北見名物「ばんば焼き」
ばんえい競馬が存亡の危機に瀕している!
本欄読者なら、もう充分ご承知だろうが、ばんえい競馬は累積赤字の増大を理由に廃止が検討されている。そして、既に先月には旭川と北見の撤退が決定していて、これに岩見沢の撤廃が決れば、我らが、ばんえい競馬は消滅する。
となれば、ばんえい競馬は他の地方競馬と違って受け皿がないからのないから、スーパーペガサスもミサキスーパーも、愛しのアンローズも、どこにも行き先はない訳で……!
そんなことにならないために、ここは是非にも皆さんのお力を借りたいのである。ばんえい競馬を愛する読者各位が声を合わせて、ばんえい存続を訴えて欲しい。あの力強く優しい馬達のために、どーか、どーか、よろしくお願いするのである。
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上記のようなことを、ここだけではなく、最近の私は、あちこちに書き散らし、加えて、知り合いのマスコミにも訴えているのだけれど、そんなことばかりしていたら鬱々として来たから、30日には憂さ晴らしに遊びに出かけた。行き先は……勿論、ばんえい! 前述の如く撤退、廃止が確実な北見競馬場を今のうちに徹底的に楽しんでおこう、という次第で、そうと決れば、このところの憂鬱など忘れて、勇躍、北見に出発進行!
私の日頃の行いの良さ故か、雲ひとつない晴天に恵まれて、当日は爽快至極な競馬日和。
「北見のコースは、ゴール前が上りになってるでしょ。だから、パワフルなペル系が力を発揮するはず。今日は、芦毛か青毛の馬で勝負!」と、同行した夫と娘に上機嫌で宣言なんかしたりして、北見競馬場まで片道3時間半の道程もアッという間。
さて、いよいよ、北見での競馬参戦と相成ったのだけれど……。
実に私の狙い通り芦毛と青毛の馬が大活躍……なんて、現実は、そうシンプルではなくて、なぜか栗毛の馬が圧勝したりなんぞするから、私は敗戦に次ぐ敗戦。ついに10連敗を記録して、馬券においては散々な一日となりにけり。
ではあるけれど、馬券で負けたって、薄い財布がますます薄くなったって、やっぱり競馬は楽しい。暖かい秋陽の下でピカピカに光る馬達のお尻を眺めたり、谷厩舎2頭出しのレースで「あわや親子丼」というシーンに狂喜したり、BANBA王に出演していた矢野さんに手を振って丸無視されたり、と、ミニサイズの北見競馬場を縦横無尽に駆け巡って、その楽しさを堪能した。
そんな中で、読者諸氏に、いの一番でご紹介したいのは「ばんば焼き」。皆さんは、ご存知ですか? これなるお菓子を。
「なーんだ、馬の話じゃなくて、お菓子の話か」なんて馬鹿にしちゃダメですよ。何しろ、この「ばんば焼き」、ただの今川焼き、つまり、どら焼きの親戚みたいな焼きまんじゅう。ではあるけれど、フカフカの皮に可愛い「輓馬」が刻印されている、これがミソ! ここに、ちょっとピンボケだけど写真を添付したから、よくご覧いただきたい。どうです、馬具をつけた「ばんえい競走馬」の姿が可愛いでしょ? 斬新でしょ? あっ、ただし、ばんば焼きには、あんこ入りとクリーム入りの2種類があって、馬が刻印されているのは、あんこ入りだけ。クリーム入りの方は何の模様も入っていないから要注意。
さて、しかし、ばんば焼きの魅力は、それだけじゃない。1個100円の、このばんば焼き。5個買うと特製の箱に入れてくれて、これまた馬が印刷されているから、マニアならずとも顔がほころぶ。「甘味本命」なんて記されているのも、また競馬場らしくて実に味わい深いし。
考えてみると、昨今は競馬場名物っていうのが少なくなって、まして持ち帰りの出来る名物なんていうと、ばんえいに限らず全国の競馬場でもあまりお目にかかれない。ばんば焼きは、そんな稀少な競馬場名物なんである。
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山に囲まれた小さな競馬場で、ほかほかのばんば焼きを食べながら馬を見ていると、本当に、しみじみと、ばんえい競馬の楽しさ良さが体に染み込んで来て、頭の中が痺れるような心持になって来た。そして、この感覚に身を任せていると、また体の違うところから、ふつふつと湧き上がって来たのは……
「こんな幸せな空間を消滅させちゃダメ~ッ!」って気持ち。
しつこいようだけど、皆さん、ばんえい存続のために、ご理解とご協力を。みんなの力で、ばんえいを守りましょうよ、ねっ!