2015年は自身初の50勝を挙げ、兵庫のトップ10入りを果たした竹村達也騎手。飛躍の要因、そしてこれからの目標をお聞きしました。
2015年は初の50勝を挙げて、大きく飛躍しましたね。
ありがとうございます。これまでは一昨年の29勝が最高だったので、自分としては30勝が目標でした。それを途中でクリアできたので、「次は40勝だ!」と思っていたら、50勝までいけて本当に嬉しいです。
成績が伸びた要因はなんですか?
具体的にコレというのはないですけど、一番は周りの方のサポートです。本当に感謝しています。強い馬、勝てる馬に乗せてもらいましたし、先行馬を揃えてもらったので積極的にレースに乗ることができました。これまでで最多勝、最多騎乗、最高連対と数字が上がって、本当にいい1年になりました。
去年はデビューから15年目でしたけれども、今まで培ってきたものが実を結んだという感じでしょうか。
そうですね。自分ではあんまり意識していなかったんですけど、これまでの経験が自然に勝負に活きてきたのかなと思います。でも兵庫は騎手の層が厚いですし、自分自身まだまだなんですよ。今年に入ってからも1月は良かったのに、2月は下降気味で......。まだ波が激しくて、それを自分でコントロールできないでいるのがもどかしいです。
馬に乗る時に大事にしていることはなんですか?
一番大事にしているのは、「出遅れない」ということです。自分で言うのも何なんですけど、スタートが一番得意で、周りからも先行馬を頼まれることが多いんです。でも、無理に出しているわけではないんですよ。もっと若い頃は「出して行こう」と思って、ゲートの中で馬を真正面に向けて、それで逆に躓いたりして出遅れることが多かったんです。でも今は、「五分に出ればいい」という気持ちで乗っているので、ゲートの中で馬の顔を軽く横に向けているんです。そうすると変な緊張感もないし、馬もリラックスしてくれて、スタートを切ることができるんです。
やはり小回りの地方競馬では、先行できることは大事ですよね。
かなり大事ですよ。まぁでも園田で逃げ切るというのも難しいんですけど。後ろからガンガン来られることもあるし、先行争いに巻き込まれることもあるし。でも、人気薄だとほっとかれてそのままってこともあったり。それに、園田の馬場は毎日傾向が違うので、その傾向を掴むのが難しいです。内を突いて伸びる時もあれば、内は絶対に開けないといけない時もあって。小回りの割に差しも決まるし、面白いコースだと思います。
竹村騎手はなぜ騎手になろうと思ったんですか?
親父が競馬ファンで、子供の頃からテレビでレースを見ていたんです。一番衝撃だったのは、ライスシャワーの宝塚記念。一瞬で命を落としてしまって、本当にショックでした。その頃から、「もしも自分が騎乗していたら」と想像するようになって、騎手ってかっこいいなと思うようになりました。
地方競馬教養センターの受験はすんなりと?
いえ、1年浪人しました。実は陸上で高校の推薦の話があって、ギリギリまでどっちの道に行こうか悩んでいたんです。中学3年の時に受けたJRAの試験に落ちてしまって、地方競馬の試験を受けようか、高校に進もうか迷いました。でも、兵庫の牧場で働けることになったので、「騎手の道を行こう」と。ただ、視力が足りないということで、レーザー手術を受けることになりました。当時は今のように手術が普及していなくて、未成年には手術はしていないということだったんですけど、「失明の補償はしない」ということを受け入れて手術してもらったんです。
試練を乗り越えてセンターに入所したんですね。
牧場で働いた時にホームシックになっていたので、センターでは大丈夫でした。もしセンターにすんなり入っていたら逃げ出していたかもしれません。1年遠回りしたけど、今は僕にとって必要な時間だったんだなと思います。
デビューしてから3年間は一桁勝利。なかなか厳しい現実でしたね。
僕がデビューした頃は黄金期で、岩田(康誠)騎手や小牧(太)騎手、赤木(高太郎)さん、平松(徳彦)さんもいましたから、今以上にチャンスはなかなかなかったです。一時期は精神的に追い詰められて、騎手を辞めようかなと思う時もあったんですけど、そうするとどうしても負のスパイラルでどんどんネガティブになってしまうので、発想を転換してなんでもポジティブに考えてみようと思いました。それでもなかなか上手くいかなかったけど、去年成績が上がったのは、これまで一生懸命やってきたからこそだと思っています。
竹村騎手といえば、リジョウクラウン(2010年園田プリンセスカップ、2011年若草賞)とのコンビの印象が強いです。
あの馬はデビュー前から乗せてもらって、最初は脚元が弱くて弱くて、厩務員さんと一緒に試行錯誤しながら調教していたんです。でもいつの間にか強くなってくれて、重賞も勝たせてくれて。あの馬にはレースだけじゃなく、上を目指す調教などいろいろなことを教えてもらいました。いつかまた、あんな馬に出会いたいですね。
では、今後の目標をお願いします。
今年も50勝を目指します。園田は上の層が厚いですが、毎日コツコツがんばって、少しずつでも上に行けるようがんばりますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋
今年デビュー41年目を迎えた名古屋の超ベテラン丹羽克輝騎手。長く騎手を続ける秘訣、そして、熱く燃え続ける闘志の源はどこにあるのでしょうか。
昨年はデビュー40年目の区切りの年でしたが、過去10年の中で一番の勝ち星(68勝)を挙げる活躍でしたね。何か秘訣があるんでしょうか?
恵まれたというのが一番です。僕は若い頃から不器用で、頭を下げればいいところで下げられなかったり、おべんちゃらを使ってまで乗りたくないと思っていて......。騎手としては損をする性格だったんです。周りにそう言われていたけど、でも性格を変えることがなかなかできなくて。そんな中でも乗せてくれる人たちがいて、与えられた仕事を精一杯やって来たことで今に繋がっているんだと思います。それに、僕自身も少しは丸くなったのかな。
今の温和そうな丹羽騎手を見ていると、そんなに尖っていた時代があったとは想像ができません。
もうね、かなり尖がってましたよ(笑)。亥年なのでイノシシのように猪突猛進というか、突っ走ってしまうんですよね。闘争心剥き出しでガンガン行ってました。自分でも損をするってわかってはいたんですけど、なんせイノシシですからそのまま突っ走って来ました。
今年デビュー41年目になりますが、本当に長い間突っ走って来ましたね。
そうですね。若い頃はここまで長く乗れるとは思っていなかったですよ。性格的になかなか上手くいかないことも多かったし、減量もかなりキツイですからね。
長く騎手を続けている方は減量がない人が多いですが、丹羽騎手は(3月16日で)57歳になる今でも減量しているんですか?
してますしてます。今は毎開催3キロは取ってますね。若い頃はまだ楽に落とせたんですけど、50歳に近づいてからはかなり落としづらくなりました。ジーっとサウナで汗取りしている時は、『俺は何をやってるんだろう......』と思うことも多いです。この年になってまでまだ辛い減量をしているわけですから。今はタバコも止めたし、体のことを考えて生活しています。
辞めたいと思ったことはないですか?
それはありますよ。若い頃から体重が重かったですから、デビューしてかなり早い時期に減量が苦しくなって、『もうダメかな......』と思った時期がありました。その時辞めなかったのは意地ですね。親の反対を押し切って中学卒業と同時にこの世界に入ったので、途中で辞めるわけにはいかないと。絶対にやり切ってやろうと思っていました。
ご両親は騎手になることに反対していたんですね。
そうなんですよ。僕は小さい頃から野球が好きで、中日ドラゴンズの選手になるんだってずっと思っていたんです。でも体が小さかったから、プロは厳しいだろうなと思っていた時にたまたま競馬を見て。そしたらものすごくカッコ良くて、もうこれしかないって思いました。ここまで長く続けてこられたのはやっぱり好きだからです。馬に乗って勝負をするのがとにかく好きなんです。
41年の騎手人生、振り返ってみるといかがですか?
まぁ辛いことの方が多かったですね。人間関係も難しいし、騎手同士は仲間でありライバルですから。本当にいろいろなことがありました。その中でたくさんの馬に出会って、たくさんの関係者に乗せてもらって。それで今の自分があるんだと思っています。周りの方々には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
兵庫の川原正一騎手とは同期ということですが、意識しますか?
すごいなとは思いますけど、自分は自分なので特に意識はしないです。この前名古屋に乗りに来た時に話したんですけど、『お前もがんばれよ』って言い合ったりしていい関係ですね。
では、今後の目標をお願いします。
一番はケガをしないことです。一度しかない人生なので、ガンガン進んで行きたいです。今名古屋は若手がすごく頑張っていますけど、まだまだ負ける気はないですね。体が悲鳴を上げて乗れなくなるまでは、精一杯がんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:浅野靖典)
2015年は113勝を挙げ、兵庫リーディング第5位となった大山真吾騎手。若手の代表格のような存在だった大山騎手も、今年デビュー14年目を迎えました。さらなる飛躍が期待される今、現在の心境をお聞きしました。
去年は113勝を挙げ、6年ぶりに100勝の大台を突破しましたね。
たくさんいい馬に乗せてもらったお蔭です。それに、木村(健)さんと(田中)学さんが休んでいたことも大きかったです。僕にいい馬が回って来ましたから。ただ、自分ではもう少し勝てたんじゃないかって思います。取りこぼしもあったし、全然満足はしていません。
特に去年の後半あたりから、兵庫を代表するような馬たちへの騎乗機会が増えたように思います。ご自身ではいかがですか?
そうですね。特にトーコーヴィーナスに乗せてもらえたのは大きかったです。夏を越えて休み明けから乗せてもらっているんですけど、毎日の調教からやらせてもらっているので思い入れも強いですね。けっこううるさい女の子で(苦笑)、キャンターに行くまでに止まってみたり、けっこう時間が掛かるんですよ。でも毎朝騎乗して意思の疎通はできていると思います。
ロジータ記念では、南関東の強豪を相手に2着に踏ん張りました。
休み明けを一度使って馬が良くなっていたので、勝負になるかなとは思っていたんです。ハナに行くつもりで押して行って、そこから少し競り込まれましたけど、それでもムキにならずに息を入れながら走らせることができました。それが最後の粘りに繋がったんだと思います。あの競馬ができたことは自信になりました。あの馬と一緒に、南関東の重賞を勝ちたいっていう気持ちが大きくなりましたね。
そして今年の新春賞では、1番人気エーシンクリアーの鞍上を任されました。こちらも兵庫を代表する1頭ですよね。
ここも2着だったんですよね......。勝ちたかったです。人気馬なので当然ですがマークも厳しくて、キツい展開になりました。途中から動かされましたけど、それでも58キロを背負って一番強い競馬だったと思います。負けたのは悔しいですけど、改めて強い馬だなと思いました。
大山騎手といえば若手の代表格のように感じていましたが、今年デビュー14年目を迎えるんですね。
早いですよね。僕はデビュー2年目から50勝させてもらって、本当に恵まれた環境の中で育って来ました。だからこそ、本当はもっと上に行かなきゃいけないんですけど......。ここ何年かは頭打ちというか、もどかしい感じが続いています。去年からいい流れが来ているので、今年は勝負の年だと思っています。
兵庫は上の層がかなり厚いですもんね。特にトップ3(川原正一騎手、木村健騎手、田中学騎手)の壁は大きいですか?
大きいですよ。でもだからと言って諦めてはダメなので、そこを突き破る気持ちでいます。僕ね、毎年川原さんに言われるんですよ。「お前に負けたら引退するわ」って。今は笑って言ってますけど、いつか本当にそういう存在にならなきゃいけないって思ってます。川原さんに引導を渡すつもりでがんばります!
大山騎手はいつも元気で明るいイメージですが、落ち込むこともあるんですか?
そりゃ落ち込むこともありますよ。でもあんまり引きずらないんですよね。パーっと飲んで終わりです(笑)。馬に乗るのが大好きだし、レースに乗るのがとにかく楽しくて。だから仕事しててストレスも感じないんです。周りからは、「だから風邪ひかないんだな」って言われますけど(笑)。
では、今後の目標を教えて下さい。
去年区切りの1000勝を達成することができたので、次の目標は2000勝です。デビューした時はまさか1000勝もできるなんて思っていなかったけど、関係者のみなさんやファンのみなさんのお蔭でここまで来ることができました。本当にありがとうございます。去年は重賞を勝つことができなかったので、今年は絶対に勝ちたいです。大きいところでしっかり結果を出していきたいですね。僕の狙い馬券ですか? やっぱり逃げ・先行だと思います。人気薄でも思い切って行くので、ぜひ注目して下さい!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:斎藤修)