8月10日(日)のメインは、第33回ばんえい大賞典。ばんえい菊花賞(11月3日)、ばんえいダービー(12月28日)と続くばんえい3歳三冠の初戦で、三冠中で唯一、別定重量戦(残り二冠は定量戦)として行われます。400万円条件から120万円条件までの10頭が揃いましたが、メンバー的には、7月6日のとかちダービー(3歳オープン)出走馬が6頭を占めます。
注目は唯一の400万円条件馬であるオレワスゴイ。3月に定量戦で行われた重賞・イレネー記念では、第2障害を先頭で越えるとゴールまで一度も止まらずに逃げ切った実力馬です。その後行われた3歳オープン戦にはすべて不出走だったため、今回はイレネー記念以来の対戦となるメンバーがほとんど。しかも初経験となる最大40キロ差のトップハンデを課せられ、他馬との力関係がつかみにくいのですが、古馬中級条件戦のペースを経験している強みを買って中心視します。
これに続くのがとかちダービー1、2着のライデンロック、ウィナーナナ。そのレースは、ほぼ同時に先頭で障害をクリアした3頭による大接戦。ライデンロックが残り30メートルで抜け出すと、ゴール前で一度止まったものの後続を振り切って勝利。ゴール線上で詰ったカイセテンザンを、牝馬ウィナーナナが差し切って2着に入りました。
ライデンロックは、安定した先行力を武器に今季開幕から200万円未満と世代限定戦で9戦8連対と絶好調。ひと開催あけてここに臨んできたローテーションも好感触です。
一方のウィナーナナも、牝馬重賞・黒ユリ賞を含め目下8戦連続連対と地力強化をうかがわせる近況。障害巧者だけに、高重量戦は有利でしょう。
ほか、2歳時にヤングチャンピオンシップ勝ちがある実績馬ホクショウジャパン、大口泰史騎手に乗替わってからとかちダービー以外の5戦を全勝のカイセテンザンも上位圏内でしょう。
牝馬カネヅルは、追い込んで届かないレースが多いものの、馬場が極端に重くなるようなら上位食い込みも一考です。
出走表はこちら
【参考レース】
3/ 9 イレネー記念(勝ち馬:オレワスゴイ)
6/15 黒ユリ賞(2着馬:ウィナーナナ)
7/ 6 とかちダービー(勝ち馬:ライデンロック)
今週日曜(10日)のメインは、ばんえい3歳三冠の初戦・ばんえい大賞典。好調馬が集まり、熱戦が期待できるでしょう
8日(金)には、メイン第10レース・ゴールデンホース賞が全国55カ所で発売されます。そのうちのひとつスパーキングナイター開催中の川崎競馬場では、当日、『ばんえい十勝inスパーキングナイター』と題し、安部憲二、船山蔵人両騎手(予定)が騎乗してばん馬のソリ曳き実演を行うほか、矢野吉彦アナウンサーと競馬キャスター荘司典子さんのトークショー、ばん馬とのふれあいコーナーなど数多くのイベントが行われます。近くの方はぜひお立ち寄りください。
8月8日(金)のメイン第10レースはゴールデンホース賞(栗毛馬選抜 )。オープンから400万円条件までの10頭が揃いました。
ここは登坂力自慢のバンゼンに期待します。昨季は夏以降、おもに準オープンクラスで活躍し、今季は500万円条件で勝ち星こそないものの安定した成績を納めています。久々に馬場が乾きそうなのもプラスで、早め障害からの押し切りなるかに注目です。
相手筆頭は同じ500万円条件のイケダガッツ。テンに置かれることが多いタイプですが、先行勢のスピードが削がれる重馬場なら離されず追走できるはず。しぶとい末脚で逆転を狙います。
近走勝ち星がないキョウエイボーイや、ホクショウファイトも相手関係が楽になったことで巻き返したいところです。
8月9日(土)のメイン第11レースは北海道情報印刷文化典 十勝大会特別(500万円未満)。前開催の虹色特別(500万円未満)から8頭が出走しほぼ再戦となりました。
注目は調子を上げてきたトウリュウ。前々走の白夜賞(芦毛馬選抜)で14カ月半ぶりの勝利を飾り、このクラスへの昇級初戦となった前走虹色特別は、昨季、混合700万円未満戦で苦杯を喫してきた相手が多いメンバー構成でしたが、障害先頭クリアから少差4着に踏みとどまりました。今回は前走の勝ち馬不在のメンバー構成で、さらに得意の重馬場になりそうなのも心強いところです。
ライジングサン、ヒロノドラゴンら障害力があるタイプがやはり相手としても有力。混合500万円未満で2連勝して特別戦に復帰してきたストロングペガサス、実績上位のトカチタカラも争覇圏です。
8月10日(日)のメイン第11レースは重賞・第33回ばんえい大賞典(20:00発走予定)です。このレースは別掲のばんえい大賞典プレビューをご覧ください。
齋藤修さんが所有しているヤエ坊ことヤエノリュウを見せてもらいに谷あゆみ厩舎におじゃましました。谷さんが馬房からヤエ坊を連れてくると……「あれ? 谷さんもともと小さいけど、更に小さくなってない?」みたいな印象を受けました。
いや、谷さんが小さくなったのではなく、ヤエ坊がとても3歳とは思えないほど大きすぎるのです(^-^;;;;;;) 最初はそれほど大きい方ではなかったらしいけど、1年くらい前から急に背丈が伸び、手足も長くなって、胴体も長くなったそうです。
ヤエ坊は子供っぽくじゃれる仕草とは裏腹に、既に体重が1020kg弱もあります。単に1020kg弱といってもイメージがわかないと思うので、山崎がヤエ坊に乗っかってみました。山崎の身長は159cm、体重は45kg……いや、本当は50kgくらいありますが、足を思いっきり伸ばしても体の真ん中くらいまでしか届きません。800kgくらいの小柄なばんばだと、なんとかつま先がお腹のラインくらいまで届くのに、やっぱりでかいです。
天井の屋根に頭をゴツンしないことだけに気を取られて、乗った位置(バランス)が悪かったのか、それとも単に嫌われているのか、なんとなくヤエ坊が嫌がっているような表情に見えます(T_T) ごめんなさい。
だけど谷さんが近寄ると急変して嬉しそうな表情になります。やっぱりいつも一緒にいて世話をしてくれる飼い主にはかなわないなぁ〜(´・ω・`) 下の写真は一見、谷さんがヤエ坊に顔面を吸われているかのように見えますが、実は谷さんとキスをしているのです。なんでもヤエ坊はキスするのが好きらしく、谷厩舎にいるポニーのチャチャとも毎日のように“チュウチュウ”しているらしいのです。おませさんだなぁ〜。
このようなほのぼのとした光景を見ていると、山崎もばんばが欲しくなっちゃいます。ばんば自体は山崎でも無理すれば買えない金額ではないけれど、現在の賞金体系(下級条件は1着が10万円で3着までしか賞金が支給されない)を考えると、自分の馬が重賞でも勝ってくれない限り、毎日たまごかけご飯を食べることになりそうだから厳しいかなぁ〜。もうちょっとばんえい競馬が盛り上がって、賞金が高くなれば毎日たまごかけご飯を食べる覚悟を決めて、夢を見るのも悪くはないと思うのだけれど。
ちなみに私が谷厩舎に遊びに行ったその日(JRAジョッキーDay)、谷厩舎の看板馬の1頭であるホシマツリがこの日のメインレース(オープン)を勝ちました。山崎は自身自身を勝手に“勝利の女神”と呼び、「私と巡り合えた馬や人は近いうちに必ず勝てる」と吹いていては周囲からの顰蹙を買っているんだけど、どう考えたってホシマツリと谷さんをはじめとする厩舎スタッフさんたちの力ですね。同じ女性として谷あゆみさんにはこれからもずーっとがんばってもらいたいです(*^▽^*)
第8回 北の大地で見つけた天職 浅田達矢
今回は、7月21日に通算100勝達成。そして7月28日に結婚式を挙げた幸せいっぱいの浅田達矢騎手です。
--- 奈良(明日香村)出身ですよね。北海道に来られたきっかけを教えてください。読売新聞の記事によると、大学受験に失敗し続けて引きこもり状態だった時に、自転車で北海道に来たのがきっかけだとか。
新聞に出ていたとおりですよ。すごい偶然でこの世界に来れた。
関西にいたら、漠然とした北海道に対する憧れみたいのがある。見渡す限り向こうの方まで何もないとかね。
--- 北海道を一周したり?
途中までだったけどね。今考えたら、色々周っておいてよかったかもしれん。こうやって仕事してたら今じゃ周れないもん。
たまたま、川湯温泉のライダーハウスにいてた人が、お前も仕事せんかって。あとで来いよって言ってたんで行ったんすよ。その人はトンズラこいてオレしかいない(笑)。
そこは川湯の木彫り屋さんで牧場も持ってて。夏場は木彫り忙しかったから、牧場の方を手伝った。(社長も)昔旅してたりしたから、一緒に楽しみたいって感じみたいで。「ちょっといねえか」とかいってね。冬どんなもんかなーと思って全部で2年くらいおった。途中で帰ったりもしたから……いろいろ喧嘩したりね。
そして競馬場来た。ここいいなって思ってね。(社長に)ここで働きたいっていったらダメだ、話が違うって。確かにそうだよな。技術学んでもらうために競馬場に行ったのに、オレこっちがいいからって言ったら。ちょっとでも筋通ってなかったら嫌がる人だったね。
でもすごい巡り合わせがよかったと思う。その人に会わんかったら自分はだめやったし、その人いなかったら競馬場これなかったし。
--- 競馬場で騎手を見てこれだって思ったのでしょうか。
自分にぴったりかなって。背が高くて体重抑えれるし、競馬学校行く必要ないし。その時21歳くらいだったかな。騎手試験の年齢制限はないんですよね。
テスト(能力検査)の期間手伝ってたんですよ。ちょっと手伝って帰るつもりだったけど、久田厩舎行ったら社長が久田さんならいいよって。
騎手試験は2回目で受かったから2年ちょっとしか厩務員やってないんですよ。
--- 勝負服は黄色と黒でわかりやすいですよね。
皆着てないやつにしようって。黄色は(久田厩舎のカラーなので)入れとかなあかんし……。目立つのと、誰も使ってなかったから。3色とか入れてもね、目立たん人もいるし。わかりやすいのに。
うちの姉ちゃんなんか阪神タイガースのカラーかっていってたけど。ファンでもないんやけどね。一緒に野球してた子がね、関本(賢太郎・阪神)。一つ下でね、硬式野球、小学校でやってたの。
--- 関本! すごいですね。小学校から硬球を使っていたんですか?
結構あるの、向こうは。強かったすよ。日刊スポーツ大会とかでね、勝ってたから。全国優勝は小5の時。背は高かったかな。今? 180あるかないか……くらい。微妙なんですよ。昔は確実に180あったのに縮んでるんですよね(笑)。
--- 昔のケガの話を聞いていいでしょうか。レース中の事故で顎を骨折したのは2年前の岩見沢でしたよね。
ちょうど2年前ですね。7月10日あたりかな。
あんな程度ですんでよかったですもん。叩いた瞬間馬がケツ上げて。手綱が手首に巻きついて、そこに蹄が当たったから手は折れんかった。かばいきれんで、手首があごにぶつかった。でも蹄鉄が直接は当たらんかった。(手綱の)皮で助かった。起きたら? 次の日の朝だった(笑)。
隣の馬がスタート少し遅かったのね。(スタートが)同じ位だったら馬そりの下になってたかもしれん。
1カ月入院した。しょっちゅう逃げ出してね……。ひどいよ顎! ここってボルトつけれないから、ワイヤーで口閉じられて。しゃべれんし。
結構この世界ニアミス多いんだよね。蹴られても脚が体と腕の隙間に入ったりね。しょっちゅう。
怪我をしたときのスギノディアスに騎乗して1カ月後に復帰戦
--- 騎手は怖い商売ですね……。では、思い出に残る馬を教えてください。
オリーブヒメ。デビューした時乗せてもらった馬。色々と教えてもらった。それとね、今も乗せてもらってるシンエイスター。この2頭。
--- オリーブヒメは初勝利ではないですよね?
初勝利はマルニシュウカンですよ。2勝目もマルニシュウカン。騎手試験受かったのもマルニシュウカン。競馬場来て初めて担当したのもマルニシュウカン。
騎手試験は何頭かいて選べるんです。たまたまマルニシュウカンがいた。
--- マルニシュウカンとは縁があるのですね。マルニシュウカンはその後『雪に願うこと』の主役になりましたが、映画には出られたのでしょうか?
岩本利さん(利春調教師・元騎手)の勝負服着て最後の方にちょっと映った。俺、帰ってたからほとんど出れなかった。厩舎は大変やったみたいね。俺は最後の方でちょっと手伝っただけやもん。
シンエイスターは……オヤジが来たらいつも勝つんだよね。
オヤジ? まぁ昔やけどね、たまに来る。
--- ご両親は、ばん馬の世界に入ったことを驚かれたのではないですか?
どーやろね。騎手なったからなんも言わんけどね。入ったとき景気よかったから。騎手になれんかったら調教師でもいいかなって。馬主(免許)取ってくれたし。今は馬探しといてっていわれる。
--- 外からばんえいの世界に入って、どう思われましたか?
競馬場に手伝いに来た時、本当面白かったですね。
何もかもが面白かった。馬と触れ合ってるのもそうだし。本当ユニークやね。普通な人っていない。絶対普通っていない。普通な人はつとまらないって(笑)。
面白いね。俺と反対な性格っていうか。藤野さんとか安部さんでしょ。俺とは違った世界、逆な世界。だからそういうの逆に憧れちゃうんですよね。いいな、俺もああやって生きたいなって。
色々遊びに連れてってくれたし。その人らいなかったら今の嫁さんに会えなかった。
勝堤さんの2000勝祝賀会の2次会にも連れていってもらって、ヨメさんの勤めていた会社の社長と名刺交換したら次の日電話かかってきて、従業員と食事するからおいでって。そこでヨメさんに会ったの。
--- そうでしたか。新生ばんえいになって結婚される方が多いですよね。一緒に競馬場に住んでるんですか?
みんな子ども出来て(笑)。
実はオレもそうなんですよ。だから急いで式やったの。11月に産まれるんですよ。競馬場には来たり来なかったり。俺が調整ルーム行ってる時は実家。家が帯広なんでね。すぐ帰れる。オレ、帰るって言ってもすごい遠いしね。
でも、帯広一市になったおかげでこうやってヨメさんと結婚できた。
--- 浅田騎手もお子様が! おめでとうございます。ところで、趣味などはありますか?釣りをされる騎手が多いですが……。
趣味ですか? 釣りもゴルフも俺はしない。今は経済的な生活をしてる。今ね、乗ってもなかなかお金にならないから。(騎手より)収入多い厩務員もいる。でもまぁしゃあない。
--- それでは最後に、昔の浅田騎手のように将来について悩んでいる方に対して何かメッセージはありますか?
何をするにしてもね、外に出ないとだめやね。何のきっかけでもいいから。俺は体動かすの好きだから、いろんな所行きたいなって思って。何がきっかけになるかわかんないからね。
自分はかなりツイてる。悩むこともある。でも文句言えないっすよ。
10代の頃の生き方が浅田騎手とは似ているファンの方も多いのではないでしょうか。私もその点で浅田騎手には勝手に親しみを感じています。自分とは違ったばんえいの社会に魅力を感じたという浅田騎手の言葉に、大きく頷きながら話を聞いていました。
様々な悩みの中、人との出会いを素直に受け入れていった結果、ばんえいジョッキーという天職を見つけ、そして生涯の伴侶にも出会えたのでしょうね。結婚おめでとうございます。
取材・文・写真/斎藤友香