
先週24日から岩手で騎乗開始した内田利雄騎手が、初日から派手なパフォーマンスを披露してくれた。騎乗一鞍目となった第7レース、マイネパトリシアで鮮やかな逃げ切りを決めるや、最終11レースでも8番人気の低評価を覆し、ビクトリームワンでこれまた逃げ切り圧勝。この馬は過去、ダート戦で2着すら入ったことがなかったが、それが信じられないような強いレースを見せてくれた。また翌日25日にも1勝をマークし、早々と3勝を稼ぎ“ピンクの魔術師”ぶりを如何なく発揮した。今後の活躍にも注目していきたい。
<次走へのメモ>
6月24日 第32回あやめ賞
1着 サイレントエクセル
ムーンプライドが大逃げを打ち、3番手を追走するゴールデンパンジーの直後につける。これは相手がゴールデンパンジー、1頭だけと踏んだ戦法でいつでも交わせる構えだった。その読みどおり、3コーナー過ぎから2頭のマッチレース模様となったが、直線では能力の違いマザマザ。後続をどんどん突き放し、2着に9馬身差の大差をつけて圧勝した。「以前に比べてスタートが良くなり、レースがしやすくなった。直線、追ってから反応が素晴らしい馬なので、安心して乗れる」(板垣騎手)。いずれ牝馬同士では力が違いすぎる。
2着 ゴールデンパンジー
3番手キープも3コーナー過ぎ先頭のイメージどおりだったが、終始サイレントエクセルにマークされる苦しい展開。マイナス15キロと大幅に体重を減らしたが、2走前には466キロで走っていたので470キロは許容範囲か。パドックでもそんなに細くは映らなかった。今回で言えば相手が強すぎたもので、ひとまず2着確保なら上出来だろう。
3着 ピグレット
道中は4番手インの経済コースを回り、渋太く3着。春先は菜の花賞10着、やまびこ賞9着と大敗したが、一戦ごとに地力アップ。アジュディケーティング×パークリージエントとダートの申し子的な血統。もっとキャリアを積んでいけば、さらに好勝負に持ち込めるに違いない。
6月25日 第32回サマーカップ
1着 オウシュウクラウン
ダンディキング、ジャパンアケボノがハイペースを形成し、スタンド前では4番手インに入れる。3コーナーでは内ダンディキング、中テンショウボス、外オウシュウクラウンが併せ馬のような形となり、4コーナーでその2頭を突き放す。それで勝負は決着し、直線余裕たっぷりでゴールに入った。初の1900mも何ら問題にせず、岩手の同世代では抜けた存在で、腰に疲れさえ出なければほぼ敵なしだろう。
2着 ブラックショコラ
今回からブリンカーを着用。「もっさりスタートだったので最後方で待機し、それで折り合いがついた」(村松騎手)。向正面なかほどからロングスパートをかけ、前にいた馬をごぼう抜き。ゴール前でテンショウボスをキッチリ交わして2着を確保した。元々、切れる脚が武器だが、この戦法ならブラックホーク産駒でも1900mは持つ。
3着 テンショウボス
オウシュウクラウンより前の競馬は意外だったが、「調子があまり良くない」(阿部騎手)と判断しての積極策か。向正面で手が動き、手ごたえはひと息だったため、最後で脚が上がってしまった。それでもブラックショコラから半馬身差ならよく持ち堪えたと言っていい。
4着 ダンディキング
前半2ハロンで結構、脚を使ったため直線で失速。これが逃げ馬の宿命だけに離された4着も仕方なし。水沢条件でマイペースならば巻き返す可能性はある。
1着 タイキシェンロン
「先に行きたい馬が多かったので、出たなりのポジションで構わなかった」(菅原勲騎手)とレース後、コメントしたとおり無理せず中団8番手を追走。3コーナーでペースが上がり、うまく外に出してからニッショウウララを射程圏内に入れる。ゴール前は3頭の叩き合いとなったが、最後は貫禄の差で2頭の猛追を退ける。「向正面でスッと反応したので楽かなと思ったが、2頭も渋太く粘った」(菅原勲騎手)。
これで水沢1400m5戦4勝3着1回とし、本番・栗駒賞へと臨む。今季は3戦連続で2着だったが、待望の白星をあげ、地元大将格として他県勢の強豪を迎え撃つことになる。得意の水沢なら好勝負になるだろう。
2着 ベルモントシーザー
1枠に入り、外からトキオパーフェクト、デュークファースト、グローリサンディが先陣を切ったため、5番手インに控える。道中もずっとインで囲まれたため、なかなか外に出せなかったが、4コーナーで内がポッカリ開いたところを突き抜ける。岩手3戦は1800mを2度、前走2000mからいきなり1400mの競馬。その影響でダッシュがつかず道中も苦しんだが、最内を突いて2着を死守。最後まで気力が薄れなかったのはさすがだ。「1枠がきつかった。せめて4、5番枠だったら、もう少し楽に競馬ができたのでは」(阿部騎手)
3着 ニッショウウララ
前半、3頭が競り合うのを見て大外4番手を進む。道中の手ごたえもすばらしく、4コーナー手前で早くも先頭。最後の最後で力尽きたが、今季の充実度を前面に積極的なレース運びをし、見せ場も十分に作った。「水沢でもこの競馬で持つから今年は一味違う。盛岡だったら勝てたかも」(村松学騎手)
4着 オリエントボス
中団6番手を進み、直線もマズマズの伸びを見せて4着。ただ、上位3頭とは3馬身離された。これはキャリアの差とも言え、今後、レースを使っていけばペースにも慣れるのではないか。1400mから1600mが合いそうだ。
5着 トキオパーフェクト
果敢に逃げたが、2頭に絡まれて直線一杯。やはり年齢的な衰えは隠せないが、それでも電光掲示板に載るのだから、距離適性の高さは見せた。
6着 ハヤブサ
後方3番手待機策から3コーナーで徐々に進出。4コーナーで一瞬見せ場を作り、復活の兆候があったと解釈。
<次走へのメモ>
6月11日 岩手ダービー ダイヤモンドカップ
(関口房朗氏)
『ダービーウィーク』のトリを務めた「岩手ダービー ダイヤモンドカップ」。当日はフサイチ軍団の総帥・関口房朗氏が水沢競馬場へ来場。9レース終了後には関口氏を囲んだトークショーが行われ、イベント会場に多くのファンが集まった。関口氏のユーモアあふれるトークに場内は沸きあがり、また“岩手でもフサイチの馬を2頭、預けます。男に二言はありません”と声高に話すと、ファンから大歓声と拍手が巻き起こった。
トークショーの中で関口氏は『競馬は夢とロマンがなければ』と熱く語っていたが、これこそが今の地方競馬に欠けていたことで、しかも最も重要なこと。自分自身も改めて肝に銘じなければならないなと思いました。
(岩手ダービー ダイヤモンドカップ 1着オウシュウクラウン)
1着 オウシュウクラウン
久々の水沢遠征でテンションが高くなったのか、「パドック、返し馬でイライラしていた」と小林騎手が語ったとおり、抜群のスタートを切って理想の2番手を追走したが、1周目2コーナーで早くも掛かって追走。逃げたのがダンディキングではなく、ダンストーンアレスでこれは想定外だったが、向正面まで折り合いに苦労し、3コーナーで早々とダンストーンアレスを交わして先頭。4コーナーまで持ったままで進み、サイレントエクセル、テンショウボスが接近してきたのを見てからスパート。しかし折り合いを欠いても気力は全く衰えず、直線で後続を再度突き放して待望の重賞タイトルを獲得した。
レース後、「折り合いが大変だったが、今年は体もしっかりして成長を実感する」と小林騎手。里帰り後、今回で3戦を消化したが、芝でもダートでも同世代では一歩抜けた存在となった。今後も岩手3歳戦線をリードしていくに違いない。
これでG?・ジャパンダートダービーの優先出走権を獲得した訳だが、地元レースをにらみながら慎重に決断したいと桜田浩三調教師。
2着 サイレントエクセル
冬期間の休み明け初戦となった重賞・日高賞で久々に本馬を見た時、馬体が寂しくなったな…が正直な感想だった。シーズン直前、順調さを欠いたというのが理由だったが、それでも勝って役者の違いを見せつけた。続く盛岡・やまびこ賞ではさらに体重が減り、デビュー以来、最低の436キロで出走し、テンショウボスの2着に敗れた。
しかし今回は輸送のない地元競馬でもあったが、442キロまで回復。見た目でも馬体に張りが戻っていた。それがレースにも結びつき、オウシュウクラウンをマークする3番手を追走。テンショウボスが仕掛けたのを見てスパートをかけて接戦となった2着争いでクビ差先着。レース内容も文句なしだった。オウシュウクラウンとの勝負付けは済まされたが、次位候補の有力馬の一角に復活した。
3着 テンショウボス
サイレントエクセルの直後につけ、先にスパート。「勝ちに行った分、最後の伸びが甘くなったが、納得のレース」と阿部騎手が語ったとおり、成長確かなところを見せた。ただ、今回は地元競馬にせよ前走比(やまびこ賞)プラス11キロ。若干太め残りだったかも。
6着 ダンディキング
得意の水沢に戻って2番人気に支持されたが、ダッシュがきかず1周目2コーナーで大外ダンストーンアレスに前をカットされる。それもあって中団からの競馬となってしまい、直線も伸び切れず6着に沈む。やはり逃げれなければこの馬の持ち味は生きないかもしれない。
<次走へのメモ>
6月3日 かきつばた賞
1着 ヤマヨダイナミック
7月30日、同条件で行われる重賞・せきれい賞(芝2400m)トライアル戦で、今回はA2特別・FM岩手杯を勝って出走権を獲得し、格下からの挑戦。スタートで出遅れたが、「最初から後ろからの競馬を考えていた」(阿部英俊騎手)そうで道中はあわてず最後方を進む。スパートをかけたのは3コーナー過ぎだったが、鞍上の指示にすばやく反応。直線、内で粘るジェーピーバトルをアッサリ交わし、芝適性ぶりを存分に発揮した。今回のテーマは芝の王者サイレントグリーン相手に新興勢力がどう戦うかだったが、レースを見る限り世代交代した可能性が高い。
2着 ジェーピーバトル
逃げたグローリサンディをマークする絶好の2番手をキープ。直線で先頭に立ち、そのまま押し切るかと思ったが、ヤマヨダイナミックは脚色が違いすぎた。この馬もA2からの挑戦だったが、過去、芝は3戦3勝の実績はダテではなかった。
3着 サイレントグリーン
昨年の年度代表馬最優秀ターフホースが満を持しての登場。道中は後方4番手を進み直線勝負に賭けたが、ジェーピーバトルも捕らえ切れなかった。これまで芝2400mは4戦4勝だったが、ついに連勝がストップ。せきれい賞で真価が問われることになったが、おそらく積極策に転じるのではないか。
6月4日 一條記念 みちのく大賞典
(みちのく大賞典ゴール コアレスハンター)
1着 コアレスハンター
前半のペースはそれほど速くなかったが、8番手インの待機策を取る。3コーナーから仕掛けて徐々に先陣を射程圏に入れる。直線入り口では前が壁になったが、開くのを待ってスパートをかけ、内で粘るタイキシェンロンをラスト100mで交わして2004年2月、金盃以来、2年4ヶ月ぶりの白星をあげ、通算5度目の重賞タイトルを獲得した。レース後、御神本騎手が「今回はメンバーに恵まれた」と語ったとおり、南関東と岩手のレベル差を見せつけた格好。それにしても9歳馬とは思えない反応の良さを披露し、今後も相手次第では勝つチャンスがありそう。次走は帝王賞を目指すという。
2着 タイキシェンロン
強力な逃げ馬が不在でスローの流れと判断した菅原勲騎手が2番手の積極策に出る。それが結果功を奏し、適性もう一つの盛岡でも2着に食い込む。520キロ台で臨みたいと陣営はコメントしていたが、535キロと前走比プラス2キロ。距離2000mもこの馬自身には長かったが、巧みなレース運びが光った。次走はベストの条件で行われる重賞・栗駒賞(水沢ダート1400m)へ向かう予定。
3着 ベルモントシーザー
好スタートから3番手外をキープ。14秒台のスローに落ちた2コーナー過ぎで掛かったが、何とかなだめる。終始、タイキシェンロンの外を追走し、コアレスハンターに交わされバタバタになるかと思ったが、最後まで2着争いに参加し、2000mの距離もこなす。アジュディケーティング産駒の勝気な性格から常に折り合いに課題を残しているが、こと岩手3戦に限れば道中で掛かっても大丈夫のようだ。しかし折り合いを気にしなくていいマイル前後がベストの条件だろう。
5着 ビーファイター
コアレスハンターをマークして10番手を追走。追い出しもほぼ同時だったが、瞬発力の差が出た。もう少し前の競馬が良かったか。
6着 エアウィード
シアンモア記念では前走比(まんさく賞)マイナス15キロで出走。これがギリギリの状態だったようで過去最高のレースを披露したが、今回はさらにマイナス5キロの460キロ。そのせいかパドックでは腹回りも細く、トモの肉も落ちていた。馬体が回復しないと今後も厳しいだろう。
7着 マンジュデンツルギ
道中7番手だが、先団の大外を追走。手ごたえも悪くなかったが、勝負どころから反応が鈍くなる。転入初戦で2着に1・1秒差の圧勝劇を演じ、3番人気に支持されたが、終始外を回されたのも痛かった。
<次走へのメモ>
5月28日 特別・第11回はまなす賞
1着 オウシュウクラウン
今回から岩手在籍時の主戦ジョッキー・小林俊彦騎手とコンビ復活。スタートで出遅れたのは「隣枠のブラックショコラが立ち上がり、横を向いて見ていた時にスタートを切られた」(小林騎手)ため。それでもあわてず後方8番手を追走したのは、どこからでもいいと調教師から指示を受けたからで2コーナーでやや掛かり気味となったが、それをなだめて折り合いをつける。
道中はずっとブラックショコラをマーク。3、4コーナーで徐々に先陣を射程圏に入れ、直線でブラックショコラとのマッチレースに持ち込み、ラスト50mで抜け出す。結果は1/2馬身差だったが、着差以上に強い内容で完勝した。
58キロのトップハンデはブラックショコラと同じだったが、全く問題にせず。馬自身も「昨年より数段、パワーアップしたし精神的にも大人になった」と小林騎手は絶賛した。
次走予定は6月11日、水沢ダート1600mを舞台に行われる「岩手ダービー 第26回ダイヤモンドカップ」。その結果次第で7月12日、G?・ジャパンダートダービー挑戦も構想に描いている。
はまなす賞ゴール 1着オウシュウクラウン
2着 ブラックショコラ
重賞・岩鷲賞でダンディキングを一蹴し、弾みがついての出走。はまなす賞の選択は盛岡芝<2.2.0.0>の適性を重視。その背景には中央芝へのチャレンジも考えていたから。レースは前半スローの流れの中、絶好の5番手をキープ。向正面から早めスパートをかけ、オウシュウクラウンにセーフティリードを保つ戦法。ほぼパーフェクトのレース運びだったが、今回は相手が悪すぎた。自身の能力は出し切ったと見て間違いない。
3着 カズノマックイーン
当初、南郷家全騎手の予定だったが、当日に自厩舎の斉藤雄一騎手に乗り替わり。今シーズンは後方からの競馬だったが、終始4、5番手インを追走。オウシュウクラウン、ブラックショコラには離されたが、3着を死守。調子は良かったが、今季3戦・菜の花賞7着、スプリングカップ6着、やまびこ賞7着と着外に沈んでいたが、今回は芝適性も生かして3着。この健闘は評価に値する。芝なら常に上位入着の可能性がある。
4着 デフェンスボス
勝負どころでもたついたが、直線で盛り返して4着。芝はデビュー戦(1着)以来で2戦目以降はダートで凡走を繰り返していたが、芝に光明がはっきり。それにしてもアドマイヤボス産駒は盛岡芝との相性が非常にいいと改めて実感。
5着 ナイキザフォース
逃げたキングオブタックルの2、3番手を追走。4角で早めに先頭に立ったのはブラックショコラがスパートをかけたからで、直線で一杯になったが、今後のメドは立ったように思う。
(文・松尾康司/写真・佐藤到)