今年度から、帯広競馬場内には騎手のリーディング表が数カ所に貼られるようになりました。現在のリーディングは西謙一騎手(28)。5年連続リーディングの鈴木恵介騎手を抜き、名騎手だった父・西弘美調教師とともにトップに立っています。20日には通算700勝を達成しました。
ついにリーディングジョッキーですね。
いい馬に乗っているから。自厩舎(西弘美厩舎)の調子もいい。3歳、4歳の若い馬が多く、この年齡は伸び盛りなら1年で10勝くらいするからね。障害のいい馬も多くて、乗りやすい。無理はさせずに間をあけて使っているのが、いい方向に出ているんだと思う。
厩舎には、青森の馬主さんの馬が多いですね。
出身は青森だけど、いたのは小学校までだから特に思い入れはないよ(笑)。青森は、最近馬を買う人が多いね。地元の草ばん馬に使っている馬が多くて、夏は草ばん馬に出て、シーズンが終わったら厩舎に戻ってくる。
さて、フジダイビクトリーで旭川記念を勝ちました。意外なことに重賞は2勝目なんですね。
3月から馬の厩舎が変わって乗ることになりました。思ったほどのスピード馬ではなかったけれど、やはり障害は上手。以前は障害を降りてから差されるパターンが多かったけれど、今は降りても歩くようになった。昔は行きたがっていたけれど、我慢できるようになったし。
旭川記念より馬場の重かった北斗賞(2着)でも思ったより歩けたから、重馬場でもOKだと思う。次の目標はばんえいグランプリ。夏だから暑さで弱らないように気をつけたい。体がある(大きな)馬でもないから、無理はさせない。体ができてからの馬だし、寒い時の方がいいかもしれない。ばんえい記念は、荷物に慣れてくれば楽しみだよ。
フジダイビクトリー。北斗賞は2着
ばんえい記念といえば、今年はフクドリで2着でした。
差せるかと思った(笑)。ばんえい記念は初挑戦の馬が結果を残しているから、インフィニティーは気にしていた。フクドリは、若い時はスピード馬だったけど、最近は(パワータイプに)変わってきたね。夏は弱いからここ最近はちょっと......。
最初のばんえい記念(2010年トモエパワー5着)の思い出はありますか。
1障害で止まるとは聞いていたんだけど、本当に止まった時はどうしようかと思った。ちょっとピークは過ぎていたからね。
ほかに、思い出の馬を教えて下さい。
初重賞(2009年銀河賞)を勝ったアカダケキング。2歳のテスト(能力検査)の時から手がけて、世話もしていた。真面目でおとなしかった。最後は喉鳴りがひどくてね、今年種馬になれてよかったわ。子どもも厩舎に入ってくるんじゃないかな。似るとしたら、スピード馬で、雨降り用(笑)。2歳の時は気性が荒かったから、そこが似ると大変だな。
ほかは、「ニシキ」の冠の馬。亡くなった仙頭オーナーによく乗せてもらった。ニシキダイジンは強かったね。特に、砂の中(砂の深いところ)が強い。
今後、期待している若馬はいますか。
2歳のコムギ。障害がうまいし、降りてからしっかりしている。2歳は牡馬で1頭抜けてるのがいるけど(センゴクエース)、牝馬の中に入ればいいんじゃないかな。
コムギと
フジダイビクトリーと同じ本別の本寺牧場生産の馬ですね。話は変わって、若手騎手が最近頑張っています。
もう自分は若手じゃないけど(笑)、みんな仲が良くて、楽しいよ。西将太、赤塚健仁あたりが中心になって、みんなでよくつるんでいる。遊びながらも、お互い負けないようにしている。
目標にする騎手はいますか。
鈴木恵介さんは駆け引きがうまい。後ろにいるな、と思っていたら前にいる。藤野(俊一)さんは息の入れ方と、障害がうまい。癖のある馬も上手。大河原(和雄)さんは2歳が上手。大河原さんがならしている服部厩舎の馬はみんな乗りやすいよ。レースを見て、参考にしている。
父親の西弘美調教師には何か言われますか。
最近は言われない。昔は、もっと手綱を短くしろ、とか、大きく見せないとだめだ、と言われた。手綱で叩くとき、客に背中が見えるくらいに、と。
西騎手の大きなアクションはかっこいいです。それは馬に見せるということですか。
いや、見栄え(笑)。客に見えるように、ってこと。
最近は来場者も多いですね。
人が多いね。人はいた方がいい。やる気になるし。家族連れも増えたし、本場で売れればもっとうれしいね。
今年の目標は、リーディングでしょうか。
2位も4位、5位も全部同じ。リーディングを意識したら、逆に焦って勝てなくなる。それで負けたら困るもの。こつこつやっていれば山になる。いっぺんにやっても無理だ。毎年の目標にしているのは100勝。目の前にあることを一つ一つ、だね。まず、BG1の勝利かな。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
今年4月にデビューした新人騎手は12名。その中でも順調に勝ち星を伸ばし、存在感を示しているのが金沢の中島龍也騎手。デビューしてから3カ月、明確な目標もできたようだ(インタビューは7月1日)。
4月にデビューして6月までで22勝。同期の中ではダントツの勝ち星です。特に1番人気馬では19回騎乗して、連対を外したのは1回だけです。
いや、まだぜんぜんですよ。(1番人気の連対率は)特に意識していなかったので、初めて知りました。一鞍一鞍がんばって乗るだけだと思っています。
では、まず騎手になったきっかけから教えてください。
小学6年か中学1年のころだったと思うんですけど、祖父が競馬が好きで、「運動神経も悪くないし、小さいんだから騎手でも目指してみたら」って。それまで競馬のことを意識はしてなかったんですけど、中学2年くらいから考えるようになって、そのうちに本気で目指すようになりました。中学を卒業して、茨城にある国際馬事学校に1年間行って、試験に受かって(地方競馬)教養センター入りました。
出身は千葉県ですよね。
千葉県の鎌ヶ谷市です。最初は船橋に所属したいと思っていたんですけど、教官に、「お前の人間性や技術じゃ通用しない」とか言われて迷っていました。そのうち、今所属している(金沢の)加藤和義先生が、調教師の試験を受けるための研修で3週間くらい教養センターにいらっしゃっていて、調教師試験に合格したらということで、先生から声をかけてもらいました。時期的にも1年の終わり頃で、どうしようかと思っていて、船橋だと乗り鞍に恵まれるかどうか不安だったので、それだったら金沢なら南関東より騎手の数も少ないし、乗せてもらえるんじゃないかということで金沢に決めました。
あらためて、ここまで22勝、勝率11.0%という成績はすばらしい。
(金沢では)新人が久しぶりということもあって、いろんな先生に乗せていただいてる感じで、乗り鞍には恵まれた中で、たまたま勝ててるのかなという感じです。でも乗っていて思うのは、やっぱり難しい。競馬はひとりでやってるわけじゃないので、まわりの騎手に気遣いながら乗るのが難しい。勝ち星なんて関係ないです。難しいに尽きますね。
1番人気や断然人気の馬でプレッシャーは感じますか。
そういう感じはないです。前の日に予想紙とかを見て、人気になっているときのほうがやっぱりやる気は出ます。印が付いてない馬よりは、印がついているほうがチャンスがあるってことですからね。
そういう意味では、わりといい馬に乗せてもらっていると。
「いい馬に乗りすぎてる」って加藤先生から言われます(笑)。
レースを見ていると、人気薄の馬に乗った時でも積極的に前に行こうとしているように見えます。
そうですね。やっぱりダート競馬ということと、減量のあるうちはそれを生かした騎乗もしないといけないんで。うしろのほうにいて、競馬を諦めてるんじゃないのかとか思われてマイナス評価になるんだったら、やっぱり前に行って負けたほうが悪い印象は与えないと思うので。とりあえず減量のあるうちは、減量を生かした積極的な騎乗を目指しています。
思い通りに乗れたレースはありますか。
10勝目のフレンドリーゼウスという馬で、それまで乗っていた藤田(弘治)さんから、「口が堅い」とか、「馬のうしろに入ったら掛かって乗り上げてしまうかもしれない」って言われていたので、内枠ということもあって、できれば前に行きたいと思って、いい感じに先行できたので、ペースを少し落として自分の有利なペースに持ち込んで。吉原(寛人)さんの馬がうしろから来てたんですけど、追い始めてムチを入れるとまた伸びてくれたので安心しました。
期待している馬はいますか。
3勝したグランラファルという馬と、4連勝したあと2着が続いてるんですけど、自分の厩舎で攻め馬からやらせていただいているトモヲエラババです。あと自分の初勝利で、2連勝したニシノオタフクですね。今ちょっと疲れてるんですけど、休んで調子を取り戻してくれたらまた勝ち負けになると思います。
デビュー前のインタビューでは、1年目の目標として減量がとれる30勝と言っていました。その目標はもうクリアできそうですね。
どうですかね、がんばりたいですけど。できれば(NARグランプリ)優秀新人騎手賞と、一番の目標は、プロスポーツ大賞の新人賞を狙いたいと思っています。(笹川)翼先輩(昨年のNARグランプリ優秀新人騎手賞)より上にいけばとれるのかなって。それを目指してやっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤修