10月9日(月)、盛岡ダート1600mを舞台に行われたJpnI「第36回マイルチャンピオンシップ南部杯」は1番人気レモンポップが圧勝。2着イグナイターに2秒差をつけてアッサリ逃げ切った。2秒の大差は南部杯史上最高着差。まさにレモンポップの独壇場となった。
まずはハロンラップをご覧になってほしい。スタートから12秒6-12秒5-11秒6-11秒7-11秒7-11秒4-10秒3-12秒6。前半3ハロン36秒7に対し、上がり3ハロンが34秒7。このラップで逃げ切られたら、後続がなすすべもなかった。坂井瑠星騎手「強いのは知っていましたから、いっしょにレースを楽しんでいました」のコメントも納得。まさに走ることを楽しんでいた感じだった。これで今年のフェブラリーステークスに続いてG(Jpn)I2勝目。現役ダート最強マイラーの座を盤石のものにした。
坂井瑠星騎手「レモンポップが栗東滞在中、調教で乗って良くなっていくのを感じましたし、今日の返し馬でもフェブラリーステークスと同様、いい状態だったと思います。プラン(戦法)は決めず、馬のリズムを優先したら逃げる形になりました。道中の手ごたえ、追ってからの反応もすばらしく、これなら負けないと思いました。ビジョンを見て、後ろを離していくのは分かってましたが、最後までしっかり追いました。ドバイ(ゴールデンシャヒーン)では悔しい思いをしましたが、国内では底を見せていません。5歳馬ですが、キャリアが少ないので、これからもっと良くなっていくと思います」
気になるのは次走だが、残念ながら田中博康調教師は不在でコメントが取れなかった。ただ戦前、陣営はシリウスステークス(阪神ダート2000m)も選択肢に入れていた。とすれば中京ダート1800mで行われるGI・チャンピオンズカップが有力か。過去最長は1600mだが、距離も我慢できるはず。決定を待ちたい。
2着はイグナイター。道中2番手をキープして直線でも後続の追撃を封じ、行った切りの決着となり、NARグランプリ年度代表馬の意地を見せてくれた。
笹川翼騎手「さきたま杯と同じくらいか、それ以上の仕上がり。返し馬で自信を持つことができました。レモンポップが強いのは分かっていたので、ついていこうと思っていました。3~4コーナーでいい感じで進められたが、最後は勝ち馬の脚色が違いすぎました。昨年4着でしたが、今年は2着。ここまできたらGIを取らせてあげたいですね」
次走予定はJBCスプリント(大井1200m)。「ベストは1400mだが、守備範囲が広いタイプ。JBCでもチャンスがあるはずです」。昨年のJBCスプリント(盛岡ダート1200m)は5着だったが、3着ヘリオスとはタイム差なし。期待が膨らむ一方だ。
今週の岩手競馬
10月15日(日) 11R「第43回若駒賞」(2歳 盛岡ダート1600m)
10月16日(月) 9R「レジェンド的場文男騎手デビュー50周年記念」(B1級 盛岡芝1600m)
10月17日(火) 9R「第16回サファイア賞」(3歳 盛岡市2400m)
文・松尾庫司
10月1日(日)、"THE FINAL"「第36回ダービーグランプリ」(盛岡ダート2000m)は歴史的名勝負となった。7頭立ての少頭数が、逆に各馬の全能力を発揮できることになるとは誰が想像しただろうか。
逃げると思われていたベルピットが出遅れて5番手からの競馬。ミックファイアが逃げの手に出て2番手にマンダリンヒーロー、3番手インにルーンファクター、4番手タイガーチャージ。後方2番手にニシケンボブ、サベージは指定席、ポツンと最後方で待機した。
残り1000mからピッチが上がり、マンダリンヒーローがミックファイアにプレッシャーをかける。ミックファイアはいつものことだが、3~4コーナーでもたつくが、それを把握していた吉原寛人騎手はミックファイアに馬体を併せて4コーナーで一度先頭。ミックファイア陣営は「一瞬ヒヤッとした。吉原寛人を敵にすると怖い」と思ったそうだが、そこから驚異的な勝負根性を発揮。内から再度伸びて1馬身半差でゴール。鳥肌が立つほどの勝利だった。
走破タイムは2分3秒0はGI時代のダービーグランプリでパーソナルラッシュがマークした2分2秒8(当時のコースレコード)に次ぐ史上最速2番目。いかにレースレベルが高かったか一目瞭然だった。
御神本訓史騎手「逃げると思っていたベルピットが出てこなかったので、だったらハナを取ろうと思った。前走(ジャパンダートダービー)ですごいメンバーと戦って勝ったので、もっと強いレースをしたかったが、見た目より太く余裕があった気がする。思ったより手ごたえが怪しかったが、反応があったので押し切ってくれた。今日は秋初戦でしたからね。それを考えれば上々だったと思う。今後は古馬との戦いになるが、壁があるので、もっと強くなってもらいたいですね」
渡邉和雄調教師「秋初戦でしたからうちの馬は余裕があったし、メンバーがそろいましたからね。まずは勝ててホッとした。レース前、ハナに行くこともあると御神本騎手と話をしたが、そのとおりになった。うちの馬はレースセンスがいいので、今まで先行できた分、アドバンテージがあったが、今回は少頭数だったから、他の馬も自分のポジションを取りやすくなったので、心臓に良くないレースになった。今回は初めての遠征競馬。馬運車に乗る前は500キロ近くあったが、飼い葉が上がって15キロほど減っていた。今後、克服しなければならない課題だと思う。3歳世代の戦いは今日が最後。これから古馬との戦いになるが、今の古馬陣はとても強いので、さらにパワーアップしなければならないと思っている。次走はJBCクラシック。これまでも大井2000mでいいパフォーマンスを見せているので、今度は挑戦する立場で好レースを期待しています」
なんという強さ、なんという勝負根性。ミックファイアが最後のダービーグランプリ勝ち馬に名前を残してくれて本当に嬉しく思う。また2着に敗れたマンダリンヒーローも帰国3戦目で本来の動きを見せてくれた。出遅れが痛かったが、3着を死守したのが北海道三冠馬の意地。そして未完の大器サベージも今後につながる内容。実に素晴らしい戦いだった。
今週の岩手競馬
10月8日(日) メイン9R 「第23回ハーベストカップ」(オープン準重賞 盛岡芝1000m)
10月9日(月) メイン12R 「第36回マイルチャンピオンシップ南部杯」(JpnI 盛岡ダート1600m)
10月10日(火) メイン12R 「初雁特別」(A級三組 盛岡ダート1600m)
先週9月26日(火)、盛岡芝の最高峰「第25回OROカップ」(盛岡芝1700m)が行われ、単勝1番人気に支持されたアトミックフォースが鮮やかな逃げ切りを決めて圧勝。2着ブレステイキングに5馬身差をつけ、ナターレ、ロゾヴァドリナ(3連覇)に続いて史上3頭目の2連覇を飾った。
笹川翼騎手「今回が初めての騎乗だったが、良く教育しているなと思ったし、返し馬も非常に良かったので自信を持って乗れた。位置取りは考えず、まずは出していこうと思っていたが、スタートが素晴らしかったので、シンプルにレースを運ばせてもらった。道中はリズムを優先させ、手応えも上々だったが、連覇はなかなかできるものではないですからね。矢野(貴之騎手)さんが大事にしてきた馬なので、答えを出せてホッとしました」
山下貴之調教師「前回(スパーキングサマーカップ)も状態は悪くなかったが、流れが合わなかった。今回は体も絞れてきたし、芝では能力が違うと思って臨んだ。次走については未定。オーナーと相談して決めたいと思います」
昨年、アトミックフォースはせきれい賞(芝2400m)、OROカップと盛岡芝ビッグ2レースを優勝。コスモヴァシュラン、ロードクエストに続く快挙を果たしたが、今年は2連覇。これで盛岡芝3戦3勝とした。ダート対応も問題なく、今後の動向に注目が集まる。
前後するが24日(日)、牝馬による短距離重賞「第10回ヴィーナススプリント」(盛岡ダート1200m)が行われ、キラットダイヤが7馬身差で圧勝。岩鷲賞3着の雪辱を果たし、同レース2度目の制覇を果たした。
鈴木祐騎手「今日は体の軽さが出てきて、いい状態で走れた。ゲートから自分で行こうという意思があったから、それならば逃げてしまおうと思った。前回は逃げないで不甲斐ない競馬でしたからね。ほかの馬に左右されないで自分で競馬を作った方が力を出せると思う。レース前は2回連続で負けてしまうかドキドキだったが、勝つことができてホッとした。競走馬は年を重ねるごとに衰えていくが、キラットダイヤは衰えなしです」
板垣吉則調教師「前回(岩鷲賞)は3着に負けてしまったが、原因が分からないまま休養に入った、きゅう舎に戻ってもどこも悪くなかったので、普通に走れば勝てると思っていた。次走は予定どおり絆カップへ向かいます」
キラットダイヤは早池峰スーパースプリントに続いて絆カップ3連覇の偉業を目指す。
今週の岩手競馬
10月1日(日) メイン11R「第36回ダービーグランプリ」(3歳・地方競馬全国交流 盛岡ダート2000m)
10月2日(月) メイン9R「オクトーバーカップ」(B2級 盛岡芝1600m)
10月3日(火) メイン12R「第1回ネクストスター盛岡」(2歳 盛岡ダート1400m)
先週は2日間連続で岩手競馬の最高格M1レースが行われた。17日は2歳芝全国交流「第25回ジュニアグランプリ」(盛岡芝1600m)。今年は遠征馬6頭、地元岩手7頭の計13頭で覇を競った。
優勝は北海道代表トワイライトウェイ(父ジャスタウェイ)。道中は5番手インを追走し、直線で外に持ち出すと鋭く反応。メンバー最速の上がりを駆使してルーラーオブダート、エイシンコソンテを並ぶ間もなく抜き去った。
落合玄太騎手「最終追い切りでこれまでの中で一番の動きを見せてくれたし、パドックも落ち着いていたので、いい状態で臨めると思った。内目の枠に入ったが、1枠の馬が速かったので4番手インは想定どおりのポジション。馬の行く気を優先させた。ダートでも1,2着を確保していましたが、手応えがいいのに最後の伸びがもう一つ。ですけど今回は追ってからの反応もすばらしく、芝が合っているなと思いました」
田中淳司調教師「1歳の時からフットワークの良さが目立っていたし、坂路を上がっていく姿もきれいだった。ただ、今の門別みたいなパワーの要る馬場向きではないんでしょうね。認定を取れなったので、取れるのはこのジュニアグランプリしかないと思い、ここを目標に調整してきた。今後については未定。オーナーと相談して決めたいと思っています」
落合玄太騎手は盛岡芝の初勝利をジュニアグランプリで飾ったが、管理する田中淳司調教師は昨年、ラビュリントスに続いて2連覇。通算でも4度目(セラミックガール、パーティメーカー)のジュニアグランプリ制覇。まさに重賞ハンターの面目躍如といった一戦となった。現時点では白紙状態だが、次走決定を待ちたい。
18日は牝馬クラシック三冠目「第4回OROオータムティアラ」(盛岡ダート2000m)。当初、ミニアチュールはダービーグランプリに向かう予定だったが、不来方賞で4着に敗れたため、急きょ路線変更した。
優勝はそのミニアチュール。先手を主張する馬がいなかったため逃げの手。ハイラップを刻み、最後は脚いろが一杯になったが、後続を突き放して2着に2秒2差をつけて圧勝。牡馬二冠に続いて牝馬二冠を獲得した。
山本政聡騎手「逃げにはこだわらず、自分のレースをやり切ろうと思っていたが、競りかける馬がいなかったので逃げることになった。ゲートでおとなしくスタートも素晴らしかった。休み明け(不来方賞)を叩いたので、その気になっていたし、後ろからもついてこない。最後は一杯となったが、牝馬同士なら力が違う。改めてポテンシャルの高さを感じた」
佐藤祐司調教師「不来方賞で敗れたからここに向かうと決めたので、間隔が短いローテーションが心配だった。今回のような牝馬限定のレースは馬の力の差が如実に表れるものだと考えていたので、相手はフジラプンツェル一頭かなと。直線は2頭の叩き合いになるのかなと思って見ていたが、4コーナーを回ったところでは勝ちパターンだなと思った。このレースを使ったのでダービーグランプリへは間隔が無くなくなった。この後は11月のロジータ記念に向かおうと考えています」
不来方賞はよもやの4着だったが、今回はうっ憤を一気に晴らした。ロジータ記念は南関東の強豪がそろうが、ミニアチュールの健闘を期待したい。
今週17日(日)から舞台は盛岡競馬場へ替わり、11月21日(火)までのロング開催。OROカップ、ダービーグランプリ、マイルチャンピオンシップ南部杯など看板レースが目白押し。岩手競馬はいよいよ佳境に入る。
先週10日、水沢1600mを舞台に行われた「第31回青藍賞」は南部杯トライアル。例年以上に注目を集めたのは昨年、南部杯で5着に健闘したゴールデンヒーラーが連覇を狙って出走したからだった。
ゴールデンヒーラーはJBCレディスクラシック出走取り消し後、北海道へ移動して休養。デビュー後、初めて放牧に出て今年2月に帰郷。満を持して栗駒賞から始動し、4角先頭から押し切って完勝。
今年も大仕事をやってくれそうな予感を抱かせたが、シアンモア記念6着、一條記念みちのく大賞典8着に凡走。前途に暗雲が立ち込めたが、牝馬準重賞・フェアリーカップを圧勝。「久々に闘志に火がついた」(山本聡哉騎手)ゴールデンヒーラーは1秒4差で圧勝した。
ただメンバーも甘かったのも事実。今回の青藍賞が正念場だったが、正攻法に出て先手を主張。あとは後続を突き放して7馬身差で圧勝。5頭立てとはいえ、ついに復活した。
山本政聡騎手「レース前は2、3番手を考えていたが、出脚(であし)が良かったので、そのまま行かせました。結果、逃げることになったから、道中は並ばれないように気をつけた。残り800mからペースが上がって厳しい競馬。後続もそうだったが、自分の馬も直線で脚が上がったので、もうひと踏ん張りしてくれとハミをかけ直した。本来、持っている力が大きいですからね。しっかり走り切ってくれました」
佐藤祐司調教師「今回は負けられないメンバーだったが、先週、ミニアチュールで三冠を狙って4着に敗れた直後でしたからね。負の連鎖が心配だったが、勝ってくれてホッとした。今日の勝利は大きいと思います。次走は南部杯へ直行。今年もいい競馬を期待しています」
弟・聡哉騎手は現在、休養中。代役で兄・山本政聡騎手が騎乗したが、プレッシャーは相当だったようだ。「レース前は顔が白かった」(佐藤祐司調教師)と笑って話していたが、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯5着も山本政聡騎手だった。今年も南部杯での健闘を期待したい。
今週の岩手競馬
9月17日(日) 「第25回ジュニアグランプリ」(2歳・地方競馬全国交流 盛岡芝1600m)
9月18日(月) 「第4回OROオータムティアラ」(3歳牝馬 盛岡ダート2000m)
9月19日(火) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級一組 盛岡ダート1600m)