
『SGオートレースグランプリ』の展望
今月4日に発表された『2025年度後期 全国ランキング』で2期連続、通算11度目の全国ナンバーワンに輝いた青山周平は今回、史上初のグランプリ4連覇を狙う。同一SGを6度制したケースは、昭和から平成にかけてそれぞれ一時代を築いた飯塚将光(日本選手権)と島田信広(全日本選抜)の2名しか過去に存在せず、青山周がグランプリ通算6Vを成し遂げれば、令和の大記録が新たに誕生する。
次期ランキングで全国ナンバー2の座に就いたのは黒川京介。昨秋の『日本選手権』でSG初制覇すると、今年に入っても素晴らしい戦歴を残してきた。6月上旬以降でも山陽ミッドナイトG2、浜松デイレースG2、川口ナイターG1、浜松デイレースG2にV。今年7か月間で12度も優勝している。ただ今年は2月の『全日本選抜』が優出6着、4月の『オールスター』が優出3着と、SGは優勝できていない。いつかは頂点へ。青山周を追い越して全国ナンバーワンとなるためにも、おととしは準優勝、昨年は優出4着だったグランプリで、2冠目のSGを狙っていきたい。
2017年度の前期ランキングで初めて鈴木圭一郎と青山周が全国の2トップに立った。そして2019年度の後期から2025年度の前期まで、この両雄がS1とS2を争奪・独占してきた。ところが鈴木圭は、今年1月~6月の競走成績に基づいて審査された次期適用の『2025年度後期ランキング』において、長年続いた2強状態から脱落してしまった。その審査対象の期間中、黒川は16度優出・10度優勝したのに対して鈴木圭は14度優出・2度優勝と、総体的な勢いの違いがV回数の差に表れている。
鈴木圭は6月の『G2浜松記念 曳馬野賞』も今月の『G2ウィナーズカップ』も黒川に勝たれての準優勝。そして2強からの陥落...ずっとしのぎを削ってきた青山周を打倒することに加えて、今後は黒川への逆襲もテーマとなろう。そして青山周に何度も阻まれてきたグランプリ制覇が成れば、史上7人目のSGグランドスラマーの名誉も手に入れられる。
デビュー3年目の2024年度期前ランキングからS級の20位以内を維持してきた佐藤励が、次期は初のS級シングル、全国第6位まで躍進した。その原動力になったのが、今春の川口ナイター『SGオールスター』6戦6勝の完全Vだろう。その決勝戦は鈴木圭・黒川・青山周を抜いて先頭に立つという、価値あるレース内容であった。
伊勢崎はデビュー1年未満のとき2級車でナイター優勝。1級車へ乗り換えてからわずか1か月半で挑んだ2023年のグランプリは初日から3戦連続で2着。今年6月の『G2稲妻賞』は優出3着と、オートレース人生の初期から伊勢崎ナイターへの適性を示している。
彼も黒川と同様にオートレース界の山頂をめざせる逸材であり、黒川より先に2度目の戴冠を果たすようなら、川口エースの座を黒川から奪取する光景も見えてきそうだ。
森且行もまた自身2度目のSG制覇をめざす1人だ。レース中の落車事故から長い療養ののち戦列に復帰して2年あまり。まだ復帰後の優勝はできていないが、優出するペースは年ごとに上昇している。そして今年6月から成績に加えて走りの内容が良くなってきた印象がある。割と最近まで後手になるケースが多く、本人も「切れていない」と何度か語っていたスタートも切れ味が戻ってきた。先月の川口ナイター『G1キューポラ杯』は、2日目に佐藤励と、後述する平田雅崇を破って勝利。3日目と最終日5日目は鈴木圭に先着しての2着と好走している。
思い出のグリーングラス、ではなく思い出のグランプリへ、今年の篠原睦は最高の勢いを伴って臨める。
飯塚レース場は今年1月末から開催がお休みとなり、6月下旬に再開してから8月上旬までに9つの開催がおこなわれた。篠原はそのうち8節へ出場して、すべてに優出。直近では2節前と前節を合わせて7戦7勝、2節連続の完全Vを飾り、SG初制覇を遂げた時よりもはるかに勢いがある。
篠原が初めて獲得したSGタイトルは、2021年の第25回オートレースグランプリ。森且行が持つ『デビューから最長でのSG初制覇記録』23年4ヶ月よりは少し早かったが、篠原も苦節22年4ヶ月でのSG初制覇だった。
昨年の前回グランプリは成績がふるわず準決勝戦へ進めなかった。それから1年、あの喜びから4年。今年は自身が起こした風に背中を押されて2度目のSG優勝へ挑戦する。
SG初制覇を狙える雰囲気をまとっている2名にも注目したい。
栗原佳祐は歴代最高位Aー4、今期Aー25から、次期ランキングはSー12まで大幅にジャンプアップする。今年これまでに10度優出して4度の優勝。最重ハンで走るようになって以降では2月2日に金子大輔と鈴木圭を、同月19日に荒尾聡と有吉辰也を、先月下旬は黒川と佐藤貴を破ってそれぞれ優勝している。佐藤励とは異なり伊勢崎ナイターでの実績に乏しい点が気がかりではあるが、今年3月の山陽ミッドナイトでは試走3.25秒の本走3.359秒を出して準優勝している。
今春『SGオールスター』の頃までは勢いの目立つエンジン状態ではなかった平田雅崇。5月のナイター『G2川口記念』決勝戦で本走3.370秒を出して3着に粘ったあたりから上昇カーブに転じた印象だ。その2節後の川口ナイトレースで1年8か月ぶりに優勝すると、伊勢崎ナイターG2優出や川口ナイターG1準優勝を経て、先月末から今月上旬にかけての山陽ナイター優勝と川口ナイトレース準優勝のホップ・ステップで今大会を迎える。3節前の『G1キューポラ杯』初日から現在11走連続で2連対中。伊勢崎ナイターは今年6月、ほぼ3年ぶりに優出。様々な要素が今大会の活躍へ向けた矢印を指し始めた。
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主な出場予定選手
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青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕→次期S-1
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕→次期S-13
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕→次期S-26
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕→次期S-3
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕→次期S-2
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕→次期S-9
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕→次期S-6
森 且行〔川口 S-16(25期)〕→次期S-34
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕→次期S-8
平田 雅崇〔川口 S-37(29期)〕→次期S-21
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕→次期S-14
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕→次期S-12
文/鈴木