岩手競馬が冬休みの間、昨年話題の人・これから話題になるだろう人・遠征中の騎手達のお話しをうかがう『この人に聞く』を掲載します。第1回は騎手から調教師に転身した板垣吉則調教師です。
騎手から調教師になって、半年間があっという間でしたね。
「調教師」という仕事や立場は、今までずっと横から見ていたけれども、自分でやってみるとそれはもう大違い。全くの未知の世界、何事も初めての経験でした。
もともとスタートの時点から時間が無かったですからね。昨日まで騎手で今日から調教師、みたいになって慌ただしく開業。準備に取れる時間がほとんど無かったからいろいろ同時進行で。
ここまで勝てたのはオーナーの皆さんのおかげで馬が集まった事と、厩務員さんも一生懸命がんばってくれたおかげです。オーナーのおかげで馬房にはほとんど空きが出なかったですし、厩務員もよく頑張ってくれるから任せる事ができた。今年の勝ち星はちょっとデキ過ぎだと思うけれど、周りの皆さんのおかげですね。
うん、どっちが楽かと言えばやっぱり騎手だね。勝ち負けのプレッシャーはあるけれどレースの時だけだからね。調教師は調教からレース、レース後の管理、その後は次戦へ向けた調整とずっと考えなければならないし、それ以外にも獣医さん、鉄屋さんの手配、飼い葉をどうするか、預託料、給料、税金・・・。他に頭を使う事が一杯で。大変でしたよ・・・。
今年はうまく勝ち星を増やせましたが、この先2年目、3年目とうまく土台を作っていく事が大事だと思っています。5年くらいかけて、しっかりした「板垣厩舎の形」を作っていきたいですね。(談)
村上昌幸調教師みたいに調教師でも1000勝突破、どうですか?と振ってみると「無理無理!俺なんかじゃ100年かかるよ!」と笑い飛ばされてしまいましたが、こちらもぜひ・・・と期待したいですよね。1300勝を挙げた騎手が40歳を前に転身したのですから、計算くらいはしてみても、いいんじゃないでしょうかね・・・。【横川典視】
先週予告いたしましたので、鞍掛山をご紹介いたします。
岩手競馬では、昨シーズンより一部の一般競走にもレース名を付けて実施しています。4月26日の9レースは、「岩手の山」シリーズのひとつとして『鞍掛山レース』がおこなわれました。
レース名になった鞍掛山は、盛岡側からは岩手山の手前に見えるこんもりとした山。岩手山に比べると小さな丘のように思えますが、標高897mと低めながらも立派な峰で、気軽な登山コースとして、小学校の団体登山からシニアクライマーまで高い人気があります。
人気がある一番の理由は、やはり山頂からの眺望でしょうね。木々の間を抜けて頂上の広場に出たとたん、これです。
目の前にどーん!と聳える岩手山。まさに「どーん!」としか言いようがありません。この景色を見れば登りの疲れなど吹っ飛んでしまうというものです。
このピークに至るには2つのルートがありますが、なだらかな尾根道を歩きながら樹間にちらちらと岩手山が望める西側コースの方がオススメ。キツイところはあまり無く、登山に慣れていない人にも難しくない山だと思います。ただし、そこには落とし穴が・・・・ やや急な上りを過ぎて尾根に出ると、ゆるやかな上りとほとんど平らな散歩道のようなルートが続きます。所々で視界が開け、牛や馬のいる放牧場や遠くに北上山地が望め気持ちの良い道なのですが、林間を登っていて前方に空が開けてくるとピークが近いように感じるもの。「よ〜し、もうすぐ頂上だ!」と思ってしまいます。しかし広場に出ると目の前にはまた上りが。これが3回ほど繰り返され精神的に疲れるルートでもあるのです(笑)
出発点は東西どちらのコースも村営の「相の沢キャンプ場」で、このキャンプ場は小岩井農場の奥にあります。山頂までの所要時間はゆっくり歩いても2時間ほどなので、早朝から登ってお昼は小岩井の牛乳とジンギスカンというのもアリかもしれませんね。
盛岡からほど近く高さも手頃なこの山は、冬でも登山客が絶えません。天候さえ安定していれば、テレマークスキーやスノーシュー(洋かんじき)で冬山を楽しみながら山頂へ達することができます。あるいはそれらを装備した人がある程度登山道を踏み固めれば、長靴でも十分。そして山頂はこの光景。
上の写真にある立て看板がすっかり雪に埋もれています。長靴でも登頂可能と書きましたが、踏み固められた1本のラインを踏み外すと膝上まで雪に埋まってしまいますよ。
このように岩手山の絶景スポットとしても人気の高い鞍掛山。位置関係から岩手山の寄生火山と思われがちですが、しかし地質的には岩手山よりも古いのだとか。それを発見したのはかの宮沢賢治といわれています。童話作家として有名な賢治ですが、地質学者としてこの周辺は何度も調査をしており、作品中にも『くらかけの雪』『小岩井農場パート1』などに描かれています。
晴れた日にはOROパークからも岩手山の傍らに見える鞍掛山。登山なんてという方もいちど散歩気分で登ってみてはいかがでしょうか。
(文/写真・佐藤到)
岩手競馬には、岩手の山から名をとったレースがあります。なかでも岩手三山と呼ばれる名峰は伝統の重特競走名に使われており、早池峰山は早池峰賞、姫神山は姫神賞(※近年は下級条件で行われている)、そして岩手最高峰・岩手山はその二つ名から岩鷲賞として施行されていますよね。
その他でも例えば七時雨山は3歳路線の重要なレースとなっていますし、南昌山、五葉山の名も見られます。また今年度は平場に県内各地の名所等がネーミングされているので、いっそうの山名を番組表に見ることができるようになりました。いづれもレースの条件や内容とは特に関連は無いようですが、これほどの面積を山池に占められ、“日本のチベット”とまで言われる岩手ですから、山のイメージを競馬に結びつけるのも良いのでは、というか、使わないのは勿体ないですよね。
当ブログ閑話休題担当のわたくし、たま〜に趣味で山に登ったりしています。なので、岩手競馬のレース名になっている山岳に行ったときには、読者のみなさまにもそんな山々をご紹介していきたいと思います。
・・・と言いながら、最近さっぱり登ってないんですよね。仕事がそれほど忙しいわけでもなく、むしろ仕事が少なくて困っていることのほうが多いのですが。どうも時間の使い方が下手なようですね。ちょっとした買い物や私用で一日がほぼ潰れてしまったりすることがよくあります。もっと効率的に動かないと、人生の貴重な時間を何割か無駄にしてしまいますよねぇ。時間を上手に使える方に、コツを教えて欲しいです。
さてそんな状態ですが、先日は撮影仕事で鞍掛山に登る機会を頂きましたので、来週は岩手山のお隣・鞍掛山の案内をしたいと思います。お楽しみに。
(文/写真・佐藤到)
またまた馬に関係のない話と思われそうですが、今回は岩手の隠れた名品のご紹介。
先日頂いた仕事で、岩手の“炭”を撮影する機会がありました。皆さんは炭のブランドというと何を思い浮かべますか? ほとんどの人が『備長炭』と答えるでしょう。確かに備長炭は高級料亭などでも使用され、火持ちも良く、また炭自体が硬くて叩くと何とも言えない良い音がでるあたり、いかにも高級品という感じがします。
ですが!都道府県別木炭生産量No.1は何処かというと、それは岩手県なのですねぇ〜。(社)岩手木炭協会さんのホームページによりますと、国内生産量の1/4を我が岩手県が占めているそうです。もともと広葉樹林が豊富な北上山地を擁する岩手は、江戸時代から炭の産地。品質の面においても、岩手ブランドの黒炭は紀州備長炭に劣らない火力があり、また軟らかい黒炭ゆえ火付きが良くすぐに温度が立ち上がる扱いの良さは、焼き物をはじめどんな料理にも最高なのだとか。
さてこれからのレジャーシーズン。キャンプ場でバーベキューなどを計画している方もおられるでしょう。でも、いざ焼き始めようとしてもなかなか火が点かずに苦労し、点いたら点いたで煙にむせながら肉を焼いたという経験はないですか?その点、炭素率90%以上を誇る岩手木炭(ダイヤモンドに次ぐぐらいの炭素率だとか)は不純物が少ないため煙や炎が少なく、強い赤外線の熱で食材をきれいに焼くことができます。すると表面はパリッと中はジューシーになり、肉も野菜も素材の旨みが引き出されるのです。私は若干スモークされたような煙くさい肉がバーベキューの醍醐味と思っていましたが、間違っていたのですねぇ。
そんなに良い炭なのに、なぜ“隠れた”名品なのでしょうね?ホームセンターのキャンプ用品コーナーに行ってみると、置いてあるのはほとんどがマレーシア産のマングローブ炭。その隣にオガ備長炭(備長炭の製法で作られるがオガ屑を固めたものを原料にしている)という具合で岩手の炭は目立たないところか、まったく売られていなかったりします。やはりマレーシア炭の約3倍という値段がネックなのでしょうね。ところが実際の料理においては、火力が強く火持ちが良いため炭の消費量が少なくてすむということなので、結局はお得なのではないでしょうか。その上、残った炭は水を張ったバケツに沈めて消火し『消し炭』にすると再利用可能で、濡らしても簡単に再点火するのだそうですよ。
環境面においても、原料となるナラの森林は人の手をかけることによって再生能力が活性化し、元気な状態を維持できるのだそうです。決して禿げ山にするような伐採はせず、自然と人間が付き合いながら、資源を山から「分けてもらう」という姿勢がいいですね。また炭が燃えることによってできるCO2は、木が生長するときに吸収したもの。化石燃料と違って大気中の二酸化炭素を増やすことにはなりません。
こんなに良いことづくめの岩手木炭。ブランドとしてもっと広く知られるようになって良いと思うのですが。
(文/写真・佐藤到)
シルクライムライトは、中央3戦ののち2007年12月に岩手・小西重征厩舎に転入。C3からB1へとクラスを上げながら、水沢コースを中心に8勝をあげている。
「ライムライト」というのは、本来は白熱電球が登場する以前に使われた舞台照明の一種で、“ライム”(lime)は柑橘類ではなくこの装置に使用する石灰のことだそうだ。しかしライムライトと聞けば、チャップリンの映画を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。
喜劇王チャールズ・チャップリンの代表作のひとつ「ライムライト」は、落ちぶれたかつての人気道化師と才能ある若きバレリーナの物語。男は献身的に優しく、純粋なヒロインも男に心を惹かれるが、しかし二人はすれ違うという暖かくもせつないストーリーは、同じく後期の作品である「街の灯」とともに、喜劇王の違った一面を見せてくれる。またチャップリンと言えば山高帽にチョビ髭・ステッキというイメージだが、ライムライトでは初めて素顔をスクリーンに登場させている。
一般的になじみ深い山高帽スタイルのほうは、浮浪者ではあるが心は紳士という人物像で」描かれている。そのキャラクターは、犬と1本のソーセージを分け合ったり、あまりの空腹に革靴を煮て食べようとする際にもナイフとフォークでテーブルマナーを尊守していたりと、可笑しくも非常に深く造り込まれており、社会の底辺に視点をおいて権力や戦争を風刺する作風の根幹となっている。
ところで、そんな視点では酒場のシーンがしばしば描かれる。チャップリン自身、酔っぱらいの演技は得意中の得意で名シーンがいくつもあるが、意外とギャンブルに関しては作品中にあまり登場していないのではないだろうか。筆者も全作品の半分も見ていないし、うろ覚えのものも多いが、競馬場が舞台などというのはちょっと記憶にない。いや、馬券を握りしめて罵声をあげるなんていうのが日本人の発想で、英国生まれのチャップリンにとっては競馬は高貴な富裕層のたしなみなのかもしれないが、それならそれでブルジョア層の背景的にあっても良さそうだが・・・・
もしチャップリン映画で競馬のシーン知ってるよ、という方がおりましたら、ぜひ教えて下さい。
(文/写真・佐藤到)