
『SGオートレースグランプリ』の展望
今月4日に発表された『2025年度後期 全国ランキング』で2期連続、通算11度目の全国ナンバーワンに輝いた青山周平は今回、史上初のグランプリ4連覇を狙う。同一SGを6度制したケースは、昭和から平成にかけてそれぞれ一時代を築いた飯塚将光(日本選手権)と島田信広(全日本選抜)の2名しか過去に存在せず、青山周がグランプリ通算6Vを成し遂げれば、令和の大記録が新たに誕生する。
次期ランキングで全国ナンバー2の座に就いたのは黒川京介。昨秋の『日本選手権』でSG初制覇すると、今年に入っても素晴らしい戦歴を残してきた。6月上旬以降でも山陽ミッドナイトG2、浜松デイレースG2、川口ナイターG1、浜松デイレースG2にV。今年7か月間で12度も優勝している。ただ今年は2月の『全日本選抜』が優出6着、4月の『オールスター』が優出3着と、SGは優勝できていない。いつかは頂点へ。青山周を追い越して全国ナンバーワンとなるためにも、おととしは準優勝、昨年は優出4着だったグランプリで、2冠目のSGを狙っていきたい。
2017年度の前期ランキングで初めて鈴木圭一郎と青山周が全国の2トップに立った。そして2019年度の後期から2025年度の前期まで、この両雄がS1とS2を争奪・独占してきた。ところが鈴木圭は、今年1月~6月の競走成績に基づいて審査された次期適用の『2025年度後期ランキング』において、長年続いた2強状態から脱落してしまった。その審査対象の期間中、黒川は16度優出・10度優勝したのに対して鈴木圭は14度優出・2度優勝と、総体的な勢いの違いがV回数の差に表れている。
鈴木圭は6月の『G2浜松記念 曳馬野賞』も今月の『G2ウィナーズカップ』も黒川に勝たれての準優勝。そして2強からの陥落...ずっとしのぎを削ってきた青山周を打倒することに加えて、今後は黒川への逆襲もテーマとなろう。そして青山周に何度も阻まれてきたグランプリ制覇が成れば、史上7人目のSGグランドスラマーの名誉も手に入れられる。
デビュー3年目の2024年度期前ランキングからS級の20位以内を維持してきた佐藤励が、次期は初のS級シングル、全国第6位まで躍進した。その原動力になったのが、今春の川口ナイター『SGオールスター』6戦6勝の完全Vだろう。その決勝戦は鈴木圭・黒川・青山周を抜いて先頭に立つという、価値あるレース内容であった。
伊勢崎はデビュー1年未満のとき2級車でナイター優勝。1級車へ乗り換えてからわずか1か月半で挑んだ2023年のグランプリは初日から3戦連続で2着。今年6月の『G2稲妻賞』は優出3着と、オートレース人生の初期から伊勢崎ナイターへの適性を示している。
彼も黒川と同様にオートレース界の山頂をめざせる逸材であり、黒川より先に2度目の戴冠を果たすようなら、川口エースの座を黒川から奪取する光景も見えてきそうだ。
森且行もまた自身2度目のSG制覇をめざす1人だ。レース中の落車事故から長い療養ののち戦列に復帰して2年あまり。まだ復帰後の優勝はできていないが、優出するペースは年ごとに上昇している。そして今年6月から成績に加えて走りの内容が良くなってきた印象がある。割と最近まで後手になるケースが多く、本人も「切れていない」と何度か語っていたスタートも切れ味が戻ってきた。先月の川口ナイター『G1キューポラ杯』は、2日目に佐藤励と、後述する平田雅崇を破って勝利。3日目と最終日5日目は鈴木圭に先着しての2着と好走している。
思い出のグリーングラス、ではなく思い出のグランプリへ、今年の篠原睦は最高の勢いを伴って臨める。
飯塚レース場は今年1月末から開催がお休みとなり、6月下旬に再開してから8月上旬までに9つの開催がおこなわれた。篠原はそのうち8節へ出場して、すべてに優出。直近では2節前と前節を合わせて7戦7勝、2節連続の完全Vを飾り、SG初制覇を遂げた時よりもはるかに勢いがある。
篠原が初めて獲得したSGタイトルは、2021年の第25回オートレースグランプリ。森且行が持つ『デビューから最長でのSG初制覇記録』23年4ヶ月よりは少し早かったが、篠原も苦節22年4ヶ月でのSG初制覇だった。
昨年の前回グランプリは成績がふるわず準決勝戦へ進めなかった。それから1年、あの喜びから4年。今年は自身が起こした風に背中を押されて2度目のSG優勝へ挑戦する。
SG初制覇を狙える雰囲気をまとっている2名にも注目したい。
栗原佳祐は歴代最高位Aー4、今期Aー25から、次期ランキングはSー12まで大幅にジャンプアップする。今年これまでに10度優出して4度の優勝。最重ハンで走るようになって以降では2月2日に金子大輔と鈴木圭を、同月19日に荒尾聡と有吉辰也を、先月下旬は黒川と佐藤貴を破ってそれぞれ優勝している。佐藤励とは異なり伊勢崎ナイターでの実績に乏しい点が気がかりではあるが、今年3月の山陽ミッドナイトでは試走3.25秒の本走3.359秒を出して準優勝している。
今春『SGオールスター』の頃までは勢いの目立つエンジン状態ではなかった平田雅崇。5月のナイター『G2川口記念』決勝戦で本走3.370秒を出して3着に粘ったあたりから上昇カーブに転じた印象だ。その2節後の川口ナイトレースで1年8か月ぶりに優勝すると、伊勢崎ナイターG2優出や川口ナイターG1準優勝を経て、先月末から今月上旬にかけての山陽ナイター優勝と川口ナイトレース準優勝のホップ・ステップで今大会を迎える。3節前の『G1キューポラ杯』初日から現在11走連続で2連対中。伊勢崎ナイターは今年6月、ほぼ3年ぶりに優出。様々な要素が今大会の活躍へ向けた矢印を指し始めた。
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主な出場予定選手
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青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕→次期S-1
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕→次期S-13
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕→次期S-26
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕→次期S-3
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕→次期S-2
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕→次期S-9
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕→次期S-6
森 且行〔川口 S-16(25期)〕→次期S-34
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕→次期S-8
平田 雅崇〔川口 S-37(29期)〕→次期S-21
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕→次期S-14
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕→次期S-12
文/鈴木
浜松G2『ウィナーズカップ』の展望
近10年の『ウィナーズカップ』に連覇なし、2度優勝したのは中村雅人のみと、開催時期が毎年バラバラであることと合わせて傾向や特徴が出にくい大会。鈴木圭一郎は前回大会まで7連続で優出しているのはさすがだが、優勝したのは今のところ2018年の1度にとどまる。
その鈴木圭は、年間最多勝と賞金王を獲得した昨年と比較すると今季は良い流れに乗りきれていない印象がある。今年は4月に山陽G1、7月に山陽G2を制しているものの、1~6月に14節へ優出してV2。2024年の1年間に30節の優出で14Vだったのとは、だいぶ開きがある。さらに先週の伊勢崎ナイターではフライングを喫した。どうもリズムが上がってこない。
前期ランキングS1、今期S2の総合力を持っていても、今回は他者が彼から活躍の場を奪う可能性はありそうだ。
6月下旬の浜松デイレース『G2浜松記念 曳馬野賞』の決勝戦において、黒川京介は鈴木圭との対決を制して大会初制覇。地元エースに代わってシリーズの主役となった。
今月は川口ナイター『G1キューポラ杯』を前年からの2連覇。続く浜松デイレース一般開催は優出4着に敗れたが、6月よりも今回の気候に近い浜松走路の感触を掴めたことは大いに価値があるだろう。
『ウィナーズカップ』前回覇者である金子大輔は、今年の優出回数が16回。これは黒川の18回に次ぐ多さで、現在15回の鈴木圭を上回る。浜松デイレースには今年13節へ出場して11度も優出。加えて消音マフラーを装着しての浜松アーリーレースには今年2節に出場して両方とも優勝。7戦して7勝と完全無欠の実績を残している。全国ランキングは今季S8だが地元勢では鈴木圭に次ぐ存在、というより今年の成績の充実度でいえば、隣に並んだ東西の横綱として遠征勢を迎え撃てる位置づけだ。
鈴木宏和と佐藤貴也はそれぞれゴールデンウイークの前後から大敗が減り上位入着が増えてきた印象。佐藤貴は先週の浜松デイレース決勝戦は、外枠の黒川京介にスタート行かれたが1周で捌き返してゴールでも先着した。
木村武之は今年6月までグレード開催9節に出場しながら優出ゼロだったが、今月の山陽ナイター『G1小林啓二杯』でようやく今年のグレード初優出。そして6月下旬の『G2曳馬野賞』を境に今までの1か月間は、1着を獲る率がそれまでの期間と比べて大幅に上昇しているので、流れが上向いているといえそうだ。
近2か月間の伊藤信夫は、川口や山陽のナイター開催では大活躍できなかったが、浜松デイレースには6連続での優出を継続中。そのうち2節に優勝している。
6月以降の渡辺篤は、熱走路で実施されるケースの増えた浜松デイレースでは苦戦が続いているが、デイレースよりは走路温度が低めになる傾向のある浜松アーリーレースでは上位着順が明らかに多くなっており、2節に出場して1度優出。そして6月の伊勢崎ナイター『G1稲妻賞』で自身初のタイトル獲得。捲り主体のレーススタイルゆえ、灼熱の気候であっても外コースが喰いつけば、そのコースは活躍の場へと変貌する。
4月の落車事故にから休養を経て6月上旬に戦列復帰した栗原佳祐は、6月17日以降は浜松のみに出走して26戦14勝。6月26日の『G2曳馬野賞』2日目に黒川を破って勝利すると、今月26日の浜松デイレース決勝戦でも黒川を破って優勝した。いつか獲ることは間違いないグレードの冠。そのときが着々と近づいているように感じられてならない。
佐藤摩弥は今年の浜松に優出4度。1月の前回『ウィナーズカップ』と、2月『SG全日本選抜』で頂点を争った実績が輝いている。
松本康は2月『SG全日本選抜』6日制の初日~4日目と、3月『G1プレミアムカップ』5日制の初日~3日目をすべて3着以内に好走して、両大会とも優出。全日本選抜の準決勝戦は、2着の佐藤摩にあと一歩まで肉薄しての3着と熱走を見せた。
その全日本選抜には長田稚也も出場し、準決勝戦のゴール寸前に佐藤励を捲って優出した。今年5月~6月には浜松2節をまたいで5連勝している。
長田稚や前述の黒川が出場した7月下旬の浜松デイレースに丸山智史も参戦していて、準決勝戦には進めなかったが後半2日間は2連勝。その前の週には川口ナイター『G1キューポラ杯』の準決勝戦で鈴木圭を3着にくだして勝利すると、決勝戦でも荒尾聡・金子大輔・中村雅人といったSGホルダーに先着しての3着と活躍している。
ランキングA級車では西日本勢に伏兵がひそんでいるか?
長田恭徳も丸山智と同様に先週の浜松デイレース後半に2連勝。同じ節の同じく後半2日間に山本将之は2回乗りも含めて1着・2着・1着。藤川竜は6月の浜松アーリーと7月の浜松デイレース2節に9走して5勝を挙げた。
岡松忠はレース場・昼夜を問わず、過去1か月の良走路14走で着外わずか1度。先週の浜松デイレースも好走して本走タイムは速くなかったものの、今回も引き続き熱走路となって若手などが苦しむようなら、1千勝レーサーのテクニックが再び活きてくるか。
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主な出場予定選手
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鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
佐藤 貴也〔浜松 S-10(29期)〕
木村 武之〔浜松 S-23(26期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-27(24期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
松本 康〔伊勢崎 S-21(32期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-28(34期)〕
丸山 智史〔山陽 S-31(31期)〕
岡松 忠〔山陽 A-106(17期)〕
文/鈴木
G1キューポラ杯の展望
川口レース場伝統のタイトル戦のひとつである『G1キューポラ杯』、2016年の第40回大会をもってナイター開催へ移行してから、今年で10年目となる。昨年の前回決勝戦は、鈴木圭一郎が岩見貴史に抵抗される間に黒川京介がリードを拡げて大差で勝ち、キューポラ杯の初制覇&地元G1初獲得の、ダブルでメモリアルな結果となった。
昨年後半~今年前半の黒川はまさに充実一途だ。『日本選手権』でのSG初制覇を含めて、この12か月間に12度の優勝。今年3月下旬からの3か月間だけでG2レースを4度も優勝している。その内訳には消音・夜開催の『G2川口記念』と『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』(3月と6月の2連覇)を含んでおり、キューポラ杯連覇への視界はきわめて良好といえる。
今期ランキングは黒川に次ぐ川口第2位、全国ランクS4の中村雅人も目下の流れは非常に良い。直近節は今月上旬の川口ナイター一般開催3日制に全勝しての完全V。その前はデイレースだが川口で4節連続で優出していたし、4月には川口ナイター『SGオールスター』にも優出していた。
通算10度目となるG1制覇、そして初めての川口グレードタイトル獲得を成し遂げれば、お盆のSGを含めて8月後半まで出場の決まっているグレードレース3連戦にも一層の弾みが付く。
最近はデイレースでの活躍が目立つ佐藤摩弥だが、夜の消音開催での実績は折り紙つきだ。近年に限っても2023年に川口ナイター『G1キューポラ杯』、2024年に飯塚『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』を制しているほか、今年2月の川口ナイトレース決勝戦は本走3.334秒の好タイムで準優勝している。
今年5月の消音ナイター『G2川口記念』は未勝利ながら5日間すべて2着と3着に好走。6月前半は川口デイレース優勝1度、6月下旬から現在まで3節連続で優出中とエンジン状態は高水準で安定している。
ちなみに直近節として出走した飯塚ナイターでは『スーパースターガールズ王座予選』の第3戦に勝利し、年末の『王座決定戦』出場権をかけた選考順位のトップに立っている。
佐藤励は今年4月の川口ナイター『SGオールスター』を6戦6勝してSG初制覇。翌週の浜松デイレース『G1ゴールデンレース』は成績ふるわなかったが、5月中旬から昼夜・レース場・マフラー種別を問わず7節連続で優出して今大会に臨む。近1年間の川口・夜開催への優出回数は黒川と並ぶ6度で、これは中村雅人(3度)や佐藤摩弥(2度)を上回る。
佐藤励も中村雅と同様に川口レース場のG1・G2トロフィーは手にしたことがない。未来の川口エース候補、いや全国ナンバー1候補のひとりとして、そろそろ地元の勲章を獲得したいところだ。
森且行が上昇気流に乗ってきた印象だ。4月『SGオールスター』は6戦2着1度にとどまったが、5月に入ると2連対する回数が増え始めて、6月は上旬に川口デイレース準優勝。そこから現在まで浜松G2を含む4節に出場して全て優出している。6月の川口ナイトレースと先週の川口ナイター、2節の予選~準決勝戦は5戦3勝・2着2度と2連対パーフェクト。今の時季の川口の夜にエンジンがマッチしていることは確実だ。
ナイター開催へ移行して2年目の2017年と翌2018年にキューポラ杯を連覇した永井大介は今年まだVゼロながら、先週の山陽ナイター『G2小林啓二杯』で今年のグレード初優出を果たした。初日から3日目までは勝ちきれなかったが、4日目の準決勝戦は10線6車並びの大外枠からダッシュを決めると、2着の木村武之に1秒の大差をつけて圧勝した。最終日の決勝戦は中枠からスタート後手を踏んで展開が悪くなったが、近況は総体的に勢いを増している印象がある。
川口S級は他に小林瑞季・平田雅崇・加賀谷建明・山田達也が今年6月以降に好成績を挙げており、小林瑞と加賀谷は過去5年以内にキューポラ杯への優出歴がある。
そしてA級勢では6月中旬の川口ナイトレースで早津康介がV、小椋華恋が準優勝したほか、森谷隼人、石井大輔、牧野貴博、間中大輔が6月~7月の川口ナイター・ナイトレースで好走している。
同時期に高石光将はハンデ30m~40mの位置に置かれ続けて6着~8着が並んでしまったが、グレードレースの今回はハンデ0mや10mから早めに抜け出せる番組構成が増えると想定されるので、先月とは見違える姿を披露できるかも。
鈴木宏和は前々回2023年のキューポラ杯に準優勝(優勝は佐藤摩弥)。昨年のキューポラ杯は5戦中の良走路3戦は1着・1着・2着。今年は『SGオールスター』と『G2川口記念』に出場して、良走路は8戦4勝、着外は4着が1度のみと、川口の夜開催では高い安定感を長らく維持している。
今年の6月以降は浜松消音アーリー準優勝に『G2浜松記念 曳馬野賞』にも優出と近況の状態も良いので、天候および走路状態がネックながら活躍を見込める。
2023年のキューポラ杯に優出した金子大輔は翌2024年にも参戦したが、当時は調子を崩していて活躍ならず。しかし今年の『SGオールスター』は予選中にフライングで失権したものの6戦オール2連対と実力は示した。
直近節は浜松アーリー4日制に完全V。今大会とは昼夜が逆転するが、消音マフラーを装着してのライディングのバランスを掴めていることは大きい。
今年の『SGオールスター』は6日間1勝の予選モレに終わった中村杏亮だが、西日本2場での消音・夜開催は今年は例年以上の成績を挙げている。25戦して着外たったの4度。濡れ走路に至っては7戦5勝・オール3着以内。地域は異なるが消音マフラーでエンジンが安定して動いていることはセールスポイントとなろう。
福岡鷹は『SGオールスター』で中村杏亮を上回る6戦3勝を挙げて、5日目には準決勝戦へ進出。パワーが劣る2級車の身で初日から最重ハンの10メートル前で戦ってのこの戦績は見事というほかない。
今大会の初日を迎える時点からみて3節前にフライングを切っており、実際その日から後ろにスタート叩かれるケースが増えて7戦未勝利と、リズム下がっているが、車と乗り手がマッチした際の破壊力は37期の中で5本の指に入る。
『SGオールスター』6戦を未勝利で終えてから約1か月ののち『G2川口記念』で再び川口の地を踏んだ岩見貴史は、初日いきなり妨害・勝ち上がり権利喪失となったが、2日目からの4走すべてを3着以内にまとめると、またも1か月を空けての実戦となった飯塚ナイターに優出。そして6月末からの飯塚ミッドナイト2節は7戦6勝、1節目に準優勝からの2節目は完全Vと、走るごとに勢いを増して今年3度目の川口・夜開催へ乗り込める。
2021年のキューポラ決勝戦。隣の外枠であった青山周平をスタート後の加速でみるみる引き離して大会初制覇した鈴木圭一郎は、翌2022年のキューポラ杯にも優出して3着、昨年は優出2着と、本大会でも毎年のように活躍している。
そして先週13日には、山陽ナイター『G2小林啓二杯』決勝戦に圧勝。消音マフラーでの夜開催の8周回で見事な走りを披露して、今春『SGオールスター』優出ぶりとなる川口ナイターへやって来る。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
永井 大介〔川口 S-12(25期)〕
森 且行〔川口 S-16(25期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 A-69(37期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-91(37期)〕
文/鈴木
『G2小林啓二杯』の展望
2016年に創設されてから第10回を迎えた今年、大会史上初めて消音マフラーを使用してのナイター開催として実施されることになった。
ちなみに過去9回のうち鈴木圭一郎に2度のV歴があるものの他7回すべて優勝者が異なり、連覇もなし。新設から第4回大会までは年ごとに開催時期が変動していたが、2020年の第5回以降は6月下旬~7月の実施で定着している。
2022年と昨年の2度、本大会を制している鈴木圭は6月は14走して、2連対を外したのは雨の2度のみ、5月までと比べて1着率が上昇傾向にある。
山陽の夜開催は2022年6月のナイター(優出3着)以来とかなり久しぶりになるが、山陽デイレースは昨年3月~8月に出場した4節すべて無敗で優勝。今年4月の『G1令和グランドチャンピオンカップ』も5戦5勝の完全Vを果たしている。
雨中決戦となった2020年大会を制した有吉辰也は昨年2月と今年4月に山陽ナイター2節へ出走して、合計7戦6勝・優勝2度。そして今大会までの近1か月は各地のデイレース・ナイター・ミッドナイト3節に出場して3節とも優出。どんな条件にもエンジンを仕上げてくる適応力の高さはさすがだと改めて評価したい。
木村武之が夜の山陽を直近に走ったのは昨年10月のナイター3日制で、初日2着、2日目2着から3日目V。その決勝戦は内枠の浜野淳や外枠の松尾啓史・金子大輔を置いて飛び出すと、前団の前田淳や永島潤太郎に対しては自在の捌きを放って快勝した。
直近に消音マフラーで走ったレースは今年5月、朝~お昼に走る浜松アーリーながら、4日制の初日と2日目に2連勝している。
伊藤信夫は2022年の9月、山陽ミッドナイトに2連続で優出して1度優勝。翌2023年の6月にも山陽ミッドナイトで準優勝している。
今月上旬の浜松デイレースは決勝戦で反則妨害を犯してしまったが、準決勝戦を走り終えた直後のコメントからエンジンに好感触を掴めている様子だった。
上和田拓海は川口の消音ナイトレースでおととしと昨年に1度ずつ優勝。今年4月に消音ナイターでおこなわれた『SGオールスター』では3着が4度。キャリアのごく初期から消音マフラーとの相性の良さに定評がある。
過去3年間における山陽の夜開催は3節・11走して、4着1度の他は1着7度・2着3度と完璧に近い成績を挙げている。
永井大介・荒尾聡・早川清太郎は過去3年以内に山陽の夜開催を走っていないが、永井は昨年6月から今年4月にかけて川口の夜開催に『G1キューポラ杯』を含む7連続優出。早川は今春の川口ナイター『SGオールスター』で6戦2勝。荒尾は過去1年間に飯塚ミッドナイトとナイターを1度ずつ優勝し、飯塚ナイターG1(2度)や川口ナイター『SGオールスター』にも優出している。
本大会の初代覇者である丹村飛竜は今期のランキングはA級ながらS級の総合力を備えていることは周知のとおり。今年3月の山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』はフライングにより勝ち上がり権利を喪失したが5日間に3勝を挙げてエンジンは相当に良かった。1か月後の川口ナイター『SGオールスター』でも初日から破竹の3連勝と活躍している。
いま山陽の若手で最も伸びざかりなのが山本翔。今期はまず3月末の山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』5日制をオール3着以内にまとめて、直後の山陽ナイター3日制は2着・2着・1着で優勝、2週間後の山陽ナイター4日制も2着・1着・1着・2着で準優勝。そして6月下旬に出場した山陽ミッドナイト2節とも優出して決勝戦3着と1着。通算7Vのうち山陽の夜では6度目となる優勝を決めた。
あとは伏兵として注意を払いたい数名をピックアップ。
筒井健太は昨年に山陽ミッドナイトへ2度優出。先月は浜松デイレース『G2曳馬野賞』5日制に出場して3勝、2着1度。そのうち1勝は近況の連対率が高くない雨走路で鈴木圭や佐藤貴也を相手に逃げきってのもので、目下の仕上がり度の高さをうかがわせた。
赤堀翼は過去1年間に山陽の夜開催で16走して、優出こそないものの1着5度・2着6度と高確率で車券に絡んでいる。先月は浜松デイレース一般開催5日制を3連勝で優出したあと『G2曳馬野賞』でも高いスピードを連日披露して優出。準決勝戦は森且行・高橋貢・金子大輔を寄せ付けない独走勝利だった。
吉松憲治は6月に山陽ミッドナイト4節へ出走して2度の優出。特筆したいのは3日間とも濡れ走路となった2節目。それまで連対率の低かった雨を乗りこなして1着・2着・2着の準優勝。梅雨空が戻ってきたとしても軽視できない1車だ。直近節の浜松デイレースで落車した影響が懸念されるが、連勝した初日・2日目も、他落をこうむった決勝戦5周目までの動きも、エンジン気配はかなり良かった。
今年5月~6月に開催された山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』で大活躍した村田光希と松尾彩も、経験の浅さを補ってあまりある可能性と爆発力を内に秘めている。
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主な出場予定選手
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松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
丸山 智史〔山陽 S-31(31期)〕
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕
松尾 彩〔山陽 A-33(34期)〕
山本 翔〔山陽 A-89(34期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-7(25期)〕
永井 大介〔川口 S-12(25期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕
木村 武之〔浜松 S-23(26期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-27(24期)〕
上和田 拓海〔川口 S-30(34期)〕
文/鈴木
G2浜松記念 曳馬野賞の展望
昨年1~6月に7度優勝した鈴木圭一郎。今年の前半は優勝まだ2度のみ。その2Vは山陽G1『令和グランドチャンピオンカップ』と浜松G1『開場記念ゴールデンレース』のグレードレース2つだが、昨年1~6月は17度の優出で最も大きかった着順は4着(3度)。今年はここまで13度優出して着外を7度も喫している。例年に比べると波に乗りきれていない感はあるが、歯車が噛み合ってスムーズに回転し始めれば、賞金王と年間114勝の新記録を達成した昨年の勢いを取り戻してくれるはず。
2節前の浜松デイレース5日制は、初日に昨年10月ぶりの妨害判定をくだされて勝ち上がり権利を失ったが、残る4日間に全勝。直近節の浜松デイレース4日制は決勝戦で20メートル前の石田啓貴に振り切られたが初日~3日目は3連勝。勝利のリズムをつかめてきた様子がうかがえる。
黒川京介が直近に浜松へ出場したのは今年3月のデイレース『G1プレミアムカップ』で、5日制の初日から4連勝して優出3着(優勝は青山周平、準優勝は鈴木圭一郎)。近1か月間には、夜開催だが川口『川口記念』と山陽『ミッドナイトチャンピオンカップ』のG2レース連続で制覇している。2023年4月のデイレース『G2ウィナーズカップ』に5戦5勝で完全優勝、今年2月のデイレース『SG全日本選抜』へ優出と、浜松走路にもしっかりした実績があり、今回の活躍も大いに期待できる。
今月中旬の川口ナイトレース決勝戦の道中に黒川を捲ってゴールでも先着したのは森且行。浜松では今年の『SG全日本選抜』と『G1プレミアムカップ』でそれぞれ1勝ずつを挙げて、『G1ゴールデンレース』では2度の2連対がある。
その決勝戦で彼ら10メートル前のハンデ位置から抜け出して優勝したのは早津康介。浜松は昨年11月『G1スピード王決定戦』の初日から1着・2着・3着と好走。準決勝戦は道中に大きな不利を受けて優出は逸したが、走路との折り合い面は心配なさそうだ。
青山周平の直近の浜松は準決勝戦3着で優出できなかった5月『G1ゴールデンレース』だが、その前に参戦した3節、昨年11月『G1スピード王決定戦』~今年2月『SG全日本選抜』~3月『G1プレミアムカップ』の全てに全勝優勝。まさに非の打ち所がない実績を残している。
今月中旬の伊勢崎ナイター『G2稲妻賞』は、この大会ならではの傾向どおり不順な天候に見舞われたが、晴雨が日替わりの条件でも連日エンジンを安定させて4戦3勝で決勝戦へ進んだ安定感はさすがといえる。
『G2稲妻賞』で青山周や佐藤励と同ハンで戦って撃破し、念願のグレードレース初制覇を果たしたのが、青山周と同じ31期の渡辺篤。その決勝戦の2日後から参戦した浜松一般開催は、直前のナイターから熱路のデイレースへ替わってコメントによるとタイヤの滑りに苦しんだようだが、その1節で走路の感触を体感できた今回は対策を施して臨めるはず。
『G2曳馬野賞』前年覇者の高橋貢は、『G2稲妻賞』は5戦1勝・3着3回にとどまったが、過去1年間の浜松では12走して着外わずか3度と、高い安定度を示している。『稲妻賞』の前節までは川口ナイター『SGオールスター』から3節連続で優出しており、エンジンは高水準をずっと維持している。
今年4月上旬の他落事故から約2か月間の休養。今月上旬に復帰してから3節に出場した栗原佳祐は、走りの内容が休養前のレベルへ着実に戻りつつある。
1級車へ乗り換えたばかりにもかかわらず、今年1~3月の間だけで7度も優出して3V。キャリアがまるで異なるのに、同じ期間に8度優出して5Vの黒川京介と横並びに近いペースで優出&優勝していた。
直近に出走した今月中旬の浜松デイレースは、4日制の3日目準決勝戦に他落をこうむってしまったが、第5レースに出走した最終日4日目は試走タイムを前日よりも上昇させて、2日目に捌いた鈴木辰己を再び内から交わして勝利し、落車の影響にまつわる不安を吹き飛ばした。その勝ちタイム3.435秒はこの日の全選手の中で、第11レース決勝戦1着の石田啓貴、2着の鈴木圭一郎に次ぐ3番目の速さ。同じく決勝戦を走った木村武之・佐藤貴也・伊藤信夫よりも優秀なタイムだった。
早くも最重ハンにすっかり定着した本年。自身のデビューと同じ2023年にグレード開催へ格上げされた、いわば同い年の『曳馬野賞』で、タイトル戦への初優出を果たせるか注目したい。
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主な出場予定選手
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鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
渡辺 篤〔浜松 S-36(31期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕
北市 唯〔浜松 B-20(37期)〕 ※まだB級ながら追加斡旋。昨年『G2若獅子杯』以来2度目のグレード出場
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕
森 且行〔川口 S-16(25期)〕
浦田 信輔〔飯塚 A-5(23期)〕
松尾 彩〔山陽 A-33(34期)〕
早津 康介〔川口 A-55(34期)〕
文/鈴木