現役女性騎手最多勝利数(3月21日現在、地方通算587勝)を誇る、高知の別府真衣騎手。NARグランプリ・優秀女性騎手賞7度目の受賞、レディス&ヤングジョッキーズシリーズではMVLJ賞受賞と、常に女性騎手をリードする存在です。いよいよ大手が懸かる大記録、国内女性騎手最多勝利に向けてお話を伺いました。
2015年は71勝を挙げて優秀女性騎手賞受賞。なんと7度目の受賞だったんですね。おめでとうございます!
ありがとうございます。2014年は受賞できなくてすごく悔しかったので、また受賞することができて本当に嬉しいです。今回が7度目の受賞ということで、自分でもびっくりというか、こんなに何度も獲らせてもらっているんだなとしみじみしました。馬主さんはじめ厩舎関係者の皆さん、いつも応援してくれるファンの皆さんのお蔭です。本当に感謝しています。
一昨年の44勝からジャンプアップした要因はなんですか?
去年が上がったというよりは、ここ何年かずっと自分の競馬ができずにいたんですよね。2011年から約1年間、韓国のソウル競馬場で騎乗させてもらって、技術的にも精神的にもものすごく勉強になったんですけど、ソウルは直線の長い大きなコースなので、"いかに脚を溜められるか"が勝負なんです。そこから戻って来て、高知の"前に行って勝負する"競馬に対応することがなかなかできなくて。自分では積極的に乗っているつもりでも、遠征に行く前とは何かリズムが違うというか。そのリズムを取り戻すために、思った以上に時間が掛かってしまいました。
その辺りのリズムが、去年は戻って来たんですね。
そうですね。前半はまだ引きずっていた面があったんですけど、後半はどんどん良くなって来ました。最近は自分らしい、積極的なレースができるようになっていると思います。今年もそのいい波が続いているので、このまま一年続けたいですね。
3月に名古屋と佐賀で行われた、レディス&ヤングジョッキーズシリーズでは、女性騎手第1位のMVLJ賞を獲得しました。
今は女性騎手がとても少ないので、女性騎手のみでレースができないのが淋しいんですけど。年に一度、全国の女性騎手が集まるレースなのでとても楽しみにしていました。ただ......、名古屋ステージの時は5人(別府騎手、岩永千明騎手、下村瑠衣騎手、木之前葵騎手、鈴木麻優騎手)揃っていたのに、その後に岩永先輩が地元で大きなケガをしてしまって、さらに佐賀ステージでは(下村)瑠衣までケガをして救急車で運ばれて......。2人も大きなケガをしてしまったことは本当にショックだったし、悲しいできごとでした。なので、MVLJを受賞できたことも複雑だったんですけど、嬉しいという気持ちはもちろんありました。やっぱり、今は現役女性騎手の中で最多勝利をしているのは自分なんだっていうプライドを持ってやっていますから、負けたくないという気持ちが強いです。その中で1番になれたことは素直に嬉しかったですね。
さらに、今年の黒船賞の日には、JRA16年ぶりの女性騎手デビューで注目を集めている、藤田菜七子騎手と一緒に騎乗しました。印象はいかがでしたか?
もう、すごく可愛かったです! 高知のみんなもメロメロで、わたしには絶対に言わないような言葉を掛けてました(笑)。騎乗に関しても、とてもしっかり乗れていたと思います。最初は初めての競馬場で戸惑っている面もあったと思いますが、6レース騎乗して最後の2レースは上手に流れに乗っていました。一日の中で菜七子ちゃんが成長していて、すごいなと思いましたね。
この日の第3レースでは同じ別府真司厩舎の馬に乗って、藤田騎手1番人気、別府騎手2番人気での対決になりました。逃げる藤田騎手を差し切って別府騎手が勝利! どんなお気持ちでした?
菜七子ちゃん、ごめんね......と思いながら差し切っていました(笑)。菜七子ちゃんにも勝って欲しかったですけど、そこは勝負の世界なので。周りからかなりからかわれてしまいました......。それにしても、菜七子ちゃんの人気はすごいですね! 1レースからものすごい人が来てて、人間が物見してしまいました(笑)。またいつか高知に来て欲しいですし、他の場所でも一緒に乗れたら嬉しいです。
では、今後の目標を教えて下さい。
ずっと目標にしてきた宮下瞳さんの勝利数626勝に近づいて来たので、今年こそ超えたいと思っています。数字自体は近づいて来たんですけど、瞳さんが現役復帰に向けてがんばっていると聞いたので、それもすごく刺激になっています。菜七子ちゃんもそうだし、瞳さんもそうなんですけど、また女性騎手が増えて盛り上がってくれたら嬉しいですね。その中で負けたくないので一生懸命がんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋
長年の活躍が認められ、日本プロスポーツ大賞功労賞を受賞した、笠松の向山牧騎手。笠松移籍後は低迷した時期もありましたが、現在は毎年リーディングを争う活躍を見せています。御年50歳。第一線で居続ける秘訣をお聞きしました。
日本プロスポーツ大賞功労賞受賞、おめでとうございます!
ありがとうございます。人生の中でこの賞をもらえるチャンスはなかなかないですから、本当に光栄だし嬉しかったです。騎手を長くやってて良かったなと思いましたね。授賞式は盛大に行われると聞いていたので、何を着ていったらいいのか迷いました。この年なので緊張はしませんでしたが、競馬以外のプロスポーツ選手の方々にお会いできて、すごく新鮮でした。
どなたが印象に残っていますか?
特別にこのスポーツが好きっていうのがないんですけど、去年はやっぱりラグビーが盛り上がりましたから、選手に会えるかなと思って楽しみにしていました。でも、授賞式には選手は一人も来てなくて、ちょっと残念でしたね。でも、普段テレビで見ている方々と一緒に表彰されて、これからもっとがんばろうと刺激を受けました。
以前インタビューした時に、「3000勝が目標」と仰っていましたが、一昨年見事達成されました。その時のお気持ちは?
やっぱり重みがありますよね。ずいぶん長いこと、いっぱい乗せてもらったんだなとしみじみしました。騎手は自分がどんなにがんばろうと、乗せてもらえなかったら仕方ないですから。新潟、笠松と所属してきて、本当にたくさんの方々に助けられたんだなと実感しました。
今年はデビュー34年目です。長く騎手を続ける秘訣は何でしょうか?
一番はケガをしないことです。もちろん、気を付けていてもこればっかりはどうにもならない時もありますし、生き物相手なので突然何が起こるかわからないというのが現実です。でもだからこそ、自分がケガをしないこと、人をケガさせないことを常に心がけています。騎手のケガというのは一生を左右することもありますし、馬の命を奪うこともあります。そこはこれからも気を付けていきたいです。
笠松といえば、去年トップジョッキーだった尾島徹氏が、若くして騎手から調教師に転身しました。向山騎手は調教師転身を考えたことはありますか?
まったくないと言ったら嘘になりますけど、あんまりないんですよ。自分が調教師になって仕事をしているところを想像すると......、向いてないなということをヒシヒシと感じて(笑)。前にも言いましたけど、僕は口下手で営業ができないし、馬主さんとの関係も上手く作れないと思うんですよね。騎手としても営業ができなくて騎乗馬が集まらなかった時期がありましたから、調教師になったらもっとそういう部分が大切でしょう。馬に乗ることが大好きだし、僕はこのまま生涯騎手でいきたいですね。尾島くんは騎手としても成功して、調教師としても一生懸命がんばっていてすごいと思います。笠松の看板ですしね。でも、人と比べても仕方ないので、僕は僕の道を行きますよ。
2013年に笠松で初リーディングとなり、その後も2年連続第2位。現在50歳ですけれども、年間100勝以上の好成績が続いていますね。
これはもう、自厩舎のお蔭ですよ。川嶋弘吉先生が主戦としてほぼ乗せてくれて、いい馬がたくさん入ってくる厩舎なので、チャンスもいっぱいもらっています。営業できない僕にとっては、結果で返していくしかないですから、これからも勝負にこだわっていきたいです。
騎乗面で大切にしていることはありますか?
いくつもありますけど、この年になると誰も何も言わないので、自分で考えて研究するということです。何も言われないからって今のままでいいっていうわけではないし、実力社会なので、乗れなくなったら必要ないですから。そうならないように、1頭1頭この馬にはどんなアプローチがいいのか真剣に考えています。若いうちはガミガミ言われて煩いなと思ったこともありましたけど、実際に年齢を重ねて何も言われなくなると、それはそれで怖いものですよ。自分で努力しなくなったら、もうそれで終わりですからね。
では、今年の目標を教えて下さい。
ここ何年か重賞を勝っていないので、そろそろ勝ちたいです。去年は東海ダービーで2着に負けて、本当に悔しい想いをしました。やっぱり騎手をしている以上、ダービーは目標のレースです。今年は何頭か重賞で勝負できそうな馬がいるので楽しみです。
具体的な馬名を教えていただけますか?
1頭はメモリーミリオンです。笠松デビュー馬でずっと乗せてもらっているんですけど、使いながらだんだんと成長して来てくれました。今はまだ前に行けないで後方からなんですけど、もう少し前に付けられるようになったら重賞でも十分勝ち負けできると思っています。なかなか、こういう若馬に出会えるチャンスは少ないですから、大切に育てていきたいです。
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※インタビュー / 赤見千尋
左目失明という大きなケガを乗り越えて、高知で活躍し続ける宮川実騎手。2015年は105勝挙げ、高知リーディング4位という成績でした。さらに、長年一緒に歩んで来た兄の浩一さんが、騎手から調教師へ転身。新たな局面を迎えた今、その胸の内をお聞きしました。
2015年は2年ぶりに年間100勝を越え、高知リーディング4位でした。振り返ってみてどんな1年でしたか?
やっぱり年間100勝というのは毎年目標にしていることなので、そこは達成できて嬉しいですね。たくさん乗せていただいたお蔭です。ただ、勝たなければいけない場面で2着になることも多くて......。自分としては全然満足していないです。反省の方が大きい1年でした。
印象に残っているレースは?
ブルージャスティスで11月の土佐秋月賞を勝てたことです。2歳の時に金の鞍賞を勝っているように、すごく力のある馬なんですけど、気性的に難しいところがあって、なかなか勝ち切れずにいました。まだ幼くて、メンタルが弱いところがあったんですけど、上手く呼吸を合わせることができなくて。男馬のように鍛えて鍛えてというタイプではないし、とても繊細なので調教も難しかったです。でも秋になって調子も上がってきて、僕もこの馬のことをだいぶ掴めるようになって、3歳の最後の重賞を獲れて嬉しかったです。1月のレース後登録抹消になってしまったのは本当に残念ですね。これからっていう時だったので。この馬にはいろいろなことを教えてもらったので、それを今後に活かしたいと思っています。
さらに去年は、兄である宮川浩一さんが騎手を引退して調教師に転身しました。
僕がデビューした時は兄貴はもうデビューしてましたし、ずっと調整ルームも2人部屋だったので、兄貴がいるのが当たり前の感覚だったんです。いつかは調教師になるんだろうなと思ってましたけど、想像より早かったですね。騎手を引退した時はそんなに実感沸かなかったんですけど、次の開催でルームに入った時、1人だったのがかなり淋しかったです。いつも2人でバカ話しながら寝ていたので。今はさすがに慣れましたし、これからは自分がサポートしていきたいなと思います。
宮川調教師は開業してすぐに初勝利(2/17第11Rサンハンプトン)を挙げました。妹尾浩一郎騎手が騎乗していましたが、ご自身が騎乗して初勝利を飾りたかったんじゃないですか?
あの馬は兄貴が騎手時代にずっと乗っていた馬で、一癖あるんですよね。僕も乗せてもらったことがあるんですけど、僕だと調教で引っ掛かってしまって......。騎乗の声は掛けてもらったんですけど、兄貴が引退してからは妹尾くんが調教でがんばっていたので、妹尾くんが乗って勝ってくれて僕も嬉しかったです。自分が乗っていたら、多分違う乗り方をしていたと思うので勝てなかったかもしれませんし。
相変わらず謙虚ですね。
いえいえ。でも兄貴には本当に世話になってきたので、恩返ししたいと思っています。僕がケガをして復帰は絶望的だって思っていた時も、ずっとそばで支えてくれて。兄貴がいたからこそ前向きになれたし、復帰できたんだと思います。だから、初勝利はできなかったけど、兄貴の馬で重賞を勝ちたいです! そういうところで返していきたいですね。
ケガのお話が出ましたけれど、2009年に落馬事故で左目失明という大きなケガでした。でも今の騎乗ぶりを見ていると、まったくハンデを感じないです。
そう言ってもらえると嬉しいです。自分の中ではいろいろな葛藤がありますけど、それを表には出したくないんですよ。単純に考えて左目失明しているというのは大きな違いなんですけど、でもそれを言い訳にはしたくない。騎手である以上、プロである以上、そこは自分で乗り越えて、周りには見せたくないって思っています。
では、今後の目標をお願いします。
数字的に言えば2000勝ですね。まだまだ遠いですが、このまま1つ1つ積み重ねていきたいです。所属の打越勇児先生は本当にがんばっていて、たくさんいい馬が入ってくるので、僕ももっとがんばらないと。それに、高知は今、永森(大智)くんと赤岡(修次)さんがずば抜けているので、もっと面白くするためには自分がそこに絡んでいかなければと思います。これからも応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋