
中村雅人が日本選手権初制覇!
良走路で行われたSG日本選手権の優勝戦は船橋の中村雅人が制した。スタートは8番手と、最悪の展開を克服しての初の日本選手権戴冠。いかにも中村雅人らしいレース運びだった。
試走タイムは高橋貢、佐藤貴也が31で一番時計。中村はそれに次ぐ32の試走タイムだった。レース展開はスタート飛び出した高橋に佐藤がピタリマーク。仕掛けどころを窺っていた佐藤が、1回は高橋のインに入ったが、すぐさま差し返されてしまう。それでも高橋にとっても佐藤にとっても絶好の展開だった。しかし、そこに割って入ったのは中村だった。
中村はスタート後に高橋と金子大輔に挟まれ、1周1コーナーでは車を引かされ車速に乗れないままのレースを強いられた。SGの優勝戦では致命的な序盤の位置取り。しかし、そこから中村は冷静に追い上げていった。慌てることなく、焦ることなく1車ずつ捌いて行き、ついに3番手の位置を確保。前を走る高橋と佐藤の競り合いを、いつもと同じ平常心で見つめていた。そして、前団に隙が生まれるや否や、車を前へと進めて行く。やや強引気味ではあったが、2番手を走る佐藤をパス。高橋との一対一に持ち込んだ。その後は間髪を入れずに攻めて行った。高橋を綺麗に交わすとそのままゴール。
今の中村は充実している。スタートに左右されないレースができている。オートレースに魅力を感じるポイントは人それぞれだが、筆者はハンデ戦における最高ハンの追い込み刺激を受けている。0オープン戦ではなかなか感じられにくいオートレースの魅力を感じさせてくれる中村の走りは、今後オートレースファンの復帰、もしくは新規ファンの獲得に多大なる影響を及ぼしてくれるのではないかと思っている。
佐藤貴也が劇的V!
浜松のGIIウィナーズカップの優勝戦は、懸念されていた雨走路になってしまった。その影響かどうかは分からないが、試走でハプニング発生。1号車の辰巳裕樹が落車してしまい欠車。1号車に関する車券は返還になった。
レースは岡部聡が筒井健太を早い段階で交わし、逃げ態勢に入った。この日のこれまでの雨のレースで、インコースが利いていた関係もあるのか、岡部はインベッタリで走っていた。それを追っていたのは佐藤貴也。その後ろに付けていたのが金子大輔。佐藤は何度も岡部を抜こうとモーションを起こしたが、なかなかうまく決まらない周回が続いた。しかし、7周回1コーナーで渾身の突っ込み。レース後にこのシーンは審議になったがセーフの判定で、佐藤が栄冠を掴んだ。ずっと追走していた金子が3着に入った。他の選手は、途中から大きく離され上位争いに参加できなかった。
このレースで光ったのは佐藤の勝負強さ。一時期、勢いを欠いていた時に足りなかったのは積極的に仕掛けて行く姿勢。これを取り戻してからはシッカリと結果を残せるようになった。前期から大幅にランクを上げたように、今年に入ってからは好成績が続いている。この次には飯塚でのSG日本選手権が控えている。今回の勢いをそのままSGにぶつけたい。
青山周平が地元のGIオート祭を制す!
台風の接近により天候が心配されていた船橋最終日。前半戦は不安定な天候だったが、途中からは完全に雨が降り出し、レースも重走路での戦いになった。
優勝戦の試走タイム一番は青山周平の60。次いで、永井大介の63。他はそれほど差のないタイムだった。0ハンから飛び出したのは最内の武藤博臣。しかし、1周2コーナーでは鈴木一馬が武藤を捲って逃げ態勢を作った。ここから鈴木が大きなコース取りで軽快な逃げを見せ始めた。
10線は、好スタート切った青山が1周バックストレッチで武藤を差すと、鈴木を追う一番手になった。対照的な二人のコース取りだった。大きなコースを走って逃げる鈴木に、インコースをきっちり回る青山。中盤はなかなか差が詰まらなかった。しかし、終盤になると青山が少しずつ鈴木のインに顔を覗かせ始める。そうこうしているうちに、鈴木のコース取りがだんだん小さくなってきた。そして、7周3コーナーで青山が鈴木の外に付け、イン切り返す態勢を作る。4コーナーでは綺麗に鈴木のフトコロを取って捌いて行った。永井大介は木村武之を交わし追撃して行ったが、青山に追走するのが一杯の状態。追い及ばず3着止まりだった。
近況、大きな大会の優勝戦でミスが多かった青山だが、この優勝戦に関しては落ち着いて走れていた。道中、鈴木との差が詰まらず、焦り出してもおかしくない場面でも、自分のコースを我慢して乗って鈴木の隙を作り出すあたり、レーサーとしての成長が窺えた。この走りがSGでの大舞台でもできれば、SG初制覇も遠くはないだろう。
落ち着いたレース運びで永井大介が栄冠掴む!
SGオートレースグランプリの優勝戦は、船橋25期の永井大介が制した。試走タイムこそ青山周平の31に及ばぬ33の2番時計だったが、道中で冷静に追い込んで首位奪取。そのままゴールとなった。
0オープンのスタート争いは、最内に入った篠原睦が先行した。それに木村武之が続くかに見えたが、7枠からダッシュを決めた青山がカマシて行った。試走タイム36の篠原ではペース上がらず、早い段階で青山が差して行く。そこへ、中団を捌いていた永井がマークする形。態勢を見計らって永井が青山を捌いて行った。すかさず青山も反撃に出たが、これは時期尚早。攻め焦って永井の後輪に接触し、後退。自滅してしまった。失速した青山に代わって2番手に付けたのは木村。その後ろに久門徹が付けていたが、高橋貢の意地の追い込みを食らって後退。高橋が3番手に浮上した。
永井の勝因は落ち着いたレース運び。8枠からそれほど良いスタートは決まらなかったが、着実に追い込んで青山と一対一の形を作り、きっちり攻め込んで行った。試走タイムにして2ツ劣っていた永井だが、自分のエンジン状態をきちんと把握してレースを進めていた。やはり大舞台で培ってきた経験がなせる業だろう。まだまだ、SGの優勝回数は増えていくことだろう。
またしてもチャンスを逃してしまったのは青山。篠原を交わして先頭に立った時点で初制覇が決まったかに見えた。試走タイムは出ていたのだから、永井に交わされた後も落ち着いて乗れていれば再浮上の機会があったかもしれない。SG優勝戦の大事な所でミスが目立つ青山。だが、このままSG無冠でいるハズがない。これまでと今回の経験は次のSGに必ずつながる。永井がそうであったように、青山も一度SGを獲れば、ポンポンと勝てるようになるだろう。今後が楽しみなのは変わりない。
高橋はエンジンが劣勢ながらも、地元の期待には最低限応えたと思う。もう少しエンジンが仕上っていたら優勝争いに参加できただろう。完全復調の日も遠くない。意地という面では久門も見せ場を作った。エンジンさえ良ければ大舞台でも戦えることを再び思い出させてくれた。今シリーズを大いに盛り上げた滝下隼平も、スタートさえ安定してくれば今後の活躍の場が広がる。なにしろスピードがあるのは証明できたのだから。
金子大輔が久々に栄冠掴む!
飯塚伝統のGIダイヤモンドレースは金子大輔が制した。
そのレースは波乱含みだった。まずは0ハン単騎の森本優佑が逃げ展開を作るかに見えたが、早い段階で地元の久門徹が交わしていった。そこへ、人気だった青山周平が仕掛けて行く形。これがややスムーズに行かず、展開が乱れてしまう。その隙を突いたのが金子大輔だった。レース展開を冷静に判断し、車を自由自在に操ってのゴール。
金子の強みは無駄に無理な攻めをせず、落ち着いたレース運びができるところ。普通の若手ならばチャンスがあれば、無理してでも攻めて行ってしまう傾向がある。しかし、そこは金子の違う所。確実にモノにできるところで、シッカリと判断力が働く。道中の走りで、常に心に余裕を持っているからこそできる技。スピード自体もかなりのモノがある金子なので、再びナンバー1に返り咲く可能性も十分ある。
活躍が目立ったのは久門。近況はエンジンが安定せず、成績もムラだったが、大事な戦いでしっかり仕上げてきた。不利がなかったら、展開もまたどうなっていたか分からない。本当に怖いレーサーとは、大舞台でしっかり実力を出せる選手だと再認識させられた。
今回の優勝戦でハンデが重くなってレースにも響いてしまった若手勢も、これからの成長の仕方によってはオートレース界の代表選手となれるべくポテンシャルを秘めているので、日々精進していってもらいたい。