5月6日 第33回シアンモア記念(3歳以上オープン・地方競馬全国交流 水沢1600m)
(シアンモア記念ゴール 写真・佐藤到)
1着 ニューベリー
1枠から好ダッシュを決めて逃げの手に出る。戦前はダンディキングが逃げるかと見られていたが、菅原勲騎手は当初からこの戦法を取るつもりでいたようだ。
というのはトライアル・栗駒賞でも1番人気に支持され、絶好の3番手をキープ。前の馬を射程圏に入れて、どこからでも抜け出せるポジションにつけたつもりだったが、いざ3コーナーで追い出しをかけてもまったく反応せず、ただもたつくばかり。
ひとまず直線で若干盛り返して4着にまとめたが、転入初戦でクビ差2着まで肉薄した末脚をイメージしていた菅原勲騎手にしてみれば案外の結果となっていた。
そういう訳で逃げの戦法を取った。また仮に他の馬が来ても「ハナを譲るつもりはなかった」とコメントした。
1周目スタンド前でペースが落ち着き、ニューベリーはハロン12秒台後半の正確なラップを刻み、4コーナーでゲイリーエクシードが並びかけるシーンもあったが、再びニューベリーが突き放して2馬身半差。岩手では3戦目で初勝利を飾り、それが待望の重賞タイトル獲得となった。
「3コーナーを回っても手応えが良かったのでこれなら大丈夫だと思った。9歳馬だが中央時代に無理をして使っていなかったので馬体の張りもいい、衰えを全く感じない。おそらくタイプ的にマイル以下の距離がベストだと思うが、岩手のような小回りで時計のかかる馬場なら長い距離もこなせるのでは」と菅原勲騎手。
2着 ゲイリーエクシード
いつもは最後方か、それに近い場所がマイポジションだったが、今回はスローに近い流れと見て後方4番手からの競馬。向正面からロングスパートをかけ、4コーナーで一瞬、ニューベリーに迫る場面もあったが、そこまで。「今日はいつもより長い脚を使え、いい感じで追い詰めたと思ったが、相手がまた伸びたから仕方がない」と沢田騎手。
こちらは10歳馬でめっきり馬体が白くなってしまったが、衰えなし。3月の一戦こそ後方のまま8着に終わったが、前回1着、そしてこのシアンモア記念2着と老いてますます末脚が冴え渡っている。この状態を維持できる厩舎スタッフには本当に頭が下がる。
3着 ヤマニンエグザルト
終始4番手インにつけ、直線も最内を突いて渋太く伸びる。前回・栗駒賞でほとんど見せ場なし9着に沈み、ピーク過ぎたかと思ったが、得意のマイルと本来の根性が復活し、3着を死守した。
5着 サイレントエクセル
冬期間はずっと川崎で調整されてグレードレースを狙っていたが、脚部不安のアクシデントもあってマリーンカップ1戦のみに。そのレースでも本来のシャープさが影を潜め、11着に惨敗。
今回はそれ以来の実戦に加え、遠征の反動が心配されたが、ひとまずプラス10キロで出走にこぎつけたことにはホッとした。それでも「道中、ブレーキがかかった感じで走った」(板垣騎手)そうで、もたつきが目についたが、直線を向いてようやくエンジンがかかり、直線大外から鋭く伸びる。結果的には5着だったが、今後に明るい材料が出てきた。
11着 オウシュウクラウン
スタートで出遅れを喫し、終始後方を追走。直線でもいいところなしで二ケタ着順11着と信じられない内容と結果。
前走・栗駒賞を叩かれて馬体そのものは良くなっていたが、パドックで入れ込みが目立つ。そしていつもは掛かり気味にレースを進めるタイプだが、それも見られなかった。どうやら精神的なスランプに陥っている印象で、なんとか復活のきっかけを掴んでほしい。
4月29日 重賞・第7回留守杯日高賞(3歳牝馬・水沢1600m 地方競馬全国交流)
1着 パラダイスフラワー
(写真・佐藤到)
前回・菜の花賞と同様、1枠に入って予想どおり逃げの手に。しかし「できれば追いかける競馬にしたかった」(小林騎手)そうで他に行く馬がいたら行かせようとしたが、無理にハナに立つ馬がいなかった。
1周目スタンド前で13秒台に落とし、続いて14秒1とガクンとペースダウン。2コーナーで、いや逃げた時点で勝利を確定させ、あとはどのようなレースで勝つかに焦点が絞られた。
4コーナー手前でサクラアリエルが馬体を併せそうなシーンも一瞬あったが、手応えが他馬とは全然違い、直線を向いて余裕で後続を突き放す。ただ「菜の花賞」回顧でも記したが、追ってからの反応に今回も若干不満が残った。このあたりを小林騎手に話を聞いてみたところ「前回より反応は良くなったが、昨年みたいに気一杯で走らずズブさが出てきた。それで追いかける競馬をしたかった。今ならマイルより長い距離の方が合うかもしれない」とコメント。
つまりパラダイスフラワーはまだ本気で走っていないことを意味するが、逆の見方をすれば今後、上昇の余地は十分と見るのが妥当だろう。
次走には5月に開催される牝馬重賞・ひまわり賞(昨年まで8月頃に実施)トライアル・あやめ賞(5月12日 水沢1800m)を予定している。
2着 マツリダワルツ
菜の花賞は後方4番手から早めにまくって3着。今回は後方2番手につける。これは南郷騎手の想定外だったようで「なぜか行く気がなくて、ちょっとやばいかなと思った」が、向正面からようやくエンジンがかかり、あとはシャープな末脚を駆使し、大外から2着に突っ込んできた。
3月の特別開催でパラダイスフラワーに土をつける金星をあげたが、それがフロックでないことを今回証明。400キロを割る小柄な牝馬でもう少しフックラして欲しいところだが、それにしても切れる脚は見事だった。
3着 サクラアリエル
今回、一番見せ場を作ったのがこのサクラアリエルだった。スローの流れに反発し、早めにスパートをかけてパラダイスフラワーを負かしに行き、直線で苦しがって内にササる場面もあったが、地力アップを証明した。
4着 シュクジャンヌ
前走・菜の花賞と同じく3、4番手のインでジックリ待機して直線抜け出しを図ったが、サクラアリエルに寄せられる不利もあって4着。これが不運だったが、2着以降はまさに団子状態。この結果だけで判断するのは早計だろう。
4月14日 第7回菜の花賞(3歳牝馬 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 パラダイスフラワー
絶好枠の1枠にも入り、ムチを入れながら先手を取る。道中は楽なペースで逃げ、4コーナーまで持ったまま。その手応えなら直線で後方をグングン突き放すかと思ったが、伸びがもう一つ。これは昨年の強さをイメージしているのが大きいかもしれないが、まだ本調子ではなかったか。
とは言え、勝つことが競走馬にとって最大の妙薬。これできっかけを掴んで昨シーズンの快進撃を期待したい。
「まだレース中に物見したり走りがフワフワしていたりするし、もっと良くなる余地があるのかも。これくらいのメンバーだとこの馬にとっては余裕すぎる、ということかもしれませんね」と小林騎手。
2着 シュクジャンヌ
逃げたパラダイスフラワーを見て3番手インを追走。直線を向いて外に持ち出してからの反応が良く、結果2着ながら成長の跡がハッキリ。前回の1着はフロックではないことを自らの脚で証明した。
3着 マツリダワルツ
前回と同様、前半は後方に待機して向正面からロングスパート。4コーナーでは一旦、パラダイスフラワーに並びかけるシーンもあったが、早めに動いたのが響いて直線は伸びを欠いて3着。しかし、これはパラダイスフラワーを負かしに行ったもので、3着も仕方なしと解釈。前走より馬体重も7キロ増加し、今後も目が離せない。
4月15日 第33回スプリングカップ(3歳オープン 水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 セイントセーリング
大外12番枠に入ったが、手をしごいて主導権を握る。その後はマイペースに持ち込み、一貫してセーフティリード。直線を向いて満を持して追い出すと鋭く反応し、後続を突き放す一方。休み明けの前走は好位からアッサリ退いて7着。正直、物足りなさを感じさせたが、その一戦を叩かれて気配アップ。今回はメンバーも楽だったにせよ、2着に6馬身差をつけたのは収穫大。これで弾みがついて再度、パラダイスフラワー、ネバーオブライトと雌雄を決することになる。
2着 ハルサンヒコ
中団外目に待機し、3コーナーからスパート。元々、堅実な差し脚には定評があったが、内で粘るダンストンリアルを直線半ばで交わして2着を確保した。
デビュー当初はレース勘が身につかず凡走を繰り返していたが、シーズン終盤に2勝をマークしてひと皮むける。かつて叔父ハルサンヒコー(こちらは“ー”と伸びる)はトウケイニセイの18連勝をストップするなど名脇役で鳴らしたが、その領域に到達できるか注目していきたい。
3着 ダンストンリアル
終始2番手をキープして、先行馬ペースの流れからそのまま流れ込むかと思ったが、ハルサンヒコに交わされて3着。これで3着6回目と詰めが今後も課題だが、このメンバーでの3着は価値がある。
4月8日 特別・第19回栗駒賞(水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 ダンディキング
逃げるケースも多いが、決してテンが速い訳ではない。草地騎手もそれは承知済みで1周目4コーナーに入るときは中団の位置取りだったが、スタンド前、逃げたジュリアがスローに落とすやいなや、馬なりで先頭に立ち、主導権を握る。2コーナー手前では後続を3馬身ほど離して逃げ、そこでうまく息を入れる。それが結果功を奏し、3コーナーで各馬がスパートをかけても余裕で先頭をキープ。
直線を向いてもダンディキングのスピードは衰えず、イン強襲トミケンマイルズを半馬身、外ブラーボウッズの追撃も0・2秒差封じて待望のオープンタイトルを手にした。
ダンディキングはアラブの女傑ミスハクギンを母に持ち(父ダンディコマンド)、05年のデビュー2戦を圧勝。その後は若駒賞2着、一息入れた寒菊賞は2着、続く金杯は8着で2歳シーズンを終了。
昨3歳時は七時雨賞、スプリングカップと連勝し、一躍首位戦線に躍り出たが、盛岡・岩鷲賞2着以降は体調を崩して7月、ガーベラ賞6着から4ヶ月の休養に入った。その判断は正しくオープン重賞・早池峰賞、トウケイニセイ記念3着。以降に期待を抱かせて冬期休養に入った。
前走(3月27日)は4番手インの競馬から4コーナーで一旦2番手まで進出したが、最後の伸びを欠いて3着。この時は前走比プラス9キロと太目残りの影響もあったかもしれない。今回はひと叩きされてマイナス3キロの472キロで出走。そして草地騎手の好判断も後押ししてタイトル奪取を果たした。
「ピリッとした脚がない替わりにバテもしないタイプ。自分の競馬ができるかどうかがすべて」と草地騎手がダンディキングを評したとおり、今回のようなレース運びができれば重賞・シアンモア記念でも好走は約束された。
2着 トミケンマイルズ
転入初戦の前走(3月25日)はヤマニンエグザルトの2番手を追走したが、直線で伸びを欠いて0・7秒差3着。2月28日に笠松でレースを使われた強味もあって2番人気に支持されたが、内容に若干不満が残って今回は10番人気まで落ちていた。しかし4番手インをずっとキープし、直線インを鋭く伸びて2着を確保。やはりアフター5スター賞(大井)、グランドマイラーズ(船橋)のマイル2重賞制覇はダテではなかった。
3着 ブラーボウッズ
例によって最後方待機策から向正面でまくって3コーナーでは3番手まで進出。最後の直線は脚色がいっしょになったが、先行競馬で決まった今回のレースでも豪快なマクリを披露。マイルは気持ち短い印象がない訳ではないが、シアンモア記念も展開次第では一気突き抜ける可能性もでてきた。
4着 ニューベリー
終始3番手外をキープしていつでも交わせる態勢で道中を進めたが、勝負どころの3コーナーでは反応がひと息。転入初戦でヤマニンエグザルトを一完歩ずつ詰め寄ってクビ差2着まで肉薄した末脚を評価され、単勝2倍の1番人気に支持。ところが今回は伸び切れずに4着止まり。これで評価は微妙になったが、岩手では群を抜く実績を誇り、本番での巻き返しを期待したい。
7着 オウシュウクラウン
馬体重こそ川崎記念からマイナス5キロの494キロと大幅な増減はなく、毛ヅヤも上々に映ったが、レースでは後方に位置し、直線では一瞬いい脚を見せたが、差を詰めただけの7着に終わった。
今回は遠征の疲れが残っていたため急仕上げを避けて出走。様子見の感が強く、本格的な始動はもう少し先になりそうだ。
1月31日、川崎競馬場で行われた今年最初のG?「第56回川崎記念」(川崎競馬場 2100m)の取材に行ってきた。このレースには岩手からオウシュウクラウン、テンショウボスの明け4歳馬2頭が挑戦した。
前者オウシュウクラウンは大晦日12月31日のファン投票・桐花賞を快勝して見事復活。一方のテンショウボスは桐花賞で3コーナーから早めにまくりをかけ、一発勝負に出たものの0・2秒差4着に敗退。しかし、続くトウケイニセイ記念で待望の重賞タイトルを獲得し、上昇ムードは明白。また今後の岩手競馬を占う意味でも興味尽きない一戦となった。
本題に入る前に両馬の臨戦過程を若干お伝えしたい。岩手競馬は先月1月15日をもってひとまず2ヶ月半の休養に入ったが、その後もオウシュウクラウンは盛岡競馬場、テンショウボスも水沢競馬場で調教を継続できた。本来なら15日以降、両競馬場の馬場が閉鎖されてしまうのだが、G?の晴れ舞台に向かうのであれば…と岩手県競馬組合も全面協力。通常開催どおりコースにハロー掛けを行い、加えて暖冬にも味方されて両馬とも順調に攻め馬を消化。1月20日にまずオウシュウクラウンを盛岡で積み、続いて水沢に寄ってテンショウボスをピックアップして2頭で仲良く川崎競馬場へ移動した。
幸い長距離輸送の疲れもなく、オウシュウクラウンは長坂厩務員、テンショウボスは阿部英俊騎手とのコンビで翌日21日から川崎競馬場で調教を再開。またオウシュウクラウンは主戦の小林俊彦騎手が九州(M&Kジョッキーズシリーズ)遠征から途中、川崎へ立ち寄って最終追い切りを敢行。半マイル(4ハロン)50秒9の好タイムを馬なりでマーク。またテンショウボスの方も阿部騎手を背に、一杯に追って半マイル50秒ジャストを出して好調さをアピールした。
さて当日。オウシュウクラウンは前走比マイナス2キロの499キロ、テンショウボスも増減なしの528キロ。とほぼベストの状態で出走にこぎつけ、パドックでも落ち着いて周回していた。
ところが予期せぬアクシデントが発生した。本馬場入場後、返し馬に向かったオウシュウクラウンが、あろうことか暴走。小林騎手は必死に抑えようとしたが、歯止めが利かず馬場を2周半も全速力で走り続けてしまった。場内に馬体検査のアナウンスが流れ、数分後に競走除外の発表があったが、それはオウシュウクラウンではなくゴールデンイースト。オウシュウクラウンはいわゆる放馬した状態と同じとなりながら、ギリギリ(おそらく)のところで出走に支障なしと判断されて出走となったようだ。
とは言っても全速力で走った直後のレースではさすがにオウシュウクラウンも堪えた。一周目スタンド前では折り合いがつかず、向正面で早々と失速。なんとかゴールにはたどり着いたが、1着ヴァーミリアンから離されること18秒!ブービーのゲットザサミットからでも12秒3の大差しんがりで入線した。
一番心配したのは鼻出血とか故障だったが、幸い大事には到らなかった。最初から電光掲示板に載れればいいのでは…というのが正直な気持ちだったので、仮に返し馬で暴走しなくても勝ち負けできるとは思っていなかった。それでもレースで力を出し切れずに終わった今回の川崎記念は陣営にとっても不本意だったに違いない。
一方のテンショウボスは11着。岩手勢には非常に残念な結果となってしまったが、これに懲りず是非、もう一度チャレンジして欲しい。そう願っている。