12月31日 第32回桐花賞(3歳以上オープン 水沢2000m)
(写真・佐藤到)
1着 オウシュウクラウン
枠差を考えれば逃げの手もあっただろうが、ニッショウウララがやや出遅れながらも絶対に逃げる構えを見せたので中団5番手に控える。1周目スタンド前で行きたがる仕草を見せたが、小林騎手が砂を被らせて折り合いをつけるのに専念。それでうまく折り合いがつき、3コーナーから満を持してスパート。
4コーナーを回る時にはすでに3コーナーで先頭に立ったテンショウボスを射程圏に入れ、ラスト100mで交わす。その後、ちょっととぼけるシーンもあったが、外ゲイリーエクシードが接近すると、そこからまたひと伸び。ゲイリーエクシードとの差は3/4馬身だったが、まだ余裕十分。着差以上に強い内容で完勝し、前回・白嶺賞2着の雪辱を晴らすとともに、世代交代を高らかに宣言した。
「久々の2000mで馬が行きたがったりしたし、自分から動いていった分ペースが上がって、最後に差し馬が迫ってくるのは仕方がないと思っていた。でも、直線で抜けだした時、後ろから馬が来たらまた反応して伸びて、きっちり勝ってくれて嬉しかったです。自分もこれが桐花賞初勝利。勝ててホッとしています」と小林騎手。
この結果を見て陣営は次走にG?・川崎記念を視界に入れた。もちろん万全の態勢が条件だが、順調に攻め馬を消化できれば遠征する可能性が高くなった。
2着 ゲイリーエクシード
「スローになるだろうからと、いつものこの馬の位置取りにはこだわらず前に行った」(沢田騎手)の言葉どおり、前々の競馬に心がけて4コーナーではオウシュウクラウンの後ろにつける。翌日には10歳となる高齢馬だが、今季14戦6勝2着7回3着1回と抜群の安定感。「この年でこれだけ走ってくれたんだからたいした馬だね」と沢田騎手が語っていたが、毎回の好走にはただただ頭が下がるばかりだ。
3着 チュードサンデー
ゲイリーエクシードの前のポジションを取ったが、勝負どころで置かれ気味。これまでならそこで終わってしまうのだが、今回は再度、大外から鋭く伸びて3着。当日はメンバーが大幅に強化され最低の10番人気だったが、それを見事に覆し、3連単78,940円の高配当を演出した。
4着 テンショウボス
終始3番手外につけ、3コーナーでサイレントエクセルの手応えが怪しくなったのを見て一気に先頭。一発勝負に出たが、先に仕掛けた分、最後の伸びを欠いた。それでも見せ場十分で0・2秒差の僅差なら評価は高い。
7着 サイレントエクセル
絶好の2番手をキープし、いつでも抜け出せる体勢かに見えたが、3コーナーで脚色が怪しくなり、直線に入ると馬群に飲み込まれる。「中間の気配は悪いと思わなかったが、芽に見えない部分で遠征(船橋・クイーン賞)の反動があったかも。それと元々、動きが硬いタイプなので寒い時期も合わなかったのかな」と板垣騎手が語っていたように、改めて遠征の難しさを垣間見せた。
1月2日 金杯(2歳 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 セイントセーリング
「前回(寒菊賞)で大事に乗りすぎたので今回は思い切ったレースをしようと考えた」(菅原勲騎手)。戦前は外枠(10番)でもカネショウエリートが逃げるだろうが、大方の味方だった。それを覆して意表をつく逃げの手に出て、道中の手応えも抜群。直線に入ってもスピードは衰えず、パラダイスフラワーの追撃を完封し、大金星をあげた。
寒菊賞では貯める競馬に徹し、直線勝負に賭けたが、伸び案外。菅原勲騎手はイメージしたシャープさがなかったようで、それで今回、逃げの戦法を取った。これまでタイトルは芝特別・黄菊賞の1つにとどまり、消化不良のレースを繰り返していたが、今までのうっ憤を一気に晴らした。馬も頑張ったが、それ以上に菅原勲騎手の好プレーが光った一戦だった。
2着 パラダイスフラワー
全日本2歳優駿で見せ場なく9着に敗れたが、地元ダートでは敵なし。圧倒的な1番人気に支持され、絶好の3番手外をキープ。ほぼ負ける要素が見られず3コーナーで早めにスパートをかけたが、いつもの爆発力が見られず半馬身差の2着。
こちらもサイレントエクセルと同様、遠征の反動が大きかったようで改めてアウェーでの戦いの過酷さを見せつけられてしまった。今後は冬期休養に入り、自厩舎で来シーズンへの英気を養うという。
3着 アンダーボナンザ
馬がラチにぶつかるのを覚悟の上で後方8番手の最内を走り、3コーナーからエンジン全開。ところが仕掛けたあとに前がふさがる不利があり、そのロスが大きかった。それでも持ち直して直線大外を強襲し、鋭く伸びたものの3着に終わった。
相変わらず気性面に課題を残しているが、素質は間違いなく一級品。この冬で精神的にどこまで成長できるかにかかっている。
重賞「第32回早池峰賞」(水沢1400m オープン)
(写真・佐藤到)
1着 ヤマニンエグザルト
ハタノアドニスが果敢に逃げ、前半36秒台のハイペースを形成。前回同様、じっくり控える戦法を取ったが、「駒ケ岳賞(中団6、7番手を追走)とは違って反応が良かった」(板垣騎手)ため、向正面では早々と4番手インにつける。3コーナーでハタノアドニスが一杯となり、替わってオリエントボスが先頭。それを見てスパートをかけ、直線は最内コースを選び、オリエントボスが渋太く粘るところ、ラスト50mで交わして快勝。トライアル・駒ケ岳賞を含め3連勝を飾るとともに、待望の重賞タイトルを手に入れた。
「水沢は動きがひと息と聞いていたが、自分が乗るとこっち(水沢)の方がずっといい。ただ前回は追い出してからの反応が凄かったが、今回はちょっと物足りなかった。それでもしっかり勝ってくれましたから、この距離が合うんでしょうね」と板垣騎手。
昨シーズン(今年3月まで)は最下級C3スタートから13勝を荒稼ぎ。一気にオープンまで出世したが、今季は頭打ちのレースを繰り返し、駒ケ岳賞以前は平場戦の4勝のみに止まり、上限が見えたかに思えた。ところが駒ケ岳賞を強いレースで勝ち、続いて今回も連勝。おそらく1400mの距離も合ったと思うが、加えて父プレザントタップといえばタップダンスシチーが有名だが、その馬と同様、ここにきてさらにパワーアップしたと解釈したほうが適切。そう断言できるほど、ここ2戦の内容が際立っていた。
次走は適距離、守備範囲であるトウケイニセイ記念(水沢1600m)を使いたいと伊藤和調教師。
2着 オリエントボス
ハタノアドニスの逃げを見て2番手外を追走。ハイラップを刻んでいたが、楽に追走して3コーナーで先頭。その後も脚色は衰えなかったが、最後の最後でプラス8キロ(512キロ)がこたえて2着に敗れた。
理想は500キロを割る馬体重なのだが、想定外の512キロ。見た目にも腹回りが太く、ちょっと苦戦を強いられそうだと思ったが、何と渋太いこと。栗駒賞レコード勝ちでもそうだったが、この水沢1400m。そして速い時計勝負の馬場適性は抜群。できれば前に行く馬がもう少し粘っていれば、違った結果になったかもしれない。それほど内容的には文句なしだった。
3着 ダンディキング
1400mでは思ったほどスタートダッシュがきかず、1周目スタンド前はハタノアドニス、オリエントボスの間にはさまれてちょっと窮屈になったが、馬群がばらけた1コーナーでうまく3番手外に持ち出す。3コーナーでオリエントボスが動いたのと同時にスパートをかけたが、最後は伸び切れず3着に終わった。しかし控える競馬でも我慢できてこと、また初の一線級相手に上位入線を果たし、これで今後の見通しが非常に明るくなった。
12月10日 第5回寒菊賞(2歳オープン 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 カネショウエリート
逃げたい馬が絶好の1枠を引き当てる。スタート直後はハナ争いが若干激しくなったが、枠差もあって予想どおり先手を取り、あとはマイペースに持ち込む。向正面では後続を2馬身ほど引き離し、セーフティリードから直線を向いても余力十分。後続の有力馬がもたついているのを尻目に、まんまと逃げ切り勝ちを決め、自身の初特別制覇となった。また現在、韓国で第二の種牡馬生活に入った父メイセイオペラにもうれしい特別タイトルをプレゼントした。
「行けたら行こうと思っていた。1〜2コーナーでハミを抜くことができたので、いい感じでレースが運べたし、最後まで気を抜かないで走ってくれた」(関本淳騎手)
カネショウエリートの初勝利は盛岡芝1000m戦で、続いて黄菊賞でもセイントセーリングの2着とメイセイオペラ産駒では珍しく芝適性ぶりを発揮。ダートでは前回2着(1着ダンストンリアル)も含めて水沢で2度連対していたが、いずれも完敗。
今回はダート実績が薄いため5番人気と低評価だったが、それを見事に覆した。「芝と融雪剤をまいている今の泥んこ馬場が合ったかも」と畠山調教師がレース後に語っていたが、これは過去の傾向にも出ており、今後も冬期間の水沢コースでは、芝適性馬に注目の価値がありそうだ。
2着 マツリダワルツ
前走・白菊賞(2歳牝馬重賞)と同様、後方でじっくり待機する戦法を取る。セイントセーリングが先に動いてからワンテンポ遅れてスパートし、直線で2番手まで進出したダンストンリアルが粘るところ、ゴール寸前で交わした。白菊賞でも9番人気ながら3着に食い込み、そして今回は2着。400キロそこそこの小柄な牝馬で、パドックでは冬毛も目について軽視してしまったが、2戦連続の好走には正直ビックリした。
この馬も初勝利が盛岡芝1000m戦で、59秒5の好タイムをマークしており、カネショウエリートと同じく今の水沢の馬場が合ったのかもしれない。
3着 ダンストンリアル
前回、2歳A2戦で初白星を飾って挑戦。カネショウエリートの2馬身後ろにクールビズ、そこから2馬身離れた3番手外をキープし、内のクールビズを捕らえたのもつかの間、マツリダワルツの強襲に遭う。
なかなか勝てなかったが、デビューから堅実に入着。一戦ごとにレース勘を身につけていたのは明らかで、今回の好走にもつながった。
4着 アンダーボナンザ
レース展望でも報告したが、道中真っ直ぐ走らないため「コーナーでは危ないので内に突っ込むことができなかった。直線に入るまでどうしても加減して走らなければならないので、今回のような流れになると苦しい」の沢田騎手コメントがすべてを物語っていた。
5着 クールビズ
レース後の村松騎手コメントは「前回(白菊賞)からマイナス13キロの体重減が影響した」だったが、小生の見た印象では、むしろ体重が絞れた今回の状態のほうがいいと判断したのだが…。
6着 セイントセーリング
前半は中団8番手をキープし、先行競馬と見るや向正面から早めにスパート。3コーナーで見せた伸び、反応も鋭かったのだが、直線では案外だった。ダートが合わないのか、それともこのままで終わってしまうのか。デビュー戦でパラダイスフラワーをアッサリ切って捨てたほどの実力馬だけに、今後の巻き返しに期待したい。
12月3日 第16回白嶺賞(水沢1600m オープン)
(写真・佐藤到)
1着 ニッショウウララ
好ダッシュを決め、枠差も利して果敢に先行。前半36秒前後のハイペースを形成したが、直線を向いても余力十分。「1300mのゲートあたりで後ろから来る馬がいなかったので、これは勝ったかな」と村松騎手。その言葉どおり、4コーナーでオウシュウクラウンがジワジワ差を詰めたが、ラスト100m地点から脚色がいっしょになったのを尻目に、まんまとゴール。この強力メンバーを相手に大金星をあげた。
今シーズン、7歳を迎えたが、ズブさが逆にプラスに作用。控える競馬もできるようになって、このレースに臨むまで3勝をマークしていた。
デビュー戦で水沢850mのレコード(51秒1:当時)を叩きだし一躍注目の的となったが、気性難が災いして好、凡走の落差が激しかった。それでも04年からずっとオープンで走り続け、平場戦を中心に白星を稼いでいた。
それが今季、G?・クラスターカップ7着、青藍賞8着以外はすべて電光掲示板に載る堅実派に変身。前回、あまり得手かからない水沢戦を快勝して弾みがついたことも好走要因かもしれない。とは言え、いきなりこのメンバーを相手に勝ったのにはビックリ。
「ずっと良馬場でも結果を出していたが、ベストは今日のような水が浮かぶ不良馬場。それも味方したと思うが、まさかオウシュウクラウン相手に勝てるとは思わなかった」と村松騎手はレース後に語っていたが、それがすべてを物語っていたと言えるだろう。
2着 オウシュウクラウン
前走・阿久利黒賞(11月19日)からレース間隔がなかったので、中間は追い切りを控えた調整。加えてこの1週間で急激に冷え込んだ影響も少なからずあったようで前走比プラス9キロの502キロで出走。これはダービーグランプリ明けの古馬A1級戦と同じ馬体中で、この時も「体が重かった」と小林騎手がコメントしていた。
ニッショウウララが快調に飛ばしていたのを見て、3コーナー手前から早めにスパート。その時の行き脚はいつもどおりだったが、あとの伸びがひと息。ニッショウウララもラスト200mは13秒8と脚が上がっていたが、それも捕らえきれずに2着。とすれば敗因は太め残りに尽きることになりそうだ。
気になる次走だが、今年はアクシデントもあったので無理をさせたくないと東京大賞典は自重。地元のファン投票・桐花賞(12月31日 水沢2000m)へ駒を進める、と櫻田浩三調教師。
3着 ミサキノハンター
北上川大賞典(11月5日)3着から直行は当初の予定どおり。仕上がりも万全で、しかも最も真価を発揮できる水沢マイルという条件もあって、オウシュウクラウンとの馬複が2倍台の一本かぶり。過去実績ではエアウィードの方が上回っていたが、最終的に単勝2番人気もミサキノハンターとなった。
ニッショウウララが果敢に逃げたので2番手に控える。これは想定内だったが、3コーナーでオウシュウクラウンに外から被せられて手応えが怪しくなる。それでも3着に入線したが、2着オウシュウクラウンから4馬身差と完敗。これも混戦といわれた岩手古馬オープンを象徴する結果となってしまった。
6着 エアウィード
道中は6番手インにつけ、3コーナーからスパートをかけたが、本来のシャープさがまったく見られず。パドックでも馬体の張り、気合いも不足も目につき夏以降のスランプを引きずっている印象。
11月26日 第32回白菊賞(2歳牝馬オープン 水沢1400m)
(写真・佐藤到)
1着 オーナーズスキャン
スタートがすばらしくスタンド前で一旦先頭に立ったが、内からマツリダレディが何が何でもハナを譲らない構えを見せたので2番手に控える。
道中は淀みのない流れで進み、3コーナーでマツリダレディを交わしてあとはセーフティリードを取り、直線でクールビズが外から追い込んできたが、その差は詰まらずそのままゴールへ。
デビュー5戦目、水沢1300m戦で初勝利をマークしたが、その後の4戦を凡走。これはメンバー強化というより盛岡コースが合わなかったためで前走、地元水沢に戻って2勝目でもそれを裏付けた。
「先行できれば勝負に持ち込めると思って臨んだ。元々、動きのいい馬だったのでひそかに期待していたが、結果を出せてよかった。これからもっと成長していくと思う」と菅原勲騎手。
2着 クールビズ
プリンセスカップ(10月28日 盛岡)から直行し、レース間隔が開いたのと輸送のない地元での競馬の影響か前走比プラス14キロ。デビュー戦が470キロだったので、この位がいいのかも知れないが、個人的には太めの印象。
「我慢していくつもりだった」(村松騎手)のコメントどおり3番手外につけ、オーナーズスキャンをマークする形で道中を進め、3コーナー過ぎからスパートをかけたが、伸び切れず2着。
デビュー戦の派手なレース内容が印象強く、それ以降はひと息のレース続き。今回はプリンセスカップに比べ、大幅に相手が甘くなって断然の1番人気に支持されたが、もうひと絞りが欲しかったのでは…。
3着 マツリダワルツ
前半はじっくり貯める競馬に徹して直線で鋭く伸びてきたが、1、2着は前にいた組。地力で抜け出せるまでの脚はなかった。それでも今回の3着は今後に明るい見通しが立ったかも。