<次走へのメモ>
8月13日 第29回桂樹杯
(写真・佐藤到)
1着 ジェーピーバトル
ユーワプロトスが逃げ、2番手にグローリサンディ、その後ろの絶好3番手をキープ。流れはスローに近く、グローリサンディが4コーナー手前で先頭に立ったが、ジェーピーバトルが直線半ばで早々と抜け出して快勝。せきれい賞に続いて芝2連勝を飾った。「着差はクビだが、芝のレースは僅差になりがちなので内容的には文句なし。どこからでもレースができる馬だし、芝は適性が高いので安心して乗れる」と菅原勲騎手。
今回、3連闘で使ったのはOROカップの権利を取るため。前走、重賞・せきれい賞を勝っても賞金ではじかれる可能性もあるから、このトライアルでどうしても1、2着を取りたかった。まずは最高の形でOROカップの権利を得たので陣営もホッとしている。今週から舞台が水沢へと替わるが、再び盛岡に戻った9月24日、OROカップ直行を予定している。
2着 サイレントグリーン
中団インの経済コースを進み、明らかに相手をジェーピーバトル1頭に絞った乗り方。追い出しのタイミングも絶妙だったし、直線で猛追を試みたが、クビ差届かず2着。現状はここまでが一杯の印象で、主客が完全に逆転した。
3着 イエローボイス
終始、サイレントグリーンの後ろにつける展開から3、4コーナーで若干遅れたが、直線で盛り返す。せきれい賞は0・8秒差5着からジェーピーバトルに0・2秒差まで肉薄し、これで盛岡芝でも通用のメドが立った。次回はさらに上を望めるかも知れない。
8月14日 第11回クラスターカップ
(写真・佐藤到)
1着 アグネスジェダイ
クィーンロマンス、ディバインシルバーが先手を争い、前半3ハロン33秒6の超ハイペースを形成する中、それを見る形で3番手外を追走。3コーナー過ぎにクィーンロマンスが一杯となり、替わってディバインシルバーが先頭。連れてアグネスジェダイも徐々にディバインシルバーを射程圏に入れ、4コーナーではいつでも交わせる態勢に入ったかに見えた。しかし、そこからディバインシルバーが驚異の粘りを発揮し、そのまま押し切るかと思ったが、ゴール寸前でディバインシルバーをクビ差捕らえた。
「道中、一番いい位置につけ4角を過ぎて楽に交わせると思ったら、ディバインシルバーが渋太くて一瞬ヒヤッとした。この馬に乗るのは久々(1月、根岸ステークス)だったが、古馬になってもまれ弱さがなくなった。このまま成長を続けて父のアグネスワールドのように活躍してほしい」と小牧太騎手。
「速い時計勝負となった(03年、ディバインシルバーがマークした盛岡ダート1200m1分9秒8とタイ)ので、この着差も仕方ないのでは。当面は東京盃を目標に、JBCマイルはその結果を見てから決めたい」と森秀行調教師。
2着 ディバインシルバー
絶好のスタートを切り、先手を取っても不思議なかったが、クィーンロマンスがハナを譲らない構えを見せたので併せ馬の形で2番手外につける。3コーナー過ぎに先頭に立ち、直線を向いてもスピードは衰えず、あわやと思わせたが、最後は馬の勢いが出た格好か。それでも近走の不振ぶりから一転する劇走を披露したのには周囲もビックリ。これでクラスターカップは5年連続の出場で03年の優勝、そして4戦2着と連対パーフェクトを継続した。よほど盛岡ダート1200mとの相性がいいのだろう。今回も自身のレコードに0秒1遅れの1分9秒9で駆け抜けていた。
3着 トウショウギア
アグネスジェダイから2馬身ほど後ろの展開となり、上がり3ハロンも同じ35秒9。前半の位置取りがそのまま3着の結果と着差となった感じだ。「いつもはもう少し動く馬だが、今回は動きが重かった」(田中勝春騎手)
4着 コアレスデジタル
前半は置かれ気味だったが、直線はメンバー中2番目の35秒5の上がりで4着入線を果たした。
5着 マヤノチャーナ
中央1000万下から金沢2戦4、5着後に参戦。内田利雄騎手が積極的なレース運びを見せ、最後でコアレスデジタルに交わされたが、このメンバーで5着なら大健闘と言っていいのではないか。
6着 オフィサー
「元々直線だけの馬なので、前残りの競馬になると苦しい。小回りも合わなかったのでは」(福永祐一騎手)。前半は後方からの競馬で、3コーナーで外を回ってメンバー最速の34秒8の上がりを駆使したが、やはり置かれるのが痛かった。
8月15日 第7回若鮎賞
(写真・佐藤到)
1着 パラダイスフラワー
好スタートからマイペースに持ち込み、2着セイントセーリングの追撃を何とかしのぐ。道中、スローに落とし、競りかける馬も不在だったので貫禄の逃げ切りだったが、ダートに比べると反応がひと息。今回は総合力で芝もこなした感じで、2戦目、水沢ダート1300m1分22秒6、3戦目の盛岡ダート1200m(ビギナーズカップ)1分12秒2ほどの迫力は感じられなかった。やはりダートがベスト。これは陣営も同様の見解で、今後はエーデルワイス賞を目指したいと櫻田浩三調教師。
2着 セイントセーリング
パラダイスフラワー、パチョリ、マツリダランランの隊列でセイントセーリングは4番手を追走。団子状態で4コーナーまで進み、直線でパラダイスフラワーに肉薄したが、クビ差まで。遠征(JRA新潟)疲れも残っていたか。
3着 ソード
3戦目の盛岡ダート1200mで初勝利をマークし、ここに臨む。道中は後方3番手の競馬からゴール前で鋭い脚を披露して3着。レース経験を踏みながら、距離が延びて徐々に頭角を現してきた。
これを書いているのは日曜の夕方なんですが、盛岡競馬場は最終レースが終わってしばらくした頃から土砂降りの雨と雷に見舞われまして、午前の好天に甘えて傘を持ってこなかった私はしばらくプレスルームで足止めを喰らいました。スタンド4階、すぐ上は屋根とはいえ、少々の雨では降っていることに気付かないくらいのところなんですが、今日はさすがにバラバラと雨粒が屋根を叩く音が響いてきました。
そんな雨の中、芝コースの整備を進める人たちの影が目に入りました。今日はメインレースで芝を使ったから最終レースの後にコース整備をしていたんですね。そのさなかに土砂降りの雨ですから、芝コースの上を少しずつ進んでいく人影を見ながら大変だなあと思っていました。
そういえば昔、JRAの競馬場に行った時、レースの後にコース整備をしているのを見た友人が「あの仕事は楽そうだからやってみたいなあ」と言っておりました。デッキブラシのようなものでぽーん、ぽーんと芝の表面を叩いていく姿があまりにものどかに見えたからなのですが、考えてみれば灼熱の炎天下だろうが土砂降りの雨の中だろうがやらなきゃいけないわけで、全く楽じゃないですよね。お疲れ様です。
雨が上がった後、温度計を見ると22℃くらいを指していました。夕立の名残の風がひんやりと肌寒いくらい。さすがは山の上の競馬場、というところでしょうか。
月曜のメインレースは2歳の芝特別・若鮎賞です。6年前の第1回の勝ち馬はネイティヴハート。その時は7頭立てで、ネイティヴハートが直線後ろを見ながらの楽勝を遂げたのがいまだに印象に残っていますが、そのレースを走った他の6頭が既にすべて引退している一方、ネイティヴハートは今でも現役で、芝G1を狙って走り続けているというのもまた感慨深いものがあります。
さて、今回の若鮎賞の本命、パラダイスフラワーとするのは前走を見る限り仕方のないところでしょうね。なにせ、タイムの出やすい不良コースだったとはいえ、ビギナーズカップの優勝タイム1分12秒2は2歳の水準を大幅に超えた時計。クラスターカップの前ですが、今シーズン行われたダート1200m戦の中で最高のタイムですし、昨シーズンにしてもクラスターC6着相当、すなわち古馬もひっくるめた中での通算6位にあたる、まさに驚愕のハイタイムでした。
今回のレースには初対戦になる馬も何頭か登場してきますが、例えば前走2着のボスアミーゴとの対戦、同じく3着のマツリダランランとの対戦成績まで考えてみると、これはどう見てもパラダイスフラワー上位。芝コースにやや不安があるものの、力比較で言えばこの馬の優位は揺るがないように思います。
対抗は、パチョリなんかいかがでしょうか。ジェイドロバリー産駒で一見芝は不得手に思えますが、デビュー戦を見る限り意外とこなせる印象。直線に入ってじわりと伸びてきたあたり、距離が伸びてよさそうなタイプにも感じます。中間の調整からは前走取り消しの影響は無い模様。今回は狙って面白いでしょう。
続いてのもう一頭はマツリダランランを。前回はタイムが速すぎた感がある中良く3着に食い込んだと思います。この馬にとって距離延長は好材料、デビュー戦快勝と同じ芝になるのもプラスでしょう。
後は芝レースで好走している馬からセイントセーリングとダンストンフルークを。やはり芝レース、芝で勝ち負けしている経験を重視しましょう。
買い目は3枠3番パラダイスフラワーから1、5、6、8へ。3連複なら3番の1頭軸でいいのでは。連単だと悩むのですが、BOXが結果的に安全かも。
というのは、このレースを予想する場合の焦点はやはり芝適性、ということになるのですが、実際のところ出走馬を眺めてみても“距離延長はプラスとはいえ、芝はそれほど得意でも・・・”というタイプの馬が多く、そうであれば芝適性はいったん置いておいて実績重視で検討するのがいいと思います。
しかし気になるのは、火曜日には天気がやや下り坂で、午後は雨も予想される点。ノメる芝になるとパラダイスフラワーのスピード優位も殺がれてしまうでしょうから、思い切って他馬を頭に持ってくる手も考えられます。まずは当日の天候にご注意を。
◇お奨めこの1頭
最終11R・ヤマニンエグザルト
夏の盛岡開催最終日の最終レース。そして鞍上の内田騎手もひとまずこれが岩手ラストラン。馬の方もだいぶクラス慣れしてきています。
相手は実績馬ゲイリーエクシード。もう一頭手を拡げるならカイシュウハヤブサを。
盛岡競馬の夏の風物詩と言えば毎年、お盆真っ只中に実施するクラスターカップである。このクラスターカップはオーロパークの完成とともに創設されたが、前身は旧盛岡競馬場(緑ヶ丘)で行われていた特別・早池峰(はやちね)賞だった。早池峰賞は現在、冬のスプリント重賞(水沢1400m)で実施されているが、当時、早池峰賞はクラスターカップと同様、毎年お盆に開催。『真夏の電撃5・5ハロン戦』(懐かしいなぁ!早池峰賞は旧盛岡競馬場、向正面からのスタートで距離は1100mだった)と称され、夏の風物詩としてずっとファンに親しまれていた。
何故、早池峰賞がファンの支持を集めたかと言うと、当時、A級オープン戦といえば1800m以上の距離ばかり。それはそれで見応えがあったが、年に1回のオープン短距離戦はそれ自体が希少価値だったし、なんといっても息をつかせないオープン馬によるスピード決戦は迫力満点。また優勝馬も中距離以上の常連ではなく、普段、距離に泣いて埋もれていた馬が、唯一活躍できる場でもあった。その中でアカネプリンス、ホワイトシロー、ダンカンロードなどの個性派が続々と誕生した。
その思想はクラスターカップ(盛岡ダート1200m)へと引き継がれ、G?の称号も獲得。今年で11回目を迎えることになるが、過去JRA勢10戦中9勝。地方所属馬の優勝は第5回、吉田稔騎手とコンビを組んだ名古屋・ゴールデンチェリー(牝7歳=当時、瀬戸口厩舎)1頭のみで、JRA勢が圧倒的に優位に立っている。
そして今年、ざっとメンバーを見渡しても一目瞭然で、今回もJRA勢有利は動かし難い。中でもアグネスジェダイの実績は断然だ。初グレード制覇はジャパンダートダービー出走直後(8着)の昨年8月、古馬相手のG?・サマーチャンピオン(佐賀)。続いてダービーグランプリにも駒を進めた(5着)が、同10月、G?・東京盃優勝後は短距離路線をまっしぐら。今年3月にはドバイにも遠征し、G?・ゴールデンシャヒーン6着に入り、帰国初戦の栗東ステークスこそ12着に沈んだが、G?・さきたま杯、G?・北海道スプリントカップと目下2連勝中。ダート短距離王の称号はすでに手中に入れている感さえある。今回のカギはトップハンデの58キロに尽きるが、さきたま杯、北海道SCで克服済み。不動の本命馬と断言して差し支えない。
相手にはトウショウギアを指名する。意外にも地方グレードレースは初出走となるが、これは賞金の関係で選外の憂き目にあっていたため。中央ダートで8勝をマークし、内7勝が1200〜1400mと今回の条件がベスト。また今年1月、根岸ステークスで3着の実績もあり、ここで好成績を残して地方グレード常連となりたいところだ。
繰り上がりで出走にこぎつけたのがオフィサーだった。デビュー時からずっと上位人気に支持されていたが、初勝利は川崎の3歳条件交流戦で6戦も要した。しかし以降はダート路線へ変更し、ダート1200m戦で3勝マーク。徹底した追い込み馬で、上がり35秒〜36秒という驚異の末脚を武器としている。逆にそれが勝ち星を積み重ねられない要因となるが、ツボにはまった時は目にも鮮やかな一気を決める。盛岡ダートの直線は約350m。追い込みが届くか否かは前半のペース次第だろうが、このタイプは一つ壁を突き破ると一気に頂上へ上り詰める可能性を秘めている。
評価に迷うのがディバインシルバーだ。04年から4年連続でクラスターカップへ参戦して1勝(03年)2着3回と連対パーフェクト。その1勝でマークした盛岡ダート1200m1分09秒8のレコードはいまだに破られていないし、ただ1頭だけ1分10秒の壁を越えた馬でもある。気になるのは04年11月、全日本サラブレッドカップ(笠松)以降、白星から遠ざかっている点。近走も往時のパワーが薄れつつあるのは明らかなのだが、盛岡にやってくるとまるで別馬のように元気を回復する。コース適性はメンバー中一番。北海道SC5着から一転、劇走のシーンがあるかもしれない。
森厩舎は今回、3頭出しで格最上位の存在がキーンランドスワン。過去、シルクロードステークス、阪急杯と芝1200m重賞で2勝、そして昨年3月、G?・高松宮記念でアドマイヤマックスの2着に入った実力馬だ。ただ、ダートは新馬戦(ダート1200m)1着後、3戦目(ダート1400m)7着。それ以降はずっと芝を走り、今年5年ぶりに栗東ステークスでダート戦を使って16頭立て16着。続いて北海道SCではひとまず入線はしたが、0・9秒4着。このダートのスペシャリストの中に入れば、やはり適性で見劣るのは止むを得ないところ。結論は連下押さえに落ち着く。
以上、有力馬をピックアップしてみたが、すべてJRA勢。これは過去のクラスターカップからも当然なのだが、このJRA強力ラインに割って入る、いや割って入ってほしいのが地元期待のオリエントボスだ。2走前、重賞・栗駒賞で北海道タイギャラントの追撃を封じ、水沢1400mレコード1分25秒3.従来のレコード(バンチャンプ)をコンマ7秒も短縮した。前走はA1戦で4着に敗れたが、これは盛岡1600mでの結果で度外視しよう。いずれにせよ短距離適性は十分にある。
未知の魅力でいえば地方<14.2.1.0>の名古屋ナシュータックだが、まだここではキャリア不足の印象。ここを試金石に今後へのステップとしてほしい。
3連単は1着9を固定に2、3着折り返しで2、1。3着流しで4、13、14と見たが…
馬複は2−9、1−9、4−9、9−13、9−14
<お奨めの1頭>
6レース アドロワ
転入初戦こそ2着に敗れたが、以降、3連勝中。今回、C3からC1級へジャンプアップだが、前走ダート1400m1分28秒2で勝てるメンバー構成
今週はお盆に合わせて13日(日)から15日(火)までの3日間変則開催。12日、土曜日は開催がないのでお間違いのないように。
その13日メインは古馬オープンによる芝1700m戦「第29回桂樹杯」、12頭立て。1、2着馬には9月24日、地方競馬全国交流重賞・岩手県知事杯OROカップ(芝1600m)の優先出走権が与えられる。
(写真はせきれい賞ゴール 佐藤到)
主役はジェーピーバトルで動かないだろう。前走・芝重賞せきれい賞では好位キープから豪快に直線抜け出しを決めて快勝。サイレントグリーン以下の追撃を完封し、新ターフ王の座に君臨した。
今回の条件芝1700m戦は過去、外枠不利のデータが残っていたが、今季は枠順の有利不利はあまりなく、大外12番枠もさほど影響しないと思うし、仮にそのデータがあっても充実一途のジェーピーバトルならばアッサリ克服するに違いない。
相手も順当にサイレントグリーンが演じる。前走、せきれい賞ではジェーピーバトルをマークから直線勝負に持ち込んだが、0・3秒差2着。板垣騎手いわく「今回は完敗」とレース後に語っていたようにジェーピーバトルとの力差は歴然だった。それでも2着確保が底力で、昨年の最優秀ターフホースの意地は見せた。
参考までにこの桂樹杯は2年連続で出走し、連続2着(優勝は04年ローズキング、05年はグローリサンディ)。ここも連対を死守したいところだ。
ヤマヨダイナミックはせきれい賞で1番人気に支持され、後方待機策から3コーナーでスパートをかけたが、自慢の末脚が不発に終わって6着。4走前、かきつばた賞で鮮やかな直線一気を決めただけに、案外の結果だったが、前半のペースが遅かったことに酌量の余地。今回の1700m戦なら、よほどのことがない限りスローペースになることはなく、巻き返す可能性は十分にある。
イエローボイスはJRA時代、芝2000m以上で4勝をマーク。3年前には春の天皇賞にも挑戦したこともある(18頭立て17着だったが)。ただ04年2月、飛鳥ステークス7着以降、脚部不安のために2年4ヶ月の長期休養。今年6月、園田で戦列復帰を果たして2戦消化後、岩手へ転入。初戦A1ダート1800m戦を2着にまとめ、前走・せきれい賞でも穴人気に支持され5着と、今後のメドが十分に立った。ここならJRA芝実績でアッサリまであるかも知れない。
以下はせきれい賞でメンバー中一番の上がりで3着に入ったヤマニンランスタン、盛岡芝通算8勝マークのダイヤモンドヒカリまで。
3連単は12を1着固定に2、3着8、6を折り返しで厚めに。あとは押さえで3、11
馬複は8−12、6−12、2−12、3−12
<お奨めの1頭>
オジジアンボーイ
前回は盛岡ダート1600m戦で36秒9の上がりで快勝。これで転入後、2、1着にまとめ、今後の活躍も楽しみ
7月29日、小雨が降る中おこなわれた8レースにエメラルユーキという馬がいまして、通常通りパドックを周回した後、阿部英俊騎手が騎乗して馬場へと向かいました。ところがこのとき、たまたま左側の手綱がハミの近くから切れてしまい、阿部騎手が右の手綱だけで必死に制御しようとしたものの、ラチに接触して騎手を落とし放馬してしまいました。
人馬とも大事には至らず良かったのですが、エメラルユーキはトラックを半周ほど走り、今度はUターンしてコースを逆走。スタンド側まで来るとレース後の馬が引き上げる出口のところから馬場を出て、職員の制止もきかずそのままの勢いで厩舎地区の方へ走って行ってしまいました。
今は水沢の厩舎から参戦しているエメラルユーキですが、実は昨年までは、盛岡の小笠原義巳厩舎にいました。このとき小笠原厩舎にいたのは、昨シーズン、エメラルユーキを担当していたN君。N君は、イマドキの若者らしいこなれた感じがなく、寡黙でまじめな青年で、馬の仕事がしたいがために単身、岩手競馬の世界に飛び込んできた人物。私と彼とは乗馬練習を一緒に受けた時に話をするようになったのですが、「自分はユーキに馬というものを教えてもらった」と良く言っていました。しかし残念ながらとある事情により7月を最後に厩舎を退職し、実家へ帰ることがこのとき既に決まっていました。
そんなN君が厩舎の番をしていた午後。残り少ない競馬場で過ごす時間。そのときなぜか表に馬の気配を感じて出てみると、そこには、いるはずのないユーキが…!
放馬でパニックになったエメラルユーキが、記憶の断片に従って自分がもといた寝床への道を辿っただけなのかもしれません。でも、競馬場をあとにするかつての担当者に、別れの挨拶をしにきた…ようにも思えて、ちょっと泣ける話ですよね。