11月4日に伊勢崎オートレース場で行われたSG日本選手権は、木村武之が鋭い追い込みを見せて制した。
レース展開は荒尾聡が序盤で先頭に立つも、濱野淳がすぐに交わして逃げ態勢を作った。しかし、木村がジワリと追い込んで先頭を奪取。青山周平の猛追を振り切ってそのままゴール。
このレースでのポイントは1周4コーナーにあったと思われる。我先に主導権を奪いたい前団がこの4コーナーで多少バラける形になったが、木村はこの前団の隙間を突いて一気に3番手に付けた。ここでうまくコースを見つけられていなかったら、その後厳しい展開になったハズ。一瞬のチャンスをしっかり見逃さずモノにするのは、さすがの腕だ。大舞台を数多く経験してるからこそ、なせる業であろう。3番手からは試走タイムが表している通り、機力の違いで丁寧に追い込んだ。
2着に入った青山も大物ぶりを見せる走りだった。一旦は最後方に下がってから追う展開になったから、実質6車を抜いたことになる。SGの優勝戦でここまでの追い込みを見せるのは至難の業だろう。序盤の展開さえうまくこなせていれば、SG奪取も時間の問題だ。
最も注目の1車に置かれた永井大介は、試走タイムからイマイチだった。スタートでも好位を奪えず苦しい展開になってしまった。機力が良ければそこから巻き返して行けるが、今回の優勝戦の仕上がりでは厳しかった。
荒尾は相変わらず武器のスタート力の健在ぶりをアピールしたが、エンジンの仕上がり不足で後続を離すまでには行かなかった。しかし、0オープン戦では大事な要素になるスタート力は変わってないので、しっかりエンジンを仕上げて行ければ再びの栄冠も十分あり得る。
濱野は準決までは自信のないコメントに終始し、優勝戦でもエンジン不足だったが、大舞台で見せ場を作り存在感を示した。中村雅人や内山高秀、伊藤信夫は良いところがなかったが、今後に期待したい。
台風の影響により一日順延され、17日に行なわれた秋のスピード王優勝戦は、一番人気に推された青山周平が期待に応えて優勝を決めた。
試走タイムは佐々木啓が3・31で一番時計。次いで松尾啓史と青山が3・32で2番時計だった。それでも青山が一番人気、次いで佐々木、松尾へ人気となり、地元エースの金子大輔は3・35の試走の影響かそこまで人気にはならなかった。
レース展開としては青山がトップスタートを決め、後続を離すだけの横綱相撲。持ってる力をいかんなく発揮してハイペースの逃げに持ち込んだ。
このレースで素晴らしかったのはスタート。このところフライングが続いており、慎重にならざるを得ない状況でトップスタートを決めてきた。次にSG日本選手権も控えており、絶対フライングは切れない状況でもスタート決めるのは、相当な技術と精神力が必要となるだろう。
もちろんその後の走りも素晴らしかった。ミスなく8周回を走りきり、十分な上がりタイムを出せた。スタート力と独走力。この二つは次の選手権での戦いにおいて最も必要とされる要素。選手権での走りにも期待せずにはいられない。
他の選手で目立ったのは濱野淳。試走タイムは3・34とやや劣勢だったが、同じ山陽地区の佐々木や松尾に先着しての準優勝。元々、センスで乗るタイプで多少試走タイムが劣っていても、いい走りができるのが特長。近年は記念の優勝戦にたびたび顔を出し、好成績を収めている。次の選手権でも元気のいい走りを見せて欲しい。
ナンバー1勝負服を着て初めての記念レースで永井大介がキッチリ仕事をこなした。
スタートは池田政和が飛び出し青山周平が続く形。すぐさま青山が池田を差して先頭に立つも、中村雅人が捌いて逃げ態勢を作った。永井はスタートこそ5番手だった。しかし、そこから冷静に追い上げた。池田、青山、中村を捌いて先頭ゴール。貫禄の走りを見せ付けた。
このレースでの勝因は2つあると思う。一つは試走タイム。試走タイムから他を圧倒しての3・28をマーク。次にタイム出たのが内山高秀、青山、中村の3・32だから、実に4つの差がついていた。今節は天候的になかなかエンジンを仕上げにくい状況だったが、大事な優勝戦で永井はしっかり仕上げてきた。常にエンジン100点を目指して整備に取り組んでいる結果であろう。普段、レースで良い勝ち方をしても、エンジンの仕上がりが80点、90点、いや95点であっても、決して納得せず更に上を狙う姿勢は素晴らしいの一言だ。
もう一つの勝因は乗り手の充実。エンジンが仕上がってなくても勝つ方法を知っている永井だからなお更、今回のエンジン状態は余裕を持って乗れたことだろう。試走で他の車との差を認識できていたから、スタートが決まらなくても落ち着いて乗れていた。
選手になって早い段階からスピードには定評があった永井だが、ここにきて更に選手としての武器が増えたように思える。スタートや捌きなどはもちろんのこと、精神的なモノやレース運びなど経験的なモノが総合力をアップさせている。ナンバー1勝負服を羽織り、これからどのような進化を見せるか楽しみでならない。
快速・鈴木健吾が大逃げでGⅠ初V!
第56回GⅠダイヤモンドレースは、浜松の28期鈴木健吾が0ハンから8周回を逃げ切り、嬉しいGⅠ初優勝を決めた。
元々、スピードある同選手は、今回エンジン状態も最高潮で優勝戦を迎えた。試走タイムも重ハンに引けを取らない3・36をマーク。この時計は独走を得意とする同選手にとってまさに「鬼に金棒」。ミスなく乗れればかなりの走りをすることは想定された。しかし、そこはGⅠの優勝戦。人気になったのは重ハンで、更に試走タイムが出ていた木村武之や荒尾聡だった。
エンジンや乗り手のリズム良かった鈴木健吾だが、このレースではもう一つ鈴木に味方した要素があった。それはハンデ位置。近年、大きな大会では優勝戦になるとハンデの軽い選手も急遽ハンデが重くなるケースが多かったが、この大会ではそのようなことをせずハンデ据え置きのまま最終日を迎えた。これは鈴木にとってかなりプラス材料だったと思われる。もちろんハンデが10M重くなっても、スタートさえ先行してしまえば状態は同じなのだが、番組を見た段階でこの構成はかなり気合アップに繋がるのではないか。しかし、そのような自分に与えられた条件の中で、しっかり勝ち切った鈴木は見事と言える。
レース展開としては逃げる鈴木に10線の筒井健太が終始マーク。20線から追ってこれたのは永井大介だけで、それも3着に入るのが一杯だった。今回の優勝戦の番組を見ると、スピードレースになるのは予想された事だ。このような場合は波乱含みになる事が多い。今までにも、快速派の選手が最重ハンの前に置かれた記念優勝戦で8周逃げ切ったレースはいつくかある。これからの車券購入の際の参考になれば幸いである。
最後に鈴木健吾のこれからの活躍に期待したい。今回も上がりタイムは最重ハンに負けない数字を出しているので、スピードは全選手の中でもかなり上位にあることは証明された。あとは本人の意欲と努力しだいでGⅠの更に上の舞台でも通用するところを見せられるだろう。
予選中の軽ハン勢の健闘、準決の日の不安定な天候による難解な走路コンディション、台風のため第5日目の順延と波乱の多かったSGオートレースグランプリは、地元のエース・永井大介が優勝した。
試走一番時計の3・33を叩き出した永井は、逃げ態勢を作る木村武之を早い段階で交わし先頭に浮上。そのまま押し切りゴール。いつもと違ったのは独走に入ると後続を突き放す一方の永井が、なかなかペースを上げられなかった。原因はタイヤ。滑りが気になってグリップ開け開けで走れなかった。しかし、それならそれなりの走りができる永井は見事だった。
ペースを上げられないのをレース中に自覚した永井はコースを外さず、滑らせないように丁寧に走った。結果、ピタリと追走していた木村に付け入る隙を与えなかった。車の仕上がり状況を的確に判断し、それに合った走法をすばやく選択できたのは永井の大舞台での豊富な経験がなせる業だろう。これでSG11V。この数字はこれからも延びていくモノと思われる。
そして優勝戦でも波乱があった。2番人気に推されていた荒尾聡が1周3コーナーでスリップ落車。その外に付けていた田中茂も被害で落車。序盤で実力者2人が早々と戦線離脱してしまった。真剣勝負の結果であるから致し方ないが、ファンにとってはショックであったと思われる。しかし、今回の結果を次にぶつけてくれる事は間違いない。SG日本選手権での巻き返しに期待したい。もちろん、普段の一般開催においても活躍を見届けたい。
木村にスポットを当てると、当人にとっては悔しいレースだっただろう。永井に抜かれた後も差し返せるチャンスはあった。仕掛ける態勢を万全に作れていれば、逆転優勝も十分にあった。しかし、態勢不十分のまま2回ほど仕掛け損ねてしまった。残り2周はタイヤが滑り出して射程範囲から離れてしまった。仕掛けるタイミングを1回に絞って冷静に行けていれば...。レースに「たら、れば」は禁物なのでこの辺にしておこう。SGで優勝争いに参加できる実力の持ち主である事は証明できている。