月光のように輝く青山周平
『G1ムーンライトチャンピオンカップ』に青山周平は2019年から連続で優出中。決勝戦の成績は2019年が準優勝、2020年が3着、2021年が準優勝、そして2022年と2023年に優勝して3連覇を狙うのが今回。大会初制覇となった2022年はスーパーハンデに置かれての8番手発進から追い込んで、残り1周の時点で3番手から荒尾聡と高橋貢を差して優勝し、「記憶に残るレースになると思う」と語った。『SGオートレースグランプリ』を5度制していることでも判るように、夏の伊勢崎ナイターに無類の強さを誇る。
ムーンライトとの相性の良さでは、高橋貢と早川清太郎もヒケを取らない。両者ともに過去トータル5回ずつ優勝している。先月末の伊勢崎ナイターにおいて、高橋貢は完全優勝。雨の4日間を無敗で駆け抜けた。同じ節の早川清太郎は逆に、雨続きで実力を出しきれなかった感があるものの初日は勝利し、グランプリ最終日に他落していた機力・体調の不安を払拭した。
新井恵匠は今年3度目、5か月半ぶりの優出を先週に果たした。6走中5度が着外だった前々節のグランプリよりも成績がアップし、このまま上昇カーブを描きたいところだ。
亀井政和はグランプリ初日から2連勝。4日目にハンデ重化すると成績は下がったが、翌週の伊勢崎アフター5ナイターでは重いハンデのままで悪くないレース内容の走りを見せて4戦1勝した。
新井日和はグランプリ4日目から補充選手として参加すると、出走した3戦に全勝。その前の節~グランプリの次節にかけて6連勝してみせた。
お盆の『SGオートレースグランプリ』で川口勢は3名を決勝へ送り込み、黒川京介が4着、若井友和が5着、佐藤摩弥が7着。今年5月のナイター『G2川口記念』にも3車は揃って優出し、佐藤摩は7月上旬の飯塚『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』、黒川は同中旬の川口ナイター『G1キューポラ杯』をそれぞれ制覇した。
中村雅人はグランプリは未勝利に終わったが(それでも準決勝戦には進んだ)、6月の伊勢崎ナイター『G2稲妻賞』には加賀谷建明とともに優出。加賀谷はグランプリ最終日に落車しており、優勝争いできる実力の持ち主なだけに初日の気配に注意を払いたい。
今年4月以降の伊勢崎ナイターへ鈴木宏和は3節に出場し、全て優出した。7月の通常ナイター、連続開催のアフター5、そしてSGグランプリの3度とも決勝戦3着。依然グレードタイトル未獲得ながら、イン戦で捌く技術と雨走路の走り方を磨き続けており、今季に実績を挙げている伊勢崎ナイターの舞台で躍動するか。2022年2月の伊勢崎ナイターでは3戦3勝の完全Vも決めている。
伊藤信夫はSGグランプリ6日制の3日目からエンジン上昇。次節の飯塚ナイター『G1ダイヤモンドレース』は準決勝戦で痛恨のフライングを犯し失権してしまったが、中村雅・有吉辰也・中村杏をくだして意地の勝利を挙げた。
その有吉はグランプリ初日・2日目に連勝も節の後半は着取り下降。それでも続く地元ダイヤモンドレースには優出し、鈴木圭一郎・中村雅・青山周に先着する4着に入った。
岩見貴史はグランプリ2日目~4日目に3連勝。ダイヤモンドレース5日制も初日~4日目までオール3着以内と安定感を示した。
長田稚也はグランプリ初日1着のあとは勝てず、最終日は内線突破で失格になってしまったが、続く地元のダイヤモンドレースでは大活躍。優勝した小林瑞季との激しいデッドヒートはファンを沸かせたであろうし、自身の実力アップをアピールする機会にもなったはず。
丸山智史もグランプリ6日間で2着4度と好走。4日目の雨走路での大敗が得点に響いて準決勝戦進出を逸したが、翌5日目の一般戦から次週の山陽ミッドナイト2節6走までの8戦で2連対を継続中。その山陽ミッドは2節とも優勝を遂げた。
松尾彩が奇しくも似た軌跡を辿っている。グランプリ5日目2着、6日目1着。そして山陽ミッド1節目の初日に雨4着のあと2連勝。2節目3日間はオール2着で準優勝した。
飯塚ダイヤモンドレースには伊勢崎から青山周平と、ランキングA級車が多く参戦した。
木村享平は5日制の初日~3日目オール2連対。ハンデ重化した4日目の準決勝戦は8着に沈んだが、そのハンデのまま臨んだ最終日は10メートル後ろ最重ハンの森本優佑や中村友和をチギって圧勝した。
佐久間健光と田中賢は初日に良い着順を取れなかったため2日目以降の勝ち上がり条件が厳しくなり準決勝戦へは進めなかったが、2日目~5日目は雨1走を含めてオール3着以内に好走。
横田翔紀と石川哲也の34期コンビも、ともに準決勝戦は苦戦を強いられたものの、ほかの4走は同じくオール3着以内に入った。
別路線を歩んできた選手では
岩田行雄は6月下旬から伊勢崎ナイターのみ6節に出走し続けており、雨続きだった8月28日~31日の1節で途切れるまで3連続優出していた。
8月19日~22日の伊勢崎アフター5では三浦康平と野本佳章が決勝戦ワンツーフィニッシュ。中山光が優出5着で、高橋義弘も節間を通して好走した。
消音マフラー開催ながら、押田和也が飯塚ナイター、谷津圭治は山陽ミッドナイトに、それぞれ8月上旬に優出した。
田中茂と牧瀬嘉葵もこの夏は西日本の消音・夜開催で活躍している。木山優輝は7月の落車からぶっつけ本番になるが、今年は飯塚ミッドナイトで3度も優勝している。
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主な出場予定選手
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青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-5(22期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-9(29期)〕
岩田 行雄〔伊勢崎 A-7(15期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-4(32期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-8(25期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-16(24期)〕
岩見 貴史〔飯塚 S-17(29期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-18(34期)〕
丸山 智史〔山陽 S-36(31期)〕
松尾 彩〔山陽 A-37(34期)〕
文/鈴木
SG優勝翌週の青山周平と捲土重来を期する鈴木圭一郎
今月10日~15日に開催された伊勢崎ナイター『SGオートレースグランプリ』は、ともに5戦5勝で優出した青山周平と鈴木圭一郎が決勝戦でもデッドヒートを演じたすえ青山周が無敗で通算5度目の大会制覇。青山周が優勝することによって、同時に優出していた鈴木圭のグランプリ獲得を阻んだケースは、今回で4度目である。
飯塚『G1ダイヤモンドレース』は、青山周が通算3度の優勝歴を持つ一方、鈴木圭は2016年・2017年・2022年に優出していながら、その3度とも青山周に破れての準優勝と無念の足跡を辿ってきた。
グランプリとダイヤモンドレースをめぐる、この8年間の流れを経て対峙する両者の動向が、今大会も最大の焦点となるだろう。
飯塚・消音・夜開催での遠征車の実績を振り返りたい。
今年4月の『SGオールスター』の決勝戦は青山周が優勝、鈴木圭が4着、佐藤貴也が6着。中村雅人・伊藤信夫・上和田拓海はいずれも準決勝戦へ進出。6戦して3勝を挙げた。若井友和は6戦して2連対4度。佐藤励は初日から3連勝したがフライングで失権。しかし後半3日間も3連対を外さなかった。昨年10月には飯塚ミッドナイトで優勝している。
一般開催になるが、横田翔紀が今年3月に2節連続で優出した。そのうち1節目に優勝したのは金山周平。木村享平は先月下旬、鈴木聡太は今月中旬の飯塚ミッドに優出したばかりで、当時と気候の変化が少ない今回は車を合わせやすそう。米里崇徳も今月中旬の飯塚ミッドに5走して全て4着以内と好成績を残した。
浜野淳はちょうど1年前の8月に、飯塚ミッドナイト優出1度。藤岡一樹は昨夏の飯塚ミッドナイトG2で準優勝している。
続いて地元勢へ目を向けよう。
通常マフラーで実施された伊勢崎ナイター『SGオートレースグランプリ』に、飯塚勢として決勝戦までただ1人コマを進めたのが森本優佑。自身初のSG優出となり、準決勝戦を突破したあとにはエンジン完調宣言まで飛び出した。
有吉辰也は初日から2連勝しながら節の後半は着順ふるわず。だが試走・本走ともタイムは節後半の方が速くなっていた。
荒尾聡は6戦オール3着以内に好走。準決勝戦では鈴木宏和に競り負けたものの2着とは微差の3着。仕上がりは高かった。
岩見貴史は2日目から3連勝して準決勝戦に進出。いま述べた鈴木宏と荒尾の競り合いに割って入る反応があり、こちらも状態は良かった様子。
浦田信輔は初日にいきなりフライングを喫してしまい権利喪失。だが最終日は、今回も出場する佐々木啓・中村友和・佐久間健光・木村享平らをくだして快勝。7月の川口消音ナイター『G1キューポラ杯』や、グランプリ前節の飯塚消音ナイター一般開催でも勝利を挙げており、本来の決め手が少しずつ戻りつつある。
長田稚也は昨年のダイヤモンドレース覇者。グランプリは初日1着のあと車券に絡めなかったが、飯塚消音には4月下旬から5節に出走して、オールスターを含めた4節に優出している。
グランプリ未勝利に終わった中村杏亮も地元飯塚の消音では活躍中。オールスターとミッドナイトG2の両方に優出したほか、5月にも飯塚ナイターで優出した。
グランプリと別の路線組では...
初夏の気候になって以降の飯塚・夜で吉松優輝・松尾隆広・藤川幸宏・井村淳一が優勝。
牧瀬嘉葵が6月下旬ころから昼夜ともに勝率が急上昇。今大会はフライング持ちの状態で迎えるが(23日の時点で7走前。9走する間にフライングを繰り返すと罰則休が課される)、エンジンの充実度は高い。
オールスターは他落をこうむり早退となった田中茂もまた、6月から上位着順が増加し始めて、グランプリの週に開催された今月13日の飯塚ミッド準優勝。グランプリ選出の採点期間であった昨年6月~今年5月の優出は3度で、出場基準の得点に届かず、今年のお盆は伊勢崎でなく飯塚を走ることになったが、今季は7月以降だけですでに3度も優出し、これまでとは勢いが違う。SG4度Vの強豪が7年ぶりのグレード制覇および19年ぶり3度目のダイヤモンド獲得へ照準を合わせてきた。
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主な出場予定選手
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有吉 辰也〔飯塚 S-8(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-10(27期)〕
岩見 貴史〔飯塚 S-17(29期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-18(34期)〕
中村 杏亮〔飯塚 S-19(33期)〕
浦田 信輔〔飯塚 S-30(23期)〕
森本 優佑〔飯塚 A-9(31期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
中村 雅人〔川口 S-6(28期)〕
若井 友和〔川口 S-12(25期)〕
藤岡 一樹〔山陽 A-18(29期)〕
文/鈴木
今年の真夏の祭典は見どころ盛りだくさん
このタイトルでSG初制覇というシーンを何度も生んできた『オートレースグランプリ』において大会2連覇を2度も達成している青山周平が、史上初の3連覇と史上最多のV5をめざす。冬季のデイレース施行を挟み4月にナイターが再開されて以降の今年の伊勢崎へは18戦に出走して、優勝戦2度4着の他は全勝している。あえて死角を探るとすれば、2月の川口デイレース『SG全日本選抜』あたりから雨走路で敗戦するケースが以前より増えたことか。それでも優勝戦線のトップ集団に今回も位置する。
7月22日の伊勢崎ナイター普通開催。重走路の決勝戦で青山周を4着にくだして優勝したのが高橋貢。6月下旬の浜松デイレースG2『曳馬野賞』決勝では、半乾きの不安定な走路でも車を自在に操り鈴木圭一郎に完勝してV。先ごろ53歳を迎えたが、歴戦で磨き抜かれた技術の輝きはいささかも鈍っておらず、7年ぶり3度目の栄冠へ虎視眈々。
彼らと共に『伊勢崎3強』と称される早川清太郎が、今年の成績は勢いを欠いている。今大会と同レベルの強豪が出場した2月『SG全日本選抜』と4月『SGオールスター』(ともに6日制)、3月『G1プレミアムカップ』(5日制)いずれも未勝利に終わった。ただ、6月の伊勢崎ナイターG2『稲妻賞』決勝では青山周や中村雅との大激戦に競り勝って準優勝。そして今回は山陽デイレースG2『小林啓二杯』優出3着からの参戦で、緩やかな角度だとしても上昇気流に乗って臨めそうなのはプラス要素だ。
若くして輝かしい経歴を築いてきた鈴木圭一郎が、実はまだ手に入れられていないのがグランプリの冠。4連続SG優勝という史上単独最多の記録を持っているが、5連続のかかった2017年のグランプリは決勝まで進みながら高橋貢に敗れて準優勝。その後も決勝2着が1度、3着が3度と、あとわずかのところで手が届いていない。ただ今回は、7月下旬の『G2小林啓二杯』に5戦5勝した時点で、残り5か月もあるのに今年70勝目を挙げて、例年以上の勢いがある。このペースを維持するなら、青山周が昨年末に更新した年間最多勝利数『97勝』の記録を大幅に塗り替えるのは間違いない。デビュー10年を越えて円熟味も出始めた今、史上7人目のSGグランドスラムという新たな勲章を獲得するか。
先月末の川口ダブルヘッダーを2開催にカウントすると、佐藤摩弥は4月の『SGオールスター』から12節も途切れずに優出している。2年連続の準優勝だったオールスターはいずれも飯塚の消音ナイターで実施。今回グランプリは通常マフラーながら伊勢崎ナイター。所は変われど夜開催の8周戦・10周戦の戦い方は経験を積めている。先月には飯塚G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』8周回の決戦を制した。グランプリへの優出歴こそないが、伊勢崎ナイターには2022年の夏季に2度優出、1度優勝している。
2020年代に入って以降、SG戦線における女子レーサーの活躍が増え続けている。そのパイオニアにしてトップランナーであり続けている佐藤摩が、先述したようにSG初Vを多く輩出してきたこの大会でガールズの歴史に新たな1ページを書き加えるかも知れない。
黒川京介は昨年グランプリ準優勝。1枠から逃げた青山周の影は踏めなかったが、2番手追走の篠原睦を捌いて浮上し、鈴木圭には完勝といえる、価値の高い内容だった。先月『G2小林啓二杯』決勝は「力が入りすぎてスタート空回りさせてしまった」が、その前の節は川口ナイター『キューポラ杯』を制して初めての地元G1獲得。
佐藤励は1級車に乗り換えて2年目に入ったばかりながら、2級車時代から数多くのグレード開催に出場して強豪たちに揉まれてきた経験値が豊富。今期は飯塚ナイターのオールスターで6戦4勝。地元川口ナイターの『G2川口記念』と『G1キューポラ杯』ともに優出を果たして、前期ランキングA-100から今期S-15へ大躍進した成長ぶりを競走成績に反映させている。
今年1月にデビューしたばかりながらグレード初出場(もちろんSGも初)を決めた37期ホープたちも今回の注目ポイントだ。
浅倉樹良はデビューから無敗の10連勝(13まで連勝を延ばした)、青山周の記録を塗り替えるデビュー最速22日目での初優勝と記録を次々に樹立。森下輝は2着1度を挟んだがデビューから12戦11勝で初V。福岡鷹も雨の敗戦1度を挟みながら同じくデビュー12戦11勝で初V。まだ2級車なためスタートの不安は抱えるが、非凡なスピードと高い闘志で強豪たちに挑戦する。
2022年暮れ、休養明けいきなりの快進撃が話題となった加賀谷建明。その休養前のレースは同年8月の『SGオートレースグランプリ』優勝戦であった。歯車がかみ合った際の爆発的なスピードと、走路が濡れているのか疑ってしまうほどの雨走路での速さは、G1クラスを超えられる可能性を感じさせる。
篠原睦が初めてSGを制した2021年のグランプリ決勝は雨走路での大一番となり、重富大輔もまた初の栄冠へあと一歩まで迫る走りを見せた。重富大と同期の加賀谷が、もし似たような条件で決勝を戦うことになったら、果たしてどのような走りを見せてくれるだろうか。
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主な出場予定選手
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青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-5(22期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-9(29期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
佐藤 励〔川口 S-15(35期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-26(31期)〕
加賀谷 建明〔川口 S-33(27期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 B-112(37期)〕(次期はA-32)
森下 輝〔浜松 B-112(37期)〕(次期はA-41)
福岡 鷹〔飯塚 B-112(37期)〕(次期はA-101)
文/鈴木
大会連覇とグレード連続V、そして打倒・鈴木圭一郎を狙う黒川京介
2015年の晩秋に現役引退した小林啓二・元選手の功績を称えて、翌2016年の6月に名前が冠されたG2小林啓二杯。現役時の70年代から90年代にかけて、小林啓二は『山陽王座決定戦』を6度も制している。
山陽王座『防衛戦』のサブタイトルで開催された時期もありながら、近4年は外来選手へのタイトル流出を許してしまっている地元勢が、2019年の緒方浩一以来となる優勝トロフィー奪還なるか。
山陽S級の直近開催は、岩崎亮一が飯塚デイレースで強い内容の走りを披露。佐々木啓と角南一如は山陽ミッドナイトで状態を上げてきた。
山陽A級は永島潤太郎が今月8日、山本翔は19日に山陽ミッドナイト優勝。G1優勝3度の実力者・西村龍太郎も先月からレースぶりが良くなってきた印象。現在ハンデ位置が有利なため注意を払いたい1車。2節前まで最重ハンデの30メートル前に置かれていた稲原良太郎は、前節の飯塚ミッドナイトでハンデ重化し、長年走ってきた位置に戻った格好だが、5月下旬から通常マフラーで13走して2勝、2着7回とかなりの安定感を示している。ランキングはA級下位だがハンデという意味では斎藤隆充も有利な1車。稲原良と同じく最重ハンデの30メートル前で走るようになって数節、走りが良くなってきただけでなく、課題であるスタートの切れが上向いてきたのはセールスポイント。
2022年の小林啓二杯を制した鈴木圭一郎は近1か月に浜松G2と川口G1を準優勝。今春にはG1令和グランドチャンピオンカップで5戦5勝の完全Vを決めており、当時と気候は異なるが山陽デイレースの感覚は掴めているはず。
勢いの高さでは黒川京介が上回るかも知れない。今月15日の川口G1キューポラ杯で同ハン鈴木圭一郎を引き離して圧勝V。地元G1タイトルを初めて獲得。今回は小林啓二杯のディフェンディングチャンピオンとして臨む。2019年のG1スピード王決定戦でグレードレース初優勝、今年2月にはG2若獅子杯争奪戦も制し、山陽デイレースにおける実績も申し分ない。
有吉辰也は今春、ともに山陽G1であるプレミアムカップと令和グランドチャンピオンカップに2節連続で優出したあと1節を挟んで、SGオールスターから11節も途切れず優出し続けて、今月19日の飯塚デイレースにて約半年ぶりのV。近30走で着外わずか4度のみと、今節出場メンバーの中で安定感の高さは鈴木圭と並んで抜きんでている。
ミッドナイトであるが直近の山陽開催で中村晋典が初日予選から3日目準決勝戦まで3連勝して優出の大活躍。同開催では浅香潤・野本佳章・鈴木聡太・佐久間健光・亀井政和・鈴木将光・吉田恵輔も好成績を挙げており、整備面も含めて他者に対するアドバンテージとなるか。
佐藤大地はG1令和グランドチャンピオンカップの後半2日間に連勝。深谷俊太は一般開催ではあるが4月末の山陽デイレース3日制2・3日目に同じく連勝している。
2月のG2若獅子杯争奪戦の最終日に勝利した一般戦は、丹村飛竜の30メートル前、まだ2級車である36期・村瀬月乃丞の10メートル前に置かれていた小椋華恋が、4月のSGオールスター4日目には高橋貢や篠原睦の10メートル前から6周回を逃げ切り『最終予選』に勝利して準決勝戦へ進出。そして翌5月にはグレードレース初優出にしてG2川口記念を制覇。女子レーサー史上2人目のタイトルホルダーに輝いた。非斡旋となったG1キューポラ杯にもし出場していたら、どんな活躍を見せてくれたのかと想像してしまうほど、今季の躍進はめざましい。
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主な出場予定選手
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丹村 飛竜〔山陽 S-20(29期)〕
岩崎 亮一〔山陽 S-43(25期)〕
佐々木 啓〔山陽 S-44(23期)〕
山本 翔〔山陽 A-25(34期)〕
西村 龍太郎〔山陽 A-72(25期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-8(25期)〕
浅香 潤〔伊勢崎 A-53(23期)〕
小椋 華恋〔川口 A-213(35期)〕
中村 晋典〔浜松 A-222(24期)〕
キューポラ連覇を狙って女王が降臨
昨年の第47回大会は佐藤摩弥が鈴木宏和の猛追を封じ込めて初めてのG1獲得を果たした。佐藤摩の躍進はその後も止まらず、今春の飯塚ナイターSGオールスターは2年連続の準優勝。翌月の川口ナイターG2川口記念は優出3着、そして今月5日には飯塚G2ミッドナイトチャンピオンカップ優勝。通算4度目のグレード制覇となった。川口ナイターは黎明期から相性が良く、雨巧者でもあるので梅雨どきの天候・走路変化があっても不安なし。
今大会の宣伝ポスターに記載されているフレーズは『女王降臨』『真夏の夢へ、再び走り出す』。G1キューポラ杯の2連覇と、飯塚G2から2節連続のグレード優勝をダブルで兼ねる佐藤摩に、まさにピッタリではないか。
オート界のトップランナー青山周平は常に安定している中でも今回は上昇カーブを描いての参戦。今年3月に川口デイレースG1開設記念グランプリ、4月にSGオールスターを優勝したあと、浜松デイレースと伊勢崎ナイターG2稲妻賞は優勝できなかったが、先月末に伊勢崎ナイター4日制を全勝優勝。G1キューポラ杯は2019年に1度制しているほか、同じくナイターのG2川口記念は2020年・2021年・2023年の3度優勝している。近年、消音マフラーでの川口開催は昼夜を問わず実力を発揮できており、今回もV戦線の最有力候補であることは紛れもない。
鈴木圭一郎もG1キューポラ杯は2021年の1度、青山周に完勝してV。通算して川口でのタイトル獲得回数は青山周よりは少ないが、5月以降の成績は青山周が14戦して11勝、着外が1つあるのに対して、鈴木圭は27戦して20勝、残る7戦すべて2着と2連対パーフェクト。青山周が川口の夜開催は11か月ぶりなのに対して鈴木圭は今年6月に川口ナイターを走ったばかりという点も有利といえそうだ。
鈴木宏和は前回キューポラ杯決勝の最終8周回バックストレッチ、佐藤摩の背後を突く動きを見せたが執念実らず準優勝。今季もSGオールスター、浜松デイレースG1ゴールデンレースとG2曳馬野賞に優出しながらタイトルに手が届いていないが、川口の消音・夜は前述のキューポラ杯を含めて14走し着外3度のみと、近1年間は過去最高に成績が安定している。最新ランキングは全国第4位、スタート力は全国トップと称しても異論は少ないのではあるまいか。この実績と実力に見合うタイトルを得て、みずからに箔をつけたいところだ。
金子大輔も昨年G2キューポラ杯に優出したのち、今年1月の川口ナイトレースは予選~準決勝戦3日間3連勝で優出した。
木村武之は昨年6月の川口ナイター4日間オール2着で準優勝してから現在まで、今年のG2川口記念を含めた川口の夜3節は目立った活躍はできなかったが、先月下旬の伊勢崎ナイター(レギュラーマフラー)でエンジンが大幅に良化。上昇曲線の角度の大きさは今回参加メンバーの中でも屈指。キューポラ杯がナイター開催へ移行した初年、2016年大会の覇者でもある。
伊勢崎車は3強が勢ぞろい。高橋貢は川口の夜は昨年G1キューポラ杯に優出して以来の久々だが、デイレースながら先月下旬に浜松G2曳馬野賞を鈴木圭らに完勝で優勝しており機力と勢いの充実ぶりが光る。
近5年にG1キューポラ杯を2度制している早川清太郎は、昨年は準決勝戦入りを逸したが5戦して4走に2連対。9月の川口ナイターは優出2着。今年は先月上旬のG2稲妻賞に準優勝し、次の節も伊勢崎ナイターで優出した。お盆ナイターの実施が定着したSGオートレースグランプリにおける例年の活躍と合わせて、夏の夜にエンジンを仕上げる技術と適性がある。
西日本2場に目を向けると、飯塚の荒尾聡が先月に伊勢崎ナイターG2稲妻賞を昨年に続く2連覇。デイレース1節を挟んで飯塚ミッドナイトでも優勝。G2ミッドナイトチャンピオンカップは準決どまりだったが6走してオール3着以内と安定感は示した。篠原睦は今年5月に飯塚ミッドナイト優勝がある。長田稚也は昨年G2川口記念、岩見貴史は昨年G1キューポラ杯をいずれも予選中のフライングで失権しながら、それぞれ上位の着順を多く残した。
山陽勢は、丸山智史が昨年G1キューポラ杯に優出3着。松尾啓史は今年のG2川口記念に準優勝。激しく競り合う佐藤摩と黒川を一発で捌いた勝負勘が見事だった。岡部聡は今年5月の川口ナイター一般開催に優出。同じ節で強烈にエンジン出ていた高木健太郎は準決勝戦でフライングを喫してしまったが次の節、山陽ミッドナイト3日間3戦を全勝して念願の初優勝を遂げた。
この強力遠征陣に立ち向かう地元車は女王だけではない。
黒川京介は先述したG2川口記念のあと6月も川口の消音・夜での活躍が続いて、3節に出場し2優出・1V。若井友和と中山光は近1か月に川口の夜2節へ優出。中山光はその後G2ミッドナイトチャンピオンカップでも好成績を挙げている。佐藤励はG2ミッドナイトチャンピオンカップは仕上げきれなかった印象だが川口の夜開催は5月~6月に2連続優出。小林瑞季も川口の夜に限ると現在3節連続で優出中。
永井大介は先月の川口ナイターで10か月ぶりの優勝。佐藤裕二は先月下旬にデイレースだが2年半ぶりV。中村雅人はG2川口記念~G2稲妻賞~川口ナイター一般開催に3連続で優出した。加賀谷建明はG2稲妻賞に優出したのち今月3日に川口デイレース優勝。決勝で加賀谷に続く2着に入った森且行と3着だった山田達也はともに先月、川口の夜開催に優出実績がある。
永井大介は昼開催の2010年とナイターの2017年・2018年の通算3度G1キューポラ杯を制覇した。デイレース2013年に1度制している森且行は、2020年のSG日本選手権ぶりとなる復活Vも視野に車を仕上げていきたい。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
佐藤 励〔川口 S-15(35期)〕
森 且行〔川口 S-22(25期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-26(31期)〕
加賀谷 建明〔川口 S-33(27期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-4(32期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-5(22期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-10(27期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-27(26期)〕
文/鈴木