
中央競馬の勝負服は馬主を表すが、地方競馬の勝負服は騎手固定、という話題を以前ここで取り上げました。そのかわりという訳ではないのですが、出走馬が装着するメンコのデザインには様々なものがあり、厩舎や厩務員さんのこだわりが感じられることもあります。
よくあるのは騎手の勝負服とおそろいのメンコ。みなさんに一番おなじみなのは、トニージェントが装着していた白地に赤たすきのメンコではないでしょうか。トニージェントの主戦・村上忍騎手の勝負服と同じデザインのこのメンコは、彼が出走する際にはほとんど装着していました。また、小林俊彦騎手や菊地康朗騎手らの騎乗馬も、よく勝負服デザインのメンコを使っていますね。
他にもブルーオスカーやかつてのメイセイオペラのように馬名が刺繍された専用メンコや、子供たちが喜びそうなキャラクター入りのメンコ(厩務員さんが作っているとの噂)などもみかけます。
しかし最もよく目にするのは、黒字に赤のラインが入ったメンコでしょう。あの渋いデザインは濃いめの鹿毛馬が装着するとよく似合います。このメンコは櫻田勝男厩舎所属の出走馬のうち、スズカミシルらブリンカー装着馬以外にほぼ例外なく使われています。以前、先生に「何か由来とかいわれがあるのですか?」と聞いてみたら、「揃っていた方がカッコイイんだよ」というシンプルなお返事でした。多くは語らない櫻田勝男先生ですが、実は調教や厩舎内で使う馬服にも桜の花びらに「勝」のマークを入れたオリジナルのものがあり、なかなかオシャレな厩舎なのです。そういえば所属騎手の佐々木忍騎手も、ヒョウ柄の鞍を愛用していますね。
馬の顔というものは人間の目ではなかなか区別が難しく、よほど目の肥えた人でないと、出馬表などもなくただ見ただけで馬を特定するのは困難です。メンコや、あるいはその他にも鬣(たてがみ)の編み込み、飾りなどトレードマークを持っていれば馬が判りやすく、親しみが湧いてファンになるきっかけともなるのではないでしょうか。
(文・写真/佐藤到)
馬の頭部に装着する馬具というとメンコやブリンカー、シャドーロールなど様々です。詳しい解説は「テシオ」誌上で本誌横川が書いておりますのでそちらを読んでいただくとしますが、最近目立って増えている馬具にチークピーシズとパシュファイアというのがあります。
チークピーシズは頬皮(目の後ろのあたり)にシャドーロールと同様の“ふわふわ”を巻き付け、ブリンカーと同じく後方の視界を遮るもの。もともとは、ブリンカーは装着するのに事前登録が必要なのに対して、チークなら直前に使うか使わないかを決められるということで普及したそうですが、現在はシャドーロールの申請も必要ないので、厩舎の好みによって選ばれているようです。パドックではこのチークピーシズの上にメンコをかけることもありますが、この状態を正面から見ると何ともユーモラス。顔の幅が倍になったように見えて、失礼ながら「オタフク」に思えてなりません。
一方、目全体を黒いネット状のもので覆ってしまうのがパシュファイア。視界を遮ってレースに集中させる効果を狙ったものですが、馬の表情が見えないというか、見慣れないうちはちょっと不気味な印象さえありました。
さて、岩手競馬を見ている皆さんの中には、馬具に関して最近「あれはなんだ?」と疑問に思っているものがあるのではないでしょうか。それはレストオブセールという馬の左目に装着された、プラスチック製の半球形をした物体。関係者はあれを「カップ」と呼んでおり、ブリンカーの一種と分類されるようです。(ブリンカーも「ハーフカップブリンカー」「フルカップブリンカー」という呼び方があります)
レストオブセール
彼が初めて登場した4月はまだ気温が低く、内側が白く曇っていたため「あれで見えているのか?」と思ってしまったのですが、実際は透明な材質のため視界は確保されています。千葉四美調教師にうかがったところ、レストオブセールはもともと左目に問題があり、砂はもちろん風が当たっただけでも悪影響が出るので保護のためにカップを装着しているのだそうです。ちなみに片方でも目が見えない馬は競走馬になれないのですが、レストオブセールは弱視ながらも視力は失われていないので大丈夫。少々のハンデにはなっても、自身の能力で乗り越えて欲しいですね。
また、競走馬になってから失明した場合ついては片方だけなら平地のみ出走可能なのだそうで、中央ではルーベンスメモリーという馬が走っています。「隻眼の〜」というとキャラクター的にはちょっとカッコイイ感じもありますが、日常世話をしている厩舎の方々にとっては、いろいろと気を使うことも多いのではないでしょうか。人馬共々、頑張って欲しいと思います。
(文・写真/佐藤到)
レース中、馬群の中を走る馬の写真を撮ると、馬が目をつぶった状態で写ることがよくあります。前の馬が蹴り上げる嵐のような砂の中を走っているのですから当然と言えば当然で、むしろ目を開けていられることのほうが不思議ですね。
ジョッキーの方はゴーグルや透明なプラスチック板のような対策を装備することができますが、それでもレース後の騎手を見ると口の中まで砂だらけ。つくづく大変だなぁと思いますが、馬はほぼダイレクトに砂をかぶっており、ましてあの大きくてつぶらな瞳ですからね。よく「この馬は砂かぶるのを嫌うから、先頭で逃げなければならない」などと言いますが、嫌わない馬ってよっぽど我慢強いのでしょう。
もしかしたら集団の中を走る馬はずっと目を閉じ、鞍上の手綱さばきに全てを任せて走っているのでは?(これぞ人馬の信頼関係!)とも考えて騎手や調教師の方に聞いてみたのですが、「いやーそんなことはねぇな。目ぇつぶってたらどこにぶっ飛んでくかわかんねぇよ」とのことでした。なんでもメンコがずれて視界を遮ってもパニックになるとか。
なるほど。するとかなり早いまばたきを繰り返しているのでしょうか。私のカメラはかなり高速での連写が可能な機種なのですが、続けて何コマも目つぶりになっていることも多くあります。これを見ると、目を見開いて前を確認しながらも、ときどき秒単位で長く目をつぶって飛んでくる砂に耐えているように思えます。
いずれにしても馬群の中はかなり激しいことになっていることは間違いありません。現在それを体験しているのはジョッキーだけですが、オッズパークがテスト中の「馬上カメラ中継」が実現すれば、わたしたちもその世界を味わうことができることでしょう。
ところで、最近はパシュファイヤーと呼ばれるネット状に目を覆う馬具を使う馬も増えていますね。これはブリンカーと同様レースに集中させる目的で装着するようですが、その形状のとおり砂を防ぐフィルターとしての効果も期待できます。次回は馬具のお話と写真をアップしようかと思います。
競馬に興味を持つ以前は、競馬場のようなギャンブルをする場所はおっかない所だと思っていました。ちょっとカリカリしたオジサンたちが、「バカヤロ〜!」「何やってんだ〜!」「ヘタクソ〜!」と口々に叫んでいる…そんなイメージは、ギャンブルをしない人なら誰もが持っているのではないでしょうか。
そんな罵声いわゆる“ヤジ”も、競馬場に通うようになればいつの間にか慣れてしまいました。一部のファンは「あれこそが競馬場の雰囲気。紳士的だったら逆に気持ち悪い」とさえ言いますし、やっぱり自分が少額ながらも馬券を買うようになると、叫びたくなる気持ちも良くわかります。信頼した1番人気馬が馬群に沈んだときには「なんだよぉぉぉぉっ」という気持ちになりますもんね。ただ、初心者やライトファン、特に「競馬ってどんなもんだろう?」と思って初めて足を運んだ人や、休日に子供を連れてきた家族などには、あまり良いイメージを与えないかもしれません。
ヤジにもいろいろありまして、大抵は「バカヤロー!」の類なんですが、もっと不快な言葉が聞こえてくるときもあります。私は騎手達がみな一所懸命に勝負しているのを見ていますから、「八百長」という言葉は聞きたくありません。それと、こんな厳しい状況で頑張っているジョッキーに対して「もう辞めろ!」なんて絶対言って欲しくない。逆にいままで一番笑えたのは、「おぉ〜い、オマエのせいで明日のコメ買う金ねぐなったぞ〜!」というもの。これには、ヤジられたI騎手をはじめパドックにいた騎手全員、そしてまわりの観客も笑っていました。
まぁこんな空気が和やかになるようなヤジならいいのですが、ヘタクソ呼ばわりされた騎手達はどう思っているのでしょう?当然、心中穏やかではないだろう、と私は思っていたのですが、前に陶文峰騎手と話す機会があったときにヤジの話題になったことがありました。すると彼は「一番人気でコケた後のパドックでヤジのひとつもかからないと、『あれ、僕って期待されてないのかな?』と思って寂しい」と言うのです。これにはちょっと驚きましたが、同時に私は、彼らの勝負に対しての責任感を垣間見た気がしたのでした。
(文・佐藤到)
さて来週のブログのネタは何にしようか…。先日そんなことを考えながら車で盛岡競馬場の関係者ゲートを通ろうとすると、目の前の坂道になんとノウサギが!まるで日なたぼっこでもするかのように、道の真ん中で佇んでおりました。これは私に、先週に引き続きオーロパークの自然と野生について書けという天啓か!? というわけで、今回もネイチャーネタです。興味のない人はとばしてくださいませ。
実はノウサギ君、数年前には開催日の構内に出現したこともあります。あのときは装鞍所をまさしく「脱兎のごとく」駆け抜け、あやうく走路へというところでお縄になり、職員の獣医さんの手によって山へとお帰りいただきました。幸いにして装鞍所はちょうど空いている時だったのですが、馬という動物はあの図体にして意外と臆病。実際、私は放牧中の馬がキツネに遭遇して暴れ出すのを見たことがあります。レース前の競走馬がパニックにならなくて本当に良かった。
シーズン中、何度か必ず姿を見せるのはニホンカモシカ。たいていは向正面の斜面を歩いて草を食ったり、座り込んで休憩したりしています。見晴らしのいい場所に陣取ってのんびり周囲を眺めている様は、まるで競馬を観戦しているかのよう。また、厩務員や騎手が住んでいる宿舎のすぐそばに姿を見せたこともあります。警戒心は強いものの、慌てず人間をじーっと観察するようなカモシカの行動は、まさしく「森の哲学者」と呼ばれるにふさわしいですね。
このぐらい自然の豊かさを宣伝すると、今度は熊が出るんじゃないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。確かに競馬場周囲の山は奥深い北上山地に直結していますし、岩手では毎年秋頃になると、何処どこの集落に熊が出たというニュースが聞かれます。なかには民家に侵入して冷蔵庫を開き、座り込んでリンゴを食べていた、なんていう話も実際ありましたし、オーロパークあたりならツキノワグマが競馬観戦に来てもおかしくないかも…いやいや、冗談ですよ。少なくともスタンドや観客エリアにやってくることはありませんから、オーロで美味しい空気を吸いながら競馬を楽しみたいと思った方は、安心してお越し下さいませ。
もう一つ思い出しましたが、先週は芝コースにヒバリのつがいが舞い降りていました。ヒバリは草原に草を集めてカップ状の巣を作りますが、人間が寝ころんでも気持ちいい芝の走路はまさにうってつけ。とはいえレースになれば当然、馬が地鳴りをあげて疾走しますから、そこには巣作りしないほうが…。それに急に足元から飛び立つ鳥に、馬が驚いてしまうこともあるかも知れません。この週末は毎日芝コースを使ったレースがあったので分かってくれるといいのですが、開催のない平日の間に営巣してしまわないか心配です。市街地に近いJRAの芝コースではこんなことってないんでしょうかね?何か対策をご存じの方がいましたら、教えて下さい。