10月1日(日)、"THE FINAL"「第36回ダービーグランプリ」(盛岡ダート2000m)は歴史的名勝負となった。7頭立ての少頭数が、逆に各馬の全能力を発揮できることになるとは誰が想像しただろうか。
逃げると思われていたベルピットが出遅れて5番手からの競馬。ミックファイアが逃げの手に出て2番手にマンダリンヒーロー、3番手インにルーンファクター、4番手タイガーチャージ。後方2番手にニシケンボブ、サベージは指定席、ポツンと最後方で待機した。
残り1000mからピッチが上がり、マンダリンヒーローがミックファイアにプレッシャーをかける。ミックファイアはいつものことだが、3~4コーナーでもたつくが、それを把握していた吉原寛人騎手はミックファイアに馬体を併せて4コーナーで一度先頭。ミックファイア陣営は「一瞬ヒヤッとした。吉原寛人を敵にすると怖い」と思ったそうだが、そこから驚異的な勝負根性を発揮。内から再度伸びて1馬身半差でゴール。鳥肌が立つほどの勝利だった。
走破タイムは2分3秒0はGI時代のダービーグランプリでパーソナルラッシュがマークした2分2秒8(当時のコースレコード)に次ぐ史上最速2番目。いかにレースレベルが高かったか一目瞭然だった。
御神本訓史騎手「逃げると思っていたベルピットが出てこなかったので、だったらハナを取ろうと思った。前走(ジャパンダートダービー)ですごいメンバーと戦って勝ったので、もっと強いレースをしたかったが、見た目より太く余裕があった気がする。思ったより手ごたえが怪しかったが、反応があったので押し切ってくれた。今日は秋初戦でしたからね。それを考えれば上々だったと思う。今後は古馬との戦いになるが、壁があるので、もっと強くなってもらいたいですね」
渡邉和雄調教師「秋初戦でしたからうちの馬は余裕があったし、メンバーがそろいましたからね。まずは勝ててホッとした。レース前、ハナに行くこともあると御神本騎手と話をしたが、そのとおりになった。うちの馬はレースセンスがいいので、今まで先行できた分、アドバンテージがあったが、今回は少頭数だったから、他の馬も自分のポジションを取りやすくなったので、心臓に良くないレースになった。今回は初めての遠征競馬。馬運車に乗る前は500キロ近くあったが、飼い葉が上がって15キロほど減っていた。今後、克服しなければならない課題だと思う。3歳世代の戦いは今日が最後。これから古馬との戦いになるが、今の古馬陣はとても強いので、さらにパワーアップしなければならないと思っている。次走はJBCクラシック。これまでも大井2000mでいいパフォーマンスを見せているので、今度は挑戦する立場で好レースを期待しています」
なんという強さ、なんという勝負根性。ミックファイアが最後のダービーグランプリ勝ち馬に名前を残してくれて本当に嬉しく思う。また2着に敗れたマンダリンヒーローも帰国3戦目で本来の動きを見せてくれた。出遅れが痛かったが、3着を死守したのが北海道三冠馬の意地。そして未完の大器サベージも今後につながる内容。実に素晴らしい戦いだった。
今週の岩手競馬
10月8日(日) メイン9R 「第23回ハーベストカップ」(オープン準重賞 盛岡芝1000m)
10月9日(月) メイン12R 「第36回マイルチャンピオンシップ南部杯」(JpnI 盛岡ダート1600m)
10月10日(火) メイン12R 「初雁特別」(A級三組 盛岡ダート1600m)
先週9月26日(火)、盛岡芝の最高峰「第25回OROカップ」(盛岡芝1700m)が行われ、単勝1番人気に支持されたアトミックフォースが鮮やかな逃げ切りを決めて圧勝。2着ブレステイキングに5馬身差をつけ、ナターレ、ロゾヴァドリナ(3連覇)に続いて史上3頭目の2連覇を飾った。
笹川翼騎手「今回が初めての騎乗だったが、良く教育しているなと思ったし、返し馬も非常に良かったので自信を持って乗れた。位置取りは考えず、まずは出していこうと思っていたが、スタートが素晴らしかったので、シンプルにレースを運ばせてもらった。道中はリズムを優先させ、手応えも上々だったが、連覇はなかなかできるものではないですからね。矢野(貴之騎手)さんが大事にしてきた馬なので、答えを出せてホッとしました」
山下貴之調教師「前回(スパーキングサマーカップ)も状態は悪くなかったが、流れが合わなかった。今回は体も絞れてきたし、芝では能力が違うと思って臨んだ。次走については未定。オーナーと相談して決めたいと思います」
昨年、アトミックフォースはせきれい賞(芝2400m)、OROカップと盛岡芝ビッグ2レースを優勝。コスモヴァシュラン、ロードクエストに続く快挙を果たしたが、今年は2連覇。これで盛岡芝3戦3勝とした。ダート対応も問題なく、今後の動向に注目が集まる。
前後するが24日(日)、牝馬による短距離重賞「第10回ヴィーナススプリント」(盛岡ダート1200m)が行われ、キラットダイヤが7馬身差で圧勝。岩鷲賞3着の雪辱を果たし、同レース2度目の制覇を果たした。
鈴木祐騎手「今日は体の軽さが出てきて、いい状態で走れた。ゲートから自分で行こうという意思があったから、それならば逃げてしまおうと思った。前回は逃げないで不甲斐ない競馬でしたからね。ほかの馬に左右されないで自分で競馬を作った方が力を出せると思う。レース前は2回連続で負けてしまうかドキドキだったが、勝つことができてホッとした。競走馬は年を重ねるごとに衰えていくが、キラットダイヤは衰えなしです」
板垣吉則調教師「前回(岩鷲賞)は3着に負けてしまったが、原因が分からないまま休養に入った、きゅう舎に戻ってもどこも悪くなかったので、普通に走れば勝てると思っていた。次走は予定どおり絆カップへ向かいます」
キラットダイヤは早池峰スーパースプリントに続いて絆カップ3連覇の偉業を目指す。
今週の岩手競馬
10月1日(日) メイン11R「第36回ダービーグランプリ」(3歳・地方競馬全国交流 盛岡ダート2000m)
10月2日(月) メイン9R「オクトーバーカップ」(B2級 盛岡芝1600m)
10月3日(火) メイン12R「第1回ネクストスター盛岡」(2歳 盛岡ダート1400m)
先週は2日間連続で岩手競馬の最高格M1レースが行われた。17日は2歳芝全国交流「第25回ジュニアグランプリ」(盛岡芝1600m)。今年は遠征馬6頭、地元岩手7頭の計13頭で覇を競った。
優勝は北海道代表トワイライトウェイ(父ジャスタウェイ)。道中は5番手インを追走し、直線で外に持ち出すと鋭く反応。メンバー最速の上がりを駆使してルーラーオブダート、エイシンコソンテを並ぶ間もなく抜き去った。
落合玄太騎手「最終追い切りでこれまでの中で一番の動きを見せてくれたし、パドックも落ち着いていたので、いい状態で臨めると思った。内目の枠に入ったが、1枠の馬が速かったので4番手インは想定どおりのポジション。馬の行く気を優先させた。ダートでも1,2着を確保していましたが、手応えがいいのに最後の伸びがもう一つ。ですけど今回は追ってからの反応もすばらしく、芝が合っているなと思いました」
田中淳司調教師「1歳の時からフットワークの良さが目立っていたし、坂路を上がっていく姿もきれいだった。ただ、今の門別みたいなパワーの要る馬場向きではないんでしょうね。認定を取れなったので、取れるのはこのジュニアグランプリしかないと思い、ここを目標に調整してきた。今後については未定。オーナーと相談して決めたいと思っています」
落合玄太騎手は盛岡芝の初勝利をジュニアグランプリで飾ったが、管理する田中淳司調教師は昨年、ラビュリントスに続いて2連覇。通算でも4度目(セラミックガール、パーティメーカー)のジュニアグランプリ制覇。まさに重賞ハンターの面目躍如といった一戦となった。現時点では白紙状態だが、次走決定を待ちたい。
18日は牝馬クラシック三冠目「第4回OROオータムティアラ」(盛岡ダート2000m)。当初、ミニアチュールはダービーグランプリに向かう予定だったが、不来方賞で4着に敗れたため、急きょ路線変更した。
優勝はそのミニアチュール。先手を主張する馬がいなかったため逃げの手。ハイラップを刻み、最後は脚いろが一杯になったが、後続を突き放して2着に2秒2差をつけて圧勝。牡馬二冠に続いて牝馬二冠を獲得した。
山本政聡騎手「逃げにはこだわらず、自分のレースをやり切ろうと思っていたが、競りかける馬がいなかったので逃げることになった。ゲートでおとなしくスタートも素晴らしかった。休み明け(不来方賞)を叩いたので、その気になっていたし、後ろからもついてこない。最後は一杯となったが、牝馬同士なら力が違う。改めてポテンシャルの高さを感じた」
佐藤祐司調教師「不来方賞で敗れたからここに向かうと決めたので、間隔が短いローテーションが心配だった。今回のような牝馬限定のレースは馬の力の差が如実に表れるものだと考えていたので、相手はフジラプンツェル一頭かなと。直線は2頭の叩き合いになるのかなと思って見ていたが、4コーナーを回ったところでは勝ちパターンだなと思った。このレースを使ったのでダービーグランプリへは間隔が無くなくなった。この後は11月のロジータ記念に向かおうと考えています」
不来方賞はよもやの4着だったが、今回はうっ憤を一気に晴らした。ロジータ記念は南関東の強豪がそろうが、ミニアチュールの健闘を期待したい。
今週17日(日)から舞台は盛岡競馬場へ替わり、11月21日(火)までのロング開催。OROカップ、ダービーグランプリ、マイルチャンピオンシップ南部杯など看板レースが目白押し。岩手競馬はいよいよ佳境に入る。
先週10日、水沢1600mを舞台に行われた「第31回青藍賞」は南部杯トライアル。例年以上に注目を集めたのは昨年、南部杯で5着に健闘したゴールデンヒーラーが連覇を狙って出走したからだった。
ゴールデンヒーラーはJBCレディスクラシック出走取り消し後、北海道へ移動して休養。デビュー後、初めて放牧に出て今年2月に帰郷。満を持して栗駒賞から始動し、4角先頭から押し切って完勝。
今年も大仕事をやってくれそうな予感を抱かせたが、シアンモア記念6着、一條記念みちのく大賞典8着に凡走。前途に暗雲が立ち込めたが、牝馬準重賞・フェアリーカップを圧勝。「久々に闘志に火がついた」(山本聡哉騎手)ゴールデンヒーラーは1秒4差で圧勝した。
ただメンバーも甘かったのも事実。今回の青藍賞が正念場だったが、正攻法に出て先手を主張。あとは後続を突き放して7馬身差で圧勝。5頭立てとはいえ、ついに復活した。
山本政聡騎手「レース前は2、3番手を考えていたが、出脚(であし)が良かったので、そのまま行かせました。結果、逃げることになったから、道中は並ばれないように気をつけた。残り800mからペースが上がって厳しい競馬。後続もそうだったが、自分の馬も直線で脚が上がったので、もうひと踏ん張りしてくれとハミをかけ直した。本来、持っている力が大きいですからね。しっかり走り切ってくれました」
佐藤祐司調教師「今回は負けられないメンバーだったが、先週、ミニアチュールで三冠を狙って4着に敗れた直後でしたからね。負の連鎖が心配だったが、勝ってくれてホッとした。今日の勝利は大きいと思います。次走は南部杯へ直行。今年もいい競馬を期待しています」
弟・聡哉騎手は現在、休養中。代役で兄・山本政聡騎手が騎乗したが、プレッシャーは相当だったようだ。「レース前は顔が白かった」(佐藤祐司調教師)と笑って話していたが、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯5着も山本政聡騎手だった。今年も南部杯での健闘を期待したい。
今週の岩手競馬
9月17日(日) 「第25回ジュニアグランプリ」(2歳・地方競馬全国交流 盛岡芝1600m)
9月18日(月) 「第4回OROオータムティアラ」(3歳牝馬 盛岡ダート2000m)
9月19日(火) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
9月3日(日)、岩手クラシック三冠目「第55回不来方賞」が水沢2000mを舞台に行われた。単勝1・1倍の圧倒的1番人気に支持されたのは、史上初の牝馬による牡馬三冠制覇の期待がかかったミニアチュール。
何度も記したが、北海道2勝から転入後、破竹の7連勝中。ダイヤモンドカップ、東北優駿(岩手ダービー)の牡馬二冠、さらには岩手版オークス・ひまわり賞も制し、3歳戦線を独走し続けた。
逃げたのは、そのミニアチュール。2番手にマツリダワールドがつけ、3番手外にリッキーナイト。ルーンファクターは前走、やまびこ賞は最後方から直線一気で快勝したが、今回は4番手インを追走した。
ミニアチュールは快調に飛ばしたように見えたが、勝負どころの3コーナーで手ごたえが怪しくなって一杯。替わってマツリダワールドが先頭に立ったが、間髪入れずルーンファクターが交わし、あとは後続を突き放す一方。2着マツリダワールドに7馬身差をつけてゴールに入った。
坂口祐一騎手「道中は後ろすぎず前すぎず。前3頭の後ろはちょうどいいポジション。ミニアチュールを見ながら、ロスなくレースを進めることができた。前回(やまびこ賞)は最後方からの競馬だったが、水沢は形状が違いますからね。3コーナーから少しずつスパートをかけたのは急に追い出すとカッとなったり、反抗したりするところがあるから。この馬にいい流れになったと思う。直線を向いてビジョンを観たら、後ろの馬がいないと分かったので勝ったなと思いました」
また雑談でこうつけ加えた。「門別2戦目を勝った時、道中置かれたが、凄い脚で伸びていたので、やまびこ賞は同じ戦法を採った。でも今回は小回り水沢なので同じポジションではとても届かないので、早め追走した。栄城賞(九州ダービー)は折り合いを欠いて失速したが、スムーズにレースを運ぶことができれば力を出せると思った。乗っていて気分屋のところがあって、よくわからない面があるが、能力は高いと思います」
確かに南関東移籍2連勝後、12月7日の「ひばり特別」では後に無敗で南関東三冠馬に輝いたミックファイヤの1秒差3着にまとめていた。
千葉幸喜調教師「前回は休み明けもあって半信半疑だったが、走ると分かったので中間は馬体重を気にせず、とにかく攻めたのが良かったと思う。ジョッキーには別段、指示を出していない。前回で結果を出してくれましたからね。次走はダービーグランプリへ直行。今年は南関東などから強豪が来ると聞いているが、岩手代表として恥ずかしくない競馬をしたいと思っています」
一方、4着に敗れたミニアチュール。転入後、初めて敗戦を喫したが、7月11日、ひまわり賞以来とレース間隔が開いたのも影響したか。ただ、一見スローに見えた不来方賞だったが、前半1000m62秒6に対し後半1000mは66秒2。優勝タイムも東北優駿は2分11秒3だったが、今回は2分8秒8。思った以上に厳しい流れだった。
明暗がくっきり浮き彫りとなった第55回不来方賞。ルーンファクター、ミニアチュールの今後の動向に注目したい。
今週の岩手競馬
9月10日(日) 「第31回青藍賞」(オープン 水沢1600m)
9月11日(月) 「白露特別」(A級一組 水沢1600m)
9月12日(火) 「スプリント特別」(オープン 水沢1300m)