
GII稲妻賞の展望
意外に思われる方は少なくないのではあるまいか。実は青山周平は今年3月の浜松デイレース『G1プレミアムカップ』を最後に優勝から遠ざかっている。しかしその後2か月あまり、そう感じさせないだけの活躍を見せている。山陽デイレース『G1令和グランドチャンピオンカップ』、川口ナイターの『SGオールスター』に準優勝。そのほかの一般開催も含めた近3か月間の着順は、32走して良走路は3連対パーフェクトである。
過去1年間の伊勢崎における成績は、それ以上の凄さだ。39走して良路2着1度と雨4着1度の他37走はすべて1着。出場した10節のうち9節に優勝し、伊勢崎では昨年9月から通算21連勝中と、「無双」や「破竹」の表現でも足りない。ひとり無敵艦隊となっている。
青山周のV3を上回る『稲妻賞』通算V4を誇る高橋貢も、昨年の秋ごろから地元走路での安定感を増している。伊勢崎に限ると過去半年間に3連勝を2度と5連勝を1度。昼夜を織り交ぜて伊勢崎では4連続で優出中だ。
昨年6月の前回『稲妻賞』は準決勝戦4着で優出ならなかったが、2週間後の浜松デイレース『G2浜松記念 曳馬野賞』を制覇。年は変わってもこの時季の気候にエンジンを仕上げてくる可能性は高そう。その後の1年間も優勝回数を重ねて現在は219V。今年中の通算1700勝も濃厚な情勢だ。4月の『SGオールスター』から3節連続で優出中と、目下の勢いも申し分ない。
昨年の自身ラストレースを伊勢崎デイレース優勝で締めくくった早川清太郎も、地元での安定感は相当に高い。年明けのデイレース『G1シルクカップ』は準決勝戦どまりだったが、3月から伊勢崎ナイターに5節連続で優出しており、うち2節に優勝している。直近に出場した夜のグレード開催は4月の『SGオールスター』で、後半2日間に連勝して節間の最高タイムは3.391秒をマークしている。
今開催において上記の伊勢崎3強に次ぐ存在、地元勢第4の使者へ指名したいのは伊藤正真。未勝利に終わった2月~3月から一転、1月以来の伊勢崎ナイター出場となった4月上旬にいきなり優出すると、5月に出走した伊勢崎の夜3節もオール優出。そのうち5月20日の決勝戦は高橋貢や早川清太郎を大差でくだす圧勝だった。
全国ランキングは前期S級から今期はA級へ降格したが、この春以降の好調ぶりなら次期のS級復帰を大いに望めそうであるとともに、そろそろ初のグレードタイトル獲得も実現させたいところだ。
伊藤正真のほかに注意を払いたい地元のA級車としては...
4月から5月にかけて伊勢崎ナイター4連勝、直近節も伊勢崎の夜に2連勝して今回へ臨む亀井政和
4月以降の伊勢崎ナイターは22走して11勝、優勝と準優勝を1度ずつ挙げるなど高い安定感を示している田中哲
今とは気候が異なるが昨年11月の伊勢崎ナイターを本走タイム3.369秒の好タイムでV。5月末の伊勢崎ナイターでは早川清太郎・伊藤正真の追撃を振り切って優勝した大月渉
今と気候条件の近かった昨年9月の伊勢崎ナイターで悲願の初優勝。今年の『SGオールスター』では最重ハンに置かれながら2着を2本取るなど近年は地力を上げている吉田恵輔
今年3月と4月に伊勢崎ナイターで優勝し、近況は最重ハンに定着しつつあり、こちらも地力アップしている野本佳章
などは、タイトル未獲得でも銘柄級と互角に戦うシーンを見せる可能性十分。
遠征者で最初に取り上げるべきはやはり、現在『G2稲妻賞』を2連覇している荒尾聡だろう。ただ現状のエンジン状態は完調という雰囲気には見えない。今年6度優出して、まだ優勝ゼロ。2節前の5月20日は伊勢崎ナイターに優出しているが、前述した伊藤正真の独走劇に全く付いていけなかった。だがそれでも直近節は、デイレース一般開催ながら浜松5日制に1着・3着・2着・2着と好走を続けて、決勝戦のレース終盤には先頭の伊藤信夫へ詰め寄る動きを見せて準優勝。上昇曲線を描けているのは強調できる材料。
加賀谷建明は3節前に『アップテイル号』へ乗り換えてから、『G2川口記念』を含む川口ナイター2節に優出。ちなみに乗り換える前の節は伊勢崎ナイターに優出していたし、『G2稲妻賞』は昨年の前回大会に優出したので、整備データは豊富に備えていそうだ。
山本翔は昨年6月、栗原佳祐は8月に伊勢崎ナイター優出。木村武之は昨年6月の一般開催と8月『SGオートレースグランプリ』の伊勢崎ナイター2開催へ優出した。そのグランプリで福岡鷹はグレード初出場およびSG初挑戦にして1度2着に好走している。
佐藤励と金子大輔はグランプリでそれぞれ節間に失権して優出を逸する結果となった。今回は巻き返しの意味でもまず優出、そして表彰台の頂点をめざせるところまで成績を上げていきたい。
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主な出場予定選手
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青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕
伊藤 正真〔伊勢崎 A-26(33期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
加賀谷 建明〔川口 S-15(27期)〕
木村 武之〔浜松 S-23(26期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕
山本 翔〔山陽 A-89(34期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-91(37期)〕
文/鈴木
G2ミッドナイトチャンピオンカップの展望
前回大会の実施からわずか2か月、黒川京介の2連覇ムードが一気に高まってきた。
2024年度の最終日、3月31日の前回ミッドナイトチャンピオンカップ(山陽で実施)優勝戦は、黒川が本走タイム3.341秒で優勝。1か月後の川口ナイターSG『オールスター』優勝戦はゴール寸前、佐藤励に逆転をくらって3着となったが、さらに1か月後の5月25日。川口ナイターG2『川口記念』優勝戦は、ひとつ内枠の佐藤励より先にスタート出ると、ゴールでは20メートルのリードを作って完勝。その1着タイムは3月31日と全く同じ3.341秒だった。
2連覇を果たした川口記念に続いて、今大会も地元勢を差し置いての山陽2連覇は大いに有望な情勢だ。
その前回ミッドナイトチャンピオンカップで準優勝したのは松尾啓史。彼もまた先週の川口記念にも優出しており5着だったが、川口は黒川の庭。今度は松尾啓のホーム・山陽へ場所を移す。
課題として先行力が挙げられるが、前回ミッドナイトチャンピオンカップ優勝戦はスタート遅れての離れた最後方7番手からゴールでは黒川まで数メートルまで迫っていたし、夜が更けるほど速いタイムが出る傾向もあるので、今回の舞台では地の利も生かして、川口記念で黒川に付けられた差を詰めて、逆転・リベンジまでもっていきたい。
今期の山陽ランキングトップ、すなわち地元エースは浜野淳。前期A-13からS-19へとジャンプアップした今期は、10年ぶり16度目のタイトルを獲得してエースの看板に箔を加えたいところ。
前回ミッドナイトチャンピオンカップは準決勝戦へ進出しての5戦2勝。今回は2週間ほど前になるが浜松デイレースG1『ゴールデンレース』に優出して今回への参戦となり、機力面のレベルも高い。
近年ずっと松尾啓史との2名で山陽エースの座を争い続けてきた丹村飛竜が、今期の全国ランキングはA-10。前期のS-30から大幅に下がってしまった。しかし今年は1月~2月に7連勝、4月には2度の4連勝、そして今月は23日の山陽ミッドナイト一般開催に準優勝と、S級の輝きをバッチリ放っている。
その山陽ミッドナイト優勝戦3着の別府敬剛、4着の藤岡一樹、同開催へ優出はできなかったが2・3日目に2連勝した丸山智史、この3名も昇り調子で今節に参戦できる。
久門徹は2月中旬の山陽ナイターに優勝し、今月は伊勢崎アフター5ナイター優勝戦で3着に入っている。
2022年の本大会(飯塚で実施)を制している篠原睦は、今年1月に飯塚ミッドナイト、3月に山陽ナイターで優勝すると、前回ミッドナイトチャンピオンカップ優勝戦にも優出した。
丹村飛竜と同様に今期A級へ降格したがS級の能力を備えている佐々木啓は、今月16日の山陽ミッドナイトに準優勝。ちなみに、このとき優勝した福岡鷹が、翌週23日の優勝戦では丹村飛竜を2着にくだして連続Vを果たすこととなる。
4月の前半にレース中の妨害判定が続いてしまってリズムを崩していた永島潤太郎が、SGオールスター挑戦を経た5月の山陽ミッドナイト2節で復調した。気候が暑くなりつつあるにも関わらず直近節では久しぶりに本走タイム3.3秒台を出すなど、機力も乗り手も上向いているとみて良さそうだ。
永島とは逆に5月に入ると浜松デイ2節で勢いを下げてしまった山本翔だが、昨年10月ごろから長らく山陽の消音ではS級の強豪たちと比べても互角以上の安定感を示しており、更に最近は捌く腕を上げ続けているので、今季はグレードタイトル初獲得へそろそろ動きたいところだ。
上記の黒川など以外の遠征車に触れると、渡辺篤は過去1年間の山陽・消音マフラーへ15戦に出走して着外5度のみ。ほか10走は7勝・2着2回・3着1回と、遠征勢の中で上位級の安定感を誇る。
同期間、中村杏亮・阿部剛士・平塚雅樹・新井日和も高い確率で3着以内に入っているし、同様に好走している牧瀬嘉葵と遠藤誠はそれぞれ2度、山陽の夜に優出している。
最後は、ともにデビュー2年目と少ないキャリアで大舞台へ果敢に挑戦する地元期待の若手2名。
田中崇は今回がデビュー以来4度目のグレード出場。昨秋の山陽デイレースG2『オートレースメモリアル』は補充選手として出走した開催後半2日間に2連勝。正選手として出走した先月の山陽デイレースG1『令和グランドチャンピオンカップ』最終日は、1級車の小栗勝太や竹内正浩にアウト伸び勝って2着と好走した。
村田光希は、若手のみで争われるG2若獅子杯を除くと、大勢のSGホルダーをまじえた強豪に胸を借りる形でのグレード参戦は正選手としては今回が初めて。しかし今月中旬の伊勢崎ナイターでの走りは彼の成長を示すものであった。
4日制の初日2着、2日目1着と好走して臨んだ3日目の準決勝戦。単独0ハンから10メートル後ろの金山周平を突き放して逃げ態勢を作ると、2周回で2番手まで上がった高橋貢を5周目まで近寄らせない快走。ラスト1周で伊藤正真と高橋貢に抜かれたが本走タイム3.419秒での3着。そして最終日4日目は、当時エンジン好調だった同ハン1級車の生方将人を捲り、レース後半は中村杏亮のイン攻めをスピードで抑え込んで2着と健闘した。
同期の浅倉樹良や福岡鷹の活躍の陰に隠れてしまうきらいがなくもないが、この両名も素質・能力が非凡であり、今回はハンデ位置もそこそこ有利な条件を得られそうで、活躍する可能性は決して低くない。
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主な出場予定選手
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浜野 淳〔山陽 S-19(24期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
丸山 智史〔山陽 S-31(31期)〕
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕
佐々木 啓〔山陽 A-18(23期)〕
山本 翔〔山陽 A-89(34期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕
渡辺 篤〔浜松 S-36(31期)〕
中村 杏亮〔飯塚 A-1(33期)〕
新井 日和〔伊勢崎 A-24(35期)〕
文/鈴木
G2川口記念の展望
『G2川口記念』は2016年にナイター開催へ移行してから今年で10回目を迎える。
その初代ナイター覇者である佐藤摩弥は、先月の川口ナイター『SGオールスター』は白星こそなかったものの5日目は準決勝戦へ進出し、0mオープン戦の6枠からトップスタートを切って逃げ、高橋貢と中村雅人の追撃に屈したが3着に粘った。
昨年の川口記念は優出し、黒川京介と激しく競り合っている最中、松尾啓史に間隙を突かれて捌かれたが、黒川には先着しての3着。6年前の大会ウイナー鈴木清と同様、過去に何度も優出していて相性の良い大会のひとつといえる。
ナイターで実施された過去9回のうち7回に優出、Vこそないものの準優勝3度と3着2度の実績がある中村雅人も、本大会との相性はきわめて高い。今季の推移は、2月に落車してから2か月あまりの休養を経て4月に戦列復帰。川口デイレース一般開催にいきなり優出すると、続くSGオールスターにも優出。底力の高さを改めて示してみせた。
昨年の覇者は小椋華恋。初めてのグレード優出で初優勝するという快挙だった。その前月には飯塚ナイター『SGオールスター』でも活躍した。
今年は3月の山陽『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』と4月のオールスターで好走。2月の川口ナイトレース準優勝も含めて今季は夜開催にエンジン合うシーンが目立っている。
佐藤励は昨年大会の決勝戦で人気に推されるも5着に敗れたが、その後は秋から冬にかけて山陽デイレース『G2若獅子杯争奪戦』と川口デイレース『SSシリーズ優勝戦』の優勝や、自身初の10連勝達成を経て、今年4月のオールスターで完全V。SGタイトルホルダーの仲間入りを果たした。6日制開催でのSG初優出&初制覇は、史上初の壮挙だった。間近い時期での川口ナイター実績は最上級の評価を与えたい存在だ。
同様に黒川京介も、昨秋の川口デイレース『日本選手権』で初めてSGを戴冠。この1年間の消音マフラー・夜開催の戦績は、昨年7月に川口ナイター『G1キューポラ杯』、今年2月の川口一般開催と3月の山陽G2ミッドナイトチャンピオンカップに優勝。先月のSGオールスターにも優出しており、近況のエンジン状態および消音適性は全く問題ない。
上和田拓海が今月上旬の伊勢崎アフター5ナイターにおいて約半年ぶりに優勝した。現状の実績では、1期先輩の黒川と1期後輩の佐藤励にリードを許しているが、デビュー初期の成績やレース内容の比較からは、彼ら2名に比肩するポテンシャルの持ち主であるはず。おととしからはグレード開催へ優出する機会が増加傾向にあり、もうすぐデビュー7周年を迎える今も着実に成長している。
SGオールスターから1か月を空けての実戦となる松尾啓史。その川口ナイターでは6走すべて4着以内に入り、準決勝戦は外枠の青山周と佐藤貴也にスタート伸びられたが自身も3番手スタートから佐藤裕二や小林瑞季に競り勝って3着。グレードレースをこれほど上位の着順でまとめた開催は久しぶりであり、現状の機力の高さがうかがえる。佐藤摩の項で触れたように昨年のG2川口記念を準優勝しており、気候が近い条件になるであろう今年の本大会も活躍を期待できる。
岩見貴史は3月下旬に優出したG2ミッドナイトチャンピオンカップを境に成績が上向き始めた。SGオールスターでは中間着順が多かったが、翌週の伊勢崎ナイターに優勝。昨年のG1キューポラ杯決勝戦は10mオープンの内寄り枠から逃げ態勢に入ると、レース前半は黒川京介、中盤~終盤には鈴木圭一郎を苦しめて3着に粘った。松尾啓と同様、川口ナイターへの適性がありそうだ。
深谷俊太はおととしのG2川口記念で、自身通算2度目のグレードレース優出。昨年はG1キューポラ杯の5日間で2勝。実績面では銘柄級レーサーより見劣るが、鈴木宏和の薫陶を受けたスタート力の鋭さは非凡であり、スピード能力の高さとあわせていずれは最重ハンに定着できる素質の持ち主だ。
4月は中旬に浜松デイレース一般開催の後半を2連勝で締めたあと、下旬のSGオールスター初日~2日目に連続2着と好走した。今回も19日に終了した浜松デイレース一般開催3・4日目に連勝してからの参戦で、先月と同様の良い流れを作るか。
伊藤信夫は昨年のG2川口記念は準決勝戦8着に沈んだものの5日間に3勝。今年のSGオールスターでは初日~3日目にオール2連対し、今月の浜松デイレース『G1ゴールデンレース』は準決勝戦には進めなかったが5戦3勝。そして今節の直前には浜松デイレース一般開催に優勝と、節ごとに勢いを増しながら今大会へ乗り込める。
青山周平はG2川口記念に過去3度のV歴があり、今年4月のSGオールスターは準優勝。こちらは雨走路での安定感が今年ここまでは例年に比べれば低いことと、4月に入ってから勝ちきれず2~3着の増えていることが気がかりながら、鈴木圭一郎と高橋貢が不在の今シリーズは実績面が断トツの存在であり、近年の台頭いちじるしい川口の若手に地の利があろうとも、自身が主役を務めるか。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
上和田 拓海〔川口 S-30(34期)〕
小椋 華恋〔川口 A-169(35期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-27(24期)〕
岩見 貴史〔飯塚 S-25(29期)〕
深谷 俊太〔浜松 A-99(34期)〕
文/鈴木
G1開場記念ゴールデンレースの展望
4月下旬に開催された川口ナイター『オールスター・オートレース』の6日間6走に全勝してSG初制覇した佐藤励が大きな注目を集めそうだ。デビュー戦からピッタリ10か月、通算75戦目のレース(G2若獅子杯争奪戦)で初めてグレードタイトルを獲得。以降は毎年グレード戦に優勝してきて、素質が開花し始めた時期の早さでは青山周・鈴木圭と比べてもヒケを取らない。
2023年の『SSシリーズ優勝戦』を制したとき、来年の大みそかは(SSシリーズ優勝戦が例年実施される11レースではなく)12レース(SS王座決定戦)に乗りたいと発言。
2024年にSSシリーズ優勝戦を連覇したときも、SG戦線で活躍して来年こそはSSトライアルに乗りたいと語り、自分がいるべき場所はここではないという想いをもらした。
2025年はSGを優勝したことにより、スーパースター王座決定戦トライアルへの無条件出場が決まった。あの日の夢をいきなり2つもかなえたのだ。
地元・浜松の伝統の一戦ということで、鈴木圭一郎の闘志が一段と熱を帯びそうだ。ゴールデンレースは現在2連覇中で、通算V回数は『スピード王決定戦(浜松)』と並ぶ4度。相性は申し分ない。
先日のSGオールスターは6日制の5日目までにわずか1勝。準決勝戦を終えた時点でエンジンもスタートの切れ味も手応えを得られていないと語っていたが、決勝戦は先頭争いに加わる動きを見せて4着。消音ナイターのオールスターから今回は通常マフラーのデイレースへ替わる。直近に出走したデイレースは今年4月の山陽G1『令和グランドチャンピオンカップ』に5戦5勝の完全V。浜松デイレースは3月にG1『プレミアムカップ』と一般開催の2節へ連続優出。今回はオールスターよりも早くエンジン調整を合わせてくることが期待できる。
当初は今大会へあっせんされていなかった青山周平が追加で出場することになった。SGオールスター決勝戦は黒川京介の追撃を抑えて準優勝。3月のG1プレミアムカップ決勝戦も黒川を8周回完封して優勝。2月には浜松SG『全日本選抜』6日間を無敗で制覇して、浜松では昨年11月のG1スピード王決定戦からグレード3開催16戦16連勝とパーフェクトな戦歴を残している。
オールスターは予選中のフライングによって失権したが、金子大輔が高いレベルの機力を長らく維持している。今年はグレード開催6節を含めて10節に出場し、3月の川口G1と先述したオールスターを除く8節に優出。浜松デイレースG2『ウィナーズカップ』と山陽デイレースG1『スピード王決定戦』を制して、全日本選抜も決勝戦3着に好走した。
意外にもゴールデンレースはまだ優勝したことがなく、昨今の安定感を生かして今回は頂点をめざしたい。
篠原睦も2024年大みそかの飯塚ミッドナイト優勝を皮切りに活躍が続いている。2月SG全日本選抜は6戦1勝・2着3回にとどまったが、3月は山陽ミッドナイトと浜松デイレースの2節を連続優勝。オールスターは金子大と同様にフライング失権で準決勝戦入りを逸したが6戦5勝。3日目から6日目まで4連勝している。
笠木美孝が春先から調子を上げてきている。3月下旬の浜松一般開催で1年ぶりに優出すると、続く4月中旬の浜松一般開催で4年半ぶりに優勝。そしてオールスターでも準決勝戦へ進出している。
今年の松山茂靖は例年にも増して勝負強さが光っている。3月G1プレミアムカップ、4月SGオールスターのいずれでも、予選最終日あるいは準々決勝戦の最終日に勝負駆けを成功させて翌日の準決勝戦まで駒を進めているのだ。
丸山智史は2月SG全日本選抜の6走中3着以内が4度。令和グランドチャンピオンカップの後半2日間に連勝したのち、SGオールスターも6走中3度2連対と、悪くない形で推移している。
荒尾聡は2月SG全日本選抜の初日から3連勝。3月G1プレミアムカップと4月SGオールスターには優出し、好調時の勢いには欠けるものの、さすがの安定感を示し続けている。
高宗良次はSG全日本選抜6日間に2着4度と好成績を残した。鐘ヶ江将平は4月の浜松一般開催2節を立て続けに好走している。
ただひとり37期以降の若手として森下輝が大舞台に挑戦する。昨年1月にデビューしたばかりながら、グレード開催への出場は今回早くも9度目。昨夏に初めてのグレード出場でいきなりSG初勝利を挙げ、11月の浜松G1スピード王決定戦は後半2日間、今年1月の浜松G2ウィナーズカップは初日からの2日間、それぞれ2連勝してみせた。先月のSGオールスターは未勝利だったものの6走中5走で4着以内に入り、大きく崩れなかったことがポテンシャルの高さを表している。
今回たった1台の2級車ゆえ、スタートや直線の威力は1級車に比して劣勢となるが、浜松G2ウィナーズカップの2日目に本走タイム3.355秒を出した非凡なスピードを武器に活躍をめざす。
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主な出場予定選手
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鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
笠木 美孝〔浜松 A-50(22期)〕
松山 茂靖〔浜松 A-112(26期)〕
森下 輝〔浜松 A-185(37期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-28(34期)〕
丸山 智史〔山陽 S-31(31期)〕
文/鈴木
SG第44回オールスター・オートレースの展望
まずは前回覇者にして今期ランキング通算10度目の全国ナンバー1に輝いた青山周平。『SG全日本選抜』や『G1プレミアムカップ』などを制して今年ここまで3か月あまりエンジン高水準。冬の終わりごろから雨の走りも良くなってきて、これといった死角が見当たらない。
勢いの上昇角度では鈴木圭一郎の方が上だ。3月までは今年Vゼロだったが、今月中旬の山陽デイレースG1『令和グランドチャンピオンカップ』に5戦5勝の完全V。決勝戦は2着の青山周に完勝といえるレース内容だった。振り返れば、昨年オールスターの初日12R選抜予選『スターセレクション』も、有吉辰也や青山周平に大差をつける圧勝。史上最多となる5度目のオールスター制覇へムードが高まってきた。
今年の黒川京介は、2月SG全日本選抜の決勝戦はスタート後手、3月『G1開設記念グランプリレース』の決勝戦は大きな不利を受けて追い上げ届かず2着などと、グレード優勝をのがしてきたが、先月末の山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』では昨秋のSG『日本選手権』以来となる8度目のタイトルを獲得した。
2期前Sー3、前期Sー10から今期は自身2度目のSー3へ再浮上。いずれ将来はオートレース界の頂点へ立つためにも、まず欲しいのは2つめのSGの冠だ。
佐藤励も今年まだタイトルを獲得できていないが、デビュー1年足らずで初めてグレード制覇してから昨年まで、毎年G2・G1に優勝している。地元・川口では初のグレードレース表彰式、そして初めてのSG制覇をダブルでかなえられる今回は一段と気合いの入る機会だろう。
今年2月のSG全日本選抜で落車して休養に入り、3月の地元G1開設記念グランプリやG1プレミアムカップも欠場を余儀なくされた中村雅人が、先週の川口デイレースで久しぶりに実戦を走った。ただ復帰しただけではない。初日から差し・捲りを自在に使い分けてゴールでは2着以下に大差をつけての圧勝。半年ぶりのグレード優勝と、9年ぶりのSG制覇へ向けて、いきなり復活の『のろし』を上げてみせた。川口ナイターは昨年の春に2節へ出場して両方とも優出しているから、その点でも不安はなさそう。
ランキングや競走実績はS級レーサーたちに及ばなくとも、ファンの心に残る走りを見せていれば投票によって選出されるチャンスがある。そこがオールスターが夢の祭典とも呼ばれるゆえんのひとつだ。これ以降は、オールスター初出場の37期3名から触れていきたい。
まずは、初出場レーサーではファン投票順位が最も上だった浅倉樹良。今年1月の伊勢崎デイレース『G1開場記念シルクカップ』は初日から1着・1着・2着と好走して準決勝戦へ進出。
福岡鷹は昨年12月の飯塚ナイター『G1開設記念レース』の2・3日目に連勝して準決勝戦まで進み、今年2月の山陽デイレース『G1スピード王決定戦』では5走して3つも白星を挙げた。
森下輝は昨年12月の浜松デイレース『G1スピード王決定戦』後半2日間に連勝すると、今年1月の浜松デイレース『G2ウィナーズカップ』は浅倉と同様に初日から1着・1着・2着で4日目は準決勝戦に乗った。さらに森下は同期の上記2名が未踏の快挙をすでに成し遂げている。3名そろって初めてSGへ挑戦した昨年8月の伊勢崎ナイター『オートレースグランプリ』において、森下だけがSG初勝利を挙げたのだ。もちろん3名とも、デビュー半年でSG開催へ出場すること自体が高いポテンシャルの証明である。
もうすぐデビュー7年目に入る34期の松尾彩は、現行5つのSG大会すべてに出場した経験がすでにあり、オールスターに選出されたのは今回で4年連続4度目。川口ナイターは昨年5月の『G2川口記念』5日間に3度の3着がある。今月の令和グランドチャンピオンカップは昨年の前回から2年連続での優出を果たし、良い流れで今回へ臨めそうだ。
35期の小椋華恋は、2023年『スーパースターフェスタ』にデビュー3年目でSG開催へ初出場した(補充選手としては前年2022年の同大会でSG初舞台を踏んでいる)ほど早くから頭角を現していたが、その名を全国のファンへ轟かせたのは昨年5月の川口記念。グレードレース初めての優出で初優勝。女子レーサーとしてはデビュー最速でのタイトルホルダーに輝いたのだ。
初優勝も川口の夜開催であったし、直近の川口夜開催は今年2月の一般開催で準優勝。オールスターは、初めて選出された昨年大会、飯塚ナイター6日制の初日と4日目に勝利して準決勝戦へ勝ち上がっている。
ベテラン組に目を向けてこの項を締める。
昨年大会の『スターセレクション』を青山周・鈴木圭らと争った穴見和正、昨年オールスター最終日の白星によって自身の保持していた『SG最年長勝利記録』を更新した篠崎実といった1千勝レーサーが居並ぶ中でも、存在感が燦然と輝くのが鈴木章夫だ。選手生活は実に60年を越え、来年の夏にはなんと80歳を迎える、まさに生ける伝説。
今月17日の浜松デイレース最終日の走りも、彼のテクニックを見て取れる逸品であった。20メートル後ろのハンデ位置から追撃してきた西翔子を巧妙に封じ込みつつ、30メートル前のハンデ位置から逃げていた38期2級車の鈴木景斗との間合いを詰めて終盤に捕えた。タイヤ一本分でもライン取りがズレていたら西に捲られていたかも判らない。グリップの開け閉めも絶妙で西に付け入る隙を与えなかった。
この勝利で『全ての公営競技レーサーの最年長勝利記録』をまたしても塗り替えた。今大会までの1か月間だけでも14戦4勝もしていて、コンスタントに勝ち続けているから何度目の記録更新か、もはやはっきりしない。それを確認しようとわれわれが記録をひもといているうちに、彼はまた勝つのだ。きっと、これからも。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
森 且行〔川口 S-16(25期)〕
小椋 華恋〔川口 A-169(35期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
松尾 彩〔山陽 A-33(34期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 A-69(37期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-91(37期)〕
森下 輝〔浜松 A-185(37期)〕
鈴木 章夫〔浜松 A-227(2期)〕
文/鈴木