昨年117勝を挙げ、高知リーディング4位だった宮川実騎手。さらにアドマイヤインディとのコンビで、ダートグレード戦線でもその存在感を示しています。落馬事故により左目失明という大きな怪我を負って、復帰が危ぶまれた時期もありました。辛い試練を乗り越えて、さらなる進化を遂げた宮川騎手に、現在の心境をお聞きしました。
赤見:『TCK女王盃』では、アドマイヤインディとのコンビで沸かせてくれましたね。
宮川:本当に頑張ってくれました。4着だったけど、僕の乗り方次第で2着3着はあったと思うんです。向正面から上がって行った時、別にGOサインを出したわけじゃないんですけど、ハミをくわえて、持ったまま上がって行く感じで。あのままの位置にいて、コーナーでゴチャつくよりはいいかなと思ったんですけど、もう1呼吸2呼吸我慢出来たら、違った結果になったんじゃないかな。もっと経験積んで、上手くなりたいって改めて思いました。
赤見:アドマイヤインディは、その前の『クイーン賞』でも3着と頑張りましたね。
宮川:あの時は斤量も軽かったし、内々をロスなく回って来れたので、あの3着が本当の力なのかちょっとわからない部分がありました。今回は斤量も増えたし、自分から動く強い内容で最後まで粘ってくれたので、ダートグレードでも十分戦えると自信になりました。
今は脚元の状態と相談しながら調教をつけているんですけど、それでこれだけ走れるので、状態さえ良くなったら本当に大きいところを狙えると思います。こういう馬に出会えて、調教からレースまで乗せてもらえて、今、本当に楽しいですね。
アドマイヤインディと(TCK女王盃パドック)
赤見:アドマイヤインディは打越勇児厩舎の馬ですが、宮川騎手はお父さんの打越初男元調教師の厩舎からデビューしたんですよね。
宮川:そうです。初男先生、勇児先生には親子2代に渡ってお世話になってます。勇児先生が厩務員だった頃からずっと一緒にやってますから、調教師になってからも話し合いながら一緒に馬を育てられるのが嬉しいです。
僕が怪我から復帰した時も、初戦は勇児先生が担当の馬でした。あの時は周りの方が応援の気持ちを込めてレースに協賛してくれて、復帰戦は『打越厩舎一同応援・復帰おめでとう!特別』というレースだったんです。僕自身がしたいことしてるだけなのに......。もしかしたら周りに迷惑をかけてしまうかもしれないのに...。本当に温かく迎えてくれて、すごく有難かったですね。
赤見:今のお話にもあったように、2009年の落馬事故は、顔面複雑骨折・左目失明という重傷でしたが、復帰までの道のりは相当大変だったんじゃないですか?
宮川:本当にそうですね。怪我をした週に、名古屋と園田に遠征が決まっていて、これから高知だけじゃないく県外に行って色々勉強出来ると思っていた矢先だったので、怪我をしてすぐはとにかく乗りたくて乗りたくて仕方なかったです。考える時間はいっぱいありましたから。乗りたい気持ちと、何も考えたくない気持ちと......。キツイなと思っても、どうしても考えてしまうんです。
でも、『引退』ということは全く考えなかったですね。レースに乗って、それで怖いと思ったら仕方ないけど、とにかくもう1度乗るまでは...って思ってました。
赤見:何度も何度も手術を重ねて、さらにハードなリハビリにも耐えて......。約1年後に復帰した時はどんな気持ちでした?
宮川:調教は3か月くらいで始めたんですけど、その後も手術で休んだりしたし、復帰の時は緊張しました。レースの前に模擬レースみたいなことをさせてもらって、それで復帰したんですけど、実際乗るまでは本当に乗れるのか不安でしたね。でもいざ騎乗したら、それまで10年間培ったものがあったのか体が反応してくれました。復帰2日目で勝ち星も挙げさせてもらったし、こんなに早く勝っていいのかなと思ったけど、1つ勝って自信になりました。
怪我をしたことは本当に辛かったですけど、周りのみんなに支えてもらってることを実感しました。特に兄(浩一騎手)はかなり心配してくれて......。今も調整ルームが同じ部屋で、長い時間一緒にいるので色んなことを話します。兄の存在は大きいですね。騎手としてはライバルでもあるけど、兄弟仲はいいですよ。
赤見:高知リーディングの赤岡修次騎手が、『もともと技術は高かったけど、怪我する前よりさらに上手くなった。積極的になった』って言ってましたよ。
宮川:修次さんにそう言ってもらえて嬉しいです。自分自身ではよくわかんないですけど。特に何が変わったというのはないです。ただ、乗れるのが本当に楽しくて。もっと上手くなりたい、上手くなりたいって思ってるだけです。
赤見:2010年に復帰して、2011年はダート競馬の祭典・JBC(大井)に騎乗、さらに2012年はダートグレードで好勝負と、どんどんステップアップしてますね!
宮川:本当に有難いです。JBCに乗れると聞いた時は、正直ビビりました(笑)。大井開催だったんですけど、当日はパドックで声援を送ってくれた方もいたし、馬場に入った瞬間ものすごく感動したんです。騎手やってて良かった、辞めなくて良かった...って。あの経験は、本当に大きかったですね。
最近ではアドマイヤインディと一緒にいい勝負をさせてもらって、また違った経験になりました。『TCK女王盃』であれだけの競馬が出来たので、『クイーン賞』がフロックじゃないって証明出来たと思います。今までは挑戦者の立場だったけど、これからはマークされることもあると思うし、印も重くなって人気も高くなると思うので責任重大ですね。楽しさと一緒に、緊張感もあります。ダートグレードで勝負になる馬に乗れるなんて、なかなかないですからね。いい馬に巡り合えて、本当に幸せです。
赤見:では、2013年の抱負とファンの方々にメッセージをお願いします!
宮川:復帰した頃は、いつか1000勝出来たらいいなと思ってたんですけど、今972勝(1月28日現在)まで来たので、だいぶ現実的な目標になりました。大きな節目の数字なので、早く達成したいです。ファンの方々には、いつも応援していただきありがとうございますと伝えたいですね。競馬場に来られなくても、今はインターネットで手軽にレースが見られるので、ぜひ高知競馬を楽しんでいただけたら嬉しいです。そのためにも、一生懸命頑張ります!
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋 (写真:斎藤修)