10月14日(月) 「第37回マイルチャンピオンシップ南部杯」(JpnI 盛岡ダート1600m)
今年の最大ネックはスタート。昨年、レモンポップは3番枠から主導権を握り、2着イグナイターに2秒の大差をつけて圧勝した。しかし今回は最内1番枠に入り、昨年と同様、うまくスタートを切れるか否か。レース後、田中博康調教師も「1番枠なので戦法が限られると思っていたが、うまく先手を取ってくれた」とコメント。最終追い切りの遅れと1番枠が不安材料だったという。
坂井瑠星騎手がうまくクリアーしたが、大外からペプチドナイルが徐々に内側に入ってレモンポップに馬体を併せる。半馬身ほど抜けた場面もあったが、レモンポップ=坂井瑠星騎手がそうはさせないとハナを譲らなかった。
昨年のラップと今年のラップを比較すると非常に分かりやすい。今年は前半3ハロン35秒1―上がり3ハロン36秒6、走破タイム1分35秒9。昨年は前半3ハロン36秒7―上がり3ハロン34秒7、走破タイム1分33秒8。
前半3ハロンを比較すると昨年より1秒6速かったが、走破タイムが1分35秒9。昨年より2秒1も遅かった。それを考えるとペプチドナイルのプレッシャーが半端ではなかったことが一目瞭然だった。
レモンポップは半馬身から1馬身リードしたまま直線へ突入。ペプチドナイルが差を詰めるが、再び離しにかかるレモンポップ。そのままゴールへ突入し、レモンポップが0秒1(半馬身差)で逃げ切った。
1着・レモンポップ=坂井瑠星騎手
「ヒヤヒヤしたが、無事に勝つことができて良かった。1週前の追い切りは問題なかったが、田中(博康)調教師から最終追い切りは70点と言われていたが、その点数なら大丈夫。この馬の走りができれば負けないと思っていた。最内枠に入ったので逃げれれば逃げようと思っていたし、相手はペプチドナイル1頭だと思って先手を取った。去年と同じように4コーナーで引き離さそうと考えていたが、なかなか離せなくて苦しいレースになった。ゴール前はぎりぎりだったが、何とかしのいでくれた」
田中博康調教師
「プレッシャーをかけられて接戦になったが、勝つことができてホッとしている。今回、放牧から帰ってきて歩様がいい状態で順調に調整できたが、最終追い切りで遅れてしまった。相手に合わせる形だったにせよ、不安材料ではあった。それに1番枠なので戦法が限られると思っていたが、うまく先手を取ってくれた。今回は(ペプチドナイルが)負かしにきたので楽はできないと思っていた。中間の感じを踏まえるといい内容だったと思う。今後についてはオーナーと相談して決めたい。いろんな選択肢があると思っている」
2着・ペプチドナイル=藤岡佑介騎手
レース前、岩手の取材に対して「ガチンコ勝負に持っていく」(武英智調教師)の宣言どおり、外14番枠から徐々に前に進出してレモンポップの外で馬体を併せる。あとは2頭のマッチレース。昨年のフェブラリーS優勝馬と今年の覇者の攻防は見応え十分。最後は半馬身差2着に敗れたが、ワンターンのダートも合う。藤岡佑介騎手「真っ向勝負をして負けたのは悔しいが、いい競馬ができたと思う。どこかで逆転したいと思っている」
3着・キタノヴィジョン
中団でレースを進め、直線は迷わず内に進路を取り、メンバー最速の上がりで3着を確保した。ダート1600mは3歳5月以来2度目だったが、難なく克服した。萓野浩二調教師「前が引っ張ってくれたので、おあつらえの展開になってくれた。繰り上がりで出走できて運も良かった」
4着・ミックファイア
前2頭とは離れていたが、積極的に攻め続けて4着。最後は一杯となったが、負かしに行っての競馬。復活の手ごたえを十分につかんだ。吉原寛人騎手「5ヵ月ぶりの実戦だったが、体が立派になって逞しくなった。しっかり競馬をしての4着だったので納得。次が楽しみ」
5着・アラジンバローズ
下原理騎手「目標が5着だったので、よく走ってくれた。もう一歩前で競馬ができたらと思うが、さすが新子(雅司調教師)さんです」。次走はJBCスプリント(佐賀)を予定している。
今週の岩手競馬
10月20日(日) 「第44回若駒賞」(2歳 盛岡ダート1600m)
10月21日(月) 「オクトーバーカップ」(B2級 盛岡ダート1600m)
10月22日(火) 「夢・希望 未来へ前進」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
10月6日(日) 「第2回ネクストスター盛岡」(2歳 盛岡ダート1400m)
最内1番枠に入ったラポジートが逃げ、2番手にポマイカイ、3番手にピカンチフラワー、4番手にマツリダマスラオ、1番人気サウザンドマイルはその後ろを追走した。ラポジート、ポマイカイは快速で知られた2歳馬。前半35秒9は2歳馬としてはハイペースだった。
4コーナー手前まで隊列はほぼ変わらなかったが、ポマイカイが徐々にラポジートに接近。直線入り口で先頭に立ち、後続も一気に進出してきたが、前半のリードした分も味方に、2着サウザンドマイルに1馬身半差をつけて押し切った。
1着・ポマイカイ=高松亮騎手
「菅原勲きゅう舎の馬に乗るのは久々でしたから、騎乗依頼を受けて以降、レース前までは少し緊張した。ですが最高の形で勝つことができてホッとした。前半は行く馬がいたので出しすぎず置かれすぎず。ペースは速かったと思うが、2頭とも行く馬なのでリズムを大事にした。勝負どころから動こうと思っていたら、馬も反応してくれた。さすがに最後は脚が上がり気味になったが、頑張ってくれました。前走(ビギナーズカップ2着)から折り合いがつくようになったので、自信を持って臨んだ。騎乗チャンスをいただき、恩返しができました」
菅原勲調教師
「今回の追い切りも最高に良かった。課題だった折り合いも問題がなかったし、前半の貯金も大きかった。初騎乗だったが、鞍上もうまく乗ってくれた。おそらく1400mはぎりぎりの距離。1200mがベストだと思う。そうなると今後の重賞は距離が合わない。それにようやく状態が良くなってきたので無理はさせたくない。もしかすると来春に向けて休養に入るかもしれない」
ポマイカイは今年春、早池峰スーパースプリント(水沢850m)を優勝したダイセンメイトの弟。父がコパノリチャードからベストウォーリアに変わったが、2戦目から行きたがって折り合いに苦労するレースの連続。しかしビギナーズカップから精神面の進境度がうかがえ、今度は完勝。収穫の多い一戦となった。レース後の雑談で菅原勲調教師が語った。「このまま成長してくれたらいっしょに遠征してみたい。ラブバレットのように」
2着・サウザンドマイル
デビュー2戦目から2連勝を飾り、芝からダート変更の若鮎賞を6馬身差で圧勝。続くジュニアグランプリは北海道勢の壁が厚く3着だったが、自身の盛岡1600m持ちタイムを2秒更新。今回は地元同士の戦いで1番人気に支持されたが、1400mでは距離不足だったか。直線猛追したが、2着にとどまった。なおレース後、軽い剥離骨折が判明。復帰は来春になる可能性が高い。
今週の岩手競馬
10月13日(日) 「ポルックス賞」(C1級一組 盛岡ダート1600m)
10月14日(月) 「第37回マイルチャンピオンシップ南部杯」(JpnI 盛岡ダート1600m)
10月15日(火) 「スプリント特別」(オープン 盛岡ダート1000m)
9月29日(日) 「第11回ヴィーナススプリント」(牝馬オープン 水沢1400m)
単勝130円の圧倒的1番人気に支持されたミニアチュールがよもやの出遅れ。まったく予期しなかった後方2番手からの競馬となった。逃げたのはトーセンキャロル。これも意表を突かれたが、盛岡3勝2着2回に対し、水沢は3着すらなし。本質的には切れ勝負型だが、山本聡哉騎手はコース特性を考えて思い切った戦法に出た。
2番手には前走OROターフスプリント5着からそのまま岩手入りしたジュランビル、3番手にグットフォーチュン、4番手インにケープライト。続いてラッピングカラーズ、ルチルクォーツの隊列。ミニアチュールは腹をくくり、後方待機先を取り、コースロスなくレースを進めた。
向こう正面でミニアチュールが満を持して前へ進出。先行グループも隊列は変わらず、逃げトーセンキャロルの外でジュランビルが馬体を併せにかかる。一方、2番人気グットフォーチュンは手応えが怪しくなって徐々に離されていき、その外からミニアチュールが外を回って進出する。直線はトーセンキャロル、ジュランビルの戦いに持ち込まれたが、直線半ばからミニアチュールが猛追。外から一気に伸びて2頭をまとめて差し切った。
1着・ミニアチュール=佐々木志音騎手
「レース前は外グットフォーチュンの動きを見ながら進めようと思っていたが、ゲートの中で態勢が悪くて出遅れてしまった。でも以前に盛岡1000mで砂を被っても怯まなかったので、慌てることはない。コーナーをロスなく回った方がいいと頭を切り替え、後方に待機して3コーナーからスパートをかけた。直線を向いても前の2頭とは離れていたので途中まで怪しいかなと心配したが、最後伸びてくれたので届いてくれると思いました。春先とは状態が全然違いますし、勝つたびに良くなっている感じがします」
佐藤祐司調教師
「ビューチフルドリーマーカップで力の差は分かっていたから、指示は出していない。勝ち負けする位置につけると思っていたが、まさかの出遅れ。ゲートを出た瞬間は(きゅう舎へ)帰ろうかなと思いました(笑)。あのポジションは想定外だったが、今回のような競馬もできて改めてビックリしている。鞍上が慌てず乗ったことも勝因だったと思う。次走については悩んでいるところ。南部杯の可能性もない訳ではありませんが、ローテーション的にきびしいので、次走はすずらん賞になるかもしれません」
ミニアチュールは昨年度の最優秀3歳馬だが、ロジータ記念以降はスランプが続き、古馬オープンの壁にも突き当たっていたが、今シーズン3戦目の盛岡1000m戦を完勝して壁を突破。これで4連勝をマークした。鞍上はずっと佐々木志音騎手。前走・ビューチフルドリーマーカップで初重賞を手にし、今回は痛恨の出遅れを喫しながらも快勝。佐藤祐司調教師のコメントにもあるとおり、慌てず馬の能力を信じてじっくり構えたのが最大の勝因。同騎手はミニアチュールとともに成長の階段を上っている。
今週の岩手競馬
10月6日(日) メイン11R「第2回ネクストスター盛岡」(2歳 盛岡ダート1400m)
10月7日(月) メイン12R「夢・希望・未来へ前進」(B1級三組 盛岡ダート1600m)
10月8日(火) メイン12R「ハダル賞」(B1級一組 盛岡ダート1600m)
9月22日(日) 「第5回オータムティアラ」(3歳牝馬 水沢1900m)
第1回から第4回まで盛岡ダート2000mを舞台に「OROオータムティアラ」の名称で行われていたが、今年は水沢1900mへ変更。それに伴い、第5回は「オータムティアラ」の名称で実施された。
メイザーキックが先手を主張してスローペースに落とす。2番手コンバットスプーンは掛かり気味に追走し、3番手外に2番人気コモリリーガル。4番手にマルーントリック、1番人気リケアマロンは無理をせず5番手インを追走した。
勝負どころの3コーナーでメイザーキックが一杯となり、替わってコンバットスプーンが馬なりで先頭。連れてコモリリーガルもスパートをかけ、リケアマロンも3番手まで進出し、前2頭の反応を見ながら追走。4コーナーで満を持して外に出すと一気に抜け出して5馬身差で圧勝。金沢重賞2勝の地力を見せつけ、転入初戦・ひまわり賞3着の雪辱を果たした。2着はコンバットスプーン。ひまわり賞と同じく渋太く粘った。
1着・リケアマロン=吉原寛人騎手
「序盤は(村上)忍さんの馬の出方を見れる位置を取りたかったので、理想的な位置取りができたと思う。ちょっと窮屈なところがあって、あの馬には少し走りづらいのかなとも思ったが、器用に立ち回ってくれた。勝負どころからは、やはり忍さんの馬がどういう手応えで4コーナーを回るか?。そして僕の馬もあまり早く抜け出すと遊んでしまうから、そこだけは慎重に。4コーナーからは、最後の2ハロンだったんで、もう思い切って行った。前走は転入初戦とか左回りとか不慣れな部分に馬が戸惑ったでしょうし、厳しい日程できていて馬の疲れも出る時期だったのかと思う。今回はプラス体重で馬の実も入っている感じ。本来のリケアマロンらしい、力のあるレースができたのでホッとしました」
菅原勲調教師
「前走は思っていたより走ってくれなくて、輸送とか左回りとかが影響したのかと考えていた。馬体重も減っていましたしね。今回は馬体重が戻ってくれたし、走り慣れた右回りの小回りコースで力を出してくれた。これが本来の力でしょう。次走に関しては、岩手ではこの馬に良い条件のレースがないのでね。これからいろいろ考えていくことになると思う」
2着・コンバットスプーン
2歳時に2勝をあげ、ネクストスター盛岡2着、ビギナーズカップ3着。冬場は南関東へ移籍して4戦着外から里帰り。軽快な先行力と強じんな粘りを武器に重賞で2着5回。岩手版オークス・ひまわり賞、そして今回、オータムティアラと牝馬二冠でも2着を確保した。小柄な牝馬だが、気のいいタイプで勝負根性も抜群。まさに馬主孝行の典型例と言っていいだろう。
9月16日(月) 「第32回青藍賞」(オープン 水沢1600m)
好スタートを切ったヒロシクンがハナを取りに行くシーンもあったが、1番枠を引き当てたグランコージーが逃げ、ヒロシクンは2番手に控え、後続を5馬身ほどリードした。離れた3番手にゲンパチプライド、マイネルアストリア。1番人気に支持されたウラヤは出遅れを喫したが、5番手まで押し上げる。以下トーセンマッシモ、ゼットセントラル、最後方に3歳馬サクラトップキッド。
残り600m手前でヒロシクンがグランコージーを馬なりで交わして先頭。それを見てウラヤもスパートをかけ、2番手まで進出。連れてゼットセントラル、勝負どころで置かれながらサクラトップキッドも伸びてくる。直線を向いてもヒロシクンのスピードは衰えず、2着に5馬身差をつけて余裕のゴール。一條記念みちのく大賞典に続いて2度目の重賞タイトルを獲得した。2着はウラヤが一杯となったところゼットセントラルが台頭して確保した。
1着・ヒロシクン=高松亮騎手
「先生(佐藤雅彦調教師)と相談して行けるなら行くし、内(グランコージー)が行けば2番手でもいい。馬のリズムを大事にしようとレースに臨んだ。2コーナー過ぎで先頭は早いと思ったが、これも馬の気持ちを優先させた結果。ハミを取って行きたい気持ちでしたからね。すごく強い内容で勝ってくれた。今日はオーナー家族も応援に駆けつけてくれて、恩返しをしたいと思っていたが、最高の結果を出せてとてもうれしい。2000mでみちのく大賞典を勝って、今回は1600mでも強いレースで勝ってくれたし、短距離もこなせそうな感じ。今後、幅広い距離で走れる可能性があると思います」
佐藤雅彦調教師
「今日のレースは強かったと思う。いつもはダラーッと勝つ感じだったが、今回はしっかりと伸びてくれた。マーキュリーカップ後は福島の牧場に移動して夏休みを取ったが、これで完全リフレッシュできたと思う。休養中もしっかりやってくれて、いい仕上がりで臨めた。次走は南部杯に挑戦します。オーナーがお祭り好きですからね(笑)」
ヒロシクンの祖母ファビラスラフインは第1回秋華賞を制し、続くジャパンカップでシングスピールにハナ差2着に惜敗した強豪牝馬。父にドレフォンを持ち、セレクトセールで落札されたが、入れ込みが激しかったためデビュー戦後に去勢手術。8戦目に初勝利を飾り、今年5月に中央1勝クラスから転入。B1級で3連勝を飾り、格下から一條記念みちのく大賞典へ挑戦。鮮やかな逃げ切りを決めた。
続くマーキュリーカップでも果敢に逃げたが、クラウンプライドらが相手。3コーナーで失速13着に終わり、直後に福島県の桑折牧場へ移動。英気を養って帰郷し、秋競馬に向けて好発進を決めた。南部杯での健闘を期待したい。
2着・ゼットセントラル
JRA2勝クラスとの交流・東京カップけやき賞を快勝したが、続く桂樹杯は9着に凡走。今回は6番人気に甘んじたが、2着に反撃。陶文峰との相性が抜群。
3着・サクラトップキッド
前々走・やまびこ賞で初重賞を手にし、不来方賞6着から青藍賞へ挑戦。古馬とは初対戦に加え、忙しいマイル戦も不安だったが、メンバー最速の上がりで3着入線。成長ぶりが目覚ましい。
今週の岩手競馬
9月22日(日)メイン12R「第5回オータムティアラ」(3歳牝馬 水沢1900m)
9月23日(月)メイン12R「セプテンバーカップ」(B2級 水沢1600m)
9月24日(火)メイン12R「夢・希望・未来へ前進」(B1・B2級 水沢1600m)