先週10日(日)から岩手競馬が再開。初日メインに組まれたのは3歳準重賞「第3回奥州弥生賞」(水沢1400m)。当初、金杯を制したリトルカリッジの登録があったが、牝馬重賞・あやめ賞へぶっつけで臨むためにスキップ。それでも出走12頭のうち10頭の牝馬はエントリー。あやめ賞へ直結しそうなメンバー構成となった。
レースは好枠を利してオフビートが逃げ、2番手にセイバイラック、3番手インにインサリュブル。1番人気レッドオパールは5番手外を追走した。向こう正面でレッドオパールが掛かっていたが、鞍上・山本聡騎手が必死になだめて3コーナーからスパート。そのまま余裕で抜け出すかに見えたが、外に張る仕草を見せたため、方向修正しながらゴール。最後はクビ差でオフビートを退け、転入後、無傷の3連勝を飾った。
山本聡哉騎手「位置取りは出たなり。入れ込んでいたのでその方が落ち着くと思ったし、次走のことも考えた。今回は休み明けで太目。テンションが上がるだろうと想定して抑え気味にレースを進め、直線ではじかせるイメージだったが、外にもたれていた。でも今回はあくまでも叩き台。もたれていたと言っても制御できる範囲内だったし、ハミを変えれば矯正可能なはず。次につながるレースはできたと思います」
菅原勲調教師「パドックで入れ込んでいたのはいつものこと。今日はまだいい方だと思う。今回はプラス30キロだったが、想定どおり。成長分もあると思うし、一度使うとガクッと体重が減るタイプ。いい感じでシーズン入りできた。若干気になったのはもたれていたことだが、勝つことが何より。この後はあやめ賞を使って留守杯日高賞へ向かう予定です」
冒頭に記したとおり最大のライバルはリトルカリッジ。あやめ賞の体重は要チェックだが、着差以上に強いレースぶりだったのは確か。
昨年2歳はフジユージーン、ミヤギヴァリアントが出現したように豊作年。さらにリトルカリッジ、2着に粘ったオフビート、そして今回優勝したレッドオパールなど楽しみな3歳馬がずらり。現時点ではあやめ賞を使う予定だが、状態次第で留守杯日高賞へ直行の可能性大。いずれにせよ転入3連勝レッドオパールの動向にも注目してほしい。
今週の岩手競馬
3月17日(日) メイン11R 「スプリント特別」(オープン 水沢1400m)
3月18日(月) メイン11R 「弥生特別」(A級一組 水沢1600m)
文/松尾康司
先週12日(日)、2歳馬による地方競馬全国交流「第50回南部駒賞」(盛岡ダート1600m)が行われた。これが今シーズン・ラストの交流重賞だったが、今年はすべて遠征馬に凱歌。岩手は苦戦の連続だったが、最後の最後で地元フジユージーンが完勝。久々に期待の大物が誕生した。
戦前の予想どおり1番枠からオスカーブレインが逃げ、2番手グラッシーズマン、3番手インにカイコウ、4番手外にキタノヒーロー。フジユージーンは今回もスタートがひと息だったが、5番手追走から3コーナーでは3番手まで押し上げた。
直線を向いても快調に飛ばしたオスカーブレインだったが、フジユージーンが内から外へ持ち出すと鋭く反応。あっと言う間にオスカーブレインを交わし、4馬身差でゴールに入った。
村上忍騎手「今回はスピードのあるタイプがそろっていたので、まずはスタートを切ってから周りの動きを見て位置取りを判断しようと思っていた。前半の流れが少し速く感じて、僕の馬はその中で少しかかり気味にもなったので、砂を被せて少し落ち着かせる意味で少し控えめの位置。その後はロス無くいけたからタイミングを見て外に出せればと。そこでも手応えが良かったので、これなら良い競馬になるなと思った。追ってからもしっかり反応して良い内容の勝ち方。僕も興奮するほど非常に良い走りをしてくれた。まだまだ成長できると思うので、僕自身も楽しみにしています」
瀬戸幸一調教師「今まではメンバーが楽だったが、今回は実績ある遠征馬が相手なので正念場のつもりで臨んだ。それで4馬身差。自分で言うのもなんだが、本当に強かった。次は全日本2歳優駿も考えているが、将来がある馬。来年のダート三冠を視界に入れながら、じっくり決めたい」
南部駒賞は昨年まで5年連続で北海道所属馬が優勝。岩手所属馬の優勝は2016年、ベンテンコゾウ以来のこと(2018年は休止)。そのベンテンコゾウは北海道二冠を制し、ロッソコルサは岩手クラシック二冠を獲得。またロックハンドスターは復活ダービーグランプリを含めて岩手三冠馬。
南部駒賞を優勝すれば出世すると言われているが、フジユージーンはどの歴代優勝馬に比較しても現時点で一番。そう評価しても反論はないと思う。瀬戸幸一調教師は全日本2歳優駿も意識はしているが、本当の狙いは新設のダート三冠。まずはゆっくり歴戦の疲れを取ることに専念してほしい。
今週の岩手競馬
11月19日 「第45回北上川大賞典」(オープン 盛岡ダート2600m)
11月20日 「「スプリント特別」(オープン 盛岡ダート1200m)
11月21日 「レディスジョッキーズシリーズ2023・盛岡ラウンド(二戦)」
文/松尾庫司
先週10月29日(日)、"GRANDAME-JAPAN2023"2歳シーズン「第39回プリンセスカップ」(盛岡ダート1400m)が行われ、単勝1・3倍の圧倒的1番人気に支持されたコモリリーガルが優勝。園田プリンセスカップに続いて重賞2連勝を飾り、シリーズ暫定首位の座を盤石のものにした。
レースはカリフィアが逃げ、2番手プレストマーヴェル、3番手にコンバットスプーン。コモリリーガルは4番手外を追走した。前半3ハロンが35秒6に対し、上がり3ハロンは39秒4。超ハイペースでレースが進み、プレストマーヴェルが4角先頭に立ったが、さすがに前半で脚を使って一杯。コモリリーガルが直線半ばで抜け出して2馬身差で完勝。2着は中団に控えたサウスヴィルが確保した。
村上忍騎手「特に指示は無かったが、これまでの競馬を見てある程度のイメージは作っていたつもりだった。調教師から言われていたのが左回りが初めてだからだったが、それも概ね良好。前にも後ろにも有力馬がいるのでタイミングだけ間違えないよう心がけた。イメージ通りのレースができて、心配なく勝ち切れたと思う」
米川昇調教師「今日はちょっとテンションが上がっていたのと、体重もちょっと減っていたので心配はしていた。左回りも初だったが、それは門別で調教をしてきたし、盛岡はワンターン。レースでも問題なく走ってくれた。未勝利勝ちからこれくらい成長する馬もなかなかいない。走るたびに力を付けている馬だと感心している。この先の大きな目標は暮れの大井の重賞(東京2歳優駿牝馬)だが、間隔があるので、この間にどこか遠征することができればとオーナーと相談しています」
2着はサウスヴィル、3着プレストマーヴェルと北海道勢が上位3着までを独占したが、今年の北海道2歳旋風は例年以上に強力だ。園田プリンセスカップは前述コモリリーガル。金沢シンデレラカップはシトラルテミニ。JpnIII・エーデルワイス賞はモズミギカタアガリ。さらに平和賞(船橋)はカプセル、鎌倉記念(川崎)はサントノーレと全国の交流重賞を総なめにしている。
来週12日には2歳・地方競馬全国交流「第50回南部駒賞」(盛岡ダート1600m)が控え、ネクストスター盛岡を含めてデビューから無敗4連勝中フジユージーン、若駒賞を完勝したミヤギヴァリアントが出走を予定している。
一方、現時点での北海道エントリーもすばらしい。オスカーブレイン、カプセル、グラッシーズマン、サントノーレ、ストリーム、トラジロウ。今後、取りやめもあると思うが、過去最高の南部駒賞になる可能性が高い。みなさんも動向に注目してほしい。
今週の岩手競馬
11月5日(日) 「第13回絆カップ」(オープン 盛岡ダート1200m)
11月6日(月) 「晩秋特別」(A級一組 盛岡ダート1600m)
11月7日(火) 「スプリント特別」(オープン 盛岡ダート1200m)
文/松尾庫司
先週22日、地方競馬全国交流「第13回OROターフスプリント」が行われた。当初予定はレース名どおり芝1000mが舞台だったが、走路状態の悪化によりダート1000mへ変更された。なお今シーズンの芝レースもすべて終了した。
今年は遠征馬4頭、地元8頭の計12頭で覇を競ったが、優勝は川崎代表・マッドシェリー。鞍上・神尾香澄騎手を背に、鮮やかな逃げ切りを決めた。女性騎手の重賞(級)制覇は昭和45年、日高賞をニュースターエイトで制した高橋優子 (故人)以来の快挙となった。
神尾香澄騎手「レース前から行く気で乗りました。好スタートを切ってからも他の馬を見ながら、自分のペースを大事にしてレースを作りました。今日の馬場は内を少し開けて走った方がいいと思ってコースを選びましたが、その内から馬が来ているのは分かっていました。いつも川崎900mで勝っていましたが、今日は1000m。ラストが心配でしたが、強いレースをしてくれました。マッドシェリーはデビューする前から乗せていただいて、とても思い入れがあります。その馬で重賞初制覇できて、すごくうれしいです」
山田質調教師「体型を見ても分かるとおり、専門は短い距離。川崎900mのレース体系ができて持ち味を生かせたと思います。地元に手ごろなレースがなく、それで芝1000mのOROターフスプリントに申し込みました。うちのジョッキー(神尾騎手)に芝を経験させたかったこともありましたが、ダート変更も結果的に良かったと思います。一つ心配だったのは初コースが苦手なタイプ。物見をするんですが、今回は状態が良く、レースにも集中していました。今後については未定。まずは疲れを取ることを優先させ、条件を見ながらゆっくり決めます。ジョッキーも私も初重賞ですからね。非常にうれしいです」
コメントにもあるが、マッドシェリーは過去7勝2着9回だったが、すべて川崎900m戦であげてきたスペシャリスト。同じ左回り盛岡ダート1000mも合ったに違いない。馬もジョッキーも調教師もすべて重賞初制覇。このようなシーンを見せてもらうと周囲も盛り上がる。同時期に調教師免許を取得した菅原勲騎手も心から祝福していた。
先週22日から山本聡哉騎手が復帰した。手術を受けて2ヶ月余りだった。「復帰まではアッという間でした。休養中の一番の思い出は川田将雅騎手に招待されて栗東トレセンを見学できたこと。美浦トレセンはラブバレットで行ったことがありましたが、栗東は今回が初めてでした。手術後も順調に回復。本来の動きを取り戻すのには少しかかると思いますが、調教で乗ってみて行けると思って復帰しました」(IBC岩手放送インタビューより)。
さっそく復帰4戦目の6R・プリマステラで快勝。まだ握力も戻っていないそうだが、これから今年前半と同様の活躍を見せてくれるに違いない。
今週の岩手競馬
10月29日(日) 「第39回プリンセスカップ」(2歳牝馬・地方競馬全国交流 盛岡ダート1400m)
10月30日(月) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級三組 盛岡ダート1600m)
10月31日(火) 「アクアマリン賞」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
文/松尾庫司
先週15日(日)、地方競馬全国交流・南部駒賞トライアル「第43回若駒賞」が盛岡ダート1600mで行われ、単勝1倍の元返し圧倒的1番人気に支持されたミヤギヴァリアント(父モーニン)が圧勝。2着ミヤギシリウスに1秒8差をつけて初重賞を手にした。
村上忍騎手「パドックではちょっと細く見えたが、今日は強いレースをしてくれた。夏休みでリフレッシュできたし、ひと叩きされて状態が格段良くなっていた。特に位置取りはこだわらず出たなり。ハナを主張する馬がいたら行かせようと思っていた。それに前回より1ハロン伸びたので、慌てることなくレースを進めることができた。今日のメンバーなら普通に走れば大丈夫。結果も出せると思っていた。走破タイム1分39秒3も納得。内容的にはこれ以上求めることはありません。折り合いがついて距離延長にも対応できるので、かなりの素質を秘めていると思います」
管理する菅原勲調教師はオータムセール(秋のセリ)へ出張中だったのでコメントは取れなかったが、フジユージーンが不在なら圧勝も当然の結果。これで4戦3勝2着1回として、ナンバー2の座を堅持した。今年の岩手2歳は豊作年と言って差し支えない。次走決定を待ちたい。
17日(火)は3歳芝重賞「第16回サファイア賞」(盛岡芝2400m)はダット(父ドゥラメンテ)が2着ジェイエルドラフトに1秒9差をつけて圧勝。トライアル準重賞・はまぎく賞に続き、逃げ切り2連勝。今度は初重賞を獲得した。
高橋悠里騎手「位置取りはほかの馬の出方次第だったが、いいスタートを切ることができたので先手を取る形になった。前回(はまぎく賞)も逃げ切っていますからね。道中は未経験だった2400mを意識して、折り合いを気をつけて進めた。さすがに最後はお釣りがなかったが、大差で勝ってくれた。強いレースだったと思います」
永田幸宏調教師「転入当初は未経験だったダート対応が若干心配だったが、あっさり2連勝をしてくれたので、水沢開催をスキップ。盛岡芝に照準を合わせて調整して、はまぎく賞で期待どおりの結果を出すことができた。今回は芝2400mが課題かなと思ったが、ジョッキー(高橋悠里騎手)が距離も問題ないと言ってくれたので、距離を意識した乗り込みはしなかった。1週前に好タイムを出して仕上がったので今週は流す程度。プラス9キロと体重が増えていたが、細身の馬なのでこのぐらいあった方がいいかも知れない。開業3年目で初めて重賞を手にすることができました」
永田幸宏調教師は2021年3月に開業。同年、キーチャンスで準重賞・はまぎく賞を制したが、残念ながらサファイア賞4着。重賞制覇が持ち越しとなったが、今回ついに重賞タイトルを獲得した。
今週の岩手競馬
10月22日(日) 第7R 「第13回OROターフスプリント」(地方競馬全国交流 ダート1000m)
10月23日(月) 第12R 「紅葉特別」(A級二組 盛岡ダート1600m)
10月24日(火) 第12R 「スプリント特別」(オープン 盛岡ダート1200m)
文・松尾庫司