競馬場で写真を撮っていると、競馬ファンの方から時々、「それだけ馬を見ていれば勝つ馬がわかるでしょ?」と言われます。ところが情けないことに、これが私には全然わからないんですよ。
確かに私は10年の間、シーズン中は毎週欠かさず競馬場で馬を見ています。しかし被写体としてファインダー越しに馬を見ているときというのはピントや構図、露出にシャッターチャンスで頭が一杯になってしまい、馬自体の気配や脚さばきなどにはあまり神経がまわっていないようです。余裕がないというか、観察力の不足なのか。う〜む、このへんがいつまでたっても写真が上手くならない理由かもしれません。もともと動物写真家を目指していた私は「体温が伝わるような写真」を目標としているのですが、理想にはまだまだ届きませんね。これからも日々精進していきたいと思います。
もっとも走る前に勝つ馬がわかるぐらいになれば、馬券で生活した方がいいかもしれませんが…
また、よく「私も馬の写真を撮ってみたいけれど、なかなか上手に撮れないのでコツを教えて下さい」という質問をいただくことがあります。私もなかなか上手に撮れなくて悩んでいるほうなので、コツを伝授するなどという大逸れたことはできないのですが、思うことを少し書きましょう。
私たちカメラマンが持ち歩いている大きくて重いカメラやレンズを見て、「いや〜さすがプロはすごいね。私のは初心者向けだけど、これでも使いこなせなくて」と言う方がおられますが、これには誤解があります。よく聞く「使いこなせない」という言葉ですが、最近のカメラはとっても多機能に進化していて、ひととおりの撮影モードや、一度も使いそうにない便利機能がたくさん内蔵されています。これらを全部覚えて「使いこなす」のは土台無理な話で、自分が撮りたい被写体に必要な設定だけを覚えればいいのです。例えば競走馬を撮るなら、全自動モードで撮影することも可能ですが、シャッタースピード優先露出や連写モード、連続追尾オートフォーカスが設定できればより有利になります。ただしカメラによって機能の有無や設定のやり方が多少違いますので、詳しいお友達やカメラを買った販売店などで質問してみて下さい。
また、私たちプロが使っている大袈裟なカメラは、どんなに厳しい撮影環境下でも確実に良い写真が撮れることを目指して設計されています。特に競馬は雨や雪、あるいはナイターという環境下で被写体が速く動きますから、条件としては厳しい部類に入ります。その中で第一に壊れにくいこと、そしてなるべく失敗しないことを追求した結果、耐久性・信頼性実現のために大きくて重くなり、また高性能なオートフォーカスや高速連写機能が備わったハイスペック機でレンズも大口径で…という具合に私たちの腕や肩、腰に負担をかけるヘヴィな道具の出来上がりという訳です。しかしそれらを除けば「夜景モード」のような便利機能がついていない分、ファミリー向けカメラよりもむしろシンプルなぐらいなんですよ。
逆に言えば、晴天で十分に明るい恵まれた条件下なら、一般的なカメラでも良い写真が撮れるかもしれないということ。もし競走馬のカッコイイ写真を自分で撮ってみたいと思ったら、結果を気にせずたくさん写してみてはいかがでしょうか。もしかしたらその中にビシッと決まった傑作が撮れているかもしれません。
具体的な設定などについては、また次の機会にでも書きたいと思います。あるいはもし盛岡や水沢で私を見かけたら、興味のあるかたは気軽に声をかけてみて下さい。
(文・佐藤到)
昨日20日の記事ので、「水沢競馬場桜並木の一般開放」についてお伝えいたしましたが、本日、岩手県競馬組合の方から期間延長のお知らせが届きました。当初予定されていた22日(土)〜24日(月)に加え、28日(金)〜30日(日)にも行うことになりました。これに伴い、体験乗馬会と焼き肉会が23日から30日に変更になっていますので、ご来場を予定の方はご注意下さい。詳しくは岩手競馬公式ホームページをご覧下さい。
急な変更ではありますが、Yahoo!天気情報によりますと岩手県地方は21日現在、県南端の一関市でようやく「咲き始め」の表示。このままの気温で推移しますと今週末の水沢ではまだ花が開かないと思われ、30日であればちょうど満開の桜の下を馬に乗って散歩できるのではないでしょうか。
ゴールデンウィーク前半に花見をお考えの方は、ぜひおいで下さいませ。
(文/佐藤到)
今回はお詫びとご連絡から。
先週木曜の私の投稿で、作家・脚本家の倉本聰氏のお名前を、誤って表記してしまいました。ご本人様及び関係者の皆様に謹んでお詫び申し上げます。
同じ投稿で「詳細未定」とお伝えした、水沢競馬場桜並木開放が4月22〜24日に正式決定しました。焼き肉セットの販売と体験乗馬会も例年通り実施されるようで楽しみです。詳しくは岩手競馬公式HPをご覧下さい。
多くの競馬ファンは「そういうものだ」と思っているのでしょうが、地方競馬からこの世界に入った私にはどうしても違和感があり、慣れるまで多少の時間を要したものがあります。それは「JRA騎手の勝負服が変わること」。
ご存じのように中央競馬では勝負服は馬主で決まっていて、騎乗のたびに違うデザインの服を着用しますよね。一方、地方の騎手は、JRA所属馬や海外で騎乗しない限りジョッキーごとに決まった服を着用し、パンフレットなどでは画像あるいは「胴黄、赤たすき、袖緑」などと言葉によって勝負服セットで紹介することも多くあります。自然と勝負服は騎手のイメージと結びついて記憶され、有名なところでは全国を股にかけて活躍を続ける内田利雄騎手が胴桃に白星という勝負服、加えてゴーグルやステッキ、さらには私物までピンクで統一し「ミスターピンク」と呼ばれていたりします。
地方競馬のジョッキーは、教養センターを卒業するまでに所属する競馬場へ勝負服のデザインを提出します。多くの新人騎手は、所属予定厩舎での研修期間中に調教師や厩務員に相談しながら考えるそうで、またこのとき競馬場によって使用できる色・柄などに制限があるため3通りぐらいの候補を出すのだそうです。こうして、例えば山本聡哉騎手は研修で岩手に来ていたときに見た、マーキュリーカップを勝ったミラクルオペラの騎乗服を参考に(バーレーンの国旗ではないそうです)、皆川麻由美騎手は、師匠・千田知幸調教師が騎手時代に着た勝負服の柄を女性らしいピンクにアレンジして、とそれぞれ思案の末決定しています。
私個人の感想としては、これに関しては地方のほうがいいなぁと思っています。レースで同じ服の人がいないので遠目にも位置取りがわかりやすいし、やはり菅原勲騎手はクールな青、陶文峰騎手は心のふるさと中国を表す赤に黄星といった具合にファンがイメージしやすく親しみがわきます。これはもう勝負服がジョッキーの『顔の一部』と言っていいのではないでしょうか。
一方、馬主を示す中央の勝負服には馬の冠名がわかるというメリットがありますし、上位のジョッキーはテレビや新聞雑誌で素顔を露出する機会が多くキャラクターが良く知られていますから、あちらはそれでいいのかもしれませんね。
(文・写真/佐藤到)
JRA桜花賞が終わりました。優勝は…という話はここではしません。しかし毎年のことながらこの時期、阪神の桜はキレイですね。聞けば東京ではもう桜は散り始めているとか。
こちら北国・岩手では、桜の花はまだ固いつぼみの中で外の様子をうかがっています。それでもだいぶつぼみはふくらんでおり、ここ数日の寒の戻りがやわらげば、季節は一気に歩みを早めるのではないでしょうか。
桜といえば、実は水沢競馬場は隠れた桜の名所となっています。桜があるのはコースを挟んでスタンドの反対側。北上川堤防との間に2列、一部は3列になって、約150本のソメイヨシノが向正面いっぱいに続いています。
走路とは少し離れていますので、桜舞い散る中をサラブレッドが疾走、というわけにはいかないのですが、それでも内馬場にある公園から観戦すると、いっぱいに咲き誇る桜を背景に馬群が駆け抜けるというアングルを楽しむことができます。
ここが桜の名所として観光案内されないのは、通常この場所が立ち入り禁止になっているから。競馬場の敷地内であり、ましてレース時には人がいれば馬が驚いてしまうことも考えられるので当然なのですが、他の県内お花見スポットにも見劣りしないほど圧巻の桜並木が遠くからしか眺められないのはもったいない。
そこで岩手県競馬組合も粋な計らいをしまして、一昨年からは期間限定で桜並木の開放を行っています。もちろん傍らでは競走馬たちが真剣勝負を繰り広げていますのでカラオケや酒宴はご遠慮願っていますが、そのかわり県馬術連盟や愛馬の会などが中心となって乗馬体験や馬車運行などが催され、市民の穴場的お花見スポットとなっています。(※)
ところで、関東以南のみなさまは桜というとどんなイメージでしょうか。全国的には、年度変わりの出会いや別れの時期に結びついた印象が多いようですね。実際、TVCMでも桜の木の下に新1年生というのを毎年流しますし、歌の世界でもそうです。
しかしここ岩手では、桜といえば4月末。しかも何年かに一度は決まって「咲いた桜の花に雪が積もる」というシーンを鑑賞することが出来ます。小さな島国と言われる日本ですが、本当に多様な気候がみられるものですね。
そういえば北海道に暮らす作家・倉本聰氏の著作の中で、「例えば南海上から日本へ接近する台風をテレビは克明に伝える。しかし台風が東京を過ぎるとテレビは突然明るさを取り戻し、こっち(北海道)を直撃しつつあっても『台風は北へ去りました』などと云う。台風が来るたびに、いつも疎外された気分を味わう」という一文を読んだことがあります。確かに現代はテレビだけでなく、いろんなことが東京中心に動いています。しかし少なくとも私たち“地方”競馬のファンは、中央以外に目を向けている人間のはず。インターネットによって中央と地方の距離が縮まっている時代でもありますし、地方の良さ、ローカルの力を主張していきましょう。
※本年度の水沢競馬場桜並木開放については、この原稿を書いている段階では詳細が決定していません。ご来場の際は岩手県競馬組合の発表をご確認下さい。
(文/テシオ・佐藤到)
みなさんはじめまして。テシオのよこてんこと、横川です。前回は当誌の編集長が自己紹介をしまして、今回は私の番ということになりました。
さて、私は生まれも育ちも盛岡で・・・と言いたい所なんですが、実は生まれは南国・高知。その後福島・京都と移り住んで、そして現在、みちのく岩手は盛岡で暮らしています。
よく「なんで高知生まれなのに盛岡で競馬の仕事をしてるんですか?」と聞かれるんですけど、その時に高知で生まれて福島、京都と・・・という話をすると、相手が競馬好きな方ならたいてい「ああ!」と納得して下さいます。そう。みんな競馬場のある街なんですよね。
ギャンブルと名のつくものにはいろいろ手を出してみるけれど、結局、競馬が一番好きなのは、やっぱり生まれた時から『競馬場のある街』の空気の中で暮らしてきたせいなのかもしれません。
え、本当の理由はって?それはまあ、秘密という事にしておきましょう。
自分が初めて競馬場に足を踏み入れた日の事、今でもはっきりと覚えています。
最寄り駅から競馬場まで歩いていく間からもう興奮しっぱなし。競馬場の建物が見えたと言えば騒ぎ、パドックだスタンドだと、右を向いては「へぇ〜」左を向いては「へぇ〜」、もう見るものが何もかも珍しいという状態でした。
でも、不思議な事に、その時競馬場で初めて見た生のパドック・生のレースの様子もなんだかはっきり覚えてるんですよね。
その時の私は、素人なりにパドックで「いい!」と思った馬を1頭選び、そこから1番人気以外の人気上位馬に(ああ、昔から穴党なんだこれが・・・最初から道を誤っている)流すという作戦を採りました。
しかし、レースでは当たり前のように1番人気が勝ち、私が狙った馬は10着。勝ち馬はその後オープンまで行った馬ですから、本当は逆らっちゃいけない馬でしたね。
でもまあ、私が買った馬は結局一頭も掲示板に残れないという惨敗でしたけど、それから10何年も経った今でも、そのレースの事は鮮やかに思い出します。こうして書いているだけでも、パドックを周回する私の狙い馬、そのひづめの音が耳に鮮やかに甦ってきます。初めての生のレースは、それだけ私に大きな刺激を残してくれたわけです。
今こうしてオッズパークという新しい舞台に立つと、初めて競馬をした日の新鮮な気分を思い出します。この記事を読んでいただいているみなさんにも同じように、新鮮なドキドキ・ワクワクを感じていただいて、そしてもし、初めてオッズパークにやってきた日がみなさんの忘れられない日になったなら・・・。そんなお手伝いができるよう、がんばります。よろしくお願いします。