
上映期間ももう終わりに近いのですが、ようやく「三本木農業高校、馬術部」を見てきました。もし今後、DVDやテレビ放送をまっさらな状態で見たいという方は、以下は読まないでくださいね。
ストーリーは青森県十和田市の三本木農業高校馬術部に所属する視力に障害を持った競技馬と、担当となった女子生徒が次第に理解し合い、ラストでは障害飛越競技に出場するという実話に基づいた物語。主演?馬のモデルはタカラコスモスというサクラシンゲキ産駒の元競走馬で、東京の大学で競技馬となってからは数々の大会で優勝し「女王」と呼ばれた名馬だそうです。ところが残念なことに目の病気で左の視力を失い、処分されそうになったところを顧問の先生が引き取って三農馬術部に来たのでした。
映画はタカラコスモス(愛称コスモ)が既に馬術部におり、主人公の香苗が2年生のときから始まります。視界の半分を失ったコスモは気性が荒く、すぐ暴れて担当する香苗の言うこともまったく聞きません。そんなコスモに香苗も始めは「バカ馬」と言い放ってキレてばかりいたのですが、ある時から目が見えない不自由を理解し、懸命に世話をするようになって次第にお互い気持ちが通じるようになります。そして3年生最後の競技会を前に、「私がコスモの目になります!」と言ってジャンプに挑むのですが…
私も一度は乗馬を習う機会があったので、馬と心が通じたり通じなかったりするあの気持ちは少し分かります。それもあってかなり感情移入してしまったのですが、でも乗馬経験の無い人でも、馬が好き、馬の温もりが好きな人なら、ぜひ見てほしい作品だと思いました。
柳葉敏郎さんが演じる顧問の古賀先生は、競技に使えない馬を置いてどうするのかと言われながらも、「こういう馬がいることが何か生徒のためになるんじゃないか」と反対を押し切って引き取りました。そんな古賀先生と、それを許した校長は、それを最高の形で体現した香苗とコスモに、「ありがとう」と感謝の気持ちを表します。もちろん、暴れてばかりの担当馬に心底嫌気がさし、馬術部に入ったことも後悔しはじめていた香苗も、恐怖心から心を閉ざしていたコスモも、お互いが信頼の絆で結ばれ、心を開いてお互いに感謝。そして仲間の部員達などなど皆がみな、馬を中心に暖かな気持ちに包まれる…。それが青森南部地方の自然を背景に、しっかりと描かれていました。見て心温まる映画とは、こういうのを言うのですかね。
最近の日本映画は有名俳優やタレントをたくさん出して、その出演シーンをつくるためか話が散らかって、なんだかすっきりしない作品が多い気がします。この映画も柳葉敏郎さんや、校長役で松方弘樹さんが出演し、そして主演の長渕文音さんは長渕剛さんの娘だそうです。しかしキャスティングで話題を稼ごうという感じが全く無く、しっかりストーリーに没頭することが出来ました。また、こういう出演者が体当たりで何かを体得し、吹き替え無しで演技に挑む映画が私は大好き。例えば『スウィングガールズ』なんかも私のオススメ日本映画に入ります。この作品もエンディングで役者さん達の“修行風景”が映されますが、こうして撮られた映画はなぜか本物の迫力が伝わるんですよね。
余談ですが、柳葉敏郎さんはいまは実家のある秋田の大仙市にお住まいとのこと。こんな日本を代表する素晴らしい役者が、比較的近くの街で生活しているというのはなんだか嬉しいですね。田舎者丸出しの感覚ですが、私は柳葉さんを角館の祭りの中で見掛けたことがあり、それもあってなんだか親近感がある俳優さんです。(笑) そうそう、この映画の主題歌『この胸に…』でメジャデビューを果たしたSTMG(「ステゴマ」と読みます)は岩手の紫波町出身でした。これでますますこの映画を応援したくなりますね。機会がありましたら、みなさんもぜひ見てください。
え〜また競馬のブログでカーレースの話を出すと「オマエよっぽどネタが無いんだな」と思われるでしょうが…
そう思って書かずにいたフォーミュラ1の最終戦、考えるほどあまりにも劇的だったので話さずにはいられずやはり書きます。既に結果を知っている、あるいは当日深夜の生放送を見ていたという方もいらっしゃるでしょうが、しばしお付き合い下さい。
チーム・マクラーレンに所属するイギリス人ルイス・ハミルトン v.s. スクーデリア・フェラーリのマシンに乗るブラジル人フェリペ・マッサ(スクーデリアはイタリア語でチームの意)。2008年のF1世界選手権は、この2人の対決という構図で進行してきました。最終戦ブラジルグランプリに臨む2人がここまで獲得したポイントは、94対87。1〜8位まで与えられるポイントを計算すると、最終戦でハミルトンが5位以内に入れば、たとえマッサが優勝し10ポイントを獲得しても年間チャンピオンが確定するという、ハミルトン絶対有利な状況でファイナルラウンドに向かいました。ハミルトンは昨年もポイントでリードした状況にありながら、最終戦逆転負けを喫した経緯があり、今年こそは史上最年少で王座を獲得したいという意気込みがあります。また一方のマッサは、長い間「皇帝」と呼ばれたミハエル・シューマッハのチームメイトとして脇役に徹し、シューマッハ引退後も“速いときは速いけど崩れやすい”という有り難くない評価が定着していました。しかし今シーズンは速さと共に強さも身につけ、大きく成長してシーズンの主役に台頭してきました。
11月2日、マッサの地元ブラジルはフェラーリレッド一色に染まり、応援する地元ファンの前でマッサは完璧な走りを披露。隙を見せることなくトップでゴールへ向けひた走ります。しかしハミルトンも確実な走りに徹してチャンピオンの条件を満たす4位を走行していました。
ところがレース終盤、サンパウロの空はものすごいドラマを演出します。突然降ってきた大粒の雨がみるみるコースを濡らしていき、軽自動車並みの車重に数百馬力のエンジンを搭載したF1マシンは、ドライ用タイヤでは操縦が極めて困難な状況に。特に今年からはトラクションコントロールという、一種の電子式安定装置が禁止されているので、ドライバーは大変です。各マシンは緊急ピットインを行いウェット用のタイヤに交換。リスクを避けたいハミルトンも当然レインタイヤに履き替えます。ところがコースに戻ったハミルトンのポジションは、4位からひとつダウンしていました!このときトヨタのティモ・グロッグは残り少ない周回数をドライタイヤで走りきる作戦を選択し、ピットインしたハミルトンの前に出ていたのです。これが劇的キーマンその1。
しかしこれだけならハミルトンはまだ5位。王者の冠は手の中にあります。ところが、ハミルトンの後ろには劇的キーマンその2=セバスチャン・ベッテルが迫っていました。ベッテルはF1デビュー2年目ながらめきめきと成長を見せている注目株。今年のイタリアグランプリでは、性能の劣るマシンに乗りながらもとうとう初優勝を挙げています。しかも雨のレースは得意中の得意。徐々にハミルトンの背後に迫ると、コーナーで膨らんだハミルトンのインを突き、ついにチャンピオン候補を圏外に引きずり下ろしてしまいました!まさに天国から地獄へ突き落とされたハミルトン。昨年の悪夢がオーバーラップしてきます。この瞬間、ただでさえお祭り好きなブラジル人観客は総立ちで歓喜の渦。ハミルトンは再び5位を奪い返そうとベッテルに食らいつきますが、相手がミスをしない限りそうそう抜けるものではありません。とうとう6位のまま最終ラップの最終コーナーまで来てしまいました。先頭ではマッサがトップでチェッカーフラッグを受けます。この時点ではマッサがワールドチャンピオン!
その瞬間、私が見ていたCS放送の実況アナは、一瞬事態を把握しきれていませんでした。最終コーナーで不安定な挙動のマシンをかわすベッテルとハミルトン。「最終コーナー、ベッテルに続いてハミルトンがグロックを抜きます……え?グロッグ!!??」ドライタイヤで奮闘を続けていたグロッグが、降り続く雨に足元をすくわれ、まともにドライブ出来ない状況でスローダウンを余儀なくされていたのです。これでハミルトンが王者圏に再浮上!!マクラーレンのピットでは、ハミルトン一家がまさに飛び上がって歓喜に包まれました。片やフェラーリのマッサファミリーも、なんと最終コーナーで起こったドラマを把握しておらず抱き合って喜んでいましたが、チームスタッフに事実を告げられようやく状況を理解します。テレビでは音声を伝えてはいませんでしたが、会話は画面から容易に推測できました。「いや、違うんだ!…違うんだよ…」「えっ…!?」
そしてマッサは表彰台の一番高いところで、目を真っ赤にしながら左胸に手を当て『誇り高き敗者』をアピール。ハミルトンは表彰台には登らずに嬉し涙を流しました。
どうですか?1レース300km×年間18ラウンドの戦いが、最終戦最終ラップの最終コーナーで決着。1ポイント差で明暗を分けるという、見応えのあるドラマでした。ただ、両者ともシーズンを通してミスや取りこぼしが多く、チャンピオンシップポイントが100点に満たない王者という意味で、チャンピオン不在の年だという意見もありました。完璧な王者が君臨したシューマッハ時代や、互いに高いレベルで競ったセナ対プロストの時代とは比較にならないと言うのです。
しかし、2008年のブラジルグランプリが伝説のグランプリに加えられることは間違いありません。ファンとしては、見ていて面白いドラマチックなレースが一番なのですから。
競馬も同じではないでしょうか。世界最高峰、あるいは日本トップクラスのレースでなくとも、見て面白い、引きずり込まれるようなドラマがあれば、地方、岩手でも十分にファン心理を引きつけられると思うのです。
(文・佐藤到)
今日(11/19)朝からぱらついていた小雨が、昼過ぎについに白い粒に変わりました。滝沢村にある自宅周辺では全く積もりはしなかったのですが、用事があって電話した知り合いは「いま玉山(盛岡市玉山区)で雪道走ってる〜」と。(もちろん車を停めてから電話にでたのですよ(^^)
そういえば2,3日前、夜中に空から懐かしい声が降ってきました。「コォーッ!ホォッ!」というその声の主は、冬の使者ハクチョウ。シベリアから南下してきた群れが、約7ヶ月ぶりに元気な声を聞かせてくれました。う〜ん、もうそんな季節なんですね。今年は紅葉が異常に遅く、いつもならオーロ最終開催のころには、背景の山々は真っ赤に染まっているのですが今年はくすんだ緑のまま。先週ぐらいになってようやく山や公園の木々が錦に染まったのですが、気温はいっこうに低くならず、週間天気予報の雪だるまマークを見ても全然シンジラレナイという感覚だったのですが。。。。 それが昨夜から急激に気温が下がってこの天気。まるで季節が今までの遅れを一気に取り戻そうと焦っているようです。
北国の同志たち。車のタイヤ交換はお済みですか?毎度タイミングに頭を悩ませる時期ですが、ガソリンスタンドや整備工場は今週初めから1時間待ちはザラだそうですよ。私は昨夜、小雨が降るなか自力で交換しました。今日は実際に雪の上を走行することはありませんでしたが、これでいつどっさり積もっても安心。こうしてどんどん冬の支度ができていきます。石油ファンヒーターはもうとっくに稼働させているし、あとは厚手の上着を押し入れからひっぱりだそうかな。
それではみなさん、急激な温度変化に気を付けて、身体をお大事に。
最近、雑誌の出版部から撮影の仕事を頂く機会が増えました。雑誌と言っても競馬雑誌ではなく地元の情報誌や旅行ガイドでありまして、もしかしたら岩手県内、もしくは青森、秋田にお住まいの方の中には競馬と全く無関係な本の中に私の名前を見つけた人がいるかもしれませんね。
で、それら情報誌で多い撮影ジャンルが料理。これは動物の写真が撮りたくてカメラを始めた私にとって、もともとはあまり得意な分野ではありませんでした。それでも有り難いことに撮影依頼をいただき何度も撮っているうちに、いくらかまともに写せるようになったのではないかな、と自分では思っています。こんな私に仕事をくれる雑誌社の方々やライターさん達には大いに感謝ですね。
さてそんな訳で岩手県内を中心に様々なお店に行くのですが、ご存知のように岩手は大変広いのであります。面積は四国4県を合わせたよりも大きく、さらに内陸部と沿岸の間には北上山地が横たわっていて車移動には時間がかかります。都市部に住んでいる方にはなかなか感覚的に理解できないのでしょうが、以前、東京の出版社の指示で県内3カ所の写真を撮ってきてと言うのがあり、合計走行距離400kmほどを一日で廻ったこともありましたね。今の編集部はどこも岩手県内なのでそんなことはありませんが、やはり沿岸南部や北部に行くのは大変。たとえば大船渡に9時でアポイントメントを取っていれば、すんなり行って2時間、何かあっては困るので30分〜1時間の余裕をみれば6時頃にはこちらを出発しなければなりません。6時というと厩舎関係のみなさんには何でもない時間でしょうが、夜更かしの癖がついている私には辛いものがありますです。
余談ですが、岩手競馬ファンの中には遠くからいらっしゃる方も多く、宮古や西和賀町沢内、気仙沼(地理の分からない読者はYahoo!地図を)などから毎週、盛岡や水沢の競馬場に姿をみせています。さらには秋田・青森などから通ってくる人もおられるようで、本当に頭が下がりますね。
ところで、こうして県内のお食事処を歩いていますと、美味しい物情報が自分の中にたくさん集積されてきます。撮影終了後、お店のご厚意で「良かったら食べてってよ」となることも少なくなく、1日に3軒もごちそうになって腹がキツイなんてこともありますが、それでも“残さない主義”の私は全て美味しくいただいてきます(^^)。宣伝になってしまうのでここで店名を挙げるのは控えますが、ラーメンから自腹ではなかなか食べられないような豪勢な前沢牛ステーキまで、岩手にはとっっっても旨いものがたくさんありますね。なかでもパスタの国というイメージが変わるイタリアンの店や、涙が出るほどの地鶏卵プリン、初めて体験した火鍋やホヤのフライなどが印象に残っています。水沢にも“ラーメン王”が通うラーメン屋や、全国から通販の注文が集まるシュウマイを作っている中華料理店なんかがありますよ。もし興味がありましたら、競馬場で私に声を掛けてみて下さい。
(文/写真・佐藤到)
今日の昼食は以前から気になっていた近所のそば屋へ。
住宅街にひっそりとあるその店では、十割そばと、名物の「げそ天カレー」をおいしくいただいたのですが、ふと窓の外を見ると、そこはリンゴ畑。
私の住む滝沢村は、夏はスイカ、秋はリンゴがたくさん収穫されます。昨日あたりからこちらはすっかり寒くなって、あれ、もう冬?とも思えてしまいますが、リンゴが赤く実っているのを見ると秋をしみじみと感じますね。
しかし↑の写真、カメラマンのブログとは思えませんね〜。このときはカメラを持ち合わせていなかったので、携帯の内蔵カメラで撮りました。カメラマンといえどいつも重い一眼レフを持ち歩いているわけではないのです。(笑)
ところで、写真に写っている光るヒモのようなものは何か分かりますか?これは農作物を鳥害から守るテープで、ようするに風に揺れてキラキラ光り、実を狙う鳥たちを「びっくりさせる」もの。最近は少なくなった気がしますが、以前は田んぼのスズメよけとしてよく見られました。
私はこれを見るたび思い出すことが…
数年前のこと。私の実家のある宮城県南部でちょっとしたミステリーが起こりました。市街から外れた山あいの田んぼの真ん中で、ある晴れた日の夕方、突然爆音が響き地面に1m程の穴が。穴の周辺では石やコンクリートが溶けてガラス化しており、数千度以上の高温になった痕跡が認められました。山あいと言っても付近には国道4号線と東北本線が走っているし小学校もあり、爆発物を仕掛けた様子は目撃されていません。また雷が発生するような天気でもありませんでした。
UFOのしわざか?あるいは隣の市が霊現象否定で一時テレビを賑わした大槻教授の出身地ということにひっかけて、「ほら!プラズマだ!!」騒ぎ立てる人もいましたが、まもなく目撃証言が出てきました。それによると、爆発の直前、スズメよけテープが風に吹かれて空を漂っていたというのです。スズメよけテープはアルミ製。現場には送電線が通っています。これにより、風で飛んできたスズメよけテープが送電線に引っかかって垂れ下がり、地面と接触。瞬間的に数万ボルトの電気が流れて地面に穴をあけたと結論づけられました。薄っぺらいアルミのテープは一瞬にして蒸発したのでしょう。
静かな田舎町のミステリーは、探偵ガリレオが登場するまでもなく解決しました。しかしスズメよけテープが外れて飛ばされていることはそれほど珍しいことでもありませんが、こんなことが起こるなら気を付けなければいけませんね。
(文/写真・佐藤到)