今度の週末からは再びの盛岡開催。そしていよいよダービーグランプリがやってきます。いやぁ〜、今年はなんとも言えぬ期待と緊張感。なんといっても統一GIとなって初めて地元馬優勝が現実のものとなる可能性が出ていますからね。
その馬の名は皆さんもうご存じでしょう。そう、オウシュウクラウン! 本番を目前に控えた今、陣営も小林俊彦騎手も、そして馬自身も岩手の期待を一身に背負って巨大なプレッシャーと戦っていることでしょう。だからあまり勝て勝て言ったり書いたりしたくないのですが……、あ゛ーっっ、でもやっぱり勝って欲しい!と言っちゃいます。岩手はメイセイオペラ、トーホウエンペラー以来のヒーロー出現を待ちわびています。トニージェントが届かなかったグレードタイトルの夢を、ほんの少し時代が早すぎたトウケイニセイの分まで、オウシュウクラウンが叶えてくれることを信じましょう!
話は変わりますが、このダービーGPというレース、2000年の第5回まで11月に行われていたことを覚えていらっしゃいますでしょうか。11月の盛岡といえば冬は目の前。天気の変動が激しい時期ですから、気圧配置によっては思いっきりな寒波に襲われることも珍しくありません。実際、98年のダービーGPが予定されていた日には、なんと朝から雪が降り続き(!)昼ごろには2〜30cmの積雪が。ついに主催者は5レースで開催打ち切り、ダービーGPの延期を決定せざるを得ず、わざわざ高知からやってきたカイヨウジパングも出直しとなったのでした。このときダート三冠に王手がかかっていたウイングアローは、小回りの水沢に変わった翌月のレースで、身追い込み届かず3/4馬身差の惜敗。マイケル・ロバーツ騎手騎乗のナリタホマレが戴冠となったのでした。
今年のダービーGPには、そのウイングアローの産駒、サイレントエクセルも出走します。この馬も、さすがにオウシュウクラウンとの直接対決ではかなわないものの、3歳牝馬としてはズバ抜けた能力を見せており、このメンバーでどこまでやれるのか、大変楽しみな存在です。
というわけで岩手の競馬ファンにとってはいやがおうにも盛り上がる今年のダービーGP。フサイチリシャールの参戦もあって岩手だけでなく全国の競馬ファン注目の的となりそうですが、9月とはいえ天気によってはかなり寒くなることもあります。さすがに98年のように降雪ということはないと思いますが、関東以南から本場にお越しの方は、念のため寒さ対策を万全に。
1998年ダービー・グランプリ/優勝・ナリタホマレ
(文・写真/佐藤到)
<次走へのメモ>
9月9日 第7回フェアリーカップ(水沢1900m)
1着 グローリサンディ
大外からケイアイフォーユーが大逃げを打ち、2番手をがっちりキープ。3コーナーでケイアイフォーユーが一杯となって脱落し、替わってグローリサンディが先頭。外からタカエイチフジが襲い掛かり、直線を向いて一度交わされたが、今回のグローリサンディはそこから差し返す芸当をやってのけ、最後は2着に2馬身半差をつける完勝となった。
「以前に比べてスタートも一息だし、行きっぷりも今一つだったが、調子の良さでカバーしてくれた。ここでは実績が違うので、ちゃんと力を出せれば強い」と菅原勲騎手が語ったように、最大の勝因は好調度で臨めたこと。この状態を保って次走・ビューチフル・ドリーマーカップ(10月8日)に駒を進めて欲しい。
2着 タカエイチフジ
1枠に入り、外から被せられたが、うまく外に持ち出して3番手をキープ。道中は淡々としたペースで進み、マークをグローリサンディ1頭に絞り、直線で一旦先頭に立ったが、内から差し返されて最後は力尽きる。「位置取りが中途半端だったかも。早めに馬体を併せれば違った結果だったのでは」と阿部英俊騎手。
9月10日 第14回青藍賞(水沢1600m)
1着 ウツミジョーダン
ルーキーナカヤマが後続を離して逃げ、前半35秒台のハイラップを刻む。ウツミジョーダンはいつもどおり中団より後ろ6番手外をキープし、3コーナー手前から徐々に馬なりで先陣に接近。4コーナーで先頭に立ったローランボスコを直線半ばで早めに交わしたため、とぼける仕草を見せる。それでエアウィードが猛追し一瞬、ヒヤッとさせたが「後ろから来たのは分かっていたが、まだ余裕があった」と小林騎手。確かに着差はクビだったが、ゴールがもう少し先でも着順は変わらなかっただろう。
「いつもはもっさり出る馬だが、今回はスタートから行く気があった。今回の勝利は実績の違い。まだトモ(後肢)が寂しくて本物ではないので、次はもっと良くなってくれるのでは」(小林騎手)
G?・川崎記念(1月25日)後、6ヵ月半の休養をはさんで再度、岩手入り。転入初戦(8月13日)を2着にまとめ、続くすずらん賞は大事を取ってスキップしてここへ臨む。小林騎手のコメントどおり、まだ毛ヅヤも本物ではなく、上昇余力は十分にありそう。
次走は南部杯(10月9日)へ直行しますと村上佐重喜調教師。
2着 エアウィード
すずらん賞が意外な凡走(5着)に終わり、今回は4番人気まで評価を下げていた。位置取りはウツミジョーダンより少し前のインの経済コースを進み3、4コーナーでもたつく。これは前回、すずらん賞と同様だったが、直線を向いてから馬群を割って伸びてくる。「中間、ちょっとセーブした攻め馬が良かったのかも。でもピークに比べると物足りない」と村上忍騎手。それでも南部杯に向けて一応の結果を出せたのが心強い。
3着 ミサキノハンター
今回は重賞のため高松騎手のアドバンテージはなく、全馬57キロの定量。加えて外枠(9枠)に入り、ハイペースについていけず中団5番手からの競馬。これで持ち味(先行して押し切る)が生きないかと思ったが、直線大外からジワジワ進出して3着に食い込んだのには正直、驚いた。今後も水沢戦なら目が離せない存在となった。
4着 ローランボスコ
ルーキーナカヤマの離れた2番手を追走し、直線を向いて手ごたえ抜群で先頭。そのまま粘るかにも見えたが、最後で力尽きて4着に敗れた。一息入れた前走・すずらん賞を叩いて状態アップは明白だったが、前半のハイペースについていったのが敗因か。今回、水沢マイル戦で初めて連対を外してしまった。
5着 ベルモントシーザー
終始4番手インを進み、勝負どころで前が詰まる不利。それが最後まで響いて6着に敗れたが、これを叩かれて次は変わってくるはず。
夏の水沢開催も今日で一区切り。来週からは4開催連続、ほぼ2ヶ月間にわたって盛岡競馬場での開催となります。
そして、その開幕週にいきなりあるのがG1・ダービーグランプリ。なかなか地元の馬が勝てない、縁遠いレースなんですけど、今年は岩手にも期待できる馬が揃っていて、レースの時が楽しみで楽しみで仕方ありません。JRAからもフサイチリシャールをはじめとする強豪が来るそうなのですが、今年はもう徹底的に岩手の馬を応援します。
当日は私は地元局のテレビ中継がありまして、番組内で勝利騎手インタビューをする予定になっています。その相手が岩手の騎手だったらいいなあ、と今から期待しております。
月曜のメインレースはサラ系A1級のエクセレント競走。出走馬の力が接近しているせいかしばしば荒れるエクセレント競走、今回も微妙な力関係ですが、今回はこの馬にしっかり決めてもらいましょう。大外8枠12番、ウエストジーニアスです。
2〜3歳時はオープン級の常連として活躍し、重賞・不来方賞も勝った経験を持つウエストジーニアス。その後は故障もあって休み休みのレースになっていましたが、3度目の長期休養から復帰したこの夏以降、3戦して徐々に調子を上げてきました。もともとレースセンスの高さでは定評のあった馬で、それが“体ができてすぐ好走”という結果につながっているのではと思います。
前走などはルーキーナカヤマの捨て身の逃げにしてやられてしまった、という印象で、この馬の走り自体は悪いものではありませんでしたし、距離短縮のここはちょうど走り頃ではないでしょうか。マイルの外枠に先行馬という点が気がかりかもしれませんが、ハナにこだわるタイプではないのでさほど気にしなくて良いと思います。
対抗はオリエントボス。7月には重賞・栗駒賞も勝った期待の4歳馬。クラスターカップはさすがに一気の相手強化にとまどったかの結果でしたが、重賞勝ちが示すとおり能力はオープン級の水準。まだ時折不安定なレースをする事があり、その点で2番手評価としましたが、力的には勝っておかしくない馬だと思います。
もう一頭はドントコイタカトモを狙ってみましょう。前走はオープン馬が相手で自分のレースができませんでした。今回はメンバーも楽になり、前々走までのような終いの瞬発力を生かしたレースが期待できそうです。
その他におさえておくとすれば、まずカシマハヤト。かつての強豪も長期休養を挟みつつのレースでなかなか以前のような走りができないものの、レースを使いつつ良くなっているのも確か。順調にレースに出てくる間は警戒が必要です。
穴っぽいところではキレアジサイコウ。前走は左肩ハコウで出走取り消し、前々走は芝で大敗と見送りたくなる結果が並んでいますが、それ以前はA1級エクセレント競走でもそこそこのレースをしていました。水沢の方が安定しているタイプでもあり、開催替わりを前に狙っておきたいところです。
買い目は8枠12番ウエストジーニアスからまず8、9へ。加えて2と10。上位3頭は3連単BOX、2頭を加える時はフォーメーションにしてしっかり!
10日メインはG?・マイルチャンピオンシップ南部杯への最終決戦「第14回青藍賞」(水沢1600m)。1、2着馬には栄えある南部杯の切符を獲得できることになる。
今回の青藍賞には現時点における岩手のオールスターがずらり顔をそろえ、非常に興味深いレースとなった。青藍賞のトライアルを制したのはミサキノハンターだった。同馬はA2級からの格下挑戦だったが、強引にハナを奪って、道中で手応えが怪しくなりながらそのまま押し切って快勝。フレッシュジョッキー・高松亮騎手にうれしい初のオープンタイトルをプレゼントし、水沢適性を存分に発揮した一戦だった。
(写真はすずらん賞ゴール 1着ミサキノハンター)
常識的にはここでもミサキノハンターを有力視すべきだろうが、前回はA1級馬が57キロのハンデに対し、同馬55キロ。加えて高松騎手が減量1キロのアドバンテージがあり、54キロの軽ハンデ出走できた。これもすずらん賞快勝の後押しをした一因となった。しかし今回は重賞の定量戦のため全馬が同斤量57キロで出走。そうなるとミサキノハンターは苦しいレースを強いられることになりそうだ。
では主軸にふさわしいのはどの馬になるのか。やはりウツミジョーダンの総合力を中心に置くのが妥当ではないだろうか。
前走8月13日、A1級戦は再々転入初戦で1月25日、G?・川崎記念(6着)の実戦だったが、前走比マイナス8キロで出走。見た目にも馬体の張りもひと息で仕上がり途上の印象を受けたが、キッチリ2着を確保。改めて底力を実感させた。その後も順調に乗り込まれ、すずらん賞にも登録があったが、万全を期してすずらん賞を自重し、ここに照準を合わせてピッチを上げてきた。
報知オールスターカップ快勝、G?・川崎記念3着などここでは断然の実績を誇るウツミジョーダン。久々を叩かれて気配アップとなれば、決して得意とはいえないマイルでも期待に応えてくれるに違いない。
ベルモントシーザー、エアウィードはアッサリ逆転も十分に可能だ。まず前者ベルモントシーザーは今年4月、南関東A2から転入し、ポンポンと2連勝を飾り、距離が懸念されたみちのく大賞典(2000m)でも僅差3着にまとめ、G?・マーキュリーカップでも地方最先着の4着に健闘した。
前回、クラスターカップでは距離が2000mから1200mへ一気に短縮され、さすがにペースにも戸惑って後方のまま8着に敗れたが、約1ヶ月の休養で気分もリフレッシュされたはずだし、折り合いを気にしなくていいマイルは旧地・南関東時代からベストの条件。来たる南部杯に向けて好発進を決めたいところだ。
評価に困るのがエアウィードだ。マーキュリーカップ10着後、満を持して臨んだと思ったすずらん賞で当然の1番人気に支持されたが、3コーナーで早々と手応えが怪しくなって5着凡走。レース後、鞍上の村上騎手も「何で走らないか分からない。今回は気がなかった」と首をかしげていたが、メンタル面までは掴めないのも競馬の難しさ。1着、もしくは凡走の可能性もある意味での▲となった。実力的には昨年の青藍賞覇者であり、今季もシアンモア記念優勝などで証明済みだ。
ローランボスコも首位候補の一角を占める。栗駒賞7着後、一連の疲れを取るために2ヶ月近く休養し、予定どおりすずらん賞で戦列復帰を果たした。レースは逃げたミサキノハンターの外を掛かり気味に追走し、道中は抜群の手応えだったが、直線は伸びを欠いて2着に敗れた。これは久々の分、最後の踏ん張りが効かなかったもので内容的には申し分なし。この青藍賞へ向けて上々の再スタートを切った。過去、水沢マイルは2勝2着2回と連対パーフェクトを誇り、この条件では鬼的な存在。この上位4頭はほぼ一線で並んでいる。
以下は今シーズンの充実ぶりが目につくニッショウウララ、すずらん賞4着マンジュデンツルギも押さえが必要だろう。
◎ ?ウツミジョーダン
○ ?ベルモントシーザー
▲ ?エアウィード
△ ?ローランボスコ
△ ?ニッショウウララ
△ ?マンジュデンツルギ
3連単は5、6、3、10のボックスと言いたいが、それでは買い目が多いので5、6の1、2着を厚めに勝負したい
馬複は
5−6、3−5、5−10、3−6、6−10
<お奨めの1頭>
3レース アンダーボナンザ
前回は自らハイペースを形成しながら、2着に1秒差の圧勝劇。もう一丁いける
9月18日、オーロパークで行われる3歳G?「第21回ダービーグランプリ」(盛岡ダート2000m)の各地区出走予定馬がこのほど発表された。
▼JRA代表・ソングオブウインド、ナイキアースワーク、バンブーエール、フサイチリシャール、ヤマタケゴールデン
▼他地区地方代表・モエレジーニアス(北海道)、キャプテンシーオー(船橋)、サンダーオブハード(船橋)、オグリホット(笠松)、ジョイーレ(兵庫)。
▼岩手・オウシュウクラウン、テンショウボス、ブラックショコラ、サイレントエクセル(フルゲート14頭 各地区補欠馬は省略)。
ナイキアースワーク、バンブーエールのジャパンダートダービー出走組に加え、昨年のJRA最優秀2歳馬フサイチリシャールがエントリーしてきた。これまでダート経験は一度もないが、父がクロフネならダート適性は自身、そして産駒フラムドパシオンなどの強さで証明済み。仮に出走すれば第11回の覇者イシノサンデー級か、それ以上の衝撃となるに違いない。
またダービーグランプリは第11回以降、JRAにも門戸を開放したが、ずっと地方競馬所属による優勝はなく、岩手代表・オウシュウクラウンには悲願の地元優勝の期待がかかっている。ジャパンダートダービー3着、不来方賞圧勝後も順調に乗り込まれ、このレースに照準をピタリと合わせている。さらにはメイセイオペラ産駒ジョイーレ、牝馬ながら破壊力けた違いサイレントエクセルなど興味尽きない一戦となりそうだ。
さて本題。9日メインは牝馬オープン馬による特別「第7回フェアリーカップ」(水沢1900m)。このレースは先に行われたエレガンスカップ(7月16日、盛岡ダート1600m)と並ぶ地方競馬全国交流・第32回ビューチフル・ドリーマーカップ(10月8日、盛岡ダート1800m)のトライアル戦で1、2着馬には優先出走権が与えられる。
主役はタカエイチフジで動かないだろう。トライアル・エレガンスカップを貫禄で優勝し、前々走・けやき賞6着以外は常に牡馬とも互角の勝負を演じてきた。前回も水沢1800mの大外9着に入りながら、中団からジワジワ伸びて2着を確保。相手なりに駆ける堅実さがなによりも魅力で、仮に負けたとしてもキッチリ連対を果たしてくれるに違いない。
逆転筆頭格はグローリサンディ。今シーズンは平場戦で2着1回のみと昨年の勢いが衰えてきたのは否定できないが、それでも前回・桂樹杯は8着ながらタイム差は0・6秒。昨年、同レースの覇者であり、そのレースを含めて水沢1900mは2戦2勝と勝率100%。すんなりハナにさえ立てれば、アッサリ逃げ切りのシーンまで十分にある。
ミススズランも上位扱いが必要だろう。今季はなかなか勝ち切れず10戦0勝。前回も道中、絶好の手応えから追い出しも文句なしだったが、詰めの甘さを露呈して3着。またもや勝利の女神に見放されてしまった格好だが、大崩れしないのはさすがだ。今回は人気2頭と2キロ差のアドバンテージがあるし、牝馬同士の戦い。3番手以下の評価は考えられない。
勢いに乗っているといえばカプリコルノだ。前々走、B1級からの強気の挑戦・エレガンスカップでは牝馬オープン相手にタイム差なしの3着。ゴール前であわやのシーンを作った。それがフロックでないことは前回、A2級戦で1番人気に応えて堂々の快勝。今が一番の充実期だと見ていいだろう。
以下、6ヵ月半ぶりのレース・エレガンスカップでいきなり2着に入ったファーストルーチェ、マイペースに持ち込めればプリンセスワールドの残り目があるかも。
<お奨め1頭>
11レース ブラックオーメン
差しタイプだけに展開に泣くときも時にあるが、前回は強いレースで快勝。その内容ならもう一丁いける