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馬券おやじは今日も行く(第47回) 古林英一

走破時計を統計的に推測する

 北海道の夏は突然やってくるのである。本州以南が梅雨でジメジメムシムシしているというニュースを横目でみながら、われらが北海道では爽やかな涼しい日が続き、「いやあ、この季節はやっぱり北海道はいいねえ」なんぞといっていると、突然気温が急上昇。昨日まで22度とか23度とかいっていたのが、今日はいきなり30度なんぞということになる。徐々に気温が上がれば体も多少は慣れるのだが、体が慣れてないから、いきなり体に堪えるのである。

 夏が来ようと冬が来ようと、小生の馬券が当たらないのは同じ。季節も天気も無関係。いったいどうしたらよかろうかと思案投げ首の日々なのである。

 なぜ、馬券が当たらないのか? 理由を考えてみた。理由ははっきりしている。小生の予想が間違っているからである。問題はどこがどう間違っているかであるが、それがわかりゃ苦労はしない。こうなりゃ、ヘタな考え休むに似たり。小人閑居して不善を為す。自分で考えるのをやめることにした。

 馬の能力を客観的に推定することができないもんだろうか? ということで、遊び半分ちょいと数字をいじってみた。

 走破タイムを左右する要因を、馬の基礎能力、馬場水分、そしてばんえい重量の3つとして考えてみた。もちろん、他にも、騎手との相性だとか、その日の馬の気分だとか、天気だとか、たぶん色んな要因が働くことは確かだが、それらは一切無視して、基礎能力・馬場水分・ばんえい重量の3つでどのくらい走破タイムが決まるのかを考えてみた。

 今回使用したデータはホクショウジャパンとオレワスゴイの昨年度のデータである。なぜこの2頭を選んだかというと、同じ世代の2頭を比較した方が紛れがないような気がしただけである。

 次のようにごく簡単な数式をたててみた。

 走破タイム=基礎能力+a×馬場水分+b×ばんえい重量+c×馬体重の増加分

 馬体重の増加分というのはデビュー時の体重からどれだけ増えたかであり、成長途上の2歳ということを考えたからである。で、ホクショウジャパンとオレワスゴイのそれぞれについて、デビューから1年分のデータを使って、上の式のa、b、cを推定してみた(重回帰分析という手法である)。すると……

 ホクショウジャパンの場合は
   T=-110.01-7.56×M+0.48×L-0.41×W

 オレワスゴイの場合は
   T=-43.42-7.30×M+0.37×L-0.39×W

 という結果が出た(Mは馬場水分、Lはばんえい重量、Wはデビュー時からの体重増を示す)。統計学的な細かい話は省くが、この式の当たり具合(自由度修正済み決定係数という)は、ホクショウジャパンの場合80%くらい、オレワスゴイでは60%くらいである。つまり、オレワスゴイの方が、ここでとりあげた以外の要因に左右される割合が高いということである。

 今年のイレネー記念は馬場水分が0.8%で、ばんえい重量は670kg、そして、デビュー時からの体重増は、ホクショウジャパンが84kgの増加、オレワスゴイは110kgの増加であった。

 これらのデータをいれて、イレネー記念の走破タイムを推定すると、ホクショウジャパンが171秒、オレワスゴイが156秒という結果が出た。実際のイレネー記念では、ホクショウジャパンが第2障害を失敗してしまい惨敗し、オレワスゴイが154秒で優勝した。

 上の式によると、オレワスゴイの推定走破時計は156秒となる。実際のレースでは154秒であった。その差わずか2秒。結構いい線いっている。この推定式に従うと、仮に第2障害で失敗しなくても、ホクショウジャパンの推定走破時計は171秒で、オレワスゴイには届かないということになる。ホクショウジャパンは圧倒的1番人気だったが、推定式ではオレワスゴイの方が優秀だったということだ。

 うーん、これは使えるかも…(*^_^*) 今年年末のダービーではこのやり方で勝ち馬を推理し、皆様に公表するのでお楽しみに……って、暑い時期にクリスマスの約束してどうする!?

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