
先週は2日間連続で岩手競馬の最高格M1レースが行われた。17日は2歳芝全国交流「第25回ジュニアグランプリ」(盛岡芝1600m)。今年は遠征馬6頭、地元岩手7頭の計13頭で覇を競った。
優勝は北海道代表トワイライトウェイ(父ジャスタウェイ)。道中は5番手インを追走し、直線で外に持ち出すと鋭く反応。メンバー最速の上がりを駆使してルーラーオブダート、エイシンコソンテを並ぶ間もなく抜き去った。
落合玄太騎手「最終追い切りでこれまでの中で一番の動きを見せてくれたし、パドックも落ち着いていたので、いい状態で臨めると思った。内目の枠に入ったが、1枠の馬が速かったので4番手インは想定どおりのポジション。馬の行く気を優先させた。ダートでも1,2着を確保していましたが、手応えがいいのに最後の伸びがもう一つ。ですけど今回は追ってからの反応もすばらしく、芝が合っているなと思いました」
田中淳司調教師「1歳の時からフットワークの良さが目立っていたし、坂路を上がっていく姿もきれいだった。ただ、今の門別みたいなパワーの要る馬場向きではないんでしょうね。認定を取れなったので、取れるのはこのジュニアグランプリしかないと思い、ここを目標に調整してきた。今後については未定。オーナーと相談して決めたいと思っています」
落合玄太騎手は盛岡芝の初勝利をジュニアグランプリで飾ったが、管理する田中淳司調教師は昨年、ラビュリントスに続いて2連覇。通算でも4度目(セラミックガール、パーティメーカー)のジュニアグランプリ制覇。まさに重賞ハンターの面目躍如といった一戦となった。現時点では白紙状態だが、次走決定を待ちたい。
18日は牝馬クラシック三冠目「第4回OROオータムティアラ」(盛岡ダート2000m)。当初、ミニアチュールはダービーグランプリに向かう予定だったが、不来方賞で4着に敗れたため、急きょ路線変更した。
優勝はそのミニアチュール。先手を主張する馬がいなかったため逃げの手。ハイラップを刻み、最後は脚いろが一杯になったが、後続を突き放して2着に2秒2差をつけて圧勝。牡馬二冠に続いて牝馬二冠を獲得した。
山本政聡騎手「逃げにはこだわらず、自分のレースをやり切ろうと思っていたが、競りかける馬がいなかったので逃げることになった。ゲートでおとなしくスタートも素晴らしかった。休み明け(不来方賞)を叩いたので、その気になっていたし、後ろからもついてこない。最後は一杯となったが、牝馬同士なら力が違う。改めてポテンシャルの高さを感じた」
佐藤祐司調教師「不来方賞で敗れたからここに向かうと決めたので、間隔が短いローテーションが心配だった。今回のような牝馬限定のレースは馬の力の差が如実に表れるものだと考えていたので、相手はフジラプンツェル一頭かなと。直線は2頭の叩き合いになるのかなと思って見ていたが、4コーナーを回ったところでは勝ちパターンだなと思った。このレースを使ったのでダービーグランプリへは間隔が無くなくなった。この後は11月のロジータ記念に向かおうと考えています」
不来方賞はよもやの4着だったが、今回はうっ憤を一気に晴らした。ロジータ記念は南関東の強豪がそろうが、ミニアチュールの健闘を期待したい。
今週17日(日)から舞台は盛岡競馬場へ替わり、11月21日(火)までのロング開催。OROカップ、ダービーグランプリ、マイルチャンピオンシップ南部杯など看板レースが目白押し。岩手競馬はいよいよ佳境に入る。
先週10日、水沢1600mを舞台に行われた「第31回青藍賞」は南部杯トライアル。例年以上に注目を集めたのは昨年、南部杯で5着に健闘したゴールデンヒーラーが連覇を狙って出走したからだった。
ゴールデンヒーラーはJBCレディスクラシック出走取り消し後、北海道へ移動して休養。デビュー後、初めて放牧に出て今年2月に帰郷。満を持して栗駒賞から始動し、4角先頭から押し切って完勝。
今年も大仕事をやってくれそうな予感を抱かせたが、シアンモア記念6着、一條記念みちのく大賞典8着に凡走。前途に暗雲が立ち込めたが、牝馬準重賞・フェアリーカップを圧勝。「久々に闘志に火がついた」(山本聡哉騎手)ゴールデンヒーラーは1秒4差で圧勝した。
ただメンバーも甘かったのも事実。今回の青藍賞が正念場だったが、正攻法に出て先手を主張。あとは後続を突き放して7馬身差で圧勝。5頭立てとはいえ、ついに復活した。
山本政聡騎手「レース前は2、3番手を考えていたが、出脚(であし)が良かったので、そのまま行かせました。結果、逃げることになったから、道中は並ばれないように気をつけた。残り800mからペースが上がって厳しい競馬。後続もそうだったが、自分の馬も直線で脚が上がったので、もうひと踏ん張りしてくれとハミをかけ直した。本来、持っている力が大きいですからね。しっかり走り切ってくれました」
佐藤祐司調教師「今回は負けられないメンバーだったが、先週、ミニアチュールで三冠を狙って4着に敗れた直後でしたからね。負の連鎖が心配だったが、勝ってくれてホッとした。今日の勝利は大きいと思います。次走は南部杯へ直行。今年もいい競馬を期待しています」
弟・聡哉騎手は現在、休養中。代役で兄・山本政聡騎手が騎乗したが、プレッシャーは相当だったようだ。「レース前は顔が白かった」(佐藤祐司調教師)と笑って話していたが、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯5着も山本政聡騎手だった。今年も南部杯での健闘を期待したい。
今週の岩手競馬
9月17日(日) 「第25回ジュニアグランプリ」(2歳・地方競馬全国交流 盛岡芝1600m)
9月18日(月) 「第4回OROオータムティアラ」(3歳牝馬 盛岡ダート2000m)
9月19日(火) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
9月3日(日)、岩手クラシック三冠目「第55回不来方賞」が水沢2000mを舞台に行われた。単勝1・1倍の圧倒的1番人気に支持されたのは、史上初の牝馬による牡馬三冠制覇の期待がかかったミニアチュール。
何度も記したが、北海道2勝から転入後、破竹の7連勝中。ダイヤモンドカップ、東北優駿(岩手ダービー)の牡馬二冠、さらには岩手版オークス・ひまわり賞も制し、3歳戦線を独走し続けた。
逃げたのは、そのミニアチュール。2番手にマツリダワールドがつけ、3番手外にリッキーナイト。ルーンファクターは前走、やまびこ賞は最後方から直線一気で快勝したが、今回は4番手インを追走した。
ミニアチュールは快調に飛ばしたように見えたが、勝負どころの3コーナーで手ごたえが怪しくなって一杯。替わってマツリダワールドが先頭に立ったが、間髪入れずルーンファクターが交わし、あとは後続を突き放す一方。2着マツリダワールドに7馬身差をつけてゴールに入った。
坂口祐一騎手「道中は後ろすぎず前すぎず。前3頭の後ろはちょうどいいポジション。ミニアチュールを見ながら、ロスなくレースを進めることができた。前回(やまびこ賞)は最後方からの競馬だったが、水沢は形状が違いますからね。3コーナーから少しずつスパートをかけたのは急に追い出すとカッとなったり、反抗したりするところがあるから。この馬にいい流れになったと思う。直線を向いてビジョンを観たら、後ろの馬がいないと分かったので勝ったなと思いました」
また雑談でこうつけ加えた。「門別2戦目を勝った時、道中置かれたが、凄い脚で伸びていたので、やまびこ賞は同じ戦法を採った。でも今回は小回り水沢なので同じポジションではとても届かないので、早め追走した。栄城賞(九州ダービー)は折り合いを欠いて失速したが、スムーズにレースを運ぶことができれば力を出せると思った。乗っていて気分屋のところがあって、よくわからない面があるが、能力は高いと思います」
確かに南関東移籍2連勝後、12月7日の「ひばり特別」では後に無敗で南関東三冠馬に輝いたミックファイヤの1秒差3着にまとめていた。
千葉幸喜調教師「前回は休み明けもあって半信半疑だったが、走ると分かったので中間は馬体重を気にせず、とにかく攻めたのが良かったと思う。ジョッキーには別段、指示を出していない。前回で結果を出してくれましたからね。次走はダービーグランプリへ直行。今年は南関東などから強豪が来ると聞いているが、岩手代表として恥ずかしくない競馬をしたいと思っています」
一方、4着に敗れたミニアチュール。転入後、初めて敗戦を喫したが、7月11日、ひまわり賞以来とレース間隔が開いたのも影響したか。ただ、一見スローに見えた不来方賞だったが、前半1000m62秒6に対し後半1000mは66秒2。優勝タイムも東北優駿は2分11秒3だったが、今回は2分8秒8。思った以上に厳しい流れだった。
明暗がくっきり浮き彫りとなった第55回不来方賞。ルーンファクター、ミニアチュールの今後の動向に注目したい。
今週の岩手競馬
9月10日(日) 「第31回青藍賞」(オープン 水沢1600m)
9月11日(月) 「白露特別」(A級一組 水沢1600m)
9月12日(火) 「スプリント特別」(オープン 水沢1300m)
15日(月)、盛岡ダート1200mを舞台に行われたJpnIII「第28回クラスターカップ」はリメイクが完勝。衝撃的なゴールだった。
レースは予想どおりドンフランキーが逃げ、内からアップテンペストも先行する構えを見せる。3番手外にスペシャルエックス、その内にオーロラテソーロ。5番手インにリュウノユキナ。リメイクは中団を追走。3コーナーでは先陣グループとは10馬身以上の差があった。
逃げるドンフランキー、2番手外にスペシャルエックス、オーロラテソーロも遅れず追走したが、3~4コーナーからリメイクが満を持してスパート。先陣グループはドンフランキーを基軸に外を回ったが、リメイクはインを強襲。いつ抜け出したか分からなかったが、外目コースで逃げるドンフランキーを残り200mで捕らえた。レースリプレイ、川田将雅騎手のコメントで分かったが、リュウノユキナの内から一瞬のうちに突き抜けた。
あとはリメイクの独壇場。ドンフランキーに2馬身半差をつけ、カペラステークスに続いて重賞2勝目を手にした。この時、リメイクが使った脚が上がり3ハロン33秒5!。レース上がりが35秒0。いかに強烈な末脚だったか、この数字でも一目瞭然だった。盛岡ダート1000m戦なら過去に記憶があるが、盛岡ダート1200mで33秒5は史上最速。リメイクの末脚に舌を巻いた。
川田将雅騎手「ポジションは気にすることなく、馬のリズムを優先したら中団からの競馬になった。直線は外に行く形にならなかったので、並びから内を選択した。前回(プロキオンステークス)負けた相手ですし、直線で渋太く残っていたから、こちらも最後まで頑張ってもらった。これから楽しみな将来が待っている馬ですので、無事に勝ち切れて何よりです」
新谷功一調教師「(鞍上が)スタートから馬のリズムを狂わさずにレースを進めてくれた。ドンフランキーにどこまで粘られるか心配だったが、雪辱を果たせた。前回2着に敗れ、きゅう舎一同が悔しい思いをした。プロキオンステークスが初対決だったから、心理的な戦いでもあった。リメイクの強さはわかっていたが、ほんの少し足りなかった。今回はそれを調整して臨んだが、1200m戦でよりリメイクの良さが出たと思う。今のところ韓国(コリアスプリント)に登録しているが、馬の状態を見ながら次走を決めたいと思っています」
どうやら陣営はアメリカのブリーダーズカップ・スプリント(今年はサンタアニタ競馬場)も視界に入っている模様。ぜひ、夢を実現してほしいと思う。
自分は本命ドンフランキー、対抗リメイクにしたのには訳がある。クラスターカップは基本、先行馬に有利だったからだ。前半ハイペースで飛ばしても、そのまま押し切るレースを何度も見てきた。ドンフランキーは前半3ハロン33秒6、上がり3ハロン35秒4。決して脚が上がったわけではなかった。普通なら逃げ切れるパターンだった。
リメイクの海外2戦リヤドダートスプリント、ドバイゴールデンシャヒーンのビデオを何度も観た。確かに直線の伸びはすばらしかったが、それでも3、5着。ましてや盛岡ダート1200mで届くか半信半疑だったが、リメイクの破壊力が凄すぎた、強すぎた。思わず脱帽した。次走の決定を待ちたい。
今週の岩手競馬
8月20日(日) メイン10R 「第41回ビギナーズカップ」(2歳 水沢1400m)
8月21日(月) メイン12R 「秋桜賞」(B1級 水沢1400m)
8月22日(火) メイン11R 「夢・希望・未来へ前進」(B1級一組 水沢1600m)
先週は注目レースの3連発。7月30日(日)は地方競馬全国交流「第45回せきれい賞」(盛岡芝2400m)。1番人気はトライアル・かきつばた賞を快勝ゴールドギアだったが、4番人気ヴィゴーレが快勝。大井4度目の優勝を果たした。
矢野貴之騎手「今回で騎乗2度目だから、前半はリズムを優先。難しいことは考えず馬の行く気にまかせた。ロードクエストが早めに動くだろうと思っていたが、内から来られたのは想定外。ですが、目標とする馬がいたので、いい位置で競馬ができた。直線入り口まで手ごたえが良かったので、大事に追い出せば勝てると思った。せかしていいタイプではないし、跳びが軽いので芝2400mも合いましたね。暑い中、このレースへ向けてスタッフがしっかり仕上げてくれたので自信を持って乗ることができました」
高野毅調教師「2ヵ月ぶりの実戦を叩いて、このレースを使うのは予定どおりのステップ。2歳時にGI・ホープフルステークスに挑戦するぐらいですからね。芝適性があると確信していた。元々、スタートがあまり良くないタイプなので、芝2400mも合ったと思います。まだ勝ったばかりですから、今後については白紙。馬の状態と相談しながら、じっくり考えたい」
ヴィゴーレのオーナーは前田幸治さんで中央3勝クラスから南関東へ移籍したキズナ産駒。おそらく愛着が強いのだろうと思う。地方芝だったとは言え、重賞初制覇はとてもうれしかったに違いない。
翌31日(月)はビューチフルドリーマーCトライアル「第24回フェアリーカップ」(盛岡ダート1800m)。ゴールデンヒーラー、まさかのエントリーだったが、シアンモア記念6着、みちのく大賞典8着に凡走。陣営は背水の陣で臨んだが、復活劇を演じてくれた。
山本聡哉騎手「負けられない一戦だったが、不安材料がない訳ではなかった。今回は半信半疑で臨んだ。返し馬の感触がもう一つでしたし、スタートで出遅れて内に包まれる競馬になったが、逆にやる気が出た感じ。闘志に火がついて最近にはない強いレースをしてくれた。次につながる内容だったと思います」
佐藤祐司調教師「横を向いたときにゲートが開いたので出遅れた。久々に包まれて嫌気が差さないか心配でしたが、力強く抜け出してくれた。(ゴールデンヒーラーのレースで)こんなにハラハラしたのは初めて。圧勝してくれてホッとした。今後については昨年と同様、青藍賞から南部杯を考えている。あくまでも予定だが、盛岡1600mがベストの舞台ですからね」
岩手競馬リリースにもあったように山本聡哉騎手は翌日からリタイア。右手中指の手術をする。一日も早い復帰を待ちたい。
8月1日(火)は今シーズン第一弾の2歳重賞「第24回若鮎賞」(盛岡芝1600m)。盛岡芝を経験したのはセイバイラック1頭のみ。人気はデビュー2連勝リトルカリッジに集中したが、8頭立て(1頭取り消し)8番人気のユウユウププリエが快勝。単勝1万2600円、3連単58万1560円の特大万馬券が飛び出した。
菅原辰徳騎手「先生(佐藤祐司調教師)ときゅう務員さんが芝が合うと挑戦を決めたのがベストな選択。そのおかげで勝つことができました。実際、ダートの時よりも前に行きましたから、道中は脚を貯めてレースを進めた。直線に入っても手ごたえが良く、思い切って外に出したら伸びてくれた。自分も昨年のイーハトーブマイル(フジクラウン)以来の重賞でしたから、とてもうれしいです」
佐藤祐司調教師「大好きな形の馬だが、全然、走らなくてタイムオーバーのレベル。何でかなと思って芝を使ってみようと決めたが、動きが一変した。こういうことってあるんですね。芝が合うことが分かったのでレース間隔は開くが、ジュニアグランプリを目指したいと思います」
競馬は実際に走ってみないとわからない。それを端的に表すレースとなった。
今週の岩手競馬
8月6日(日)「第36回やまびこ賞」(3歳 盛岡ダート1800m)
8月7日(月)「夢・希望・未来へ前進」(B1級三組 盛岡ダート1600m)
8月8日(火) 「マルカブ賞」(B1級一組 盛岡ダート1600m)