競馬場で期間限定騎乗をするなど経験を重ねています。
最近の高知競馬でもっとも変化したところといえば、昨年12月18日から賞金額がそれまでよりおよそ倍になったこと。競馬に携わるみなさんの雰囲気はどうでしょうか?
確かに変化は感じますね。厩務員さんは特に。騎手はそれほどまではという気はしますが、でもモチベーションが上がっているのは間違いないです。
重賞の1着賞金額が27万円というレースもありましたから、それに比べるとぜんぜん違いますものね。
そうですね。重賞はみんな気合が入っていると思います。自分もそれにつられてヤル気が出てきていますから。そのほかのレースでも接戦が増えているように感じます。前でガリガリやりあうことが多くなったように思いますし、それからインコースを狙う騎手が多くなったかな。インは使える日と使えない日があるのですが。
そして高知では2歳新馬戦が復活しました。
僕自身はまだ2歳馬を一から育てたという経験はないですが、昨年9月から北海道に2か月弱、期間限定騎乗をしに行ったときに、調教が進んでいる1歳馬に乗せてもらいました。北海道のデビュー前の馬は年齢を感じさせないというか、背中がしっかりしていますね。驚きました。高知でもディアマルコが新馬復活の1年目から活躍しましたが、すごいことだと思います。ああいう馬と巡り会って、遠征してみたいです。
ということは、あまり遠征の経験はないということでしょうか?
期間限定騎乗は金沢と北海道がありますが、金沢にいたときに南関東の川崎に1回行っただけなんです。ウチの厩舎(雑賀正光厩舎)は騎手が4人いるので、自厩舎だけなら仕事的に多少の余裕がありますから、よその競馬場に行かせていただけているところがあると思います。普段はほかの厩舎の攻め馬も頼まれますから、だいたい朝は2時半から10時くらいまで、20頭くらいに乗っています。
地元での成績ですが、昨年も今年も勝ち星より2着3着のほうが多くなっているのですが。
そうなんですよ。ほんのちょっとだけ負けるというケースが多い気がするんですよね。すごく悔しいんですが、そこは技術の差なんでしょうね。本命の馬はもちろん勝つレースを心がけますが、それ以外の馬に乗っても最低でも3着は目指そうと考えています。以前と比べて変わったところといえば、いい意味であまり考えなくなったことかな。以前はレース前に展開などをいろいろと考えていましたが、思い通りにはいかないのが競馬ですし、考えすぎるといい結果は出ないように感じたんです。だから最近はゲートが開くまでは余計なことを考えないようにしています。
そのほかに、最近になって意識していることはありますか?
騎乗するときに、以前よりもくるぶしで馬の体を締めることを意識していますね。それからハミのかけかたも。以前から先生に「道中で手を動かしすぎ」と言われていましたが、それができることで、3コーナーあたりでハミをかけていくことをより意識できるようになったと思います。ただ、そのためには足の筋力が必要ですから、調教のときからアブミを短くして、楽乗りをしないようにしています。
そういったことも、今年の高知での騎乗数がトップを争っているというところにつながっているのかもしれないですね。
本当にたくさん乗せてもらえているのでありがたいです。ウチの厩舎にいたらチャンスは巡ってくると思うので、そのときにきちんとそれを掴めるようにしたいですね。それから最近は、自分が担当している馬がレースでカチ合ったとき、先生がどちらに乗るか、選ばせてくれるようになったんですよ。そこも以前とは違うところですね。そういう流れをもっと積み重ねていくことが今の目標です。結果がすべての世界ですから、実力がある馬に乗せてもらったときに結果を出せるように、そして人気になっても気負わないで乗れるようになりたいと思っています。
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※インタビュー / 浅野靖典