SG並みの豪華メンバーが集結
『オートレースメモリアル』は2022年に誕生して今年が3度目の開催となる新興グレードレースながら、今期の全国ランキングS級シングルの大半が参加するなど、G2ながらSGにもヒケを取らない顔ぶれとなった。
栄えある初代チャンピオンは加賀谷建明。昨年の前回大会は岩見貴史が制して、今回は連覇を狙う立場となる。
過去の当欄において、今年の山陽デイレースでは完璧に近い成績を挙げていると何度も触れてきた鈴木圭一郎。だが今回に関しては少しばかり流れが良くない。直近の山陽デイレース出場である10月の『G2若獅子杯争奪戦』も5戦中4勝したものの、準決勝戦の前日3日目に落車妨害を犯して4・5日目は一般戦回り。続く川口デイレース『SG日本選手権』でも同じく予選最終日であった4日目に雨で大敗、準決勝戦もリズムに乗れず4着、最終日6日目はレースは快勝したがフライングを喫してしまった。しかしそれでも今年は前人未到の年間100勝を達成、今季は全国ナンバー1の座を奪還と、総体的には充実している。
その鈴木圭に若獅子杯(2月)、『G1プレミアムカップ』(3月)、『G1令和グランドチャンピオンカップ』(4月)と山陽デイレース決勝で後塵を拝し続けてきた青山周平が、9月のプレミアムカップでは黒川京介・鈴木圭を抑えて優勝し溜飲を下げた。先週の川口デイレース『SG日本選手権』決勝戦は黒川に敗れたが6日間オール2連対と、エンジンは高いレベルで推移している。
このS1・S2両雄と黒川・佐藤励に今年の山陽タイトルほとんどを席巻されてきた地元勢だが、今回はひと味違う結果を出す可能性がある。ランキング上位選手たちがここにきて上昇ムードに転じてきたからだ。
まずは今年下半期の山陽エース・松尾啓史。日本選手権は未勝利ではあったが6戦して2着と3着が各2回。スタートが上向いたことと、道中の捌きの切れ味を増したことが今回に向けてのセールスポイント。
それから今年上半期の山陽エース・丹村飛竜。こちらも同じく選手権は未勝利ながら2着3回と3着1回。初日・2日目に本走3秒台の速いタイムをいきなり連発し、気候の冷え込みにつれてスピードを上げてきた印象だ。
続いて佐々木啓。選手権は4日目に雨走路で1勝。スタートが切れていなかったため目立った活躍はできなかったが、伸びは直線もコーナーも最近の中ではかなり良かった。後方から3着まで押し上げた3日目は丹村飛を一発で交わし、2着に入った佐藤貴也と比較しても直線の威力は上回っていた。
丸山智史は逆に選手権の雨1走は大敗したが良走路5走では3着以内に4度入り、本走3秒台を2度マークした。
浜野淳は山陽ナイター、飯塚デイレース『G2オーバルチャンピオンカップ』、山陽ミッドナイトに3節連続で優出と昇り調子にある。
西村龍太郎は先月の山陽ミッドナイトから前節の山陽デイレースにかけて4節14走して着外わずか2度。しばらく続いた低迷を最近は脱出して速攻力がよみがえった上、競り合う展開にも強くなった。前節の最終日は雨巧者ぶりを発揮し内外自在に捌いて快勝した。
中村雅人と有吉辰也は『G1プレミアムカップ』(山陽9月)と選手権に優出。選手権の有吉は、他者に不利を受けて着外に沈んだ準決勝戦を除く5戦に全勝。タイムもレース内容も優秀だったので今回も有力候補の1人だ。中村雅はプレミアムカップのあと地元川口の2節にも優出し、続くオーバルチャンピオンカップは出走レースが中止になった3日目のほか4戦を全勝してのV。そのオーバルチャンピオンカップ準優勝だった荒尾聡も選手権に優出している。
近況の早川清太郎は地元開催での良績が多い一方、今年の山陽は20走して未勝利ではあるが、7月デイレースの『G2小林啓二杯』では優出3着と活躍した。
渡辺篤は今年の山陽での好走が消音・夜開催に偏っている感はあるものの、走路の特性は掴めているであろうし、気候が冷え込んでタイヤの喰い付きがアップすれば活躍の可能性が拡がりそう。
渡辺篤と同じ31期の辰巳裕樹は、今年の山陽は昼夜まんべんなく動いている。春季と秋季の若獅子杯2節10走は、着外1度のほか9走で3着以内に好走する安定ぶりを今回にも強みとして生かせれば。
山陽のグレード開催への出場は2022年3月ぶりの久々となるが、田中哲が今回の伏兵になるか。今年の山陽は6月のミッドナイトで良走路は2戦2勝。そして今月10日に終わったばかりのデイレース5日制には6走して初日~準決勝戦までオール2連対。決勝戦も、優勝した永島潤太郎を道中いったん捲りで交わす奮闘を見せて3着。雨の決勝戦はスタート後手になったが4日目までの良走路では連日鋭い出足を放っていたので、相手が強化される今開催もスタート争いに連日注目したい。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
松尾 啓史〔山陽 S-13(26期)〕
丹村 飛竜〔山陽 S-30(29期)〕
佐々木 啓〔山陽 S-48(23期)〕
浜野 淳〔山陽 A-13(24期)〕
丸山 智史〔山陽 A-22(31期)〕
西村 龍太郎〔山陽 A-110(25期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-4(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
若井 友和〔川口 S-8(25期)〕
中村 雅人〔川口 S-9(28期)〕
文/鈴木
青山周平が現役単独最多の選手権V5へ躍り出るか
『SG日本選手権』を最も多く優勝したのは飯塚将光(引退)の6度。2位タイの優勝4度で続くのが高橋貢・永井大介・青山周平。まずはこの3名から近況の動向をみていく。
高橋貢は2017年の『SGオートレースグランプリ』を最後にSG制覇からは遠ざかっているが、今年は6月に浜松G2優勝。前期も今期も全国ランキングS級シングルに位置して存在感を放っており、今すでに史上最多を独走しているSG優勝回数を22度に延ばす態勢は整っている。
永井大介は単独で史上最多となる『選手権3連覇』のレコード保持者。今年まだグレード優勝はないが、昨年2月の川口デイレース『G1開設記念グランプリレース』決勝戦では1周で先頭に立つと、2番手まで追い上げてきた青山周平をレース終盤は逆に突き放して快勝した。今月は川口のみ4節に出場して、昼夜を合わせて3節に優出と、9月に比べて上昇気流に乗ってきた感がある。
日本選手権の2連覇を2度達成しているのはオートレース史上、飯塚将光と青山周の2名のみ。その青山周が今回は3連覇をめざす資格を持っている。9月29日の伊勢崎ナイターを優勝した直後のアフター5ナイターは身体不良で欠場。およそ1か月ぶりの競走となった10月24日~28日の伊勢崎ナイターは全日程スーパーハンデに据えられたが5戦5勝の完全V。史上3人目、自身初の15連勝を飾った。
川口では7月ナイター『G1キューポラ杯』は節間を通して天候が不順だったこともあり準決勝戦進出にとどまったが、デイレースでは今年3月に『G1開設記念グランプリレース』優勝。そして昨年末には『SGスーパースター王座決定戦』を5戦全勝し、通算V5を決めている。
早川清太郎もまた1か月ぶりの実戦として10月24日~28日の伊勢崎ナイター決勝戦に臨み、青山周には捌かれたが準優勝。大レース制覇から少し遠ざかっているが、前回に獲得したタイトルはナイターではあるが2022年7月の川口『G1キューポラ杯』。直近の川口デイレースは今年3月の『G1開設記念グランプリレース』の5戦中4走に2連対して準決勝戦に進んでいる。
能力はSG級と誰もが認める実力者。先述した川口グランプリレースの準決勝戦はスタート8番手に遅れて6着に敗れたが、10月27日の前節ナイター準決勝戦では鋭いダッシュを放っており、念願のSG初制覇に向けてはスタート力に一層の磨きをかけたい。
片平巧(引退)と並ぶ選手権通算V3なのが、10月から適用中の最新ランキングで全国S1を青山周から奪還した鈴木圭一郎。近況は『SGオートレースグランプリ』『G1ダイヤモンドレース』『特別G1プレミアムカップ』と決勝戦に進みながら勝てず、前節の『G2若獅子杯争奪戦』は落車妨害で開催3日目に勝ち上がり権利喪失と、今ひとつ勢いに乗りきれていないが、今年の勝ち星を97まで延ばしており、選手権の節間に史上初の年間100勝まで到達すれば、おのずと勢いも増してくるだろう。あとは今後を含めたテーマとしては、青山周にレースで前を走られた時いかにして攻略するか。
今年の川口デイレースでは、浜松車は金子大輔が2月の『SG全日本選抜』で鈴木圭を2着にくだして優勝。木村武之は今月の一般開催で3日間3勝の完全V。佐藤貴也は3月『G1開設記念グランプリレース』準優勝と、鈴木圭の他にもSGレーサーが高い実績を残している。
西日本の2場は、飯塚の荒尾聡が4節に出場してSG全日本選抜を含む3度優出、山陽の山本翔と松尾彩が比較的に上位着順を多く獲っているものの、川口デイレースで際立った活躍をできている選手が多くない。
中村雅人が飯塚デイレース『G2オーバルチャンピオンカップ』を制して地元川口へ帰ってくる。今年は16度優出して、2度のVはいずれも川口デイレースと、年間を通じての流れも良く、10年ぶり2度目の選手権制覇へムードをみずから高めてきた。
黒川京介の最近の優勝は川口の夜開催でのものが続いているが、8月以降のSGやG1・G2にしっかり優出しており、高い走力を長らくキープしている。佐藤励は不振に終わった『SGオートレースグランプリ』の次節、『G1ダイヤモンドレース』へ優出したあたりから成績が急上昇中だ。9月末の川口と山陽『G2若獅子杯争奪戦』のデイレース2節を連続優勝。若獅子杯の決勝戦では黒川京介をイン切り返しで捌いている。今月23日の川口ナイトレースで若井友和・黒川・永井を下して優勝した上和田拓海との川口ニューウエーブ3名はいずれも若くしてスタート力と攻撃力の高さを誇り、日本一を決めるこの舞台でさらに躍進するか注目だ。
森且行は今年10度優出し、2着が5回に3着が2度と、落車事故による療養を経て4年ぶりの復活Vは遠くないはず。その4年前のVこそ悲願のSG初制覇となった2020年の第52回日本選手権である。
池田政和も同様にレース中の事故から長期療養ののちに復帰。選手権は1999年と2003年の2度制覇。今月上旬の川口デイレースは3日目の決勝戦は雨に見舞われて苦戦したが、良走路の初日予選と2日目準決勝戦は快勝。特に2日目は好スタートから自在に捌き3周で先頭に立つ速攻劇。中村雅人に影をも踏ませなかった。
この2大スターが、縁もゆかりもあり地元で開催される日本選手権で完全復活を遂げるか、動向を注視したい。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
中村 雅人〔川口 S-9(28期)〕
黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 励〔川口 S-12(35期)〕
永井 大介〔川口 S-18(25期)〕
池田 政和〔川口 S-26(23期)〕
森 且行〔川口 S-35(25期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
金子 大輔〔浜松 S-3(29期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-6(22期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-17(29期)〕
文/鈴木
4度目の大会制覇をもくろむ荒尾聡
飯塚でのランキングトップ、『地元エース』の座は今期も有吉辰也に譲った荒尾聡だが、先ごろ史上31人目の通算1000勝に到達するなど近況のムードは上々だ。
今大会『G2オーバルチャンピオンカップ』は2015年・2019年(1月)・2023年に優勝。その『4年おき』のペースから今年は外れているが、大台達成からの2節で早くも6勝を加算している現在の勢いなら2年連続の戴冠は大いにありそう。
有吉辰也は8月『G1ダイヤモンドレース』と今月の一般開催デイレース、同ミッドナイト(4戦4勝の完全V)と、飯塚は3連続で優出して今回に臨む。今年の優出回数すでに23回。長い年月キープできている安定感は、オートレース界の全体を見渡しても高橋貢と双璧といえる。
オーバルチャンピオンカップ優勝歴は2019年(4月)の1度のみながら、昨年は『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』(決勝は8周戦)を制して、今年は『SGオールスターオートレース』(準決勝戦は8周戦)に優出3着と、地元飯塚の長距離戦の戦い方を熟知している。
遠征勢の最大の目玉は高橋貢。8月の伊勢崎ナイター『SGオートレースグランプリ』は予選勝ち上がりポイントが次点の33位で準決勝戦入りは逸したが、続く8月下旬の伊勢崎ナイター一般開催は4日間を無敗で完全V。これで通算優勝回数は歴代ダントツでトップの218回。通算勝利数は来年にも1700勝に達する見込みで、王者の走りは円熟味を一段と増している。
中村雅人は9月山陽『特別G1プレミアムカップ』と川口2節、デイレースに3連続で優出中。直近の飯塚は8月ダイヤモンドレースに優出した他、昨年秋の飯塚デイレース『G2オートレースメモリアル』と『G1開設記念』にも優出しているので、夏~秋の飯塚にエンジンを合わせる整備のコツを会得しているか。
さきに触れたダイヤモンドレースの準決勝戦で中村雅・有吉を破って勝利したのが伊藤信夫。このレースはフライングを喫して勝ち上がり権利を失ったため翌日の優勝戦へは進めなかったが、近年の飯塚では勝ち星を多く挙げられていなかったのが、この1節は5戦して1着2回・2着1回と好走。近年は濡れた走路での上位着順がレース場を問わず急増していることも付け加えておきたい。
加賀谷建明は既得のグレード6タイトルのうち2つを、ここ飯塚で制している。2017年のオーバルチャンピオンカップ優勝は小雪舞う1月、2022年のG1開設記念の優勝は雨上がり重走路の11月と、秋~冬の飯塚に実績を残している。事実いま現在も、暑さが落ち着き始めた先月下旬から成績が急上昇中で、9月プレミアムカップ最終日から11戦7勝、オール3着以内。それ以前の11走が1勝のみだったのとはきわめて対照的だ。
今週14日に閉幕したばかりの山陽デイレース『G2若獅子杯』から、31期以降の若手が数多く転戦してくる。
今年デビューしたばかりの新人37期ながら最重ハンデの20メートル前で戦った福岡鷹は開催3日目の準々決勝戦、1級車の角貝拓海を並ぶ間もなく捲って快勝し、翌4日目の準決勝戦入りを果たした。
同じく最重ハンデの20メートル前に置かれたデビュー2年目36期の村瀬月乃丞は、準決勝戦には進めなかったが4日目の一般戦、今期ランキングA-125の米里崇徳にスタート叩かれる試練の展開から道中で捲って逆転すると、残り1周半で稲原瑞穂・本田仁恵・桝崎星名の1級車3名を次々と捲り、ゴールでは10メートルの差をつけて圧勝した。
いま挙げた2個レースとも出走して後方に沈んだ中村杏亮は、当開催は初日から車券に絡めないレースが続いたが、最終日5日目は5日間で最高の試走タイム33秒を計時し、レースでも強い足色を見せた。オーバルチャンピオンカップは昨年3月の前々回大会、雨走路で鈴木圭一郎を大差でくだして優勝した。
長田稚也は4日目の準決勝戦、レース中盤まで福岡鷹に抵抗されてスピードアップできなかったのと、2番手を走る佐藤摩弥へ迫った5周回4コーナーで滑って車間が開き優出は逸したが、開催初日から好気配を維持し続けた。
森本優佑も初日から好調をキープし、8月『SGオートレースグランプリ』以来のグレードレース優出。その決勝戦は2周回1コーナーやや外へ張り気味になり、ちょうど後ろにいた佐藤励の進む道を空ける形になってしまったが、優勝した佐藤励と前日の準決勝戦で接戦できたのだから、エンジンは状態はかなり高いハズだ。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
有吉 辰也〔飯塚 S-4(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
中村 杏亮〔飯塚 S-31(33期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-32(34期)〕
森本 優佑〔飯塚 S-46(31期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-101(37期)〕
村瀬 月乃丞〔飯塚 A-226(36期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-6(22期)〕
中村 雅人〔川口 S-9(28期)〕
加賀谷 建明〔川口 S-14(27期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-19(24期)〕
文/鈴木
年間100勝が見えてきた鈴木圭一郎
『2024スーパースターガールズ王座決定戦』の出場権を争うべく5月の第1戦から繰り広げられてきたトライアルの最終戦となる第6戦が、今節『G2若獅子杯争奪戦』初日に実施される。第5戦を終えての選考順位トップは佐藤摩弥。ただ佐藤摩は『スーパースター王座決定戦トライアル』への出場が有望な情勢であり、ガールズ王座トライアル得点2位の松尾彩や4位の西翔子は、この第6戦で好成績を挙げて得点上位をキープするとともに、開催の本編である若獅子杯の勝ち上がりにもつなげたいところ。
先週の飯塚デイレースを5戦5勝の完全Vで駆け抜けた鈴木圭一郎は、昨年の大みそかに青山周平が更新したばかりの『年間最多勝利数』記録を大幅に塗り替える見込みが極めて濃厚。今年の山陽には全てデイレースの6節へ出場して、G1プレミアムカップ(春)、G1令和グランドチャンピオンカップ、G2小林啓二杯、8月の一般開催と、出場機会4節に連続優勝。加えて2月には前回大会の若獅子杯を準優勝し、先月のG1プレミアムカップ(秋)は優出3着と、成績が全く崩れていない。若獅子杯は3年前の11月に1度制している。
前回若獅子杯を制したのが黒川京介。過去に獲得したグレードタイトル6つのうち3つが山陽でのもので、外来勢としての山陽との相性の良さは鈴木圭にも劣らない。先月のG1プレミアムカップ決勝戦は鈴木圭の追撃を振り切る形で準優勝している。
前々回(2022年)若獅子杯の覇者は佐藤励。昨年暮れには『G1スピード王決定戦』も制して、獲得タイトル2つとも山陽デイレースであり、今年3月の山陽デイレース一般開催では良走路の競走は全勝してV。先月のG1プレミアムカップは初日・2日目を連勝して準決勝戦へ進みながら、4・5日目はスタートが決まらなかったが、その最終日の4日後に開幕した地元川口のデイレースは4戦4勝の無敗で優勝し、再び勢いを増してきた印象だ。
佐藤摩弥も若獅子杯の歴代覇者に名を連ねる。過去に4度制したグレードタイトルのうち3つは夜開催で、唯一デイレースで実施されたのが2020年の若獅子杯だった。2年連続でSGオールスター(飯塚ナイター)準優勝、7月G2ミッドナイトチャンピオンカップ制覇など、今年も夜開催での活躍が目立っているが、デイレースでも『SG全日本選抜』(川口)などグレード3節に優出しており、オールラウンダーといえる。
鈴木宏和は前回大会で通算2度目の若獅子杯優出。初回の2018年はいきなり準優勝。ちなみに勝った中村杏亮は自身の初優勝がグレード大会という快挙だった。
今年2月の若獅子杯は決勝戦5着だったが、この夏は7月の伊勢崎ナイターから前々節まで6節連続で優出し、長らく好機力をキープできている。その6節にはSGオートレースグランプリやG1プレミアムカップが含まれる。連続優出が途切れた前節、先週の飯塚デイレース5日制でも、準決勝戦と最終日はそれぞれ地元車の激しい抵抗に遭って厳しい位置取りをしいられたが、3日目にはハンデ単独30メートルの最後方から雨走路で追い込み勝ちを決めており、機力は良かったことと雨の乗り方に進境がうかがえることは留意しておきたい。
鈴木宏と同様に初タイトルを狙える雰囲気が出てきたのが森本優佑。ここ数か月の傾向として、スタートが遅れる場面の減少が挙げられる。最近のレーススタイルは最重ハンから1~2周目で4~5番手くらいまで上がり、後半の周回は先頭争いに加わる展開が増えている。今年の山陽は2月のナイターに優出し、5月のデイレースを3戦3勝でV。8月にはオートレースグランプリで初めてのSG優出も果たし、ランキングは2023年の上期・下期A級から今期はS級へ復帰しての昇格と、さまざまな角度から流れが上向いている。
今年も女子レーサーの躍進は止まらない。パイオニア佐藤摩が昨年までと比較してレベルアップしている他、小椋華恋が5月に『G2川口記念』でグレード初制覇。その前節と前々節は山陽デイレースとミッドナイトで上位着順を数多く取った。2月の前回若獅子杯5日間も2・3・4・4・1着と好走し、山陽走路への適性は高い。
新井日和が先月プレミアムカップでG1初優出。決勝戦は0ハンデオープン戦の大外8枠に置かれて、ゴール入線は8着だったが、発走してスタートラインの通過は1枠の青山周や4枠の鈴木圭より早い3番手発進。3月の前回プレミアムカップでは本走タイム3.376秒で1勝を挙げた。山陽デイレースにおけるスピードの上げ方やスタートの感覚を掴めていることは強みとなりそう。
松尾彩は2023年の上期以降、ランキングがA級上位に定着しつつある。今年は2月の若獅子杯~SG全日本選抜~3月の山陽ミッドナイトチャンピオンカップと好走を続けた。加えて例年を越える3度もSGに挑戦し、その全てで勝利を挙げているのが成長の証しだ。
8月1日の飯塚ナイターにおいて『36期新人王決定戦』が実施されて、11名いる36期の中でもスピードが抜きん出ている栗原佳祐・村瀬月乃丞・吉林直都が同ハンに並んで直接対決し栗原佳が快勝した。
栗原佳の直近の山陽デイレースは2月の若獅子杯、3月のプレミアムカップ、4月の令和グラチャン。まず、デビュー2年目でこれらの大レースへあっせんされること自体が凄いのだが、この3節すべてで車券に絡む走りをできたことがまた非凡さを表している。
村瀬はもう半年以上、飯塚でしか実戦を走っていない点が気がかりだが、3節前の飯塚ミッドナイトで優勝して勢いは十分。前回若獅子杯では2着と3着を1度ずつ獲っている。
吉林は昨年の晩秋あたりからエンジンがハイパワーを維持した数か月間があり、2月の若獅子杯は初日から3連勝。3日目の選抜予選では20メートル後ろの鈴木圭一郎・青山周平を振り切って勝利した。そして、ミッドナイトとはいえ先月末に山陽走路で実戦を経験できているのは好材料といえそう。
37期は今年のデビュー当初は浅倉樹良・福岡鷹・森下輝が大活躍して37期3強のように称されたが、夏前ごろから田中崇太・丹下昂紀・村田光希の山陽3車が足並みを揃えて急速に成長してきた。ハンデが重くなってから勝ち星をなかなか増やせないでいる浅倉の通算勝利数に10月9日の時点で、田中崇は同数で並び、村田は追い抜いている。
36・37期は1級車よりパワーの劣る2級車で戦うため、優勝戦線をリードするほど活躍できるかは不透明だが、それは未知の可能性を秘めているということ。将来の伸びしろを発見できるかも知れず、連日の走りに注目していきたい。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-11(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-12(35期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-15(32期)〕
森本 優佑〔飯塚 S-46(31期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 A-32(37期)〕
松尾 彩〔山陽 A-56(34期)〕
新井 日和〔伊勢崎 A-65(35期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-117(36期)〕
文/鈴木
『ミスタープレミアム』永井大介の大会10Vあるか
『特別G1プレミアムカップ』通算V9を誇る永井大介が、大会との相性の良さを活かして青山周平・鈴木圭一郎の前に立ちはだかりたい。
今年3月に山陽で開催された前回大会は、予選2日間の雨に勝ち上がりを阻まれたが、3日目の一般戦は試走・本走とも好タイムで快勝。走路温度40度台でおこなわれた5月の山陽デイレースは予選~準決勝戦を2連勝して優出。今開催もそれくらいの本走時計で争われることが想定されるので、経験と実績が有利に作用するか。
最近の山陽走路との相性でいえば、鈴木圭の右に出る者はいまい。今年の山陽はデイレースのみに23走して、2月『G2若獅子杯争奪戦』での2着2回の他は全勝。3月の前回プレミアムカップ、4月『G1令和グランドチャンピオンカップ』、7月『G2小林啓二杯』の全てを無敗の5連勝で完全V。今年すでに84勝を挙げて、青山周に20勝以上の差をつけている。
近況はナイター出場が続いているが、直近のデイレースは山陽の一般開催で全勝Vと、無双できる条件が今回は整いすぎている。先月の『SGオートレースグランプリ』決勝は青山周に完敗したが、開催地の伊勢崎は青山周にとって、いわば『庭』であり、今季ほぼ完璧な実績を挙げている山陽へ舞台を移せば、鈴木圭が青山周より優秀な、最高の成績を挙げる可能性は大いにある。現S1青山周をここで倒した上で10月からは、通算9着目の全国ナンバー1勝負服を身にまといたい。
青山周は2月~4月の山陽グレード戦3節では立て続けに決勝で鈴木圭の後塵を拝したが、4月飯塚ナイター『SGオールスター』と8月伊勢崎ナイター『SGオートレースグランプリ』はいずれも鈴木圭を下して優勝。重箱の隅をつついて死角を挙げるなら、デイレースの実戦が4か月ぶりである点。だが実力と整備力の卓越している青山周にとっては、その程度はマイナス要素ではないか。
地元の山陽勢は、S級では丸山智史の勢いが最も高い。『G2小林啓二杯』と一般開催の山陽デイレース2節で準決勝戦へ進んだあと、8月の山陽ミッドナイト2開催に連続優勝。中~長期の推移としては、4月オールスター初日に落車してから6月頃まで崩していた調子が、小林啓二杯から上向いてきた格好だ。
もう1人、A級の松尾彩も状態をグングン上げている。『SGオートレースグランプリ』最終日、最重ハンに8車並んだ10mオープン戦の3枠から逃げ切り快勝。丸山智と同じ山陽ミッドナイト2節の着順は411→222。2節目はオール2連対で準優勝。そして続く伊勢崎ナイター『G1ムーンライトチャンピオンカップ』は4走して1・131着(2日目は中止)。最終日はグランプリと同様に最重ハン10mオープン戦の2枠から序盤に先頭を奪うとブッチギリの圧勝劇を披露した。実はまだ優勝したことがないが、近年には中村杏亮が初優勝をグレード戦で決めた例もあり、先ごろ誕生日を迎えた年女が大活躍を見せるか。
小林瑞季が8月下旬に飯塚ナイター『G1ダイヤモンドレース』を制覇。決勝戦での長田稚也との壮絶な競り合いは見応え満点だった。
森且行は今月上旬の伊勢崎ナイター『G1ムーンライトチャンピオンカップ』に優出して3着。SG初Vとなった2020年『日本選手権』のあと次の優勝をできていないが、今年は7度優出して着順は8327223と上位争いするケースが確実に増えてきているので、今回の大舞台で復活Vを成し遂げる可能性は十分にある。
グランプリは落車妨害にフライングと不本意な形になってしまった佐藤励。だがそれでメンタルを下げないのが、並みの若手でないゆえん。翌週の『G1ダイヤモンドレース』で優出を果たすと、今月上旬の川口ナイターでも好走。佐藤励と接触して他落をこうむった上和田拓海もまた『G1ダイヤモンドレース』の準決勝戦まで進むと、今月12日の川口ナイター最終日は最重ハン8枠から捌き上げて圧勝。この両名とも、狭い場所へ入っていけるエンジンの反応が上向いたことが、最近のセールスポイント。
高橋貢の動向が近況も活発だ。8月下旬の地元ナイター4日制を全勝優勝。続く『ムーンライトチャンピオンカップ』にも優出。プレミアムカップは過去4度制覇、G1タイトル獲得のべ28度、通算218Vと、勝利の方程式を熟知している。
その方程式をもうすぐ会得できそうなのが鈴木宏和。『ムーンライトチャンピオンカップ』決勝戦は10mオープン戦の外寄り7枠でも2番手発進すると、2枠からトップスタート決めた岩田行雄を1周で差して逃げ態勢。3周で青山周平に捌かれたが、後続を大きく離す2着でゴール。いつかは獲れるはずのグレードタイトル。それは今回になるかも知れない。
浜松車では金子大輔が上昇ムード。8月『SGオートレースグランプリ』準決勝戦で落車して最終日は身体不良により開催を早退したが、今月の川口ナイターで戦列に復帰すると4日制の着順は1431。最終日は、競り合う木村武之と佐藤励、その前にいた阿部剛士をまとめて差す『はなれわざ』を披露。今年2月には川口デイレース『SG全日本選抜』を制しており、翌3月には山陽デイレース『G1プレミアムカップ』にも優出。総体的に今年は例年と比較しても良い流れで来れている印象。
荒尾聡は優勝争いとは別の角度からも注目される形で参戦することになった。現在の通算勝ち星が999勝。前節の飯塚デイレースは5戦して3勝。敗れた2走のどちらかを勝てていれば地元ファンの前で大台到達の喜びを分かち合えたのだが持ち越しとなった。それでも、全国のオートレースファンの注目が集まるプレミアムカップの舞台で記録を達成すれば、大会そのものも一層盛り上がることになろう。
その飯塚の決勝戦で荒尾を捌いて優勝したのが久門徹。今年11回している優出のうち、6月以降の3か月間だけで6度も優出。その全てが飯塚デイレースで、今年3Vも全て飯塚デイ。山陽デイレースでも7月の『G2小林啓二杯』5日制で2勝を挙げており、今夏の西日本の気候にエンジンが合っていると判断できる。
森本優佑の着取りが安定してきた。今年5月あたりから大敗が減り始めて、今月の飯塚デイレース一般開催は5日間オール3着以内と好走を重ねて準優勝。近況はスタート遅れが減っただけでなく、2周回あたりで3~4番手に付ける走りが明らかに増えている。今年初めての山陽出場となった2月のナイターに優出すると、4月デイレース『G1令和グランドチャンピオンカップ』ではすでに春の気候へ変わっていたにも関わらず本走タイム3.38秒を連発。そして同月下旬のデイレース一般開催は3日制3連勝でV。先月には伊勢崎『オートレースグランプリ』において初のSG優出を成し遂げて、最近の成長と目下の充実ぶりが光る1車だ。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
丸山 智史〔山陽 S-36(31期)〕
松尾 彩〔山陽 A-37(34期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-4(32期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-5(22期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-10(27期)〕
金子 大輔〔浜松 S-11(29期)〕
永井 大介〔川口 S-13(25期)〕
佐藤 励〔川口 S-15(35期)〕
森 且行〔川口 S-22(25期)〕
森本 優佑〔飯塚 A-9(31期)〕
文/鈴木