馬の頭部に装着する馬具というとメンコやブリンカー、シャドーロールなど様々です。詳しい解説は「テシオ」誌上で本誌横川が書いておりますのでそちらを読んでいただくとしますが、最近目立って増えている馬具にチークピーシズとパシュファイアというのがあります。
チークピーシズは頬皮(目の後ろのあたり)にシャドーロールと同様の“ふわふわ”を巻き付け、ブリンカーと同じく後方の視界を遮るもの。もともとは、ブリンカーは装着するのに事前登録が必要なのに対して、チークなら直前に使うか使わないかを決められるということで普及したそうですが、現在はシャドーロールの申請も必要ないので、厩舎の好みによって選ばれているようです。パドックではこのチークピーシズの上にメンコをかけることもありますが、この状態を正面から見ると何ともユーモラス。顔の幅が倍になったように見えて、失礼ながら「オタフク」に思えてなりません。
一方、目全体を黒いネット状のもので覆ってしまうのがパシュファイア。視界を遮ってレースに集中させる効果を狙ったものですが、馬の表情が見えないというか、見慣れないうちはちょっと不気味な印象さえありました。
さて、岩手競馬を見ている皆さんの中には、馬具に関して最近「あれはなんだ?」と疑問に思っているものがあるのではないでしょうか。それはレストオブセールという馬の左目に装着された、プラスチック製の半球形をした物体。関係者はあれを「カップ」と呼んでおり、ブリンカーの一種と分類されるようです。(ブリンカーも「ハーフカップブリンカー」「フルカップブリンカー」という呼び方があります)
レストオブセール
彼が初めて登場した4月はまだ気温が低く、内側が白く曇っていたため「あれで見えているのか?」と思ってしまったのですが、実際は透明な材質のため視界は確保されています。千葉四美調教師にうかがったところ、レストオブセールはもともと左目に問題があり、砂はもちろん風が当たっただけでも悪影響が出るので保護のためにカップを装着しているのだそうです。ちなみに片方でも目が見えない馬は競走馬になれないのですが、レストオブセールは弱視ながらも視力は失われていないので大丈夫。少々のハンデにはなっても、自身の能力で乗り越えて欲しいですね。
また、競走馬になってから失明した場合ついては片方だけなら平地のみ出走可能なのだそうで、中央ではルーベンスメモリーという馬が走っています。「隻眼の〜」というとキャラクター的にはちょっとカッコイイ感じもありますが、日常世話をしている厩舎の方々にとっては、いろいろと気を使うことも多いのではないでしょうか。人馬共々、頑張って欲しいと思います。
(文・写真/佐藤到)