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馬券おやじは今日も行く(第47回) 古林英一

2008年7月10日(木)

走破時計を統計的に推測する

 北海道の夏は突然やってくるのである。本州以南が梅雨でジメジメムシムシしているというニュースを横目でみながら、われらが北海道では爽やかな涼しい日が続き、「いやあ、この季節はやっぱり北海道はいいねえ」なんぞといっていると、突然気温が急上昇。昨日まで22度とか23度とかいっていたのが、今日はいきなり30度なんぞということになる。徐々に気温が上がれば体も多少は慣れるのだが、体が慣れてないから、いきなり体に堪えるのである。

 夏が来ようと冬が来ようと、小生の馬券が当たらないのは同じ。季節も天気も無関係。いったいどうしたらよかろうかと思案投げ首の日々なのである。

 なぜ、馬券が当たらないのか? 理由を考えてみた。理由ははっきりしている。小生の予想が間違っているからである。問題はどこがどう間違っているかであるが、それがわかりゃ苦労はしない。こうなりゃ、ヘタな考え休むに似たり。小人閑居して不善を為す。自分で考えるのをやめることにした。

 馬の能力を客観的に推定することができないもんだろうか? ということで、遊び半分ちょいと数字をいじってみた。

 走破タイムを左右する要因を、馬の基礎能力、馬場水分、そしてばんえい重量の3つとして考えてみた。もちろん、他にも、騎手との相性だとか、その日の馬の気分だとか、天気だとか、たぶん色んな要因が働くことは確かだが、それらは一切無視して、基礎能力・馬場水分・ばんえい重量の3つでどのくらい走破タイムが決まるのかを考えてみた。

 今回使用したデータはホクショウジャパンとオレワスゴイの昨年度のデータである。なぜこの2頭を選んだかというと、同じ世代の2頭を比較した方が紛れがないような気がしただけである。

 次のようにごく簡単な数式をたててみた。

 走破タイム=基礎能力+a×馬場水分+b×ばんえい重量+c×馬体重の増加分

 馬体重の増加分というのはデビュー時の体重からどれだけ増えたかであり、成長途上の2歳ということを考えたからである。で、ホクショウジャパンとオレワスゴイのそれぞれについて、デビューから1年分のデータを使って、上の式のa、b、cを推定してみた(重回帰分析という手法である)。すると……

 ホクショウジャパンの場合は
   T=-110.01-7.56×M+0.48×L-0.41×W

 オレワスゴイの場合は
   T=-43.42-7.30×M+0.37×L-0.39×W

 という結果が出た(Mは馬場水分、Lはばんえい重量、Wはデビュー時からの体重増を示す)。統計学的な細かい話は省くが、この式の当たり具合(自由度修正済み決定係数という)は、ホクショウジャパンの場合80%くらい、オレワスゴイでは60%くらいである。つまり、オレワスゴイの方が、ここでとりあげた以外の要因に左右される割合が高いということである。

 今年のイレネー記念は馬場水分が0.8%で、ばんえい重量は670kg、そして、デビュー時からの体重増は、ホクショウジャパンが84kgの増加、オレワスゴイは110kgの増加であった。

 これらのデータをいれて、イレネー記念の走破タイムを推定すると、ホクショウジャパンが171秒、オレワスゴイが156秒という結果が出た。実際のイレネー記念では、ホクショウジャパンが第2障害を失敗してしまい惨敗し、オレワスゴイが154秒で優勝した。

 上の式によると、オレワスゴイの推定走破時計は156秒となる。実際のレースでは154秒であった。その差わずか2秒。結構いい線いっている。この推定式に従うと、仮に第2障害で失敗しなくても、ホクショウジャパンの推定走破時計は171秒で、オレワスゴイには届かないということになる。ホクショウジャパンは圧倒的1番人気だったが、推定式ではオレワスゴイの方が優秀だったということだ。

 うーん、これは使えるかも…(*^_^*) 今年年末のダービーではこのやり方で勝ち馬を推理し、皆様に公表するのでお楽しみに……って、暑い時期にクリスマスの約束してどうする!?

今週の見どころ(7/11〜7/13)

 7月11日(金)は、ラリー北海道・セレモニアルスタートが帯広競馬場で行われる関係で、発走時刻が、第1レースは13:45、最終でメインの第11レースが19:20に繰り上がっておりますのでご注意ください。
 またこの日は、笠松競馬場でばんえい競馬の場外発売(笠松競馬終了後にリレー発売)が行われます。その笠松競馬場では『ばんえい十勝in笠松競馬』として、ばん馬のデモンストレーション、ばん馬とのふれあいコーナー、ばん馬との綱引き大会、ばんえい場立ち予想会などさまざまなイベントが行われます。お近くの方はぜひお立ち寄りください。

 7月11日のメイン第11レースは芦毛馬選抜による第2回白夜賞19:20発走予定)。オープンから200万円条件までの9頭が集まりました。
 注目はオープンの牝馬2頭、ニシキユウフクイズミ
 このところめきめき力をつけているのがニシキユウ。牝馬重賞・カーネーションカップ(5月11日)では、同重量のフクイズミらを退けて優勝しています。その後はオープン一線級を相手に8、8、5着ですが、勝ち馬とは10秒差前後にまとめています。相手関係が楽になった今回、軽ハンデ馬との兼ね合いはありますが、すんなり先行できれば勝機もみえてきます。
 フクイズミは昨年のこのレースの覇者。前走の重賞・旭川記念では750キロを曳き2着に追い込んでいますが、障害にやや不安がある同馬にとって690キロに減量されるのはプラス材料です。実績的には最上位で、ニシキユウからあまり離されずに追走し、決め手比べに持ち込みたいところです。
 もしどちらかが障害に苦戦するようなら、昨年のこのレース2着のトウリュウ、前走400万円未満を快勝し勢いに乗るホワイトオーザンの食い込みがあるかもしれません。

 7月12日(土)のメイン第11レースは楽天競馬水・土・日1%還元特別(500万円未満)。前開催の同条件戦・ムーンライト特別は障害を先頭で越えたトカチタカラが2番手から追ってきたライジングサンとの大接戦を制しました。
 このクラスは毎回勝ち馬が変わる混戦ですが、今回中心視したいのはハマナカキング。5月4日の混合500万円未満は障害で体勢を崩し10着でしたが、その後は400万円未満、500万円未満で4戦2勝、2着1回と立て直してきました。昨季、オープン混合で勝ち負けしていた実力は折り紙つきで、ここも上位進出が期待できます。
 決め手上位のキョクシンオーアローコマンダー、今季この条件(混合戦含む)で6戦して3着以内4回と安定感あるコマタイショウ、先行力あるヒロノドラゴン、そして前開催を制したトカチタカラなど相手も多彩で、今回も好レースは必至です。

 7月13日(日)のメイン第11レースは北海道競馬記者クラブ特別(オープン)
 ここは前走旭川記念組が中心となりそう。そのレースは、持ち前の登坂力で障害をひと腰クリアのナリタボブサップがそのまま逃げ切り勝ち。残り30メートルで2番手に上がったマルミシュンキを中位から追い込んだフクイズミがゴール線上できっちり差し切って2着で、3着にマルミシュンキ、以下やや離されてミサイルテンリュウカネサブラックという着順でした。
 今回は2着のフクイズミが金曜の白夜賞にまわって不在だけに、ナリタボブサップマルミシュンキによる一騎打ちが濃厚でしょう。
 一角崩し候補も、ミサイルテンリュウカネサブラックら旭川記念上位馬に絞られそうです。
 一発がありそうなのはヤマノミント。近2走のオープンは9、10着ですが、3走前のオープンではナリタボブサップマルミシュンキから少差の3着に入っています。スピードならオープン一線級相手でも通用するものを持っており、障害さえまともなら差のない競馬ができるはずです。

 この日の第6レースに2歳A-1戦が組まれています。 ここ2回の2歳A-1戦はともにホクショウバンク、タワノアヤカによる決着でしたが、今回はタワノアヤカが回避。収得賞金の関係でホクショウバンクは5キロ増となりますが、他馬との実力差を考えても不安はなく相手探しの一戦でしょう。ライトアームキンノカミが2着候補です。

ばんえいジョッキーファイル(6) 村上章

2008年7月 3日(木)

第6回 マイペースな愛されキャラ 村上章

 6回目は村上章騎手です。

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 オレの、簡単にしといて。

--- ダメです(笑)。騎手になられたきっかけを教えてください。ご出身は気仙沼(宮城県)ですね。

 うん、小さい頃からうちに馬がいて、ばん馬の騎手に憧れたんだ。ばん馬大会にも出た。
 気仙沼では、俺が小さい時はばん馬大会やっていたらしいけど俺は知らない。
 高校は行けって言われて、高校卒業してから(ばん馬の世界に)入った。高校は行っただけだ(笑)。
 安部さん(憲二騎手)の紹介で尾ケ瀬厩舎に入ったんだ。
 勝負服?適当に…(笑) 尾ケ瀬厩舎はたいてい勝負服が緑だったんで、これになったんだ。

--- 思い出の馬はいますか?

 全部思い出に残ってるから……1頭っていうのはないなぁ。

--- 私はメジロショウリキのイメージがあるのですが。

 メジロショウリキもその中の1頭だね。

--- ほとんど村上騎手が乗っていますが、リーディングジョッキー競走は抽選ですから藤本匠騎手が乗ったことがありましたよね。どう思いましたか? 悔しいとか?

 いや、そんなことない。
 オレしか乗ってないから、匠さんどんな乗り方するか結構勉強したよ。

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メジロショウリキ

--- 目標にされている騎手はいますか?

 ええ? 言わないとだめ?(笑)
 ……(鈴木)勝堤騎手。どんな馬でも障害うまくあげてくる。常にいいレースしてるよね。負けても勝ってもいいレースしてるから。
 自分は先行好きなんだけど、馬だし、そればっかりやってもね。その辺上手なのは勝堤騎手だよね。
 レース見てるんだけどなかなかね。勉強してるんだけどうまくいかないっていうか。ビデオも結構みるし、直接聞いたりするんだけど。

--- 砂が変わった影響はありますか?

 砂? 重いと思ったけど、思ったより軽いな。

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--- 村上さんは装鞍所で馬に馬具をつけている姿を見かけるような気がします。なにか理由はあるのですか?

 ハハハ、まぁ一応ね。自分がかけなかったらなんか落ち着かなくて。何でも自分でやらないと気がすまない性格なんだな。
 厩務員作業好きだよ。厩務員やったのは5年くらいかな。
 調教は自分の厩舎(鈴木邦哉厩舎)の馬をやってる。厩務員作業もやる。

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メジロショウリキと

--- 休みの日はどうしていますか?

 厩舎にいるよ。厩舎作業あるし。別にどこに行くでもなく、のんびりしてる。

--- お子様がいらっしゃいますよね。友人のお子さんが、村上騎手に遊んでもらってからファンになったそうです。子ども好きですか?

 フフフ、こどもに好かれてます。うちは小2と5歳。

--- 同世代の親子連れに何かアドバイスはありますか?

 子どもと遊びながら、馬券100円でも200円でも買ってくれたら。
 自分が買うとしたら? いやーどうだろうな。色々と考えるな。
 馬から買う。乗り替わりとか騎手も見るかな。荷物とか馬場も見る。あとメンバーだな……。

--- ところで村上騎手は、パドックでファンのほうを見ていることが多いですよね?

 え? ……お客さん入ってるかなって。

--- 本当ですか? 誰か探しているのではないですか(笑)。

 いや、違うよ(笑)。お客さん数えてるの。

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見てる見てる!

--- ファンといえば、幕がありますよね。

 幕は馬主さんが作ってくれた。(その馬主さんの馬に)乗ってはないけど知ってて。

--- それでは最後に一言お願いします。

 マイペースで行きます(笑)。

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 自分の乗った馬を全頭平等に考えている村上騎手。優しいのでしょうね。
 俺アピール下手だし……とインタビューも照れていました。カメラを向けると「いいって!いいって!」と隠れるので面白くて?思わずたくさん写真を撮って遊んでしまいました。
 そのようなキャラクターが、幕も用意してくれる方がいることでわかるように多くの方に好かれているのだと思います。
 パドックでは確実にファンのほうを見ているので、チェックしてみてください。

取材・文・写真/斎藤友香

今週の見どころ(7/4〜7/6)

 今週より帯広競馬場内に、昨年も好評だったばんえい十勝ビアガーデンがオープンします。生ビールとジンギスカンを味わいながらレース観戦などいかがでしょうか?
 さて福山競馬場では、6日(日)にばんえい競馬の場外発売(※福山競馬開催終了後にリレー発売)が、そして7日(月)には地方全国交流重賞・オッズパークグランプリ2008が行われます。それらを記念して、福山競馬場では、5日(土)〜7日の3日間、『ばんえい十勝in福山競馬』として様々なイベントが行われます。ばん馬によるそり実演や、ばん馬との記念撮影、ばん馬とのふれあいコーナー、ばんえい競馬トークショーなども予定されていますので、お近くの方はぜひ足をお運びください。

 7月4日(金)のメイン第11レースは文月特別(400万円未満)
 前開催のエルム特別(400万円未満)は、先頭で障害をクリアしたイッスンボウシとこれに続いたグレートサンデー、人気を集めたこの2頭が残り30メートルから一騎打ちを展開。残り10メートルでクビほど前に出たグレートサンデーがその差を最後まで守り抜きました。そのレースの再戦模様の今回も両馬の中心は揺るがないでしょう。
 怖いのは前開催は世代限定オープン戦に出走していた4歳馬2頭。
 コーネルフジは5月16日のばんえい青葉特別(400万円未満)で、僅差3着に入った実績があります。
 プリンセスモモは400万円条件に昇級初戦だった2開催前(6月13日)の士幌高原特別は、追走に手一杯で8着(2番人気)でしたが、クラス2走目の今回はペースにも慣れ変わり身に期待できます。コーネルフジとは世代限定戦で好勝負していた実績も心強いところです。
 なにがなんでも行きたい馬もおらず、レースの流れは落ち着きそう。決め手比べになれば、キングファラオシンザンウィークらの台頭もありそうです。

 7月5日(土)のメイン第11レースは七夕特別(オープン)
 6頭が2開催前の涼風特別(オープン)に出走していました。注目は今回のメンバー中、そこで最先着の2着だったホクショウダイヤ。今季は初戦のばんえい十勝オッズパーク杯4着をはじめ、オープン一線級に混じって、豪快な末脚を武器に勝ち馬とそれほど差のない戦いを繰り広げています。前開催のせせらぎ特別(オープン)は離された9着でしたが、第2障害で転倒してしまったため参考外。今回は巻き返しに期待できるでしょう。
 相手は、せせらぎ特別で3、4着のツジノコウフクニシキセンプーが有力。旭川記念では惨敗しましたが、相手関係が楽になったことでトモエパワーにもチャンスがありそうです。

 7月6日(日)のメイン第11レースは第2回とかちダービー(3歳オープン)。200万円条件が650キロ、120万円条件が640キロ(牝馬20キロ減)で8頭が出走します。
 注目は、昨年12月のヤングチャンピオンを制しているホクショウジャパン。そのレースでは最大35キロ差のトップハンデをものともせず、今回も出走しているウィナーナナニシキボスリードムサシライデンロックらを退けました。その後の別定戦ではハンデとの戦いが続き、定量戦の重賞・イレネー記念(3月9日)では第2障害で転倒してしまうなどもあり勝ち星から遠ざかっています。今回は、ヤングチャンピオン以降では、(イレネー記念を除き)他馬との最大ハンデ差がもっとも少なくなっており、巻き返しに期待。8月10日に行われる3歳三冠の初戦・ばんえい大賞典に向けて沽券を示しておきたいところです。
 相手は、3歳牝馬三冠の初戦・黒ユリ賞(6月15日)で2着のウィナーナナや、3月23日の若草特別(3歳オープン)勝ちのあるライデンロック、イレネー記念2着のニシキボスらが有力でしょう。

やっぱり馬が好き(第49回) 旋丸 巴

2008年6月26日(木)

旬の人、旬の馬

 トートツですが、竹ヶ原茉耶騎手の最近の活躍ってば、凄いよね〜。

 6月15日現在で、騎手ランキングは勝率で5位、連対率に至っては、松田道明、藤本匠に続く3位! 尾ヶ瀬、藤野、鈴木勝堤といった名手を抑えての、このランキングは「凄い!」の一言に尽きる。

 今春から、我らが谷厩舎に移籍した彼女を応援し続けて来た私だけど、一流騎手に伍してのこの活躍。私のお財布にも暖かい風を送り込んでくれるから、茉耶ちゃん素敵〜! 愛してる〜。

 因みに、茉耶ちゃんは、学生時代、柔道の選手として名を轟かせたとか。だから、運動神経も勝負根性も抜群なんだろう。

 というような茉耶ちゃん情報は、しかし、きっと近々、斎藤友香さんが騎手ファイルで紹介してくれるだろうから、これくらいにしておくけれど、最後にサービスとして麻耶ちゃんの「極秘情報」をば。

 あのね、茉耶ちゃんって、凄くプロホーションがいいんですよ〜。勝負服を着ているとコロッとして可愛い体型に見える彼女。だけど、実は、物凄くウエストが細いんですよ〜。数年前、某パーティーでスーツを着ている茉耶ちゃんを見て、そのスタイルの良さにビックリ。レースでは大柄な男性に伍して勝負に生きる彼女も、日常は、やっぱり可愛くもキュートな女性なのね、と、納得したのである。

     *     *     *

 さて、旬な人、を紹介した次は、いよいよ「旬な馬」の登場。

 今年の2歳馬は、なかなか個性的と言うか、今後の活躍出来る馬達が揃って、誠に楽しみ。

 能試1番時計のホクショウバンクや、牝馬とは思えぬ雄大な馬体で他馬を圧倒するタワノアヤカなどなど、どの馬も将来が嘱望されるけれど、そんな中で、私が、今、とっても注目しているのがアオノレクサス。

 能試ではホワイトアウトという名前で登場し、好時計をマーク。その後、アオノレクサスと改名。5月4日のデビュー戦、25日の2戦目、と共に他馬を圧倒する快勝劇で2歳馬のエリートロードに乗った、とは、読者各位もご存知の通り。

 血統的にも、全兄に準オープンのエビスオニワカ、叔母には、あの! 現役最強牝馬のフクイズミを持つ一流血統馬……という訳で、注目を集める大器アオノレクサスなのだけど、実は、私、この馬をデビュー前から知っているのである。初めてこの馬に会ったのは昨年11月、同馬の生産牧場である佐々木牧場に取材に行った時のことである。と言っても、この馬を取材に行った訳ではない。

 お笑いコンビ「タカ アンド トシ」が命名した「ドオーダッシュ」の取材に佐々木牧場を訪れたのだが、温厚で人懐っこいドオーダッシュの顔を撫で撫でしつつ担当の方の話を聞いていたら、その後ろを、どどどどど〜!っと駆け回る芦毛が1頭。今、右から左へ鹿毛の馬を追いまわして行ったと思ったら、今度は、左から右へ栗毛を追いかけて……と、取材の間中、地響きを立てつつ走り回り、他馬にケンカを売って遊んでいる。その、呆れるほど騒々しい姿を見て、「あの馬は?」と担当者氏に尋ねたら、

 「あれね、エビスオニワカの全弟」

 闘争心を最大の武器とするエビスタイショウ産駒であれば、この騒々しさも納得。と、何気なく写真を1枚撮った。それが他ならぬアオノレクサスだったのである。

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牧場時代のアオノレクサス

 とは言え、その後は、この馬のことなど、すっかり忘れて……。次に、この馬のことを思い出したのが、能力試験の日。

 好タイムを出した芦毛の生産者名を見れば、佐々木牧場。血統を見れば……

 「あ、これ、あの時、騒ぎまくってた芦毛だ!」

 あのヤンチャ坊主が、実に立派に成長した訳で、なおかつ、その生産者が日頃親しくしている佐々木牧場生産馬。ということで、何となく嬉しくなって、以降、私は、この馬を応援しているのだけれど、この馬もまた、前述、茉耶ちゃん同様、私の財布に温風を送ってくれるから、だーい好き!

 と喜びはしゃいで、しかし、ここに、この馬の活躍を見るたびに悔し涙に暮れている殿方が1名。その人こそ、誰あろう、本ブログ執筆者にして経済学博士・古林英一大先生なのである。じゃじゃ〜ん!

 どーして、アオノレクサスが活躍したら、先生が泣いてしまうのか? 実は先生、この馬の馬主になり損なわれたのである。

 前述の通り、レクサスの生産者は佐々木牧場。佐々木さんと古林先生は大の仲良し。なので、昨年はミヤビライコウを共同で所有されたのだが、今年も、お二人で新馬を1頭共有しようということになった。そこで、共有馬が何頭かリストアップされたのだけど、その候補馬の中にアオノレクサスの名もあったのだそうな。しかし、「この馬は、そんなに走らんだろう」という佐々木さんの判断で、他の馬主さんに売却。古林先生は他の馬を持たれたのだが……。

 河童の川流れ、猿も木から落ちる。大生産者として名を馳せる佐々木さんも、時に馬を見誤ることがあって、それが、たまたまアオノレクサスだったわけで、

 「あんなに走ると思わんかったな。一度は肉市場に出そうかと思ったくらいなんだけど」と、この馬の活躍には驚愕する佐々木さんが、空を見上げて続けて曰く「古林先生に、これくらい走る馬、持たせてやりたかったなぁ」

 因みに、古林先生が所有された馬は未だ……いやいや、みなまで言うまい。

 そんなアオノレクサスだから、是非にも、このまま連勝街道を走り続けて欲しいのである。勝って勝って、古林先生の悔し涙が枯れるまで勝ちまくれ〜!

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