いや〜、暑くなってきました。夏ですね。
とはいえ、みちのく岩手の梅雨明けはまだまだ先ですが、とりあえずは夏。です。
よく「東北は雪が多くて大変。よくあんなところに住むね」という“都会人”の方がいますよね。でもその分、夏は体温を超えるほど暑くなる事もないし、南の方は南の方で毎年どこかで台風の被害があったりなんかして、私としては全国どこでも良いところもあれば悪いところもある、結局は同じだなあと思うのですが。
<<九州沖縄方面の大雨被害にあわれた方々には、心よりお見舞い申し上げます>>
というわけで夏本番の皮切りに、来週は盛岡競馬場でマーキュリーカップがあります。このレースは岩手で4つある統一グレードレースの第1弾。過去にはあのメイセイオペラが中央・他地区からの遠征馬をぶっちぎって優勝し、全国制覇へ名乗りをあげたレースでもあります。しかし、その98年以外の8回はすべてJRA馬に勝ちをさらわれており、岩手贔屓、地方贔屓の私としてはちと面白くない結果でもあるのです。
今年も中央勢は強力なグレードホースを揃えてきていますが、なんとか地方馬にも頑張って欲しいですね。
それから開催場が第4回を境に、水沢から盛岡に移っているのもマーキュリーカップの歴史上、見逃せない点。確かにコース幅が広くコーナーは緩く、スタート後とゴール前に長い直線があるオーロは、出走各馬の本当の力が問われるという点で統一グレードの舞台としてふさわしいもの。(詳しくは岩手競馬HPスペシャルサイトへどうぞ)しかし、「ひとつぐらいは水沢に」との声があるのもわかります。ここからダイレクトに繋がるGI、GIIの上位レースもありませんし、ここはいかにも地方らしい水沢競馬場を舞台にして、地方色いっぱいにレースの雰囲気をプロデュースするというのも楽しいかもしれません。
テシオブログ木曜日は、知ってる人は知っている、知らない人にもどうでもいいかもしれない、佐藤到の担当曜日です。
先週はMr.Pink内田利雄騎手のヘルメットの、“身”の部分に描かれたイラストをご紹介しましたが、では“ガワ”である枠色の部分はどうなっているのでしょう?
実は私、競馬を始めたときは各色のヘルメットが用意されていると思っていたのですが、“身”部分は共通で各騎手の自前です。これは頭部保護のためにウレタン(?)が充填された非常に軽量な品物で、持ち上げてみると思った以上に軽く、ちょっと驚くほどです。ジョッキーたちは他人のと間違えないようこれに名前を入れていて、フルネームをきちんと書き込んでいる人もいれば略称・愛称を入れている方もいます。なんとなく面白かったのは、前面中央に縦書きで「TO」と書かれたメット。これは陶文峰騎手の所有物でした。
そして赤や青やピンクという各枠の色は、ヘルメットに被せるカバーで表しています。このカバーは競馬場側が用意するもので、当然8つの色があり、さらに各色大・小のサイズが揃っています。材質は薄いナイロン製で、私などはこれがヘルメットから外されクシャッとなっている姿を見ると、小学校時代の「プールキャップ」を思い出してしまうんですよ。
騎手達はレース前に各自のヘルメットに枠色のカバーを被せ、付属のヒモを固く縛ってしっかりと固定します。写真で結び目がわかるでしょうか? そしてレース後は検量所ですぐに外され、競馬場従業員のオバチャンが回収して洗濯へとまわされるようになっています。
ヘルメットに限らず、レースを終えた人馬は逃げ馬でない限り全身泥々(ダート競馬では砂々?)で、レースの後にはヘルメットやステッキ、ブーツなど、自前の用具を騎手達がお手入れしている姿が見られます。大事な商売道具だけあって、どの騎手もなかなか丁寧。私はときどき「カメラの扱いが荒い」と言われますが、商売道具はもっと大切にしないといけませんね。
(文・写真/佐藤到)
既に色々なところで報道されていますし、近日発売になるテシオ最新号でもカラーの特集ページが組まれていますが、やっぱり私も取り上げたいので…。
先週24日、元宇都宮競馬所属の3000勝ジョッキー、内田利雄騎手の岩手騎乗が今年も始まりました。思えば昨年のちょうど同じ時期、地方競馬初のフリージョッキーを目指し活動を始めた内田騎手が、その第一歩を踏み出したのがここ岩手での短期所属という形。それは交渉や手続き上の問題など様々あった結果なのでしょうが、初めに岩手に来てくれて、また岩手が最初に受け入れたということを、岩手のファンも関係者も非常に喜ばしく思ったものです。
さて7レースのパドックに姿を現した内田騎手。かの有名な『100万ドルの流し目』は健在でした。「おーい、今年も頼むぞー」の声が飛び暖かい雰囲気で迎えたパドックのファンらに向かって、にこやかな目線でぐるりと一回り。カメラが向けられた場所には特に重点的に視線を注ぎます。これはファンばかりでなく、私たちプロカメラマンにも向けてくれるんですね。それも日本一と言われるファンサービス精神の一環。内田さん曰く、「あんまりたくさんカメラがあると、どこを見ていいか分からなくて困っちゃうんですよ」なのだそうですが、カメラマンにとって非常に有り難い方であります。
これもご存知の方はご存知だと思いますが、内田騎手愛用のヘルメット(枠色のカバーを被せる下の、メット本体の部分)には、「ミスターピンク」のイラストが描かれています。これは内田騎手のファンで、イラストレーターをなさっている方が描いてくれたそうですが、今年はこれがひとつ増えていました。本年バージョンは派手な虹色の部分がカバーの下からちらっと見えているので、パドックで「おや、あれは何?」と思った方もいるのではないでしょうか。
内田利雄騎手は先週の3日間だけで既に3勝もあげてしまいました。炸裂するベテランの技に、岩手の騎手らも意地を見せようと発奮しているのがそのレースぶりから窺えます。どんなスポーツでもそうですが、外からの刺激があると試合が面白くなり、またプレイヤーもひとつ成長するきっかけになるのではないでしょうか。内田騎手はこうして全国の競馬場を巡りながら、地方競馬全体の充実に貢献しているということになりますね。まだ所属の叶っていない北海道や九州などの地区でも、早く騎乗できれば良いと思います。
ただ個人的には、毎年1度か2度は岩手に来て欲しいというのが本音ですが。
(文・写真/佐藤到)
中央競馬の勝負服は馬主を表すが、地方競馬の勝負服は騎手固定、という話題を以前ここで取り上げました。そのかわりという訳ではないのですが、出走馬が装着するメンコのデザインには様々なものがあり、厩舎や厩務員さんのこだわりが感じられることもあります。
よくあるのは騎手の勝負服とおそろいのメンコ。みなさんに一番おなじみなのは、トニージェントが装着していた白地に赤たすきのメンコではないでしょうか。トニージェントの主戦・村上忍騎手の勝負服と同じデザインのこのメンコは、彼が出走する際にはほとんど装着していました。また、小林俊彦騎手や菊地康朗騎手らの騎乗馬も、よく勝負服デザインのメンコを使っていますね。
他にもブルーオスカーやかつてのメイセイオペラのように馬名が刺繍された専用メンコや、子供たちが喜びそうなキャラクター入りのメンコ(厩務員さんが作っているとの噂)などもみかけます。
しかし最もよく目にするのは、黒字に赤のラインが入ったメンコでしょう。あの渋いデザインは濃いめの鹿毛馬が装着するとよく似合います。このメンコは櫻田勝男厩舎所属の出走馬のうち、スズカミシルらブリンカー装着馬以外にほぼ例外なく使われています。以前、先生に「何か由来とかいわれがあるのですか?」と聞いてみたら、「揃っていた方がカッコイイんだよ」というシンプルなお返事でした。多くは語らない櫻田勝男先生ですが、実は調教や厩舎内で使う馬服にも桜の花びらに「勝」のマークを入れたオリジナルのものがあり、なかなかオシャレな厩舎なのです。そういえば所属騎手の佐々木忍騎手も、ヒョウ柄の鞍を愛用していますね。
馬の顔というものは人間の目ではなかなか区別が難しく、よほど目の肥えた人でないと、出馬表などもなくただ見ただけで馬を特定するのは困難です。メンコや、あるいはその他にも鬣(たてがみ)の編み込み、飾りなどトレードマークを持っていれば馬が判りやすく、親しみが湧いてファンになるきっかけともなるのではないでしょうか。
(文・写真/佐藤到)
馬の頭部に装着する馬具というとメンコやブリンカー、シャドーロールなど様々です。詳しい解説は「テシオ」誌上で本誌横川が書いておりますのでそちらを読んでいただくとしますが、最近目立って増えている馬具にチークピーシズとパシュファイアというのがあります。
チークピーシズは頬皮(目の後ろのあたり)にシャドーロールと同様の“ふわふわ”を巻き付け、ブリンカーと同じく後方の視界を遮るもの。もともとは、ブリンカーは装着するのに事前登録が必要なのに対して、チークなら直前に使うか使わないかを決められるということで普及したそうですが、現在はシャドーロールの申請も必要ないので、厩舎の好みによって選ばれているようです。パドックではこのチークピーシズの上にメンコをかけることもありますが、この状態を正面から見ると何ともユーモラス。顔の幅が倍になったように見えて、失礼ながら「オタフク」に思えてなりません。
一方、目全体を黒いネット状のもので覆ってしまうのがパシュファイア。視界を遮ってレースに集中させる効果を狙ったものですが、馬の表情が見えないというか、見慣れないうちはちょっと不気味な印象さえありました。
さて、岩手競馬を見ている皆さんの中には、馬具に関して最近「あれはなんだ?」と疑問に思っているものがあるのではないでしょうか。それはレストオブセールという馬の左目に装着された、プラスチック製の半球形をした物体。関係者はあれを「カップ」と呼んでおり、ブリンカーの一種と分類されるようです。(ブリンカーも「ハーフカップブリンカー」「フルカップブリンカー」という呼び方があります)
レストオブセール
彼が初めて登場した4月はまだ気温が低く、内側が白く曇っていたため「あれで見えているのか?」と思ってしまったのですが、実際は透明な材質のため視界は確保されています。千葉四美調教師にうかがったところ、レストオブセールはもともと左目に問題があり、砂はもちろん風が当たっただけでも悪影響が出るので保護のためにカップを装着しているのだそうです。ちなみに片方でも目が見えない馬は競走馬になれないのですが、レストオブセールは弱視ながらも視力は失われていないので大丈夫。少々のハンデにはなっても、自身の能力で乗り越えて欲しいですね。
また、競走馬になってから失明した場合ついては片方だけなら平地のみ出走可能なのだそうで、中央ではルーベンスメモリーという馬が走っています。「隻眼の〜」というとキャラクター的にはちょっとカッコイイ感じもありますが、日常世話をしている厩舎の方々にとっては、いろいろと気を使うことも多いのではないでしょうか。人馬共々、頑張って欲しいと思います。
(文・写真/佐藤到)