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今週の見どころ(6/12~6/14)

2010年6月11日(金)

 今週の3日間でデー開催は一旦終了。6月19日(土)から10月11日(月)までの51日間はナイターで競馬が行われます。
 なお今週より、第2障害の高さがこれまでより5センチ高い160センチに変更となります。ばんえいの見どころである第2障害での攻防がさらに楽しみになりそうです。

 6月12日(土)のメイン第11レースは層雲峡特別(オープン・A1級混合-2組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分は、オープン5頭、400万円未満3頭、320万円未満2頭です。
 オープン(重量区分)組が有利でしょう。なかでも前々走のオープン-2組特別で2着に好走したウメノタイショウが中心。フクイズミの決め手に屈しましたが、この馬も最後までしっかり伸びており、状態のよさを感じさせました。オープン-1組との混合だった前走は7着でしたが、再び相手関係が楽になる今回、巻き返し必至でしょう。
 これに続くのが障害巧者の2頭。ホクトキングは今季未勝利ですが、今年3月にはオープン特別で優勝とここに入れば実績上位の存在。アローファイターもやや精彩を欠いている近況ですが、相手関係的には一変があっても不思議ではありません。
 10キロ軽い400万円未満(重量区分)勢では、ハマナカキングに期待。このところ特別戦で結果が出ていないのは気になりますが、オープン馬相手でも通用するスピードを持っています。

 6月13日(日)のメイン第11レースはシルバーカップ(オープン・A1級混合-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分は、オープン2頭、400万円未満3頭、320万円未満5頭です。
 好調馬が揃い混戦模様ですが、マルミシュンキに期待します。前走のオープン-1組特別は6着。第2障害でのロスが響き、末脚を伸ばしたものの3着争いに加わるのがやっとでした。しかし、生涯56戦で前走を含め掲示板を外したのが3回だけという安定感からすれば2戦続けての凡走は考えられません。しかも今回はほとんどが格下だけに主役の座は譲れないところでしょう。
 ナカゼンスピードは前走A1級-1・2組決勝での10着大敗が気になります。しかし、地力がついた今なら、昔のようにズルズルと悪いサイクルにハマることはなさそう。ばんえい十勝オッズパーク杯を制した実力を示しそうです。
 別定5キロ増になってから踏ん張れませんが、ヤマノミントも相手関係的に勝ち負けが期待できます。
 ナカゼンスピードと同じ前走の勝ち馬トカチタカラや、A1級で2連勝中のホシマツリらもハンデ差を生かして、上位食い込みが期待できそうです。

  6月14日(月)のメイン第11レースは天人峡特別(A2級-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分は、320万円未満1頭、250万円未満9頭です。
 前開催のA2級-1・2組決勝特別で2着惜敗のクロフネオーザンに、軽ハンデの4歳馬2頭フクドリジャングルソングが挑みます。
 クロフネオーザンの前走は、障害巧者らしい安心して見ていられる内容でしたが、10キロ軽いベニインパクトにゴール前で差し切られました。しかし、今回はハンデ差が5キロに縮まることから逆転Vが当然視野に入ります。
 4歳両馬は前走で同じ4歳オープン特別を使われ、フクドリは早めに先頭に立ち押し切って1着。目下4戦連続連対の勢いに乗りたいところです。一方のジャングルソングは前走では1番人気に推されましたが10着と惨敗。近2走崩れている障害が立て直されてくれば能力的に十分勝ち負けになるはずです。
 クロフネオーザンと同じ前走で3着のコーネルも、気分良くレースに臨めれば差のないところでしょう。

ばんえい名馬ファイル(2) キヨヒメ

2010年6月10日(木)

ばんえい史上屈指の女傑 キヨヒメ

kiyohime.JPG

 「今度こそ」

 昭和63年、3歳能力試験の朝。

 キヨヒメニセイの関係者たちの意気込みは、相当なものがあった。3歳能力試験は年に5回行われるが、その日が最終日であり、今回合格しなければ、競走馬としての資格は無く、レースにも出走できないわけである。その前年もキヨヒメの初仔が不合格となり、その熱の入り方もひとしおであった。

 そのキヨヒメニセイであるが、芦毛の牝馬で父に昭和55年度『農林水産大臣賞典(※1)』馬ダイケツ、母にその大臣賞を三度制覇した女傑キヨヒメと、輝かしい経歴の両親を持った良血馬である。当時のスポーツ紙でも取り上げられ、その年の能力試験の話題の中心であった。しかし四度の能力試験挑戦も不合格となり、今回が背水の陣である。古くからばんえい界には『現役時代に活躍した牝馬からは良い仔が産まれない』というジンクスがあり、このジンクスは関係者の脳裏にもわずかながらでもあったかもしれない。

 スタート。金山明彦騎手が必死に気合を入れるが、関係者の「今年こそ」の願いも届かず、この良血馬は二度と本走路を走ることはなかった。十歳の定年まで牝馬が高重量を引き、戦い抜くのである。その全能力を競走で燃焼し尽くしたのであろう。

 母としてその名を残すことができなかった女傑キヨヒメは、道東の紋別町で生まれた。3歳デビュー当時から障害巧者と呼ばれ、その競走歴は『岩見沢記念』、昭和54年(旭川)・56年(帯広)・57年(北見)と『農林水産大臣賞典』を3回優勝。3回優勝はのちにキンタロー、フクイチが達成するが(※2)、当時は現在のように冬期開催は実施されておらず、砂の深い旭川、北見と雪の上で行われスピード化している現在の帯広の大臣賞とは評価が違ってくる。女傑と呼ばれるにふさわしい大記録である。

 初の大臣賞優勝は6歳の秋、旭川競馬場だった。当時騎手としてキヨヒメに騎乗していた山田勇作調教師は、「出走が決まった日に林調教師にいちばん最初に言われたのが『大事に乗ってくれ』だったんです。牝馬ですからね。結果は楽勝でしたけど、やはり心配だったんでしょう。強くて、障害だけは絶対に心配ない馬でした。あの大臣賞は今でもはっきり憶えていますよ。勝った翌年から私は同厩舎のハヤホマレに騎乗したのですが、私の騎手生活で大臣賞は3回優勝しましたが、キヨヒメが現役最後の大臣賞馬ですからね」

 「2分36秒8」

 林正男調教師にキヨヒメの話を聞こうと練習走路に会いに行った時のことである。「先生、キヨヒメの話なんですが」の問いかけに、「2分36秒8で勝ったんだよ」

 昭和54年、20年以上も前の話である。

 驚くと同時に熱いものを感じさせられた。「山田騎手に大事に乗ってくれと頼んだのはね、当時は今と違って牝馬優遇の20キロ減量制がなくて10キロだけだったんですよ。6歳の若馬でそれも牝馬で990キロは極量ですよ。そりゃあ、出走させるには馬主さんともずいぶん話し合って決めましたよ。高重量を若馬に経験させると、その後のレースにどうしても悪影響が出ることが多いんです。どうしても障害で止まってしまうとかね。勝てるなんて思ってはいなかったが、恥ずかしいレースだけは絶対しない自信はありましたよ。それに牝馬限定戦では比較的活躍できなかったが、牡馬との追い比べになると本当に強かったね。ばんえいの調教師になったからには誰でも一度は夢見る大臣賞の表彰台に四度も立たせてもらったんですからね。本当にキヨヒメとダイケツは忘れられない馬ですよ」

 ばんえい競馬は、指定馬制度を採用してレースが行われている。自分で乗り馬を選ぶことのできる騎手とは違い、レースの選択権のない調教師に大記録が生まれた。平成10年11月30日の帯広競馬場、4歳馬シャリアヤメで開業21年目にしてばんえい史上初の1000勝を達成した林正男調教師。現在(※3)ばんえい調騎会会長である。

文/小寺雄司

(馬齢は当時の旧年齢で表記)
※1:現・ばんえい記念
※2:その後、スーパーペガサスが4連覇、トモエパワーが3連覇を達成
※3:1999年当時

キヨヒメ
1974年4月10日生 重系 牝 芦毛
父 ペル・楓朝
母 重系・豊栄
母の父 重系・蘭月
北海道紋別郡興部町生産
競走成績/168戦20勝(1976~83年)
収得賞金/87,992,000円
主な勝鞍/79年農林水産大臣賞典(旭川)、81年岩見沢記念(岩見沢)、農林水産大臣賞典(帯広)、82年農林水産大臣賞典(北見)

月刊「ハロン」1999年8月号より再掲

今週の見どころ(6/5~6/7)

2010年6月 4日(金)

 5月29日(土)の第9レースで船山蔵人騎手(26歳・鈴木邦哉厩舎)が勝利し、通算100勝を達成しました。07年1月の初騎乗以来、通算50勝までは約1年半(08年6月)で到達。それ以降は減量がなくなりましたが、着実に勝ち星を積み重ね、デビューから約3年5カ月、1274戦目で区切りの勝利となりました。ばんえいの現役騎手では2人だけの左利き(もうひとりは大口泰史騎手)という個性を生かし、さらなる活躍を期待したいところです。

 6月5日(土)のメイン第11レースは幌尻岳特別(A2級-1・2組決勝・17:15発走予定)。5月29日第10レース(A2級-2組)、5月30日第9レース(A2級-1組)の上位馬による一戦です。出走馬の重量区分は、320万円未満1頭、250万円未満9頭となっています。
 30日第9レースは、エメラルド(今回は不出走)が逃げ切って圧勝しましたが、3頭による2着争いは大接戦でした。3着ブランドボーイは今季すでに3勝と絶好調、今回は強烈な先行馬が不在で、この馬がハナを奪えそうなのが好材料。同2着コーネルも前々走でオープン選抜混合勝ちがあり、好調度では負けていません。同4着クロフネオーザンは障害巧者で、前述2頭との負担重量差が前走より有利になっています。
 29日第10レース組では、勝ち馬マタキテネに注目。前回のA2級-1・2組決勝特別(5月22日)では僅差3着に入っており、決め手では上位の存在です。同じ前走で3着のハマカツも争覇圏でしょう。

 6月6日(日)のメイン第11レースはライラック賞(4歳オープン・17:15発走予定)。5月29日に行われた4歳オープンの再戦ですが、今回は基礎重量が重くなっています。
 ジャングルソングは前走4歳オープンで6着。昨季終盤から世代限定戦では4戦3勝、2着1回と好調だっただけに、断然人気に推されましたが、第2障害でのロスが響いた格好。しかし勝ったコマクインとは4秒1差で、実績的に十分巻き返しが可能でしょう。
 前走もトップハンデながら3着に追い込んだのがキタノタイショウ。ためて第2障害をひと腰でクリアと、世代上位の障害力をみせつけました。基礎重量が増える今回は勝利まで望めそうです。
 前走最軽量で逃げ切ったコマクインは今回も負担重量に恵まれました。しかし、5月2日の4歳オープン特別では、ジャングルソング(1着)、アアモンドヤマト(2着)らと激しい先手争いを演じて6着。スムーズに行けないとモロさを見せるため、基礎重量が増えるここでは全幅の信頼は置けません。
 前走を含め3戦連続2着のフクドリも勢いからは侮れない存在です。

  6月7日(月)のメイン第11レースは神威岳特別(B1級-1・2組決勝・17:15発走予定)。5月29日第12レース(B1級-2組)、5月30日第12レース(B1級-1組)の上位馬による一戦です。出走馬の重量区分はすべて250万円未満です。
 実績で勝る30日第12レース組が中心でしょう。なかでも2着トウリュウが筆頭格。キングファラオとの決め手勝負に負けましたが、障害力を生かすこの馬らしいレースぶりでした。
 逆に、勝ったキングファラオは見習い騎手起用の10キロ減に恵まれた感じ。障害には不安を抱えているだけに、前走からの負担重量増はどうかといったところです。
 前回のB1級-1・2組決勝特別(5月24日)1、2着のカップオー(30日第12レース6着)、キョウエイボーイ(同3着)も差はありません。
 

今週の見どころ(5/29~5/31)

2010年5月28日(金)

 今シーズンから、ばんえい競馬の過去の名馬をピックアップするコラム「ばんえい名馬ファイル」がスタートしました。第1回はキンタローです。月に1頭ずつ更新していきますので、お楽しみに。


 5月30日(日)には、ギャンブラークイン(牝9、大友栄人厩舎)の引退式(第3レース終了後・13:00ころから、帯広競馬場パドック付近にて)が行われます。通算37勝のうち、重賞での勝ち星は05年クインカップでのひとつだけでしたが、同世代の牝馬フクイズミ、エンジュオウカンらと若駒時代からしのぎを削ってきました。29日(土)のメイン・十勝岳特別が最後の出走で、今後は繁殖入りする予定となっています。

 5月29日(土)のメイン第11レースには十勝岳特別(オープン-2組・17:15発走予定)が行われます。出走馬の重量区分はすべてオープンです。
 今季初出走のフクイズミに注目します。昨季は帯広記念など重賞3勝を挙げ、初挑戦のばんえい記念でも4着に追い込んだ実績馬。9歳になっても決め手に衰えはなく、オープン-2組のメンバー相手なら、取りこぼしは許されません。
 相手筆頭はウメノタイショウでしょう。開幕週の重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯で一線級古馬相手に6着に健闘し、前開催のさつき特別(オープン-2組)では、今回のメンバー中最先着の3着の実績があります。早めに第2障害で仕掛けて、フクイズミにプレッシャーを与えたいところです。
 キンセイモンはさつき特別で9着に敗れましたが、障害さえまともなら力差はありません。

 5月30日(日)のメイン第11レースは大雪賞(オープン-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分はすべてオープンです。
 前開催の桃酔特別(オープン-1組)で今季初勝利を挙げたナリタボブサップに引き続き期待します。前走は二枚腰を発揮し、ほぼ同時に第2障害を越えたマルミシュンキをゴール前で引き離す快勝でした。今回は、出走9頭中7頭が前走と同じメンバーだけに、連勝の可能性十分でしょう。
 強敵は別路線組のライデンロック。前走はオープン-2組特別で、逃げ切って圧勝しています。こちらもナリタボブサップと同様、スピードと障害力で勝負するタイプです。
 前述2頭はレースぶりが一本調子なところがあり、展開待ちの面も。その点、どんな流れでも力を発揮できるマルミシュンキがまとめて負かす場面もありそうです。
 ホクトキングは桃酔特別3着など、このところ走りが安定しています。前走のゴールドトロフィーは9着でしたが、トップハンデだっただけに参考外。今回は自己条件で、大崩れは考えられません。

  5月31日(月)のメイン第11レースは士幌高原特別(A1級-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分は400万円未満4頭、320万円未満6頭です。
 ここはナカゼンスピードに期待します。今季開幕から4戦して、障害に手間取った前々走のスーパートレーナー賞(オールカマー)8着以外はすべて勝利しています。今回と同じ別定10キロ増で、3走前・若葉特別でA1級-1組特別はすでに勝利しており、引き続き好勝負できそうです。
 若葉特別4着で、前開催のA1級-1・2組決勝特別を制した障害巧者のイッスンボウシや、別定5キロ増は課題もスーパートレーナー賞2着の牝馬エンジュオウカンら400万円未満(重量区分)が有力でしょう。
 320万円未満(重量区分)勢では、ミノルタイソンに注目。若葉特別3着で、目下A2級で2連勝と勢いに乗っています。

ばんえい名馬ファイル(1) キンタロー

史上初の1億円馬 キンタロー

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 「まだまだ走れる」。昭和61年12月14日、北見競馬場第9レース。この日を最後に競走生活から引退する10歳馬のレース、蛍の光賞が行われた。

 スタンドを埋めているファンの大半は、大外枠10コース、スタンドからいちばん近くに見える史上初の1億円馬キンタローの最後の勇姿をと、身動きできないほどの入りである。前週12月7日、ここ北見コースで3度目の農林水産大臣賞典馬となり、獲得賞金で重量が決定する番組編成上、最軽量馬のヤシタフジ他が800キロに対しキンタローが870キロと上下70キロのハンデである。昭和54年のデビューからコンビを組んでいた尾ケ瀬富雄騎手が調教師となり、その後61年春から騎乗している金山明彦騎手と、ハンデの発表を見てから蛍の光賞に出走させるかどうかはかなり悩んでいたという。

 関係者の多くは70キロのハンデがあるのではいくらなんでもキンタローといえども勝ち目はない、と思っていた。70キロのハンデは昭和49年、金山騎手が騎乗し怪物と呼ばれたハクリュウが3歳時に勝って以来のハンデ差で、当時これが最初で最後だろうと言われたものである。力量差のある3歳馬ならともかく、古馬のオープン戦である。ファンの多くは、「1トンを超える馬だもの。10キロや20キロなんかあまり気にすることないよ」と思っている人がまだまだ少なくない。でもその10キロが勝負を左右する。ゴール前10メートルでその差が微妙に出る。それがばんえいの面白さなのである。

 大臣賞典直後の尾ケ瀬富雄調教師のコメントで「70キロのハンデ差は確かにきついが、それ以上にこの時計の速い馬場状態の方が展開的に苦しいね。大臣賞典を最後に引退というのがいちばんかもしれないが、今、本当に体調がいいんですよ。走れる限り走らせてあげようと思っているんですよ」と話してくれた。

 着差1秒1。

 ゴール前、久田守騎手のアサヒダケを金山騎手が必死で追うが、半馬身届かず2着。馬道を厩務員に引かれてくる1027キロ青毛の馬体を見送りながら多くの人から出た言葉が、「さすがキンタロー、まだまだ走れる」であった。

 キンタローのように強い馬を、第2のキンタローを俺の手で、というのが厩舎関係者の目標である。

 3~4歳時のキンタローは無冠で終わっている。3歳の能力テスト前から、関係者の間では注目されていたが、感冒のため体調を崩していた。同期のマルトダンサーが後年3000勝ジョッキーとなる金山騎手とコンビを組み、3歳時ナナカマド賞他、4歳時にはダービー、菊花賞、大賞典と3冠馬となり、華々しい活躍の陰でじっと体調の回復を待った。

 その素質が開花するのは、北見競馬場で行われた第4回地方競馬全国協会会長賞(5歳オープン)である。1番人気のマルトダンサーを破り、初の重賞勝ちとなる。のちに1億円馬となるまでの活躍は、農林水産大臣賞典3回、岩見沢記念3回、旭シルバーカップ3回など重賞14勝。この記録は通算獲得賞金1億624万5000円とともに未だ破られてはいない。その後、平成10年度のフクイチまで6頭の1億円馬が誕生するが(※1)、昭和50年当時の賞金は大臣賞典750万円、開催日数17開催102日。現在の25開催130日(※2)など諸事情を考えると、ばんえい最強と呼ぶにふさわしい馬であることは間違いない。

 38秒9、帯広競馬場、水分9.9%、平成4年キタノテイオー。6分10秒6、旭川競馬場、昭和44年ハルトカチ。ばんえいレコードである。両方とも直線200メートルの最小、最多要タイムである。この時計の差がばんえい競馬の奥の深さを示す。

 旭川・岩見沢・帯広・北見と現在4市で行われているが(※3)、各競馬場には砂の深さ、障害の型、その他微妙に変化も持たせている。名馬と呼ばれる馬となるにはスピード、力、登坂力、最後に闘争力。その中のひとつでも欠けていては、砂塵の舞う8月の旭川、雪の中の帯広では通用しない。バランス良くそれらの要素を兼ね備えた馬づくりに関係者は今も、第2のキンタローをと、朝夕の調教に汗を流している。

文/小寺雄司

(馬齢は当時の旧年齢で表記)
※1:その後、スーパーペガサスも1億円馬に
※2:1999年当時
※3:平成19(2007)年より帯広単独開催

キンタロー
1977年生 ペル系 牡 青毛
父 ペル・二世ロッシーニ
母 ペル系・宝玉
母の父 ペル・威鏡
北海道別海町・粂川一郎氏生産
競走成績/102戦32勝
収得賞金/116,725,000円
主な勝鞍/82年岩見沢記念(岩見沢)、83年旭王冠賞(旭川)、農林水産大臣賞典(帯広)、84年旭シルバーカップ(旭川)、85年旭シルバーカップ(旭川)、岩見沢記念(岩見沢)、農林水産大臣賞典(帯広)、86年岩見沢記念(岩見沢)、農林水産大臣賞典(帯広)、旭シルバーカップ(旭川)


月刊「ハロン」1999年6月号より再掲

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