
SG第44回オールスター・オートレースの展望
まずは前回覇者にして今期ランキング通算10度目の全国ナンバー1に輝いた青山周平。『SG全日本選抜』や『G1プレミアムカップ』などを制して今年ここまで3か月あまりエンジン高水準。冬の終わりごろから雨の走りも良くなってきて、これといった死角が見当たらない。
勢いの上昇角度では鈴木圭一郎の方が上だ。3月までは今年Vゼロだったが、今月中旬の山陽デイレースG1『令和グランドチャンピオンカップ』に5戦5勝の完全V。決勝戦は2着の青山周に完勝といえるレース内容だった。振り返れば、昨年オールスターの初日12R選抜予選『スターセレクション』も、有吉辰也や青山周平に大差をつける圧勝。史上最多となる5度目のオールスター制覇へムードが高まってきた。
今年の黒川京介は、2月SG全日本選抜の決勝戦はスタート後手、3月『G1開設記念グランプリレース』の決勝戦は大きな不利を受けて追い上げ届かず2着などと、グレード優勝をのがしてきたが、先月末の山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』では昨秋のSG『日本選手権』以来となる8度目のタイトルを獲得した。
2期前Sー3、前期Sー10から今期は自身2度目のSー3へ再浮上。いずれ将来はオートレース界の頂点へ立つためにも、まず欲しいのは2つめのSGの冠だ。
佐藤励も今年まだタイトルを獲得できていないが、デビュー1年足らずで初めてグレード制覇してから昨年まで、毎年G2・G1に優勝している。地元・川口では初のグレードレース表彰式、そして初めてのSG制覇をダブルでかなえられる今回は一段と気合いの入る機会だろう。
今年2月のSG全日本選抜で落車して休養に入り、3月の地元G1開設記念グランプリやG1プレミアムカップも欠場を余儀なくされた中村雅人が、先週の川口デイレースで久しぶりに実戦を走った。ただ復帰しただけではない。初日から差し・捲りを自在に使い分けてゴールでは2着以下に大差をつけての圧勝。半年ぶりのグレード優勝と、9年ぶりのSG制覇へ向けて、いきなり復活の『のろし』を上げてみせた。川口ナイターは昨年の春に2節へ出場して両方とも優出しているから、その点でも不安はなさそう。
ランキングや競走実績はS級レーサーたちに及ばなくとも、ファンの心に残る走りを見せていれば投票によって選出されるチャンスがある。そこがオールスターが夢の祭典とも呼ばれるゆえんのひとつだ。これ以降は、オールスター初出場の37期3名から触れていきたい。
まずは、初出場レーサーではファン投票順位が最も上だった浅倉樹良。今年1月の伊勢崎デイレース『G1開場記念シルクカップ』は初日から1着・1着・2着と好走して準決勝戦へ進出。
福岡鷹は昨年12月の飯塚ナイター『G1開設記念レース』の2・3日目に連勝して準決勝戦まで進み、今年2月の山陽デイレース『G1スピード王決定戦』では5走して3つも白星を挙げた。
森下輝は昨年12月の浜松デイレース『G1スピード王決定戦』後半2日間に連勝すると、今年1月の浜松デイレース『G2ウィナーズカップ』は浅倉と同様に初日から1着・1着・2着で4日目は準決勝戦に乗った。さらに森下は同期の上記2名が未踏の快挙をすでに成し遂げている。3名そろって初めてSGへ挑戦した昨年8月の伊勢崎ナイター『オートレースグランプリ』において、森下だけがSG初勝利を挙げたのだ。もちろん3名とも、デビュー半年でSG開催へ出場すること自体が高いポテンシャルの証明である。
もうすぐデビュー7年目に入る34期の松尾彩は、現行5つのSG大会すべてに出場した経験がすでにあり、オールスターに選出されたのは今回で4年連続4度目。川口ナイターは昨年5月の『G2川口記念』5日間に3度の3着がある。今月の令和グランドチャンピオンカップは昨年の前回から2年連続での優出を果たし、良い流れで今回へ臨めそうだ。
35期の小椋華恋は、2023年『スーパースターフェスタ』にデビュー3年目でSG開催へ初出場した(補充選手としては前年2022年の同大会でSG初舞台を踏んでいる)ほど早くから頭角を現していたが、その名を全国のファンへ轟かせたのは昨年5月の川口記念。グレードレース初めての優出で初優勝。女子レーサーとしてはデビュー最速でのタイトルホルダーに輝いたのだ。
初優勝も川口の夜開催であったし、直近の川口夜開催は今年2月の一般開催で準優勝。オールスターは、初めて選出された昨年大会、飯塚ナイター6日制の初日と4日目に勝利して準決勝戦へ勝ち上がっている。
ベテラン組に目を向けてこの項を締める。
昨年大会の『スターセレクション』を青山周・鈴木圭らと争った穴見和正、昨年オールスター最終日の白星によって自身の保持していた『SG最年長勝利記録』を更新した篠崎実といった1千勝レーサーが居並ぶ中でも、存在感が燦然と輝くのが鈴木章夫だ。選手生活は実に60年を越え、来年の夏にはなんと80歳を迎える、まさに生ける伝説。
今月17日の浜松デイレース最終日の走りも、彼のテクニックを見て取れる逸品であった。20メートル後ろのハンデ位置から追撃してきた西翔子を巧妙に封じ込みつつ、30メートル前のハンデ位置から逃げていた38期2級車の鈴木景斗との間合いを詰めて終盤に捕えた。タイヤ一本分でもライン取りがズレていたら西に捲られていたかも判らない。グリップの開け閉めも絶妙で西に付け入る隙を与えなかった。
この勝利で『全ての公営競技レーサーの最年長勝利記録』をまたしても塗り替えた。今大会までの1か月間だけでも14戦4勝もしていて、コンスタントに勝ち続けているから何度目の記録更新か、もはやはっきりしない。それを確認しようとわれわれが記録をひもといているうちに、彼はまた勝つのだ。きっと、これからも。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
森 且行〔川口 S-16(25期)〕
小椋 華恋〔川口 A-169(35期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
松尾 彩〔山陽 A-33(34期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 A-69(37期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-91(37期)〕
森下 輝〔浜松 A-185(37期)〕
鈴木 章夫〔浜松 A-227(2期)〕
文/鈴木
G1令和グランドチャンピオンカップの展望
年号の切り替わりに伴い『平成チャンピオンカップ』から改名した『G1令和グランドチャンピオンカップ』は今年で6度目の実施となる。2021年の第2回大会以降は浜松以東の選手も数多く参戦するようになり、前回大会は鈴木圭一郎と青山周平の全国ランキングS1・S2によるワンツー決着となった。
青山周は2024年度上期いらい2期ぶりの全国S1として今回に臨む。今年1月は『G1シルクカップ』、2月は『SG全日本選抜』、3月は『G1プレミアムカップ』に優勝。どの節も、出走した全レース1着の完全V。直近に出場した山陽デイレースは2月の『G1スピード王決定戦』で、ここでも初日から3連勝して準決勝戦に進出。
しいて弱点を探るなら、雨走路での走りか。今年37走して敗戦は7度。そのうち6度は走路が湿っていた。前述した山陽スピードの4日目は濡れ走路で、5日目は良走路に近い状態ながら完全には乾いていなかった。とはいえ今期10度目の全国ナンバー1へ輝いたように、長い目で見れば走路・気候条件を問わず実力を発揮できるオールマイティーである。
今期を含めて通算14期も青山周とS1・S2の座を分け合ってきた鈴木圭は、過去3年の山陽・雨走路に13度出走して12度が2連対と、青山周をはるかに上回る安定感を示しているが、総合的にみると近況の勢いは青山周に遠く及ばない。青山周が今年6度優出して4度優勝したのに対して鈴木圭は7度優出して優勝ゼロ。青山周が30勝している今年、鈴木圭も26勝しており、エンジンや乗り手が良くないわけではなさそう。何かひとつ歯車が噛み合うきっかけさえ掴めれば...という現状だ。
直近の山陽出場は青山周と同じくG1スピード王決定戦。最終日5日目は青山周に10メートル以上の差を付けて圧勝している。
この4月から適用されている最新ランキングは、上位3名の顔ぶれが2期前と同じ並び。黒川京介が通算2度目の全国S3の座に付いた。2月のSG全日本選抜は6日制の初日から5日目の準決勝戦まで5連勝。2月中旬から3月上旬にかけて自身初めての通算10連勝を達成。いずれは、近年オート界の2強体制へ切り込みを入れるか、と思わせられる活躍ぶりだ。
直近の山陽デイレースは昨年10月の『G2若獅子杯争奪戦』で、この時も初日から4連勝で優出。先月末には山陽『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』を5戦4勝で制し、通算8度目のグレードタイトル獲得となった。特にここひと月くらいの傾向として、通常・消音どちらのマフラーでもデイレースでの出足が超抜に切れていることを銘記しておきたい。
今節には高橋選手が2名参戦。そのいずれも今年に優勝を飾っている。
高橋義弘は先月に川口デイレース『G1開設記念グランプリ』を通算3度目の優勝。その2節前には山陽ナイター3日制の予選~準決勝戦を2連勝で優出した。山陽デイレースは昨年7月の『G2小林啓二杯』と11月の『G2オートレースメモリアル』でまずまずの成績を残している。
高橋貢は3月下旬の伊勢崎デイレース3日制に完全V。山陽デイレースは、今シリーズと同時期におこなわれた2023年と2024年の春季プレミアムカップに優出。同じく山陽デイレースとして実施された昨秋のプレミアムカップも5戦オール3着以内に好走している。
全国3強を31期・32期・33期が占めている今期、34期からも3名をピックアップ。
山本翔は昨年後半からグレードレースで上位に入着するケースが目に見えて増えた。そして今月4日の山陽ナイター決勝戦は、『ベストマッチオブザイヤー』にノミネートされそうな大逆転勝利で通算6度目のV。全国ランキングの自身最高位は2期前のA-25だが、今やすっかり最重ハンに慣れて、S級並みの実力をすでに備えている。
同期34期・石川哲也のエンジンがこのひと月ほど猛烈に噴いているし、やはり34期の藤川竜は先月の山陽ミッドナイトで初優勝したのを契機にひと皮むけた印象がある。
山本翔たち地元の若手をリードして山陽勢を束ねる立場の丹村飛竜と浜野淳は、ともに先月のG2ミッドナイトチャンピオンカップで落車しているが、今年これまではおおむね良い流れで推移している。丹村飛は前期S-30から今期A-10にランキングを下げたが、浜野淳は前期A-13から今期はS級へ復帰しSー19まで大幅ジャンプアップ。
松尾啓史は早めの周回から仕掛けていけるケースが少なく、G2ミッドナイトチャンピオンカップ決勝戦も10メートルオープン戦7名からひとりだけ大きくスタート遅れたが、篠原睦や小林瑞季を捌いて2着まで追い上げた。
令和GC初代ウイナーの長田恭徳は2月の伊勢崎デイレース一般開催で今年の初優勝を挙げたあと前々節まで、夜の消音開催ではあるが山陽に3節連続で優出した。二代目覇者の丸山智史と同様、近況は攻撃の決め手がアップしている。
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主な出場予定選手
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浜野 淳〔山陽 S-19(24期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
丸山 智史〔山陽 S-31(31期)〕
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕
長田 恭徳〔山陽 A-14(32期)〕
山本 翔〔山陽 A-89(34期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-7(25期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕
高橋 義弘〔川口 S-39(29期)〕
文/鈴木
G2ミッドナイトチャンピオンカップの展望
飯塚で実施された前回大会は佐藤摩弥が優勝。夏場の7月だったこともあり、決勝戦が実施された時の気温は23時台なのに28℃、走路温度は30℃で、勝ち時計は3.406秒だった。8周戦として決して速くない。
前々回は今回と同じ山陽でおこなわれた。その開催時期は2月末~3月上旬で、気温は連日ひとケタ~時に氷点下という5日間、松尾啓史は良走路3戦3勝で優出した。節間の最高タイムは本走3.331秒。ひとくちにミッドナイトといっても夏と冬では様相が異なる。雨走路の2日目と決勝戦は着外に沈んだが、比較的に似た気象条件になりそうな今回も活躍を期待できる。
今節の参加選手中、松尾啓は山陽勢のランキングトップ、すなわち地元エースとして臨む。今月上旬の山陽・消音ナイターでは試走24秒をマークしており、今回の舞台にもエンジンを合わせてハイスピードの捌きを見せてくれそうだ。
その、雨走路となった前々回の決勝戦を制したのは新井恵匠。山陽の夜開催への参戦はそのとき以来1年ぶりになるが、先月の後半は地元伊勢崎の夜開催で上位着順を多く獲得している。
そして、スタートの切れ味が上昇傾向にあることをセールスポイントに挙げたい。前節の浜松デイレースG1『プレミアムカップ』1~4日目は、10メートルオープン戦の5枠や7枠から3番手に出るスタートを何度も披露し、最終日5日目は0メートルオープン戦の大外8枠からトップスタートを決めている。
前々回大会の準決勝戦、新井恵匠を破って1着ゴールした丹村飛竜は、2022年3月に山陽で開催された本大会の覇者でもある。
先週のプレミアムカップは準決勝戦で展開の不利があり着順が大きくなってしまったが、その他の4日間は1着と2着が2度ずつ。2月の浜松SG『全日本選抜』から現在4節連続でグレードレースに出場し、21走して着外わずか4度と高いエンジン状態を維持している。
浜野淳も前々回大会に優出して3着。その後、昨年の半ば以降はグレード開催の決勝戦へ進む機会が増加傾向にある。さらに昨年12月には山陽ミッドナイト4日制に5走して(1日2回乗りを含む)全勝優勝。今年2月には山陽ナイターで準優勝したあと山陽デイレースG1『スピード王決定戦』にも優出して、機力も雰囲気も上昇カーブにある。
飯塚での開催だったが2022年6月の本大会のウイナーは篠原睦。昨年11月、おおみそか、今年1月に飯塚ミッドナイト優勝。そして今節の条件により近い今月上旬の山陽ナイターでも優勝を飾った。晴れでも雨でも強風下でも関係なく安定して動けていることが大いに強みとなりそう。
ランキング中堅以下の若手に目を向けると...
高宗良次と山本翔が昨年の後半あたりから攻撃力、特に内から捌く腕を上げている。加えて両者ともスタート力と、雨走路を乗りこなす技術の高さを備えている。
山本翔と同じ34期の松尾彩は、昨秋以降に出場した山陽ミッドナイトの成績はふるわなかったが、今年のデイレースではSG全日本選抜、スピード王決定戦、川口G1『開設記念グランプリレース』の全シリーズで2勝を挙げていて、グレード開催でハンデを後ろに下げられて最重ハンで戦うことになったケースでも活躍できるだけの地力を身に着けている。
小椋華恋は山陽ミッドナイトは昨年5月以来と久しぶりになるが、山陽デイレースは昨秋のG2『若獅子杯争奪戦』や先月のスピード王決定戦で好走。そして地元の川口では冬場の夜(消音マフラー)に高い実績を持っている。
直近の勢いが目に付く1車は花田一輝。先月のSG全日本選抜には補充選手として開催の途中から参加して3戦1勝。先週のプレミアムカップは正選手として初日から出場して、準決勝戦へは進めなかったが3日目と4日目に2連勝。最終日5日目は高宗良次に抜かれたものの2着と健闘した。全日本選抜でもプレミアムカップでも、普段よりも重いハンデ位置である最重ハンで走ってこの成績を残せたことが評価できる点だ。スピードを増したことに加えて、新井恵匠と同様にスタートの安定感が出たことも成績上昇につながっている。
歴代覇者や若き伏兵を列挙してきたが、今シリーズの玉座に最も近い存在は黒川京介とみる。
先月は川口ナイトレースVを含めて自身初の10連勝。そして先週のプレミアムカップは初日~準決勝戦まで4連勝して優出。決勝戦は青山周平の鉄壁ブロックに屈したが、節間には青山周より速い本走タイムが出ていたし、なんといっても爆発的なスタートの切れ味を示していた。
先月には昼開催でも夜開催でも本走タイム3.31秒台を記録。高速展開になることが想定される早春のミッドナイトは、スピード・出足ともに充実している今の黒川にふさわしいステージといえよう。
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主な出場予定選手
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松尾 啓史〔山陽 S-13(26期)〕
丹村 飛竜〔山陽 S-30(29期)〕
浜野 淳〔山陽 A-13(24期)〕
松尾 彩〔山陽 A-56(34期)〕
山本 翔〔山陽 A-76(34期)〕
黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-16(26期)〕
新井 恵匠〔伊勢崎 S-37(30期)〕
高宗 良次〔飯塚 A-40(32期)〕
花田 一輝〔浜松 A-59(33期)〕
小椋 華恋〔川口 A-74(35期)〕
文/鈴木
2強に他者が付け入る隙はありそう
開催中に桜の便りも聞かれそうな2025年・春の祭典『特別G1共同通信社杯プレミアムカップ』。ただ今シリーズは、いつもの大レースとはムードが少し異なっている印象。
まず地元エースにして全国ランキング今期S1の鈴木圭一郎は、今年5度優出しながらVゼロ。直近に出場した川口デイレースG1『開設記念グランプリ』は初日から4連勝で決勝戦へ進んだが4着。優出30回、優勝14度の昨年が素晴らしかっただけに、今年ここまでの推移とは落差がある。
4月からの次期S1奪還が決まった青山周平も、ごく最近の流れは彼としては稀有なレベルで勢いに欠けている。2節前の山陽デイレースG1『スピード王決定戦』は、昨年8月から出場した開催にすべて優出してきたのが、16節ぶりに連続優出が途切れた、前節の開設記念グランプリも雨の準決勝戦を着外に敗れたのち、最終日は好タイムで勝利したものの2020年11月以来となるフライングを喫してしまい、鈴木圭と同様に絶頂時のイメージに比して歯車がズレている感がなくもない。
むろん、近3度の本大会を交互に優勝している両雄ゆえ、普段のリズムを出せれば優勝候補の筆頭に位置することには変わりない。
ただ、そうした状況で迎えた今大会は、新たな波の到来も期待してみたいところだ。
佐藤励はG1開設記念グランプリの準決勝戦で、驚異の試走タイム3.20秒をマークし、レースでは黒川京介・森且行・荒尾聡・高橋貢のSGレーサーたちを破って勝利。ところが優勝戦は、逃げる高橋義弘を追撃していた黒川の内へ突っ込もうとして接触・落車。黒川にも大きな被害を与えてしまった。
続く今月中旬の川口デイレース一般開催は雨の準決勝戦を3着に敗れて、黒川と優勝戦での再戦はならず。今大会こそ優出して、黒川との対決、そして雪辱を実現させたい。
黒川は前述の通り開設記念グランプリの決勝戦で不利をこうむったが、その後のレース道中は鈴木圭に反撃して抜き去ると、ゴールでは先頭の高橋義弘に肉薄し、負けてなお強しと感じさせる走りが印象的だった。そして今月17日の川口デイレース優勝戦は、青山周に大差を付けて完勝。先月には自身初めての10連勝も達成して、昨年9月からの数節に成績を急上昇させたのち11月にSG日本選手権を制覇した流れと似た雰囲気を醸し出し始めた。
鈴木宏和は先月の山陽スピード王決定戦と今月の浜松2節いずれも準決勝戦を雨に見舞われて大きくは活躍できていないが、2月は浜松デイレースSG『全日本選抜』に準優勝。青山周と10周回の長丁場を互角に渡り合ったすえゴール時も着差は1車身。そのわずかな差は夢のSG制覇へ1歩ずつ近づけていることの証しだ。
いま篠原睦が波に乗っている。全日本選抜は準決勝戦どまりだったが、続く山陽スピード王決定戦は優出して4着。そして2月末からの山陽ナイター一般開催で今年2度目の優勝を決めると、返す刀で浜松デイレース一般開催もV。この2節9戦8勝・2着1回。目下6連勝と非常に良い流れで浜松へ乗り込める。
今年の浜松で開催された2つのグレードレース、その両方に優出したただ1人の遠征車が佐藤摩弥。昨年の1月と6月にも浜松のG1・G2に優出しているし、今年は正月明けの伊勢崎G1と前述した浜松2開催の3節に連続して決勝戦を争っている。
SG初制覇へのステップアップを図る意味でも、2年ぶり2度目のG1制覇を狙っていきたいところ。プレミアムカップに優勝すれば年末SSトライアル出場権の獲得も見えてくる。
昨年8月の伊勢崎SG『オートレースグランプリ』の4日目に、2020年の『日本選手権』優勝時ぶりとなるSG開催での1着を飾った森且行はその後、昨年の日本選手権や今年の全日本選抜でも1着を獲ってきた。2度目のSGタイトル制覇へ向けて流れをますます高めていきたいところであるとともに、SSトライアルを勝ち抜いて大みそか川口第12レース『スーパースター王座決定戦』を走る姿を熱望しているファンはきっと多いはず。今年4月に川口で開催される『SGオールスター』出場選手を決めるファン投票において、森は堂々の1位に輝いた。SS王座決定戦への初出走を実現するため、まずはSSトライアルへの出場権を今大会で得ておければ、地元開催オールスターへ臨む上でのムードも高まる。
先月の全日本選抜の準決勝戦では、0mオープン戦の内枠からスタート後手を踏んだが、若井友和や佐藤貴也を捌きながら追い上げて、2番手の有吉辰也へ1車身差まで迫っての3着。エンジンをSGレベルまで仕上げる感覚と、強豪同士がっぷり四つに戦える感覚、その双方が完全復活へと着実に近づいている。
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主な出場予定選手
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鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-3(29期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-15(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-11(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-12(35期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-16(26期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-17(29期)〕
丹村 飛竜〔山陽 S-30(29期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-32(34期)〕
森 且行〔川口 S-35(25期)〕
文/鈴木
2強を迎え撃つのは黒川京介
過去10回の『G1開設記念グランプリレース』歴代覇者が全員顔を揃える今回の最有力V候補には、黒川京介の名前を挙げたい。
2月の浜松デイレースSG『全日本選抜』は5戦5勝で決勝戦へ進み、青山周平との全勝対決が注目されながら、スタート争いで明暗がクッキリ分かれて青山周がV、黒川は6着に沈んだ。しかし、その1週間後に開幕した川口ナイトレース5日制は全勝V。その決勝戦(6周戦)でマークした本走タイム3.312秒は、全日本選抜の準決勝戦(8周戦)で計時した3.310秒に匹敵する猛スピードであり、この2節いかに充実していたかが解る。
そして今大会の前節に臨んだ先月下旬の川口デイレースは、前検日や初日の時点で口にしていた重さを節間の整備でクリアしながら無敗を継続し、4日目の決勝戦も有吉辰也・森本優佑といった強豪を撃破して連続V。2月は15戦14勝。優勝した2節に積み重ねた白星は9つ。そう、今大会の初日には自身初めての10連勝に挑む資格を得たのだ。
黒川と同様にキャリアの早期から高い素質を示していた34期の上和田拓海と35期の佐藤励に10連勝の達成は先を越されており、SG覇者の先輩として威厳を示す意味でもこのチャンスに記録を樹立したい。もちろん、勝ち続けることが今大会における活躍にもつながっていく。
昨年までの10年間に連覇がひとりも出なかったこの大会。青山周が2連覇を目指して今年も参戦する。
先月に自身8度目の10連勝を達成したばかり。今年1月と2月だけで20勝。これは、史上最多となる年間114勝を挙げた鈴木圭一郎が、その2024年1~2月に挙げた勝利数と全く同じ。全国ランキングの次期ナンバー1に返り咲くことも先ごろ発表されて、40歳になって迎えた今年も、不惑の言葉どおり全く惑うことなくスター街道を驀進するだろう。
前述したとおり昨年1~2月に20勝した鈴木圭は、今年2月終了時点で17勝。直近の勝利は山陽デイレースG1『スピード王決定戦』最終日でのもの。その前日4日目は小雨・小雪に見舞われる不安定な天候で、準決勝戦は鈴木圭と青山周がそれぞれの出走レースで3着に敗れて優出を逸するという大波乱になった。その結果、最終日11Rで青山周と対決することになった鈴木圭は鮮やかな速攻からゴールでは青山周に10メートル以上の差を付けて圧勝。現S1の意地を示した。
きわめて意外なことに今年まだ優勝なし。今度はお天気に邪魔されずに決勝戦へ進んで、昨年の『スーパースター王座決定戦』ぶりとなるVを勝ち取りたい。
今期ランキングS3の金子大輔が、その順位にたがわぬ活躍を見せている。今年1月に浜松デイレースG2『ウィナーズカップ』を初制覇。SG全日本選抜の決勝戦は青山周・鈴木宏に次ぐ3着。その次節に出場した山陽スピード王の決勝戦では佐藤励や佐藤貴也を捌いて、こちらも大会初制覇。
最近「車の状態が良いから道中もレース展開が見えている」と語っており、開設記念グランプリレースも優勝すれば、3大会連続での各タイトル初獲得となる。
山陽スピード王の決勝戦で2番人気に支持された丹村飛竜は、序盤の位置取りがうまくいかなかったが猛烈に追い上げて準優勝。勝った金子大が「レース後半ペース下がった」こともあるが、終盤その先頭へ肉薄した丹村飛の追いアシは目を引いた。その前節に走ったSG全日本選抜は初日から3連勝。SG初優勝を狙えるのではと感じさせるムードがあった。昨年2月に川口デイレースで実施された前回のSG全日本選抜も初日から3連勝。開設記念グランプリレースは2017年の第65回大会を制している。
荒尾聡も今年のSG全日本選抜に初日から3連勝。そして前回SG全日本選抜は2日目から4日目まで3連勝している。
有吉辰也は今年1月の川口デイレース一般開催と飯塚ミッドナイトの2節を、先月の黒川と同様に連続で完全V。続くSG全日本選抜の初日は2着となり自身初の10連勝はならなかったが優出を果たしている。先月末の川口デイレースにも優出。今大会の直前に川口走路の感触を確かめられているのは、遠征勢の中でアドバンテージになる。
栗原佳祐は川口でのグレード開催には初挑戦となる。川口での実績は、まず2023年にデビューしての3節目、勝ち上がり権利を得た初節に地元浜松以外へ初遠征。準決勝戦3着で初優出を逸して非常に悔しがっていたが、それから約1か月後、2度目の他場遠征となった川口で、デビュー3か月めに通算2度目の優勝。
活躍し始めた時期が早かったためハンデが重くなるのも早く、2023年の後半から昨年にかけては勝ち星を挙げるペースが下がったが、今年1月に1級車では初めての実戦を迎えると、素質が一気に満開。1月に出場した4節すべて優出(その3節目からハンデ重化し、現在に至るまで最重ハン)、2度の優勝。2月はSG全日本選抜に補充選手として加わると3戦2勝。続いて正選手として参戦した浜松デイレース一般開催では、3日目の準決勝戦を有吉に約5車身差、決勝戦でも荒尾や有吉に10メートルほどの差をつけて1着ゴール。
今年3度の優勝がすべて4日制4連勝の完全V。勢いに乗ると連勝、固め打ちが多いタイプであることに留意しておきたい。
2024年をスーパースター王座決定戦4着で締めくくった佐藤摩弥。今年に入って参戦したグレード開催には全て優出し、伊勢崎G1『シルクカップ争奪戦』3着、浜松G2ウィナーズカップ5着、浜松SG全日本選抜4着と、2025年もエンジン・乗り手が高いレベルで安定していて、念願のSG獲得に向けては年を経るごとに現実味を増している印象だ。勝負ごとにおいて良く用いられる『勝ちグセ』を付ける意味でも、昨年7月以来のグレードタイトル、おととし7月ぶりのG1を獲得して、更に上のステージをめざしたい。
2024年の大みそかに『SSシリーズ優勝戦』2連覇を果たした佐藤励は、今年はウィナーズカップと山陽スピード王に優出。全日本選抜の準決勝戦は8周戦の発走から4000メートルは優出圏内の2番手を走りながら、残り100メートルで長田稚也に逆襲されて、SG初優出を逸する結果に。だが2024年度に出場したSG開催ではフライングや妨害行為で勝ち上がり権利を失うケースが続いていたことを考えると、今年の全日本選抜6走とも上位に入着したのは成長の証しであろうし、昨年の秋から暮れにかけて初めて10連勝を達成したことも地力アップしたからこそ。
川口の若きダブル佐藤は、2025年度もSG初制覇へたゆまぬ努力を続ける。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-11(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-12(35期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
金子 大輔〔浜松 S-3(29期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-4(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
丹村 飛竜〔山陽 S-30(29期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-117(36期)〕
文/鈴木