先週は3歳重賞のトライアル2戦が行われた。25日(日)はハヤテスプリント・トライアル「第47回ウイナーカップ」(盛岡ダート1400m)。
人気はユウユウレラシオン、タイセイヴィゴーレが集めたが、3、9着。後方2頭ケンジャ、セイレジーナが1、2着。超ハイペースになったため、前半グループ後方グループがゴールで総入れ替え。ケンジャが鮮やかなまくりを決めて重賞初挑戦でウイナーカップを制した。
山本政聡騎手「テン乗りだったので、騎乗者から馬の癖などを聞いてレースに臨んだ。先に行きたい馬が多かったので、勝負どころで巻き込まれたくないなと思い、前半は呼吸とリズムを大事にした。結果的に最後方からの競馬になったが、気負う必要はない。この馬の力を最大限に引き出したいと心がけたら、いい感じで動いてくれた。それほど人気を背負っていなかったことも良かったと思う。正直、手ごたえはあまり良くなかったが、追っているうちは反応してくれたので"頑張れ、頑張れ"という気持ちで追い続けた。直線で先頭に立つとトボけるところもあって、まだ幼い面が残っているが、その分、これからさらに伸びてくれると思います」
伊藤和調教師「水沢でもそれなりに結果を出していたが、右回りだとグラつくところがあった。それが左回りになると動きも反応も一変。前々回も勝ったが、盛岡の方が合うタイプ。ハヤテスプリントの優先権を獲得したみたいだが、重賞を勝ったばかり。今後については馬の状態を見ながら、オーナーと相談して決めたい」
記憶に間違いなければ、伊藤和調教師の重賞制覇は2019年、せきれい賞ダイワリベラル以来のこと。ヒザを手術したため松葉杖をついての表彰式だったが、久々に伊藤和調教師、満面の笑顔を見た。
翌々日27日(火)はオパールカップ・トライアル「第27回はまなす賞」(盛岡芝1600m)。内2番枠を引き当てたスノーパトロールが先手を主張し、トーセンカタリーナの追撃をハナ差封じて逃げ切り勝ち。岩手クラシック・ダイヤモンドカップ3着、東北優駿4着の地力を誇示した。
山本政聡騎手「ダートでも好位を取れていたので芝なら内に包まれるより、多少無理してもハナに行った方がいいと判断した。今の盛岡芝は先行有利の傾向でしたからね。テン乗りで気合をつけたらその気になってしまったが、うまく折り合いをつけることができた。人気のトーセンさん2頭とは中央成績でどっこい。いい競馬になると思っていた。ただ止まっている訳ではないが、ピリッとしたタイプではない感じ。結果的に逃げの手に出たことも良かったと思います」
飯田弘道調教師「中央時代の走りから芝は合うと思っていた。大幅な体重増を見て驚いたかもしれないが、追い切りの反応も良かったので気にはならなかった。おそらく水沢は輸送も影響したんじゃないかな。今日、ようやく勝つことができてホッとした。次はひまわり賞とオパールカップの両にらみ。どっちを選ぶか、どちらも使うかは状態を見た上、オーナーと相談して決めたいと思っています」
勝ったのは2レースとも山本政聡騎手。勝ち星以上に今シーズンの冴えが目を引く。片や追い込み、一方は逃げ切り。両レースとも山本政聡騎手の好プレーも光った。
スノーパトロールは今回プラス24キロ。ダイヤモンドカップは前走比プラス19キロで3着。続く東北優駿はマイナス15キロで4着。そして今回も大幅増で出走したが、しっかり結果を出した。見た目の数字だけで判断するのは危険だなぁと改めて思いました。
今週の岩手競馬
7月2日(日) 「第55回岩鷲賞」(オープン 盛岡ダート1200m)
7月3日(月) 「小暑特別」(A級一組 盛岡ダート1600m)
7月4日(火) 「かきつばた賞」(オープン 盛岡芝1700m)
20日(日)、水沢2000mを舞台に「第51回一條記念みちのく大賞典」が行われ、4番人気ヴァケーションが8馬身差で圧勝。鮮やかな逃げ切りを決め、昨年、シアンモア記念以来、2勝目も重賞制覇で飾った。
村上忍騎手「戦法は特に決めてなかったが、結果的に内枠だったので逃げの手になった。道中は力みがなく、リズム良く走れていたので、いい形でレースを運べた。水沢では最後でちょっと差される競馬が続いたから、馬の力を信じて最後まで気を抜かないように心がけた。前回(シアンモア記念)は気が入りすぎて凡走したので、きゅう舎スタッフと相談して調整の仕方を変えたのも良かったかもしれない。ようやくヴァケーションで結果を出せたし、ボク自身も久々(一昨年・不来方賞=マツリダスティール)以来の重賞制覇だったので、非常にうれしいです」
少々、解説をさせていただきたい。シアンモア記念7着は気が入りすぎたのも敗因だったという。実は最終追い切りを村上忍騎手に依頼した。結果、好タイムをマークしたが、これでヴァケーションにスイッチが入ったかもしれない。
競走馬は非常に繊細。このパターンで凡走するケースは決して少なくない。もちろん大一番だから、実戦並みの追い切りは必要だが、中には実戦と勘違いすることもままある。
以上のことを踏まえて陣営は1週前追い切りを村上忍騎手に頼み、最終追い切りはいつも騎乗する調教師補佐が敢行した。結果、力みがなくなり、リズムよくレースを進めることができた。
また村上忍騎手は昨年、重賞未勝利。岩手のトップを張り続けたジョッキーが重賞を1勝もできなかった。おそらく自分自身が一番ショックだったと思う。今回、それをついに払拭。メインコメントに入れなかったが、「ホッとした」とぼそり。久々の重賞制覇の喜びは、想像以上に大きかった。
続いて畠山信一調教師「シアンモア記念は凡走したが、馬場と調子だったと思う。今回はいい状態で臨めたし、ジョッキーの好判断も勝因。みちのく大賞典を勝って馬運車に名前が刻まれるのが目標でしたから、夢が一つ叶いました。次走予定は昨年と同じくマーキュリーカップです」
レース直後"おめでとうございます"と声をかけると、クールで知られる畠山信一調教師が"やったぜ!"と力を込めて返してくれた。こちらにも感動と興奮がヒシヒシと伝わってきた。
振り返れば鳴り物入りで昨年転入。ちょくちょく匂わしていたが、話は一昨年からあったという。それで茨城の牧場に会いに行ったが、岩手競馬は終盤にさしかかり、馬場の悪い時期には走らせたくないと判断。入厩を春まで待ってもらった。
初戦の赤松杯は2着だったが、久々を考えれば収穫大。やれる手ごたえをしっかりつかみ、続くシアンモア記念を快勝。ヴァケーションを見事復活させた。続いてみちのく大賞典3着からJpnIII・マーキュリーカップでも3着に健闘。以降も王道を歩み続け、年度代表馬に選出されたが、シアンモア記念の1勝のみ。勝負事だから...と語りながら、畠山信一調教師はずっと忸怩(じくじ)たる思いだったに違いない。
畠山調教師「これで、仮に引退した後でも馬運車ヴァケーション号を見ることができる。調教師冥利に尽きます」
改めて言いたい。畠山信一調教師、オーナーの鈴木雅俊さん、担当者の川島学くん、そして村上忍騎手。優勝おめでとうございます!
今週の岩手競馬
25日 メイン11R 「第47回ウイナーカップ」(3歳 盛岡ダート1400m)
26日 メイン12R 「朝顔賞」(B1級 盛岡芝1700m)
27日 メイン11R 「はまなす賞」(3歳準重賞 盛岡芝1600m)
先週4日、水沢850mを舞台に「第8回早池峰スーパースプリント」が行われ、単勝1・2倍の1番人気に支持されたキラットダイヤが6馬身差で逃げ切り圧勝。余裕で3連覇を達成した。
鈴木祐騎手「今日は最初からハナに立ってレースをするつもりだった。スタートは各馬が五分だったが、二の脚が速い馬ですからね。内の馬を交わすのに少しだけ手間取って、ちょっと仕掛けたら思いのほか加速がついてしまって予想よりリードが大きくなったかなと思った。それでもコーナーでは手応えが十分あったし、直線も反応してくれたので、あとは馬を信じて乗るだけでした」
板垣吉則調教師「オーナーと相談して今年の始動は南関東からと決まっていたので、4月に一度船橋で使ってきたのは予定どおり。こちらに来てからはすごく順調で仕上げも楽。馬体重も絞れていましたしね。今日のレースを見る限り6歳になっても力は落ちていない。強いて言えば昨年の良い頃に比べるとまだそこまでは、と調教に乗ってみて感じるけど、これから暖かくなったら昨年の状態に戻ってくれるのではないでしょうか。次戦は岩鷲賞の予定。次も3連覇がかかっているので頑張りたいですね」
当日の馬体重は前走からマイナス14キロの473キロ。いきなり減りすぎではと思うかもしれないが、一昨年は474キロ、昨年は478キロで優勝。陣営の想定どおりきっちり仕上がっていたし、実際パドックでもまったく細く映らなかった。昨年は7馬身、今年は6馬身で圧勝。850m戦でこの着差は、能力の違い以外何ものでもない。改めてキラットダイヤの強さに感服した。
その日、グリーンチャンネルの地方競馬中継の解説を担当させてもらったが、金沢では伝統の「第66回百万石賞」(2100m)が行われ、ハクサンアマゾネスが2着に2秒9の大差をつけて圧勝。"怪物"ジャングルポケットに続く3連覇の偉業を達成した(ジャングルポケットは2年置いて2連覇の5度優勝)。
ハクサンアマゾネスの強さにも舌を巻いたが、奇しくも同じ6歳牝馬、そして栗毛。3連覇も共通した。強い馬が強いレースで勝つ―。これも競馬の醍醐味といっていいだろう。
もう一つお伝えしたいことがある。6月4日、第2Rで今季第2弾の2歳新馬=ファーストステップ(水沢850m)が行われ、フジユージーンが2着ダイセンサラーに2秒2差をつけて圧勝。しかもほぼ馬なりだった。父ゴールデンバローズはアメリカの大種牡馬タピット産駒でいわゆるマル外。ダート6勝。重賞勝ちはなかったが、UAEダービー3着。このフジユージーンが初年度産駒だが、いきなり超大物を送り出した。
このまま順調に使われて、順調に成長していけば世代No.1は疑いなし。そう思わせるほど強烈なパフォーマンスだった。みんさんフジユージーンの名前を記録にとどめてほしい。
今週の岩手競馬
6月11日(日) 「第31回東北優駿(岩手ダービー)」(3歳 水沢2000m)
6月12日(月) 「夢・希望・未来へ前進」(B1 水沢1400m)
6月13日(火) 「ジューンカップ」(B2 水沢1900m)
先週7日、春の総決算「第48回シアンモア記念」(盛岡ダート1600m)が行われ、5番人気ノーブルサターンが2馬身差で完勝。トウケイニセイ記念、桐花賞に続いて重賞3勝目を手にした。2着には8番人気スズカゴウケツが突っ込み、3着に4番人気セイヴァリアント。3連単49万900円の特大万馬券が飛び出した。
意外に荒れることで定評があるシアンモア記念。2017年に牝馬ユッコ(6番人気)が快勝して3連単13万3880円、2013年、同じく牝馬トウホクビジン(6番人気)が優勝して3連単16万530円の高配当を記録したが、49万円は過去最高の配当。さすがにお手上げだった。
板垣吉則調教師「前走後はオーバーワークにならないように調整した。赤松杯では勝ち馬に水をあけられたが、休み明けの部分とかいろいろ要因があったのだと思う。その部分を今回の条件、盛岡のような大きいコースで、左回りのワンターンの条件で、どれだけ詰められるかとは考えていたが、今回は本当に理想のレースをしてくれた。次はみちのく大賞典を目標に進めていきたいと思う」
勝因を考えてみたい。まずはハロンラップ。12秒9-11秒8-11秒8-11秒7-11秒9-11秒8-11秒9-12秒4。前半3ハロン36秒5、上がり3ハロン35秒9。専門紙はスローペースにしなければならないのも当然だが、これほどきれいに11秒台のラップを刻むのは珍しい。南部杯ならともかく、地元重賞では一度ラップが緩み、息が抜ける流れになる。
しかし今回はゴールデンヒーラーが逃げ、直後2番手にヴァケーション。結果的にゴールデンヒーラー6着、ヴァケーション7着。共倒れになるほど息が抜けない流れとなった。
それなら3番手外を追走したノーブルサターンも同様に沈んでも不思議はないが、中央ダート4勝・オープンに在籍。マーキュリーカップで2着、兵庫チャンピオンシップ2着など実績に加え、JRAの速い流れを何度も経験していたことが大きかったに違いない。
2着確保したスズカゴウケツも中央ダート3勝馬。一方、グローリーグローリはスタートで若干出負けした上、前半で折り合いを欠いたのが痛かった。
ノーブルサターンは馬体重が前走比マイナス1キロ。赤松杯は過去最高の545キロで臨み、伸びひと息だったが、今回は大型馬らしくひと叩きされた変わり身も大きかった。
ただゴールデンヒーラーの6着は意外だった。久々に直線失速する姿を見た。原因は何だったのか。発情期を迎えたのか。ノーブルサターンが馬っ気を出していたので可能性がない訳ではないが、あくまでも想像の域。改めて競馬の難しさを思い知った。
今回のメンバーはほぼ一條記念みちのく大賞典へ向かう。そこでの決着はどうなるのか。一ファンとしても興味深い。
今週の岩手競馬
5月14日(日) メイン11R「夢・希望 未来へ前進」(B1級五組 盛岡ダート1600m)
5月15日(月) メイン12R「チャイナアスタ賞」(B1級三組 盛岡ダート1600m)
5月16日(火) メイン11R「ネモフィラ賞」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
4月30日(日)、岩手クラシック一冠目「第43回ダイヤモンドカップ」(盛岡ダート1600m)は単勝1・2倍の圧倒的支持に応え、ミニアチュールが快勝。この勝利で北海道から転入後、無傷の5連勝。重賞4連勝を飾り、No.1の座を盤石のものにした。
ただ、余裕の勝利ではなかった。直線でリッキーナイトが猛追。0秒1差まで肉薄された。理由はいくつかある。まず生涯初めての左回り。「ところどころフワフワして、コーナーで外に張り気味だった」と山本聡哉騎手。返し馬もずっと右手前で走っていた。
とはいっても道中の手応えは上々。4コーナーでは逃げの手に出たダレカノカゼノアトを馬なりで捕らえ、余裕でゴールに入るかと思った。ところが盛岡の上り坂を過ぎた後、手応えが怪しくなって鞍上の手が動いた。最後は地力で押し切ったが、ヒヤッとさせるシーンだった。
これが競馬の難しさ。初の盛岡、初のバンケットにミニアチュールはとまどった。ハロンラップもそれを裏付けている。スタートから12秒7-11秒5-12秒0-12秒4-12秒5-12秒1-12秒6-13秒6。
前半3ハロン36秒2-上がり3ハロン38秒3。特に注目してほしいのはラスト2ハロン。盛岡ダートでは4コーナーからゴールまでだが、12秒6-13秒6。いかに上り坂がこたえたか、が一目瞭然。ミニアチュールの上がりが38秒1に対し、リッキーナイトは37秒8。メンバー最速の上がりでミニアチュールに襲い掛かった。
ミニアチュールは水沢1600mを難なくこなしたが、盛岡マイルは相当こたえた。それでもしっかり勝ち切れるのが強さの証であるのは間違いない。
佐藤祐司調教師「課題だった輸送はうまくクリアーできた。返し馬が右手前だったが、今回が初めての左回り。次はもう少し良くなってくるはず。この馬の能力は相当レベルだと思うが、牡馬はこれからどんどん成長する。実際、最後はリッキーナイトに差を詰められましたからね。今後は成長力がカギになると思います」
エンパイアペガサスで一時代を築いた佐藤祐司調教師。さすが、牡馬クラシック一冠目を制したことを喜びながらも、冷静さは忘れていない。エンパイアペガサスも3歳を迎え、走るたびに力をつけていった。
ミニアチュールの今後については「次走のことは柔軟に考えている。メインはもちろん東北優駿だが、馬の状態などと相談して決めたいと思っています」
今年の東北優駿(岩手ダービー)は6月11日(日)、舞台は水沢2000m。余裕で4連勝を飾った水沢に戻るのは100%プラス材料だが、距離がカギ。佐藤祐司調教師「柔軟に考えている」のは2000mを選んでいいか否か。決断を待ちたいところだ。