千葉博次きゅう舎所属の木村暁(さとし)騎手が12月1日に調教師免許を取得。それに伴い、11月30日をもって騎手を引退する。同騎手は2002年4月20日デビューし、7戦目(4月29日)、ロイヤルエリートで初勝利。また昨年5月8日、ヴァケーションに騎乗してシアンモア記念を優勝。初重賞を獲得した。
ラストライド(最後の騎乗)は11月28日、第12R「夢・希望 未来へ前進」(B2級四組)エイシンヌチマシヌ。5番人気に支持され、後方待機策から渾身の追い込みに賭けたが、善戦及ばず6着。しかし3着以下は0秒1差。横一線でゴールし、馬券対象にはあと一押しだった。
調教師免許の合格後の木村暁騎手インタビューを紹介したい(IBC岩手放送 競馬中継より)。
木村騎手「初挑戦でまさか合格するとは思っていませんでした。毎日多くの時間を使って勉強しましたが、集中してできました。一次試験が競馬法でしたから、難しかったですね。この世界に入ったら仕事を全うしたかったので、いずれ調教師になりたいと思っていました」
―今回、調教師試験を受けようと決めたのは?
「今年春、先生(千葉博次調教師)から打診を受けたので、それならば受けてみようと。免許交付は12月1日ですが、準備に結構、時間がかかります。ですから3月の春競馬開幕から開業したいと思っています」
―どんな調教師になりたいですか
「関係者、ファンから愛されるきゅう舎作りが第一。そして強い馬を育てて岩手競馬を盛り上げたいと思っています。騎手引退は後ろ髪を引かれるところがありますが、前に進むしかない。これから忙しい日々が続くと思います」
木村暁騎手の引退セレモニーは12月3日(日)、最終12R(発走:16時30分)「第22回トウケイニセイ記念」の表彰式終了後。20年余りの騎手生活にピリオドを打つ木村騎手にエールを送ってほしい。
今週の岩手競馬
12月3日(日) メイン12R 「第22回トウケイニセイ記念」(水沢1600m)
12月4日(月) メイン12R 「スプリント特別」(オープン 水沢850m)
12月5日(火) メイン12R 「師走特別」(A級一組 水沢1600m)
文/松尾庫司
先週21日(火)で今季の盛岡競馬は全日程が終了した。シーズンフィナーレを飾った重賞は岩手競馬のロンゲスト・レース「第45回北上川大賞典」(盛岡ダート2600m)。
1番人気は一昨年2着、昨年3着レールガン、2番人気に支持されたのは芝2400m交流・せきれい賞2着ゴールドギアだったが、優勝は5番人気ノーブルサターン。最内1番枠を引き当て、先手を主張。あとはマイペースに持ち込んで鮮やかな逃げ切りを決めた。
高松亮騎手「行く馬が不在だったし、盛岡だとゲートがいい。それに内枠も引いたので、逃げようと思った。最初はある程度、流れを速くしてからペースを落としたが、2、3番手につけた馬が控えてくれたので競馬がしやすくなった。ペースがペースだったから、どこかで動く馬がいるだろうとは思っていたが、残り400mでゴーサインを出したら反応してくれたので、これなら大丈夫だと思った。北上川大賞典は勝ちたい重賞の一つでしたから、とてもうれしい。今回は休み明けを叩いて状態も上がっていたので、冬の大一番に向けていい結果を出せたと思う」
板垣吉則調教師「7月から秋田の牧場に移動して完全休養させた。なので復帰戦は体重が減っていてもあまり気にならなかったし、ひと叩きされた今回はいい感じで仕上がったと思う。自分のイメージでは530キロ台がベスト。今日ぐらいがちょうどいいと思っている。今後の予定は状態を見ながらだが、昨年と同じくトウケイニセイ記念、桐花賞を考えている」
ノーブルサターンは昨年12月に南関東から転入。いきなり重賞・トウケイニセイ記念、桐花賞と2連勝を飾ってシーズンを終了。今季は休み明け2戦目のシアンモア記念を快勝し、健在を誇示した。以降は一條記念みちのく大賞典7着、マーキュリーカップ10着から休養。復帰戦5着を叩いて反応が一変した。
今シーズンのオープン戦線は勝ち馬が次々と替わり、混とん状態ままで12月を迎えたが、ノーブルサターンは今度でビッグレース2勝目。古馬陣では一歩リードした印象。それでも年度代表馬の座は桐花賞までもつれるのは確実。
現時点での候補馬は一條記念みちのく大賞典を圧勝したヴァケーション、フェアリーカップ、青藍賞圧勝で復活を遂げたゴールデンヒーラーは29日、JpnIII・クイーン賞(船橋)も重要レースとなった。
そしてダイヤモンドカップ、東北優駿(岩手ダービー)、ひまわり賞(オークス)、OROオータムティアラと牡牝馬クラシック四冠を獲得したミニアチュール。ロジータ記念は善戦及ばずブービーに敗れたが、桐花賞へ駒を進める可能性は相当高く、大みそかの恒例行事・桐花賞が年度代表馬に直結する一戦となった。
今週の岩手競馬
26日 メイン12R 「ひいらぎ賞」(B1級 水沢1400m)
27日 メイン12R 「太夫黒特別」(2歳 水沢1600m)
28日 メイン12R 「夢・希望 未来へ前進」(B2級四組 水沢1600m)
文/松尾庫司
先週5日(日)、盛岡ダート1200mを舞台に今シーズン最後の短距離重賞「第13回絆カップ」が行われ、キラットダイヤが圧勝。早池峰スーパースプリントに続いて絆カップ3連覇の偉業を達成した。
レースはカタナが好スタートを決めたが、キラットダイヤは手綱をしごいて先手を主張。ゲートから100mあたりでハナを奪うとあとはマイペース。快調に飛ばして2着トーセンキャロルに6馬身差をつけ、鮮やかな逃げ切りを決めた。
鈴木祐騎手「スタッフがしっかり仕上げてくれたと思います。返し馬でも背中の感じがすごく良かったので、自信を持って臨むことができた。ゲートを出てからの一歩目二歩目は速くないので、行き切るまで少し時間がかかったが、今回もスピードに乗ってからがすばらしい。あとは馬の邪魔をしないよう、ナチュラルに動かしていった。4コーナーを過ぎても反応が良かったので、勝利を確信した。今回で重賞10勝目ですか。乗り始めて3年目になりましたが、ボク自身を成長させてくれた馬でした。印象に残るレースは今年の岩鷲賞。トーセンキャロルの脚がすばらしかったので負けても仕方ないと思ったが、まさかの3着。非常にショックを受けましたが、きっちりお返しできた。キラットダイヤはポテンシャルが高く、とても強い馬だと思います」
板垣吉則調教師「いつもどおりだけど、スピードに乗るまでかかるが、先頭に立ってからは安心して見ていられた。アクシデントもなく、調整も予定どおり。前回(ヴィーナススプリント)よりさらに状態が上がっていたから、納得の結果。あくまでも予定ですが、今日のレースで引退します。キラットダイヤは体もいいですし、スピードがすばらしい。いいお母さんになってほしいですし、いい仔を生んでほしいと思っています」
コメントにもあったとおり、あくまでも予定だが、キラットダイヤは絆カップで現役にピリオド。繁殖生活に入る。実はヴィーナススプリント後にも板垣吉則調教師がほのめかしていたが、6歳で引退は時期的にもベストだと思う。これも憶測になるが、3年連続で最優秀短距離馬に選ばれる可能性が高く、繁殖牝馬としての価値はさらに上がるのは確実だ。
血統的にも非常に魅力的だ。父がサウスヴィグラス、母父がハーツクライ。母方の3代父がサンデーサイレンスだが、どんな種牡馬ともほぼ配合できるのが強味。キラットダイヤは今回の勝利で短距離重賞10勝目をマークし、仔どもにも豊かなスピードを伝えるに違いない。諸事情により現役続行の可能性がない訳ではないが、まずはお疲れ様と伝えたい。
追記・11月9日、「道営記念」へスポット参戦した山本聡哉騎手は落馬のアクシデントに巻き込まれて打撲、挫傷したが、12日から始まる岩手競馬で騎乗する。落馬の影響は少なくないに違いないが、責任感を優先。頭が下がるばかりだ。
今週の岩手競馬
11月12日(日) 「第50回南部駒賞」(2歳・地方競馬全国交流 盛岡ダート1600m)。
11月13日(月) 「ノベンバーカップ」(B2級 盛岡ダート1400m)
11月14日(火) 「フレンドリーカップ・カシオペア賞」(JRA1勝クラス 岩手B1級以下 盛岡ダート1600m)
文/松尾康司
8月25日(金)、村上昌幸元調教師が逝去された。70歳だった。村上昌幸さんは1970年、父親でもある村上初男(故人)きゅう舎から騎手デビュー。3年目の1972年、187勝をマークしてリーディングジョッキーの座を獲得。これは菅原勲元騎手(現調教師)に破られるまで29年間にわたって岩手最多勝記録だった。
以降、1981年まで10年連続でリーディングジョッキーに君臨。10年連続の記録は現在も岩手競馬記録として残っている。1987年に騎手引退するまで岩手通算1783勝。この数字にばらつきがあるのはデビュー当時、浦和競馬に修行。昔、本人にも確認したが、何勝かしたとコメント。ひとまず公式に沿って1783勝を今回は記した。
1988年からきゅう舎を開業。今年3月19日(日)、調教師通算1500勝を達成。騎手、調教師で1500勝以上は村上昌幸さん一人のみ。岩手競馬の多大な貢献を果たし続けてきた。
騎手時代、人は"天才"と称したが、実際は努力の人。人一倍研究熱心だった。かつて雑誌テシオで取材をお願いした時、「当時のリーディングジョッキーだった(小西)重征さんにしつこいほど話を聞いたし、いろいろ技術を盗んだ。浦和へ行ったのも騎乗技術をあげるため。その頃は他場で騎乗できるチャンスはほとんどなかった」と。村上昌幸さんは我々のヒーローでした。ありがとうございました。安らかにお眠りください。
続いて重賞報告。27日(日)、水沢2000mを舞台に"GRANDAME-JAPAN2023"古馬シーズン「第49回ビューチフルドリーマーカップ」が行われ、1番人気に支持されたノーブルシルエットが逃げ切りを決めて3馬身差で完勝。中央ダート4勝オープンから南関東移籍3戦目で初重賞を手にした。
笹川翼騎手「行っても良かったし、2番手でも良かったが、前回(フリオーソレジェンドカップ10着)のことがあったから行ければ行こうと思っていた。スローだったが、息が入らなかったのでペース以上に展開は楽ではなかった。でもこれで負けるようでは次はないと思ってレースを進めた。3コーナーで2番手の馬を離したので、前回よりも走り切れると思った。今回、勝ってくれたが、実績を考えると物足りない。まだ伸びしろがあると思うし、地方ダートの方が向き。矢野さんから重大なバトンを受けましたから、その分もしっかり取り組んでいきたいと思っています」
佐野謙二調教師「名古屋(秋桜賞1700m)も考えたが、2000mの方がいいとビューチフルドリーマーカップを選択した。レース間隔は詰まったが、小回り水沢も合ったと思う。次走はレディスプレリュード。そこでもいい競馬を期待しています」
今、最も勢いがあるシニスターミニスター産駒、ノーブルシルエットの今後に注目したい。
今週の岩手競馬
9月3日(日) 「第55回不来方賞」(3歳 水沢2000m)
9月4日(月) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級 水沢1400m)
9月5日(火) 「ブラッドストーン賞」(B1級一組 水沢1600m)
先週から舞台は水沢競馬場に替わった。コース替わりのときは頭数減少の傾向があるが、特に先週は顕著だった。理由は暑さ。ニュース、天気情報などでご存じの方も多いと思うが、今年の北日本、岩手は異常な猛暑。24日(木)、岩手県県北・岩泉町で36・4度を記録したが、県内6か所で35度を超す猛暑日。
岩手ではお盆が過ぎると朝晩の気温が下がり、最高気温も徐々に下がっていくのだが、今年は明らかに異常気象。競馬にも影響しないわけがなかった。ただでさえ暑さに弱いのがサラブレッド。全身を毛で覆われているため、人間以上に暑さがこたえる。
ただ今週はフルゲートとは言えないが、頭数増加にホッとした次第。もちろん油断はできない。自分のも言い聞かせているが、何とか猛暑を無事に乗り越えてほしい。
先週は2歳重賞「第41回ビギナーズカップ」(水沢1400m)が行われ、単勝100円元返し、圧倒的1番人気にこたえてフジユージーンが2馬身半差で完勝。デビュー後、無敗3連勝を飾った。
レースはリトルカリッジが逃げ、2番手にシングルモルト、3番手外にコンバットスプーン。フジユージーンは初めて控える競馬を試みたが、陣営の予定どおり。あとは3コーナーから徐々に進出に入れ、4コーナーでリトルカリッジに馬体を併せる。ダート2連勝リトルカリッジも渋太く粘ったが、直線で力強く抜け出して2馬身半差。世代ダートでトップを確定させた。
村上忍騎手「元々、スタートダッシュがいいタイプではない。こういう(控える)競馬にもいい感じで対応できた。新馬戦で水沢850mを圧勝したが、1周する今回の水沢1400mを乗ってみると、広い盛岡コースの方が合うと思う。距離が伸びても問題ないので、今後も非常に楽しみです」
瀬戸幸一調教師「デビュー戦で能力の高さを確信していたので、予定どおりの勝利。控える競馬にも対応して、うまく勝ってくれた。去年、フジラプンツェルが使い詰めでしたからね。フジユージーンはレース間隔を開けて行こうと決めていた。次走はネクストスター盛岡へ直行します」
今年のビギナーズカップは5年ぶりの水沢1400m戦。過去4回は盛岡ダート1400mが舞台だったので単純なタイム比較はできないが、1分28秒6は優秀。水沢1400m戦のレースレコードは2013年、ラブバレットの1分27秒3だが、同馬は後に短距離ダートグレードで大活躍した。
加えて前走比プラス9キロの体重増も影響した印象がない訳ではなく、まずは順当に重賞獲得を喜びたい。新設の1000万レース・ネクストスター盛岡は盛岡ダート1400mが舞台。村上忍騎手のコメントどおりでもあるし、跳びが大きくコース広い盛岡向きは明らか。次走・ネクストスター盛岡に注目してほしい。
最後に山本聡哉騎手の近況報告。ご安心ください。無事手術は成功。除去部分に他箇所から細胞を取り、補充した。あとは回復を待つのみだそうです。
今週の岩手競馬
8月27日(日) 「第49回ビューチフルドリーマーカップ」(牝馬地方競馬前項交流 水沢2000m)
8月28日(月) 「スプリント特別」(オープン 水沢850m)
8月29日(火) 「第46回すずらん賞」(準重賞 水沢1600m)