松尾康司 1958年青森県出身。「テシオ」編集長 。思い出の馬は伝説の名馬トウケイニセイ。横川典視 1969年高知県出身。『いわて競馬マガジン テシオ』編集記者として活動中。東北の馬産地との繋がりも深い。
松尾康司 1958年青森県出身。「テシオ」編集長 。思い出の馬は伝説の名馬トウケイニセイ。横川典視 1969年高知県出身。『いわて競馬マガジン テシオ』編集記者として活動中。東北の馬産地との繋がりも深い。4月2日(日)、2023年度の岩手競馬がスタートした。騎手、調教師、競走馬の記録は3月11日(土)に再開した春競馬10日間が実質的なシーズンの始まりだったが、やはり日本では4月が新年度。管理者である岩手県知事・達増拓也氏が開幕宣言をした開幕宣言に多くのファンが集まった。
開催場所・水沢競馬場の入場者数は3855名。前年比105・5%とそれほど目立った数字ではないが、パドックに集まったファンは、昨年に比べてもはるかに多かったような印象だった。
この日、岩手競馬ジョッキーズへ2名が加わり、同日、開幕セレモニー終了後、岩手のファンにあいさつを行った。まず佐々木志音騎手。
「(初騎乗を前にして)とても緊張しています。自宅が競馬場の近くだったので父に連れられて遊びに行ったが、人馬が走る姿にあこがれました。騎手になりたいと思ったのは中学校2年生。今日デビューしますが、ひと鞍ひと鞍ていねいに乗り、一つでも多く勝ち星を積み重ねていきたいと思っています」
続いて葛山晃平騎手。先週お伝えしたとおり、現在は金沢競馬場所属だが、水沢がデビューの地。金沢代表で2010年、ダービーグランプリ2着(ナムラアンカー)。翌2011年は東日本大震災の影響で開催が5月までずれ込み、3歳牝馬交流・留守杯日高賞も5月30日、盛岡1600mで行われ、アンダースポットで鮮やかな逃げ切りを決めた。
パドックに集まったファンから"お帰りなさい!"の声をかけられると「ただいま!」が第一声。「金沢へ移ってからも旅行で何度か岩手へ来ましたが、変わっていない水沢競馬場に懐かしさを感じました。騎乗初日から多くの依頼が来て、本当にありがたいと思っています。何勝などの目標はありませんが、一生懸命に騎乗して岩手競馬を盛り上げたいと思っています」
さっそく4戦目・リスレツィオ(第5R)に騎乗し、圧倒的1番人気に応えて0秒3差で完勝した。
「強い馬でしたから普通に、あとはミスのない競馬をすれば勝てると思って臨みました。(千葉幸喜)きゅう舎が調子がいいので、自分も貢献したいと思っていましたからホッとしました。前から岩手で乗りたかったが、金沢と開催が被るのでなかなか実現できなかった。ですが、高知で騎乗していろいろ勉強になった。期間限定の面白さを知りました。同じ場所で乗ることも大事ですが、地方各競馬場でも騎乗できるのが騎手の特権。みなさんが喜んでくれるように騎乗しますので、応援よろしくお願いします」
葛山晃平騎手は大阪生まれで18歳から9年間、最も多感な時期を水沢で暮らした。今、当時を振り返って何を思うのか。いつか、ゆっくり話を聞きたいと思っている。今後も葛山晃平騎手、そして新人・佐々木志音騎手に注目してほしい。
今週の岩手競馬
4月9日(日) メイン12R 重賞「第48回赤松杯」(M3 オープン 水沢1600m)
4月10日(月) メイン12R A級二組「若草特別」(水沢1600m)
4月11日(火) メイン12R オープン「スプリント特別」(水沢850m)
文/松尾 康司
2023年度岩手競馬が4月2日(日)からスタートする。新設重賞はダート体系整備(2024年)に伴って創設された2歳重賞「ネクストスター盛岡」(10月3日 盛岡ダート1400m)。1着賞金1000万円を目指し、さらには翌年のダートグレード、ダート三冠へもつながる道となる。
ほかに重賞については追って報告したいと思うが、岩手競馬の日程が大きく変わる。2022年度の通常開催は年明け1月3日で終了したが、今年度は12月31日(日)が通常開催の最終日。岩手競馬が年内に終了するのは1990年度以来のこと。1991年度は正月競馬も含めて1月12日まで開催され、以降も年をまたいで通常開催が行われていた。
年内終了は近年、大寒波の襲来が2~3週間ほど早まったから。2020年前の寒波襲来は成人の日の前日(1月第2月曜日)がやま場だったが、ここ数年は12月に襲来。公正競馬、また人馬の安全優先を考えれば止むを得ない措置だったと思う。よって年明け正月に行われていた明け3歳重賞・金杯は12月30日(土)に行われ、翌日31日(日)が岩手版グランプリ・桐花賞。名実ともに1年を締めくくるビッグレースとなった。
4月2日、新シーズン開幕に合わせて2名のジョッキーが新たにチーム岩手競馬に加わる。新人の佐々木志音(しおん)騎手(佐藤祐司きゅう舎)は奥州市水沢出身の17歳。勝負服は『胴白・赤縦じま・袖黒・赤一本輪』。さっそく初日2日、第2R・アヒアマリージョ、3R・ルナリュミエール、8R・トルマリの3鞍に騎乗する。岩手競馬の新人騎手誕生は2019年10月、関本玲花騎手以来のこと。
一方、葛山晃平騎手は金沢競馬から期間限定騎乗(4月2日から7月4日まで 7開催・42日間)で参戦する。同騎手は大阪府出身で1997年、岩手競馬でデビュー。2006年まで騎乗して215勝をマークした。その後、引退して2010年に金沢で再デビュー。同年のダービーグランプリでナムラアンカーに騎乗して2着(優勝はロックハンドスター)。翌年には3歳牝馬交流・留守杯日高賞をアンダースポットで逃げ切り勝ち。岩手初重賞をあげ、デビューの地で錦を飾った。開幕日から第2R・ゴールデンファラオを皮切りに、計7鞍騎乗する。
来る人がいれば去る人もいる。通算1531勝をあげた平澤芳三調教師が3月31日を持って引退する。騎手時代、みちのく大賞典、シアンモア記念、日高賞など多くの重賞を制し、調教師に転向以降もホワイトシロー、アカネプリンス、バンチャンプ、バンケーティング、ショウブラッキー(アラブ 全日本アラブ大賞典2着)など数々の強豪を送り出した。2013年度にはドリームクラフトで年度代表馬にも選ばれた。
平澤芳三さんで思い出すのは検疫きゅう舎近くで青草を刈っていた姿。秋には栗拾い?にも精を出していたが、いわく「馬は新鮮な青草を喜んで食うんだ。青草が一番いいんだ」。確かに平澤きゅう舎所属馬は青草がパワーの源だったかもしれない。飼い葉付けにもこだわっていた。自分が足しげくきゅう舎通いしていた頃、必ず全馬の飼い葉をつけていた。1頭1頭チェックして飼い葉の量を調整していた。おつかれさまでした、平澤調教師。
みなさん、今年度も岩手競馬をよろしくお願いします。
岩手競馬が冬休みの間、昨年話題の人・これから話題になるだろう人・遠征中の騎手達のお話をうかがう『この人に聞く』を掲載します。
第5回はこの春新規開業した千葉幸喜調教師です。
2月1日付けの調教師免許なのですがまだぜんぜん形になっていなくて。とりあえず厩務員は一人、ベテランが入ってくれるので安心ですが、これからどうやって管理馬を増やしていこうかと考えると落ち着かないですね。
3月の開催から出走できると思う。思うんだけど、その辺まだ実感は全然。馬の事もあるけども、今日だってこの後、馬の運動を済ませてから盛岡に行って新調教師講習。書類作ったり出したり、なにもかにもが慌ただしくて。もうちょっとしたら落ち着いて、調教師の気分も出てくるかな。
馬は、いずれ春になれば・・・という話もあるんですが、それだけというわけにもいかないし、今は一生懸命営業活動中。初めて岩手に馬を入れる・・・という馬主さん、初めて馬を持ってみようか・・・という新規の馬主さんを募集中です。とにかくがんばりますのでよろしくお願いします。【談・取材日2月21日】
※写真は厩務員時代の千葉幸喜師
岩手競馬が冬休みの間、昨年話題の人・これから話題になるだろう人・遠征中の騎手達のお話しをうかがう『この人に聞く』を掲載します。
第4回は福山競馬に短期所属中の菅原俊吏騎手です。
福山には1月18日には来ていました。1月のうちはレースに乗れないと言われていたけれど、岩手にいてもやる事がないし、こっちに来て攻め馬をしていようか、と。
受け入れていただいた渡邉貞夫調教師はこちらの調教師会長。僕は「同期」がいないですし(※菅原俊吏騎手はオーストラリアでデビューした後に日本の騎手免許を取得したので、日本の競馬学校に入っていない)、福山にも特に知っている人もない状態でしたから、受け入れて貰えて助かりました。
普通は同期や知り合いのツテを頼りつつ、ある程度騎乗のあてをつけておいて来るのでしょうが、それでもなんとかやってやると。自分はあちこちで乗って経験を積みたい派なんですよ。うん、最近はだいぶ慣れてきましたよ。
福山のコースは2コーナーがキツイなと感じますね。1コーナーを回ってから一息入れてギュッと回り込んでいく感覚で、回り方が難しい時があります。でも小さいコースの割には乗りやすいです。コースの真ん中辺が深くなっている事が多いので先行馬か後方からの差し・追い込みか、と極端な決着になる事が多いように思いますね。
調教は、厩舎が前運動と後運動をしっかり時間を取ってやるところで、担当する頭数は少ないかもしれないけれど時間はかけていますね。調教師リーディングを何度も獲っているだけに他の厩舎とは違うなと思います。
初勝利(2月6日・6R、タケノチャンス号で優勝)は、ひとまず一つ勝ててホッとしました。持ち時計がいいので普通に勝ち負けだとは思っていたし周りからもそう言われていましたが、圧勝すぎて逆に気が抜けた・・・というと贅沢でしょうか。前半だいぶ競りこまれて「うわ、これは人気で潰れるパターンか~」と思っていたら、最後は楽に突き放すくらいでしたからね。この辺のクラスでは力が上の馬なんだと思います。
前走で乗っていた﨏畑(さこはた)騎手が、今回は自厩舎の馬が出るから・・・という事で自分が乗る事になったのですが、初勝利を譲ってくれたのかな。
今回は実質6日間しかチャンスがないのが残念で。これで福山に知り合いもできましたし、来年はまたここで、もうちょっと腰を据えて・・・というのもいいかもしれません。【談・取材日2月6日】
菅原俊吏騎手は07年に岩手デビューしてから、3年連続で荒尾、そして今回の福山と、冬休みは毎年他地区で騎乗。自らが言う「あちこちで乗りたい派」を実行していますね。2010年は暦年(1月から12月)で92勝を挙げ100勝の大台間近まで迫ったのも、そんな積極性が実を結んできたのではないでしょうか。
この話を聞きつつ"次はどこが良い?"という雑談になったので、いっそ地方競馬場全場の騎乗を狙ったら・・・なんて煽ってみました。"デビュー4年目の新人"としてはちょっとトウがたってますけど、まだ30前。時間はたっぷりありますから、そんな"大記録"も狙ってみてほしいものです。【横川典視】
岩手競馬が冬休みの間、昨年話題の人・これから話題になるだろう人・遠征中の騎手達のお話しをうかがう『この人に聞く』を掲載します。
第3回は笠松競馬で短期所属中の陶文峰騎手です。
東海地区に短期所属で来るのは初めて、遠征でもデンゲキヒーローで来て以来(2004年名古屋グランプリ・3着)なんですが、「前に来たことあるよね」って覚えてくれている人がいて、こちらがびっくりしました。
亮(※名古屋で短期所属中の高松亮騎手)が頑張っていて勝ち星で先行されているけど、自分は3月までいるし、とりあえず1勝くらいはね、勝って帰りたいです。
正直どれだけ乗せてもらえるか・・・と思っていた名古屋開催でも結構騎乗依頼をしてもらえましたし、笠松での所属厩舎もこれから馬が増える予定。なのでこの後は楽しみにしています。【談】
この時は「笠松に戻ったら勝ち星を挙げたいよね」と話していたのですが、残念ながら今時点で勝ち星無し。人気薄で上位に突っ込んで穴を開ける・・・というのは何回かあるのですがねぇ・・・。まだ1ヶ月以上期間が残っているし、そろそろ、ね・・・。【横川典視】