
ナンバー1勝負服を着て初めての記念レースで永井大介がキッチリ仕事をこなした。
スタートは池田政和が飛び出し青山周平が続く形。すぐさま青山が池田を差して先頭に立つも、中村雅人が捌いて逃げ態勢を作った。永井はスタートこそ5番手だった。しかし、そこから冷静に追い上げた。池田、青山、中村を捌いて先頭ゴール。貫禄の走りを見せ付けた。
このレースでの勝因は2つあると思う。一つは試走タイム。試走タイムから他を圧倒しての3・28をマーク。次にタイム出たのが内山高秀、青山、中村の3・32だから、実に4つの差がついていた。今節は天候的になかなかエンジンを仕上げにくい状況だったが、大事な優勝戦で永井はしっかり仕上げてきた。常にエンジン100点を目指して整備に取り組んでいる結果であろう。普段、レースで良い勝ち方をしても、エンジンの仕上がりが80点、90点、いや95点であっても、決して納得せず更に上を狙う姿勢は素晴らしいの一言だ。
もう一つの勝因は乗り手の充実。エンジンが仕上がってなくても勝つ方法を知っている永井だからなお更、今回のエンジン状態は余裕を持って乗れたことだろう。試走で他の車との差を認識できていたから、スタートが決まらなくても落ち着いて乗れていた。
選手になって早い段階からスピードには定評があった永井だが、ここにきて更に選手としての武器が増えたように思える。スタートや捌きなどはもちろんのこと、精神的なモノやレース運びなど経験的なモノが総合力をアップさせている。ナンバー1勝負服を羽織り、これからどのような進化を見せるか楽しみでならない。
快速・鈴木健吾が大逃げでGⅠ初V!
第56回GⅠダイヤモンドレースは、浜松の28期鈴木健吾が0ハンから8周回を逃げ切り、嬉しいGⅠ初優勝を決めた。
元々、スピードある同選手は、今回エンジン状態も最高潮で優勝戦を迎えた。試走タイムも重ハンに引けを取らない3・36をマーク。この時計は独走を得意とする同選手にとってまさに「鬼に金棒」。ミスなく乗れればかなりの走りをすることは想定された。しかし、そこはGⅠの優勝戦。人気になったのは重ハンで、更に試走タイムが出ていた木村武之や荒尾聡だった。
エンジンや乗り手のリズム良かった鈴木健吾だが、このレースではもう一つ鈴木に味方した要素があった。それはハンデ位置。近年、大きな大会では優勝戦になるとハンデの軽い選手も急遽ハンデが重くなるケースが多かったが、この大会ではそのようなことをせずハンデ据え置きのまま最終日を迎えた。これは鈴木にとってかなりプラス材料だったと思われる。もちろんハンデが10M重くなっても、スタートさえ先行してしまえば状態は同じなのだが、番組を見た段階でこの構成はかなり気合アップに繋がるのではないか。しかし、そのような自分に与えられた条件の中で、しっかり勝ち切った鈴木は見事と言える。
レース展開としては逃げる鈴木に10線の筒井健太が終始マーク。20線から追ってこれたのは永井大介だけで、それも3着に入るのが一杯だった。今回の優勝戦の番組を見ると、スピードレースになるのは予想された事だ。このような場合は波乱含みになる事が多い。今までにも、快速派の選手が最重ハンの前に置かれた記念優勝戦で8周逃げ切ったレースはいつくかある。これからの車券購入の際の参考になれば幸いである。
最後に鈴木健吾のこれからの活躍に期待したい。今回も上がりタイムは最重ハンに負けない数字を出しているので、スピードは全選手の中でもかなり上位にあることは証明された。あとは本人の意欲と努力しだいでGⅠの更に上の舞台でも通用するところを見せられるだろう。
予選中の軽ハン勢の健闘、準決の日の不安定な天候による難解な走路コンディション、台風のため第5日目の順延と波乱の多かったSGオートレースグランプリは、地元のエース・永井大介が優勝した。
試走一番時計の3・33を叩き出した永井は、逃げ態勢を作る木村武之を早い段階で交わし先頭に浮上。そのまま押し切りゴール。いつもと違ったのは独走に入ると後続を突き放す一方の永井が、なかなかペースを上げられなかった。原因はタイヤ。滑りが気になってグリップ開け開けで走れなかった。しかし、それならそれなりの走りができる永井は見事だった。
ペースを上げられないのをレース中に自覚した永井はコースを外さず、滑らせないように丁寧に走った。結果、ピタリと追走していた木村に付け入る隙を与えなかった。車の仕上がり状況を的確に判断し、それに合った走法をすばやく選択できたのは永井の大舞台での豊富な経験がなせる業だろう。これでSG11V。この数字はこれからも延びていくモノと思われる。
そして優勝戦でも波乱があった。2番人気に推されていた荒尾聡が1周3コーナーでスリップ落車。その外に付けていた田中茂も被害で落車。序盤で実力者2人が早々と戦線離脱してしまった。真剣勝負の結果であるから致し方ないが、ファンにとってはショックであったと思われる。しかし、今回の結果を次にぶつけてくれる事は間違いない。SG日本選手権での巻き返しに期待したい。もちろん、普段の一般開催においても活躍を見届けたい。
木村にスポットを当てると、当人にとっては悔しいレースだっただろう。永井に抜かれた後も差し返せるチャンスはあった。仕掛ける態勢を万全に作れていれば、逆転優勝も十分にあった。しかし、態勢不十分のまま2回ほど仕掛け損ねてしまった。残り2周はタイヤが滑り出して射程範囲から離れてしまった。仕掛けるタイミングを1回に絞って冷静に行けていれば...。レースに「たら、れば」は禁物なのでこの辺にしておこう。SGで優勝争いに参加できる実力の持ち主である事は証明できている。
荒尾聡が存在感を見せつけ完全V!
優勝戦当日は重走路から始まったが、徐々に乾いてブチ走路になっていった。しかし、優勝戦の試走後に再び雨が降り、重走路になる難解な走路状態に。
恐らく優勝戦に乗った全選手が晴れに近いタイヤ選択で行ったと思われるが、完全な重走路になると走りは慎重になる。レースでも使えるコースが限られ一本道状態だった。
0ハンから主導権を奪った畑吉広がインコースをシッカリ走って逃げる展開。人気の荒尾が須賀学や林弘明を突破し2番手に付けたが、そこからが簡単ではなかった。誰もがスンナリ先頭に立つと思っていた荒尾が、畑に対し仕掛けの態勢に入ると流れてしまって射程範囲内から出てしまう状況。グッと2番手で我慢する状態が続いていたが、逃げる畑が立ち上がりで内線を1回だけ外した。そのタイミングを荒尾は見逃していなかった。すかさず車をナカに向けると、迷わず突っ込んで行ってしっかり回った。
グレードレースでの経験の豊富さがなせる業と言えよう。雨で走るコースが一本道になることは、走路改修後などによくある。そういった走路状態での走り方を荒尾は心得ていた。焦って無理に仕掛けることなく、相手の隙を見ながら落ち着いて乗れていた。
荒尾の魅力は、一番にスタート力。その次に晴れや雨など天候の変化に左右されないオールマイティさ。他には整備力、勝負強さ。数々あるが、冷静にレースに臨めていることも実は大きな魅力だ。
未だ、SGを一つしか獲っていないことが不思議なくらい、オートレーサーとしての素質を存分に秘めている。これからも益々の活躍を見せてくれることだろう。
ムーンライトチャンピオンカップの優勝戦は天候が不安視されていたが、大方の予報通り雨走路でのレースとなった。
0ハンのスタート争いは金山周平、阿部仁志が飛び出し湯浅浩がやや遅れる展開。しかし、すぐに湯浅が立て直して先頭に立った。10線から素早く抜け出してきた青山周平が湯浅を抜くのにやや手間取っているところを永井と有吉が交わして抜け出す。その後は、永井と有吉のデットヒート。僅かに永井が有吉を振り切って栄冠を手に入れた。
永井と有吉といえば、過去に大きな開催で何度も激戦を演じてきた。オープン戦なら有吉が飛び出し、永井が追いかける。SGの優勝戦はそんなシーンが多々あった。今回は逃げる永井を有吉がピタリとマークする展開。いつもとは違ったが、更にいつもとは違う状況に3番手に追走していた青山の存在がある。
まだそんなに経験の少ない伊勢崎の雨走路に加えてナイター開催。条件としては不利と言えるが、流石のセンスを発揮して3着。25期と同じくらいのオート選手歴があれば、もう少し戦えた事は間違いない。今後どのように成長していくのか。オートファンなら目が離せないところだ。
もちろん優勝した永井も凄かった。雨走路はその湿り方によってコース取りが難しいと言われているが、いち早く使えるコースを見つけ、そこをしっかり走れる技量は来期S1の名に相応しい。永井の最大の強みはそのスピード。エンジン状態がみな同じなら、スピードは全国一と言っても異論を唱える人は少ないだろう。更に、その圧倒的なスピードが目に付くためあまり周りから意識されにくい状況にあるが、スタートもかなりの巧者である。走路状況によって力が発揮されないという弱みもない。
初めてS1の名誉を手に入れた永井に、若手成長株筆頭の青山。しばらくオートレースはこの2人を中心に回っていくに違いない。