9月3日(日)、岩手クラシック三冠目「第55回不来方賞」が水沢2000mを舞台に行われた。単勝1・1倍の圧倒的1番人気に支持されたのは、史上初の牝馬による牡馬三冠制覇の期待がかかったミニアチュール。
何度も記したが、北海道2勝から転入後、破竹の7連勝中。ダイヤモンドカップ、東北優駿(岩手ダービー)の牡馬二冠、さらには岩手版オークス・ひまわり賞も制し、3歳戦線を独走し続けた。
逃げたのは、そのミニアチュール。2番手にマツリダワールドがつけ、3番手外にリッキーナイト。ルーンファクターは前走、やまびこ賞は最後方から直線一気で快勝したが、今回は4番手インを追走した。
ミニアチュールは快調に飛ばしたように見えたが、勝負どころの3コーナーで手ごたえが怪しくなって一杯。替わってマツリダワールドが先頭に立ったが、間髪入れずルーンファクターが交わし、あとは後続を突き放す一方。2着マツリダワールドに7馬身差をつけてゴールに入った。
坂口祐一騎手「道中は後ろすぎず前すぎず。前3頭の後ろはちょうどいいポジション。ミニアチュールを見ながら、ロスなくレースを進めることができた。前回(やまびこ賞)は最後方からの競馬だったが、水沢は形状が違いますからね。3コーナーから少しずつスパートをかけたのは急に追い出すとカッとなったり、反抗したりするところがあるから。この馬にいい流れになったと思う。直線を向いてビジョンを観たら、後ろの馬がいないと分かったので勝ったなと思いました」
また雑談でこうつけ加えた。「門別2戦目を勝った時、道中置かれたが、凄い脚で伸びていたので、やまびこ賞は同じ戦法を採った。でも今回は小回り水沢なので同じポジションではとても届かないので、早め追走した。栄城賞(九州ダービー)は折り合いを欠いて失速したが、スムーズにレースを運ぶことができれば力を出せると思った。乗っていて気分屋のところがあって、よくわからない面があるが、能力は高いと思います」
確かに南関東移籍2連勝後、12月7日の「ひばり特別」では後に無敗で南関東三冠馬に輝いたミックファイヤの1秒差3着にまとめていた。
千葉幸喜調教師「前回は休み明けもあって半信半疑だったが、走ると分かったので中間は馬体重を気にせず、とにかく攻めたのが良かったと思う。ジョッキーには別段、指示を出していない。前回で結果を出してくれましたからね。次走はダービーグランプリへ直行。今年は南関東などから強豪が来ると聞いているが、岩手代表として恥ずかしくない競馬をしたいと思っています」
一方、4着に敗れたミニアチュール。転入後、初めて敗戦を喫したが、7月11日、ひまわり賞以来とレース間隔が開いたのも影響したか。ただ、一見スローに見えた不来方賞だったが、前半1000m62秒6に対し後半1000mは66秒2。優勝タイムも東北優駿は2分11秒3だったが、今回は2分8秒8。思った以上に厳しい流れだった。
明暗がくっきり浮き彫りとなった第55回不来方賞。ルーンファクター、ミニアチュールの今後の動向に注目したい。
今週の岩手競馬
9月10日(日) 「第31回青藍賞」(オープン 水沢1600m)
9月11日(月) 「白露特別」(A級一組 水沢1600m)
9月12日(火) 「スプリント特別」(オープン 水沢1300m)
15日(月)、盛岡ダート1200mを舞台に行われたJpnIII「第28回クラスターカップ」はリメイクが完勝。衝撃的なゴールだった。
レースは予想どおりドンフランキーが逃げ、内からアップテンペストも先行する構えを見せる。3番手外にスペシャルエックス、その内にオーロラテソーロ。5番手インにリュウノユキナ。リメイクは中団を追走。3コーナーでは先陣グループとは10馬身以上の差があった。
逃げるドンフランキー、2番手外にスペシャルエックス、オーロラテソーロも遅れず追走したが、3~4コーナーからリメイクが満を持してスパート。先陣グループはドンフランキーを基軸に外を回ったが、リメイクはインを強襲。いつ抜け出したか分からなかったが、外目コースで逃げるドンフランキーを残り200mで捕らえた。レースリプレイ、川田将雅騎手のコメントで分かったが、リュウノユキナの内から一瞬のうちに突き抜けた。
あとはリメイクの独壇場。ドンフランキーに2馬身半差をつけ、カペラステークスに続いて重賞2勝目を手にした。この時、リメイクが使った脚が上がり3ハロン33秒5!。レース上がりが35秒0。いかに強烈な末脚だったか、この数字でも一目瞭然だった。盛岡ダート1000m戦なら過去に記憶があるが、盛岡ダート1200mで33秒5は史上最速。リメイクの末脚に舌を巻いた。
川田将雅騎手「ポジションは気にすることなく、馬のリズムを優先したら中団からの競馬になった。直線は外に行く形にならなかったので、並びから内を選択した。前回(プロキオンステークス)負けた相手ですし、直線で渋太く残っていたから、こちらも最後まで頑張ってもらった。これから楽しみな将来が待っている馬ですので、無事に勝ち切れて何よりです」
新谷功一調教師「(鞍上が)スタートから馬のリズムを狂わさずにレースを進めてくれた。ドンフランキーにどこまで粘られるか心配だったが、雪辱を果たせた。前回2着に敗れ、きゅう舎一同が悔しい思いをした。プロキオンステークスが初対決だったから、心理的な戦いでもあった。リメイクの強さはわかっていたが、ほんの少し足りなかった。今回はそれを調整して臨んだが、1200m戦でよりリメイクの良さが出たと思う。今のところ韓国(コリアスプリント)に登録しているが、馬の状態を見ながら次走を決めたいと思っています」
どうやら陣営はアメリカのブリーダーズカップ・スプリント(今年はサンタアニタ競馬場)も視界に入っている模様。ぜひ、夢を実現してほしいと思う。
自分は本命ドンフランキー、対抗リメイクにしたのには訳がある。クラスターカップは基本、先行馬に有利だったからだ。前半ハイペースで飛ばしても、そのまま押し切るレースを何度も見てきた。ドンフランキーは前半3ハロン33秒6、上がり3ハロン35秒4。決して脚が上がったわけではなかった。普通なら逃げ切れるパターンだった。
リメイクの海外2戦リヤドダートスプリント、ドバイゴールデンシャヒーンのビデオを何度も観た。確かに直線の伸びはすばらしかったが、それでも3、5着。ましてや盛岡ダート1200mで届くか半信半疑だったが、リメイクの破壊力が凄すぎた、強すぎた。思わず脱帽した。次走の決定を待ちたい。
今週の岩手競馬
8月20日(日) メイン10R 「第41回ビギナーズカップ」(2歳 水沢1400m)
8月21日(月) メイン12R 「秋桜賞」(B1級 水沢1400m)
8月22日(火) メイン11R 「夢・希望・未来へ前進」(B1級一組 水沢1600m)
先週は注目レースの3連発。7月30日(日)は地方競馬全国交流「第45回せきれい賞」(盛岡芝2400m)。1番人気はトライアル・かきつばた賞を快勝ゴールドギアだったが、4番人気ヴィゴーレが快勝。大井4度目の優勝を果たした。
矢野貴之騎手「今回で騎乗2度目だから、前半はリズムを優先。難しいことは考えず馬の行く気にまかせた。ロードクエストが早めに動くだろうと思っていたが、内から来られたのは想定外。ですが、目標とする馬がいたので、いい位置で競馬ができた。直線入り口まで手ごたえが良かったので、大事に追い出せば勝てると思った。せかしていいタイプではないし、跳びが軽いので芝2400mも合いましたね。暑い中、このレースへ向けてスタッフがしっかり仕上げてくれたので自信を持って乗ることができました」
高野毅調教師「2ヵ月ぶりの実戦を叩いて、このレースを使うのは予定どおりのステップ。2歳時にGI・ホープフルステークスに挑戦するぐらいですからね。芝適性があると確信していた。元々、スタートがあまり良くないタイプなので、芝2400mも合ったと思います。まだ勝ったばかりですから、今後については白紙。馬の状態と相談しながら、じっくり考えたい」
ヴィゴーレのオーナーは前田幸治さんで中央3勝クラスから南関東へ移籍したキズナ産駒。おそらく愛着が強いのだろうと思う。地方芝だったとは言え、重賞初制覇はとてもうれしかったに違いない。
翌31日(月)はビューチフルドリーマーCトライアル「第24回フェアリーカップ」(盛岡ダート1800m)。ゴールデンヒーラー、まさかのエントリーだったが、シアンモア記念6着、みちのく大賞典8着に凡走。陣営は背水の陣で臨んだが、復活劇を演じてくれた。
山本聡哉騎手「負けられない一戦だったが、不安材料がない訳ではなかった。今回は半信半疑で臨んだ。返し馬の感触がもう一つでしたし、スタートで出遅れて内に包まれる競馬になったが、逆にやる気が出た感じ。闘志に火がついて最近にはない強いレースをしてくれた。次につながる内容だったと思います」
佐藤祐司調教師「横を向いたときにゲートが開いたので出遅れた。久々に包まれて嫌気が差さないか心配でしたが、力強く抜け出してくれた。(ゴールデンヒーラーのレースで)こんなにハラハラしたのは初めて。圧勝してくれてホッとした。今後については昨年と同様、青藍賞から南部杯を考えている。あくまでも予定だが、盛岡1600mがベストの舞台ですからね」
岩手競馬リリースにもあったように山本聡哉騎手は翌日からリタイア。右手中指の手術をする。一日も早い復帰を待ちたい。
8月1日(火)は今シーズン第一弾の2歳重賞「第24回若鮎賞」(盛岡芝1600m)。盛岡芝を経験したのはセイバイラック1頭のみ。人気はデビュー2連勝リトルカリッジに集中したが、8頭立て(1頭取り消し)8番人気のユウユウププリエが快勝。単勝1万2600円、3連単58万1560円の特大万馬券が飛び出した。
菅原辰徳騎手「先生(佐藤祐司調教師)ときゅう務員さんが芝が合うと挑戦を決めたのがベストな選択。そのおかげで勝つことができました。実際、ダートの時よりも前に行きましたから、道中は脚を貯めてレースを進めた。直線に入っても手ごたえが良く、思い切って外に出したら伸びてくれた。自分も昨年のイーハトーブマイル(フジクラウン)以来の重賞でしたから、とてもうれしいです」
佐藤祐司調教師「大好きな形の馬だが、全然、走らなくてタイムオーバーのレベル。何でかなと思って芝を使ってみようと決めたが、動きが一変した。こういうことってあるんですね。芝が合うことが分かったのでレース間隔は開くが、ジュニアグランプリを目指したいと思います」
競馬は実際に走ってみないとわからない。それを端的に表すレースとなった。
今週の岩手競馬
8月6日(日)「第36回やまびこ賞」(3歳 盛岡ダート1800m)
8月7日(月)「夢・希望・未来へ前進」(B1級三組 盛岡ダート1600m)
8月8日(火) 「マルカブ賞」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
7月17日(月祝)、海の日に「第27回マーキュリーカップ(メイセイオペラ記念)」(JpnIII 盛岡ダート2000m)が行われた。優勝は1番人気ウィルソンテソーロ。テリオスベルを残り200mで捕らえると、一瞬のうちに突き放して4馬身差で圧勝。かきつばた記念に続いて重賞2連勝を飾った。
詳細レース報告はウェブハロンで書いたので、そちらを読んでほしいが、ここではそれ以外のネタをお伝えしたい。ウィルソンテソーロは次走以降について未定だが、今回の圧勝で陣営は手ごたえをしっかりつかんだ。まだJpnIII2勝。今のダート界は強豪が目白押しでハードルは決して低くはないが、反応の鋭さを考えるとチャンピオンズカップ向き。川田将雅騎手「今後はもっと上のステージでも戦えるよう、準備ができてほしいと思います」。まったく同感だ。
テリオスベルは2年連続でマーキュリーC2着。相変わらずスタートダッシュは一息。外から次々と被せられて中団まで下がったが、200mぐらい走ったところ、馬群がばらけてうまく外に出した。そこから手をしごいて2コーナー過ぎにハナを奪った。あとはマイペースに持ち込んで、3コーナーで後続に3馬身差。4コーナーでも同様のリードを保ったが、ウィルソンテソーロの末脚にはお手上げ。むしろ2着を死守したことを褒めるべきだろう。余談だが、江田照男騎手は4コーナーまでのリードを確認して「もしかすると」と思ったそうだ。
3着メイショウフンジンは大外から逃げたが、鞍上のアクションを見れば、当初からの作戦だったようだ。テリオスベルがハナを主張―も想定どおりだが、基本は逃げ馬。交わすまでには至らなかった。
4着バーデンヴァイラーはスタート直後に内によれて態勢を立て直し、ウィルソンテソーロの直後を追走。3コーナーでも一緒に上がっていったが、3着からも7馬身差離された。坂井瑠星騎手「最初バランスを崩し、右前の落鉄の影響もあったのか、勝ち馬があがって行ったときに動いたが、伸びがなかった」。今年は外から被せられることがなく自分の競馬はできたが、案外の結果。目黒記念の影響があったか。答えは次走に出るに違いない。
5着サンライズホープは今年3戦連続で二けた着順だったが、ひとまず巻き返しに転じた。パドックで馬っ気を出して集中力を欠いたのではと幸騎手に聞いたが、「レースには影響なかった。内枠に入ったが、思ったどおりの競馬ができた。キックバックを嫌がるタイプだけど頑張ってくれた」。復調の兆しがうかがえたかもしれない。
7着ヴァケーションは3番手インを追走。昨年は3着に健闘したが、村上忍騎手「行きたかったので前の競馬になった。ああなれば引くに引けないから、それで最後は一杯なってしまった」。一條記念みちのく大賞典に比べてテンションが高かったのも敗因か。競馬は難しいと改めて思った次第。
今週の岩手競馬
7月23日(日) 「第11回ハヤテスプリント」(3歳・地方競馬全国交流 盛岡ダート1200m)
7月24日(月) 「浜木綿賞」(B1・盛岡芝1600m)
7月25日(火) 「夢・希望・未来へ前進」(B1・盛岡ダート1600m)
7月2日(日)、クラスターカップ・トライアル「第55回岩鷲賞」(盛岡ダート1200m)を舞台に行われた。単勝1倍の元返し、圧倒的1番人気に支持されたのはキラットダイヤ。南関東から再転入戦の早池峰スーパースプリントを6馬身差で圧勝。3連覇の偉業を達成し、今回の舞台は6戦5勝の盛岡1200m。唯一の敗戦はJpnI・JBCスプリント10着のみ。ほかはすべてワンサイド決着で決め、岩鷲賞3連覇を誰もが疑わなかった。
逃げたのは好枠を利してハナレイ。2番手にアップテンペスト、3番手外にキラットダイヤ。道中の手ごたえもすばらしく、直線入り口では馬なりでハナレイに並んだ。これで勝利を確信したが、いきなり減速。逃げたハナレイも捕らえることができず3着に敗れた。
勝ったのは4番手インで脚を貯めていたトーセンキャロル。直線一気に突き抜けて4馬身差で圧勝した。レース上がり3ハロン37秒3に対し、トーセンキャロルは35秒8。驚異的な末脚を披露した。
高橋悠里騎手「3頭が飛ばしていったので、強い馬(キラットダイヤ)を見ながら自分のペースでレースを進めた。いいリズムで行けたと思ったが、正直あんなに脚を使うとは思っていなかったので、久々にガッツポーズが出た。気性も素直で操縦性もある。今後も楽しみです」
佐藤浩一調教師「中央2戦目で芝1200m戦を勝っていたから、オーナーと相談して短距離路線を使っていきましょうと結論が出た。実際、昨年の牝馬二冠(ひまわり賞、OROオータムティアラ)を勝った時も末脚がすばらしかった。切れを生かせる展開も味方したと思います」
次走については白紙だそうだが、この切れる脚があるならマイル以下向き。今後の動向に注目したい。
翌々日4日(火)はせきれい賞トライアル「第25回かきつばた賞」(盛岡芝1700m)は1番人気ゴールドギアが快勝した。前半は後方に待機し、2コーナーを過ぎてロングスパートを敢行。鮮やかなまくりを決め、コスモカルナックの追撃を半馬身差封じた。
高橋悠里騎手「中央実績がある馬なので自信をもって臨んだ。前回ダート1800m(あすなろ賞2着)でクセが分かりましたからね。今日も同じような感じでだった。道中は思った以上に追走が楽だったので、イメージしたとおりの競馬ができた。前回、乗った感じだと3~4コーナーでもたつきそうな印象があった。それでレース前から2コーナーを回ったらロングスパートをかけるつもりでした。早め先頭に立ってトボけたが、内から馬が来たらまた伸びてくれた。まだ余裕がありそうなので、次も楽しみです」
伊藤和忍調教師「先頭に立つと気を抜くところがあると、レースが終わってからジョッキーが言った。それで中央時代も僅差の勝負だったんだと納得した。並べばもっと伸びると思う。若干、体重が減っていたが、次はふっくらして出走させます。次走予定はせきれい賞。中央成績から2400mはさらに合うと思うので期待している。今回は赤の胸かけだったが、今度はぜひ、紫(重賞)を取りたいですね」
せきれい賞は盛岡芝を目指して全国の地方競馬場から強豪が参戦するが、岩手の大将格はゴールドギアとなった。
今週の岩手競馬
7月9日(日) 「第24回オパールカップ」(3歳・地方競馬全国交流 盛岡芝1700m)
7月10日(月) 「ジュライカップ」(B2級 盛岡芝1600m)
7月11日(火) 「第37回ひまわり賞(オークス)」(3歳牝馬 盛岡ダート1800m)