
《G2若獅子杯争奪戦の展望》
青山周平が私病により出場できなくなり、情勢は四天王から鈴木圭一郎・黒川京介・佐藤励の3強ムードへと様変わりした。
昨年10月の前回大会で通算2度目の若獅子覇者となった佐藤励は、その後に今春の『オールスター』を制してSGウイナーへ名を連ねた。直近では9月の伊勢崎ナイターG1『ムーンライトチャンピオンカップ』決勝戦で黒川・鈴木圭をくだして優勝。先月下旬の山陽デイレース特別G1『プレミアムカップ』決勝戦は内枠でスタート包まれながら、荒尾聡と佐藤摩弥を捌いて3着。まだ35期ながら10年選手の風格さえ漂わせている。
そのプレミアムカップは黒川が自身初めての優勝。今年7度目のグレードタイトル獲得となった。そのプレミアムカップも、昨年2月の前々回若獅子杯も、青山周と鈴木圭を破っての優勝だから、若手の登竜門という以上に価値のある実績を挙げてみせた。
そして黒川は今回限りの大きなポイントを背負っている。昨秋の『日本選手権』でSG初制覇した際、決勝戦でフライングを切ってしまったため次回大会の出場権利を失った。今大会の2週間後に開幕する選手権へ黒川は出場できないのだ。そうした想いを胸にプレミアムカップを制して今度は、同じ山陽デイレースの8周回で争われる若獅子杯の決勝戦も1着を獲る心づもりで臨んでくるはず。
鈴木圭は今年は昨年ほどの勢いを得られずにいるが、8月には『オートレースグランプリ』初制覇とSGグランドスラムを成し遂げたし、今年の優出回数は今のところ青山周を上回っているし、今年獲得したグレードタイトル4つのうち2つは山陽でのもの。4年ぶり2度目の若獅子杯Vをめざすには上々の流れで今回に臨める。
栗原佳祐は着順だけ見ると今夏は勢いが下がったように感じられるが、7月下旬以降はグレードレースに数多く挑戦し、浜松G2と山陽G1はそれぞれ5日制開催で2勝を挙げ、伊勢崎SGは未勝利だったものの6日間のうち4走で上位着順を獲った。昨年までの2級車から1級車へ乗り換わってまだ1年未満であることを考え合わせれば、非凡な能力が成績に表れていると分かる。
今年の走り初めとなった伊勢崎G1『シルクカップ』にいきなり優出した新井日和は、8月のグランプリ6戦で2勝すると9月プレミアムカップは初日から2連勝。4日目の準決勝戦はレース中盤まで鈴木圭と早川の首位争いに加わる走りを示し、走力を着実に上げ続けている。
今回出場メンバーの中で地元エース(=この10月から適用されている今期ランキングの山陽トップ)は、山本翔が務める。30期より上の期を含めた山陽レーサー全員の中でも上から5番目で、全国順位は前期A-89から今期S-35へと大幅に躍進した。ナイター開催ではあるが7月の山陽G2『小林啓二杯』決勝戦は、鈴木圭を相手に健闘しての準優勝。翌8月のオートレースグランプリではSG初勝利。今年は数字面だけでなく競走のインパクト面でもステップアップできている。
山本翔と同じく山陽34期の松尾彩は数年をかけてゆるやかにだが着実にレベルアップし続けている。全国ランキングも、わずかずつだが期ごとに順位を上げていて、ハンデが重くなり始めた2024年の上期だけは少し順位を下げたが、いまや最重ハンにすっかり定着し今期ランキングはA-21と、S級入りを狙える位置まで山を登ってきた。4月のSGオールスターでは6戦1勝、8月のグランプリでは6戦2勝を挙げたし、毎年暮れに実施される『スーパースターガールズ王座決定戦』出場権争いのポイント順位も今年は上位につけている。
まだ2級車に乗っている37期生は、過去の若獅子杯を中心に戦歴を振り返る。
伊勢崎の浅倉樹良は今のところ山陽での実戦経験は、昨年10月に実施された前回の若獅子杯1節のみ。準決勝戦には進めなかったが1着・2着・3着が1回ずつあった。
浜松の森下輝は山陽ミッドナイトに数多く出走しているが、若獅子杯は昨秋の前回大会1度のみ。4日目までは大きな着順を重ねたが5日目は1着。同じ節に浅倉のマークした本走の最高タイムが3.46秒だったのに対して、森下はこの最終日1着時に3.43秒を記録。1級車の小栗勝太にスタート叩かれたが、何周も併走して張り合った末に伸び勝って独走ゴールした。
福岡鷹は飯塚所属ゆえ隣の山陽には頻繁に出場していて、昨秋の若獅子杯は準決勝戦4着と活躍した。今年2月には山陽デイレースG1『スピード王決定戦』にも出場して5戦3勝。速い時計の出やすい厳冬期とはいえ4日目に3.377秒、5日目に3.381秒の好タイムを計時した。さらに今年5月には山陽ミッドナイト2節の合計7日間に7連勝で2連続完全Vを達成している。ごく最近も飯塚の夜開催でA級中堅~上位ランキングの1級車に優る車速を何度も披露している。
地元・山陽の37期生の中で今回活躍する可能性が最も高そうなのは村田光希だ。昨秋の若獅子杯では山陽同期の田中崇太や丹下昂紀の方がより良い成績を挙げたが、村田が輝いたのは今年5月の飯塚G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』だ。実戦で8周回を走るのは初めてだったにもかかわらず7周目の終盤まで先頭で逃げ粘り、黒川京介には捕まったが佐々木啓・篠原睦・長田稚也に先着での準優勝と一躍、勇名をとどろかせた。一方、今大会と同じ山陽デイレースでは、今年は大きな着順ばかりだが、昨年11月には本走3.416が出ており、10月に入った今回も走路温度が低めになるようだと活躍する可能性が拡がる。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
山本 翔〔山陽 S-35(34期)〕
丸山 智史〔山陽 S-36(31期)〕
松尾 彩〔山陽 A-21(34期)〕
村田 光希〔山陽 A-166(37期)〕
黒川 京介〔川口 S-2(33期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-3(32期)〕
佐藤 励〔川口 S-6(35期)〕
栗原 佳祐〔浜松 S-12(36期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-16(32期)〕
新井 日和〔伊勢崎 A-3(35期)〕
福岡 鷹〔飯塚 A-7(37期)〕
浅倉 樹良〔伊勢崎 A-34(37期)〕
森下 輝〔浜松 A-74(37期)〕
文/鈴木
《特別G1プレミアムカップの展望》
今春オールスター6日制を無敗で制してSGウイナーに仲間入りした佐藤励は、その後も充実の戦歴を挙げ続けている。5月~7月には川口ナイターG2と伊勢崎ナイターG2を含めて7節連続で優出。グランプリは優出こそ逸したものの6日間すべて3着以内にまとめて、前年大会とは見違える結果を残した。そして今月は伊勢崎ナイターG1『ムーンライトチャンピオンカップ』で自身2度目のG1優勝。鈴木宏和と長田稚也を捌いて黒川京介や鈴木圭一郎を突き放すという堂々たるレース内容だった。
今夏『オートレースグランプリ』を初めて制してSGグランドスラマーの称号を得た鈴木圭一郎。武器のひとつである猛烈なダッシュが今季は頻度を下げているものの、道中の捌きはむしろ最近また進化した感がある。プレミアムカップは2019年と2024年に2度制覇。そのどちらも青山周平を2着にくだしての優勝であった。
青山周平は今年3月の前回プレミアムカップ、鈴木圭を半車身振りきって通算6度目のV。今回は前々回大会からの3連覇をめざす。今月上旬のムーンライトは大会4連覇をかけて臨んだが準決勝戦まさかの反妨失格。同じく4連覇に挑んだ8月のグランプリも優出しながら勝てなかったが、勢いが下がった・止まった印象はない。前々回のプレミアムカップは今回と同じ山陽デイレース・9月23日の決勝戦を、前輪が浮いてスタート遅れながら鈴木圭と黒川京介を捌いて優勝している。
プレミアムカップを過去9度も制しているのは永井大介。山陽での実績は、今年7月にナイターながらG2『小林啓二杯』へ出場し、準決勝戦は10mに6車が並んだ大外枠から飛び出して、ゴールでは2着の木村武之に大差をつけて勝利、優出。その2節後の川口ナイトレース一般開催でも圧勝に次ぐ圧勝で3戦3勝の完全Vを達成。直近節のムーンライトチャンピオンカップは優出ならなかったが、最終日は鮮やかなカマシ発進を決めると、ここでも2着以下に10メートル以上の差を付けて勝利した。
佐藤摩弥は山陽への直近2度の出場機会であった昨年10月のG2『若獅子杯争奪戦』と今年4月のG1『令和グランドチャンピオンカップ』に優出と活躍して今回を迎える。先月はグランプリと飯塚ナイターG1『ダイヤモンドレース』へ立て続けに優出し、良い状態を維持できていそうだ。
今月上旬に飯塚デイレースを優勝した篠原睦は、山陽のグレード開催には今年4節に出場して全て優出。G1初獲得に挑んだ8月ダイヤモンドレースは優出3着だったものの予選~準決勝戦の仕上がり度はかなり高かった。昨年暮れから現在に至るまで、山陽のお隣で気候があまり変わらない飯塚で圧倒的な安定感を示しており、今回プレミアム初制覇とG1タイトル初獲得を同時に成し遂げる可能性は十分ある。
金子大輔は昨秋のプレミアムカップ以降、現時点で山陽3節に連続で優出中だ。直近節は半年ほど前になるが今年2月にデイレースG1『スピード王決定戦』を優勝した。そしてこの夏は川口ナイターG1、浜松デイレースG2、伊勢崎ナイターのSGとG1へコンスタントに優出しており、10年ぶり2度目のプレミアム制覇をめざせる流れは掴めている。
黒川京介が今年6度獲得したグレードタイトルのうち2つが山陽G2『ミッドナイトチャンピオンカップ』で、デビュー通算グレード13Vのうち5Vが山陽と、相性の良さがキラリと光る。今年7月には地元G1キューポラ杯を昨年に続いて連覇。8月にはグランプリでSG準優勝。秋に初めてSGを優勝した昨年よりも夏の成績は今年の方が充実している。
長田恭徳と長田稚也では、山陽所属である恭徳の方に地の利あるが、現況のエンジン状態は稚也の方に分がある。両者が直近に出場したのは今月中旬の山陽デイレース一般開催。ムーンライトチャンピオンカップ準優勝から転戦してきた稚也は、この山陽初日は道中の折り合いを欠いたが2日目は大きく回れてパワーを感じさせた。
荒尾聡と鈴木宏和はグランプリから4節ずっと同じ開催を走ってきた。鈴木宏はグランプリ優出、荒尾聡はダイヤモンド優出を経て、ムーンライトは揃って優出し鈴木宏が先着した。そして両雄の直近節はW長田と同じ山陽デイレース。双方とも準決勝戦3着で優出はならず、特に荒尾は4日間で最高の着順が3着と、今回に向けては課題の残る動きだった。
A級選手から伏兵候補を探ると
まだまだ気温・走路温度が真夏とあまり変わらない近年の9月。昔から夏男の異名をとる掛川和人が躍動するか。山陽は今年7月の小林啓二に出場し、5日制の後半2日間に連勝。近10走は5勝・2着2回と着順も安定感を増しているが、数字には表れない見た目の迫力が最近は凄い。
すでに最重ハンにすっかり定着しているが、大レースで全国の強豪と当たるとまだ目立った成果は挙げられていない栗原佳祐は、今回は伏兵に位置づけるが、2級車から1級車へ乗り換わった今年1月以降、(補充参加1節を除き)正選手として出場したグレード開催5節のうち4節は準決勝戦まで勝ち上がっている上、その4走とも4着以内に入って大敗はしなかった。6月と7月に挑戦した2節の浜松G2ではそれぞれ2勝ずつしている。いずれは頂点を狙える大器。そろそろグレード初優出してステップアップを図りたいところだ。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
松尾 啓史〔山陽 S-26(26期)〕
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕
長田 恭徳〔山陽 A-14(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
永井 大介〔川口 S-12(25期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕
文/鈴木
《G1ムーンライトチャンピオンカップの展望》
【今度は4連覇なるか青山周平】
先月の伊勢崎ナイターSG『オートレースグランプリ』は史上初の大会4連覇を逸した青山周平。『ムーンライトチャンピオンカップ』も3年連続の通算V3で今回を迎える。当初は斡旋されていなかった鈴木圭一郎の参戦が決まり、彼に勝たれたグランプリ優勝戦のリベンジを狙う機会ともなろう。
グランプリの翌週に開催された飯塚ナイターG1『ダイヤモンドレース』は、準決勝戦2着となったため優勝戦の枠番選択では内寄りの枠を得られなかった。しかしいざ決戦のスタートが切られるとトップスタートから8周回の逃走劇。逆境を跳ね返して乗り越える底力を改めて示した。
先月お盆のグランプリは鈴木圭が大会初優勝。史上7人目のSG全冠制覇『グランドスラマー』にも輝いた。
グランプリから今節へ直行する青山周に対して、鈴木圭はグランプリのあと8月下旬の一般開催でも伊勢崎ナイターの気候や走路状態を加味した実戦感覚を経験できたので、青山周が持つ地の利という名のアドバンテージとの差を埋め合わせられる。その直近伊勢崎は初日からスーパーハンデに置かれたうえ、レース道中で軽ハン選手に突っ張られたり、普段は同ハンで戦っている選手のブロックに手こずらされたりしながら、5日間すべて車券圏内まで追い上げた。青山周の逆襲を跳ね返す態勢は整っている。
黒川京介は浜松デイレースG2『ウィナーズカップ』優勝、グランプリ準優勝から臨んだダイヤモンドレースは、準決勝戦を着外に敗れて最終日はフライングと勢いが低下した感もなくはないが、その飯塚消音ナイターから、今回はグランプリ初日~準決勝戦まで5連勝した通常マフラーの伊勢崎ナイターに戻るので、再び大活躍、今度は銀メダルでなく金メダルを獲得する見込みは大いにある。
青山周を越えるムーンライト通算5Vを誇るのが高橋貢と早川清太郎だ。
グランプリ最終日6日目に第10レース選抜戦へ出走した高橋貢は、雨上がりの不安定な路面状況も影響したのか前輪が浮いてしまいスタート7~8番手に。しかしそこからコース取りを内外自在に使い分けて追い込み勝ち。名刀の切れ味をまたしても天下に示した。
早川は近3か月、山陽や川口のナイターでは出ない速い本走タイムが伊勢崎ナイターだと出ている。その期間中は試走も、30秒~31秒の速いタイムは伊勢崎ナイターでしか出ていない。今年のグランプリは開催前半の天候が雨がちだったせいで得点を稼げず準決勝戦へ進めなかったが、先月下旬の伊勢崎ナイター一般開催は優出を果たして、究極の状態にまでエンジンを仕上げた栗原勝測には敗れたが鈴木圭には先着して準優勝。グランプリの4・5日目と合わせて良走路の威力は高まってきている。
グランプリの翌週におこなわれた伊勢崎アフター5は佐藤励が3日制3連勝のV。しかもオートレーサー人生初のスーパーハンデに置かれての完璧な成績だった。グランプリは0mオープンの準決勝戦で2番手発進しながら中村雅人に捌かれて優出できなかったが、節間6走すべて3着以内に好走。今年6月のG2『稲妻賞』にも優出していて、今回も伊勢崎ナイターにエンジンを合わせてくることが期待できる。
グランプリ準決勝戦でトップスタートから佐藤励を突き放したのが佐藤摩弥。今年最初の出走レースだった伊勢崎G1『シルクカップ』にいきなり優出。晴天のデイレースながら真冬の17時に発走した決勝戦はすっかり陽が暮れて走路温度は7度。ナイターに近いともいえる気象条件のもと本走タイム3.343秒で3着に健闘した。今年の伊勢崎ナイターは7月の一般開催とグランプリの2節に出走していずれも優出している。
ダイヤモンドレースは初日から準決勝戦までの4日間、良走路3戦は全勝。決勝戦は1枠を得ながらスタート包まれる展開となり5着に沈んだが、3日目の準々決勝戦で久門徹を捌いた時の迫力は、SG制覇の日がいっそう近づいてきたのではと感じさせるものであった。
鈴木宏和は2023年~今年の3年間、春夏シーズンの伊勢崎ナイターで毎年グレード開催に優出している。グランプリ6日間は良走路3戦3勝、濡れ走路3戦着外と成績がクッキリ2分されたが、昨年7月には伊勢崎ナイターに2節連続で優出して、どちらも濡れ走路で3着と好走しており、走路変化があっても対応できる可能性は十分ある。
金子大輔も鈴木宏と同様に前節ダイヤモンドレースは準決勝戦どまりとなったがグランプリは、令和に入って以降7度の大会で今年を含めて4度も優出しており、伊勢崎ナイターの長距離戦の戦い方はお手のものだ。
荒尾聡は2021年と2022年のムーンライトに優出したあと2023年と2024年は出場しなかったが、その2年間は、同じ伊勢崎ナイターで実施される『G2稲妻賞』を連覇。金子大と同じく伊勢崎ナイターの8周戦において豊富な経験と実績を積んでこれている。
最後に、近況の走りが印象的な伏兵候補を3名ピックアップ。
亀井政和は7月下旬に伊勢崎ナイターの一般開催を3戦3勝でV。続いてグランプリでSGの大舞台に挑戦すると、初日~3日目の濡れ走路では大敗が続いたが、4日目~6日目になんと3連勝。その3戦いずれも一般戦だったとはいえ、今期ランキングA-16の身で、S級レーサーたちと横並びの最重ハンで戦っての成績だから高い価値がある。
新井日和について特筆したいのは最近の出足の鋭さだ。グランプリ2日目は10mオープン戦の3枠から飛び出すと、7枠から追い上げてきた若井友和の猛攻をしのいで勝利。4日目は自身が7枠に入り、2枠松本康・3枠佐藤励・4枠岩崎亮一や8枠栗原佳祐といったスタート巧者たちを抑えてトップスタートから逃げ切り勝ち。その次節の伊勢崎アフター5ナイターも準優勝しており、最重ハンの内寄り枠に置かれることが多くなりそうな今回は速攻力を武器に活躍をめざす。
早川の項で少し触れた栗原勝測は、直近節の伊勢崎ナイター5日制を破竹の5連勝。初日は38期新人が0ハンにいての大ハンデ戦を50線から追い込み、2日目以降はいずれも単独0ハンから逃げ切った。早川とは30メートルのハンデ差があるものの、節間2度くだしている。今シリーズは活躍の度合いに応じてハンデが重化する可能性はあるが、今の勢いと輝きは軽視できない。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕
亀井 政和〔伊勢崎 A-16(28期)〕
新井 日和〔伊勢崎 A-24(35期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-9(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕
文/鈴木
《G1ダイヤモンドレースの展望》
各レース場の持ち回りで開催されている『特別G1プレミアムカップ』を除いた、毎回同じレース場でおこなわれるグレードレースに限ると、青山周平が最も多く優勝しているG1タイトルは『シルクカップ』が5回、次いで多いのは『G1ムーンライトチャンピオンカップ』と『G1ダイヤモンドレース』の3回。伊勢崎開催で地の利があるシルクカップ・ムーンライトと並んで、このダイヤモンドレースを3度も制しているのは、青山周にとって相性が良い大会といえそうだ。
ちなみに3度目に優勝した2022年は、6月の伊勢崎G2~8月の伊勢崎SG~このダイヤモンドレース~伊勢崎G1~9月のプレミアムカップまで、出場したグレード5開催を連続で全て制するという、はなれわざをやってのけている。
今年の伊勢崎ナイターSG『オートレースグランプリ』は4連覇をかけて決勝戦に臨んだが、濡れ走路に切れ味を鈍らされて5着。準決勝戦を終えた直後に、決勝は晴れ走路の方が良いと語っており、直近のエンジン状態は良走路の方が実力を発揮できる仕上がりになっていると思われる。
今期の飯塚エースである荒尾聡もダイヤモンドレース3度のV歴がある。今季は6月に飯塚ナイター優勝、7月に山陽ナイターG2と川口ナイターG1へ優出、そして今月はグランプリ初日~4日目オール2連対のあと5日目の準決勝戦は2着の金子大輔へ差を詰めての3着。最終日は雨の鬼・加賀谷建明に捌かれたが、その前の節の飯塚デイレース一般開催から通算10走連続で3連対を外しておらず、出足もエンジンも雨の安定感も総体的に上向いていた。
近年のダイヤモンドレースに強いインパクトを刻んでいる1人が長田稚也だ。2023年の当大会で初めてのグレードレース制覇。ディフェンディングチャンピオンとして参戦した翌年も優出し、小林瑞季と壮絶な一騎打ちの末、ゴールは1車身差の惜敗で準優勝になったが、この一戦を含めて2024年はSG決勝戦2度を含む5度のグレード優出を果たし、次代の飯塚エースまで狙えそうな風格を身につけつつある。
先週8月14日のグランプリ準決勝戦、第9レースは中村雅人と佐藤摩弥の川口ワンツーで決まった。
中村雅人は2023年と2024年のオールスター、2024年の『G1開設記念レース』において飯塚ナイターで速い本走タイムを出しているし、ダイヤモンドは昨年8月に優出している。
佐藤摩弥は2023年と2024年のオールスターに連続で準優勝した実績が光るし、昨年7月には飯塚開催の『G2ミッドナイトチャンピオンカップ』を制しているから、夏の飯塚の消音にマッチする可能性はかなり高そう。
鈴木宏和もグランプリ準決勝戦を突破した。6日間のうち良走路3走は全勝。佐藤摩・新井日和とともに外枠からのスタートダッシュが冴えわたったシリーズだった。
彼にとって飯塚ナイターといえば、昨年12月の『G1開設記念レース』が金字塔だ。念願のグレードタイトル初制覇。相性のいい、ゲンがいい飯塚ナイターへ、あの日ぶりに鈴木宏が戻ってくる。
今の時点で『ミスター飯塚』といえば篠原睦だろう。昨年の大みそか決戦から今月上旬まで、出場した飯塚の10開催にオール優出。そのうち優勝した5開催とも消音ミッドナイトだから、今回は走る時間帯が遅いほど期待値を増しそうだ。
過去にG2タイトルは4つ獲得。そして4年前には伊勢崎ナイターでSGウイナーにもなったが、意外にもG1タイトルをまだ獲ったことがなく、飯塚の決勝戦の椅子を独占し続けている今の流れに乗って、地元伝統の一戦でG1の勲章も手に入れたいところだ。
G1優勝17度を誇る木村武之も、飯塚のG1タイトルを獲っていないという意味では、同期の篠原と同様である。2018年の秋に制した『G1プレミアムカップ』は飯塚デイレースでの実施だったが、各レース場の地元ファンに毎年、長年愛されてきたタイトルは、重みの質が異なる。
新型感染症の影響などもあり近5年は飯塚への遠征が各年2~4度と出場機会そのものが多くないものの、飯塚ナイターは2021年3月にG1優出や、昨年春の『SGオールスター』6戦2勝などの成績を残している。
黒川京介の近3年の飯塚ナイター戦歴は、2022年『SG日本選手権』5戦3勝、2023年オールスター6戦3勝、2024年オールスターは6戦1勝にとどまった。1級車へ乗り換わって以降、デイレースを含めて飯塚では優勝できていない。
しかし今年はデビュー9年目で最高クラスの勢いを誇る。鈴木圭一郎との激闘の末に準優勝した先週のグランプリが今年20度目の優出。その半分を越える12度も優勝している。さらにその半分6開催はグレードレースだ。それらの活躍が実って、次期ランキングは鈴木圭一郎を抜いて全国S2。長らく続いたオートレース2強体制に新風を吹かせた。
今年の消音・夜開催は川口と山陽のみ38走して、着外は5走だけ。7度優出して5度優勝と、充実の実績を挙げている。
グランプリとは別路線にも注目したい選手がいる。中村杏亮は昨年まで2年続けて出場してきたグランプリの選に今回は漏れた。今期ランキングは、2022年度の後期から5期維持してきたS級を陥落。今年1月~3月に出場した浜松デイレースのグレード開催3つも成績がふるわなかったが、それ以降の約半年間に出場した夜のグレード開催4つでは毎回勝利を挙げており、今年の優出3度は6月以降に集中している。それらの活躍も実って次期ランキングはS級に復帰する。
ダイヤモンドレースは2022年の第65回大会5日制を初日~準決勝戦まで無敗の4連勝で優出。翌2023年3月の『G2オーバルチャンピオンカップ』で初めての地元グレード優勝、2024年の『オールスター』で自身2度目のSG優出と、飯塚ナイターの大舞台で活躍し続けている。今年6月下旬に優出して以来の出場となる飯塚ナイターで、グランプリに出場できなかった思いの丈も胸に熱走をみせるか。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕
長田 稚也〔飯塚 S-28(34期)〕
中村 杏亮〔飯塚 A-1(33期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕
中村 雅人〔川口 S-4(28期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-6(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-8(29期)〕
木村 武之〔浜松 S-23(26期)〕
小林 瑞季〔川口 S-24(32期)〕
文/鈴木
『SGオートレースグランプリ』の展望
今月4日に発表された『2025年度後期 全国ランキング』で2期連続、通算11度目の全国ナンバーワンに輝いた青山周平は今回、史上初のグランプリ4連覇を狙う。同一SGを6度制したケースは、昭和から平成にかけてそれぞれ一時代を築いた飯塚将光(日本選手権)と島田信広(全日本選抜)の2名しか過去に存在せず、青山周がグランプリ通算6Vを成し遂げれば、令和の大記録が新たに誕生する。
次期ランキングで全国ナンバー2の座に就いたのは黒川京介。昨秋の『日本選手権』でSG初制覇すると、今年に入っても素晴らしい戦歴を残してきた。6月上旬以降でも山陽ミッドナイトG2、浜松デイレースG2、川口ナイターG1、浜松デイレースG2にV。今年7か月間で12度も優勝している。ただ今年は2月の『全日本選抜』が優出6着、4月の『オールスター』が優出3着と、SGは優勝できていない。いつかは頂点へ。青山周を追い越して全国ナンバーワンとなるためにも、おととしは準優勝、昨年は優出4着だったグランプリで、2冠目のSGを狙っていきたい。
2017年度の前期ランキングで初めて鈴木圭一郎と青山周が全国の2トップに立った。そして2019年度の後期から2025年度の前期まで、この両雄がS1とS2を争奪・独占してきた。ところが鈴木圭は、今年1月~6月の競走成績に基づいて審査された次期適用の『2025年度後期ランキング』において、長年続いた2強状態から脱落してしまった。その審査対象の期間中、黒川は16度優出・10度優勝したのに対して鈴木圭は14度優出・2度優勝と、総体的な勢いの違いがV回数の差に表れている。
鈴木圭は6月の『G2浜松記念 曳馬野賞』も今月の『G2ウィナーズカップ』も黒川に勝たれての準優勝。そして2強からの陥落...ずっとしのぎを削ってきた青山周を打倒することに加えて、今後は黒川への逆襲もテーマとなろう。そして青山周に何度も阻まれてきたグランプリ制覇が成れば、史上7人目のSGグランドスラマーの名誉も手に入れられる。
デビュー3年目の2024年度期前ランキングからS級の20位以内を維持してきた佐藤励が、次期は初のS級シングル、全国第6位まで躍進した。その原動力になったのが、今春の川口ナイター『SGオールスター』6戦6勝の完全Vだろう。その決勝戦は鈴木圭・黒川・青山周を抜いて先頭に立つという、価値あるレース内容であった。
伊勢崎はデビュー1年未満のとき2級車でナイター優勝。1級車へ乗り換えてからわずか1か月半で挑んだ2023年のグランプリは初日から3戦連続で2着。今年6月の『G2稲妻賞』は優出3着と、オートレース人生の初期から伊勢崎ナイターへの適性を示している。
彼も黒川と同様にオートレース界の山頂をめざせる逸材であり、黒川より先に2度目の戴冠を果たすようなら、川口エースの座を黒川から奪取する光景も見えてきそうだ。
森且行もまた自身2度目のSG制覇をめざす1人だ。レース中の落車事故から長い療養ののち戦列に復帰して2年あまり。まだ復帰後の優勝はできていないが、優出するペースは年ごとに上昇している。そして今年6月から成績に加えて走りの内容が良くなってきた印象がある。割と最近まで後手になるケースが多く、本人も「切れていない」と何度か語っていたスタートも切れ味が戻ってきた。先月の川口ナイター『G1キューポラ杯』は、2日目に佐藤励と、後述する平田雅崇を破って勝利。3日目と最終日5日目は鈴木圭に先着しての2着と好走している。
思い出のグリーングラス、ではなく思い出のグランプリへ、今年の篠原睦は最高の勢いを伴って臨める。
飯塚レース場は今年1月末から開催がお休みとなり、6月下旬に再開してから8月上旬までに9つの開催がおこなわれた。篠原はそのうち8節へ出場して、すべてに優出。直近では2節前と前節を合わせて7戦7勝、2節連続の完全Vを飾り、SG初制覇を遂げた時よりもはるかに勢いがある。
篠原が初めて獲得したSGタイトルは、2021年の第25回オートレースグランプリ。森且行が持つ『デビューから最長でのSG初制覇記録』23年4ヶ月よりは少し早かったが、篠原も苦節22年4ヶ月でのSG初制覇だった。
昨年の前回グランプリは成績がふるわず準決勝戦へ進めなかった。それから1年、あの喜びから4年。今年は自身が起こした風に背中を押されて2度目のSG優勝へ挑戦する。
SG初制覇を狙える雰囲気をまとっている2名にも注目したい。
栗原佳祐は歴代最高位Aー4、今期Aー25から、次期ランキングはSー12まで大幅にジャンプアップする。今年これまでに10度優出して4度の優勝。最重ハンで走るようになって以降では2月2日に金子大輔と鈴木圭を、同月19日に荒尾聡と有吉辰也を、先月下旬は黒川と佐藤貴を破ってそれぞれ優勝している。佐藤励とは異なり伊勢崎ナイターでの実績に乏しい点が気がかりではあるが、今年3月の山陽ミッドナイトでは試走3.25秒の本走3.359秒を出して準優勝している。
今春『SGオールスター』の頃までは勢いの目立つエンジン状態ではなかった平田雅崇。5月のナイター『G2川口記念』決勝戦で本走3.370秒を出して3着に粘ったあたりから上昇カーブに転じた印象だ。その2節後の川口ナイトレースで1年8か月ぶりに優勝すると、伊勢崎ナイターG2優出や川口ナイターG1準優勝を経て、先月末から今月上旬にかけての山陽ナイター優勝と川口ナイトレース準優勝のホップ・ステップで今大会を迎える。3節前の『G1キューポラ杯』初日から現在11走連続で2連対中。伊勢崎ナイターは今年6月、ほぼ3年ぶりに優出。様々な要素が今大会の活躍へ向けた矢印を指し始めた。
______________________________
主な出場予定選手
______________________________
青山 周平〔伊勢崎 S-1(31期)〕→次期S-1
高橋 貢〔伊勢崎 S-13(22期)〕→次期S-13
早川 清太郎〔伊勢崎 S-20(29期)〕→次期S-26
鈴木 圭一郎〔浜松 S-2(32期)〕→次期S-3
黒川 京介〔川口 S-3(33期)〕→次期S-2
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕→次期S-9
佐藤 励〔川口 S-11(35期)〕→次期S-6
森 且行〔川口 S-16(25期)〕→次期S-34
篠原 睦〔飯塚 S-18(26期)〕→次期S-8
平田 雅崇〔川口 S-37(29期)〕→次期S-21
丹村 飛竜〔山陽 A-10(29期)〕→次期S-14
栗原 佳祐〔浜松 A-25(36期)〕→次期S-12
文/鈴木