ニューヒーロー誕生!
川口で行われた第30回SG全日本選抜オートレースは、浜松の32期・鈴木圭一郎が制した。鈴木はこれがSG初制覇。更に、オートレース界の記録を2つ塗り替えた。SG最年少優勝と、デビュー最速SG制覇。まさに規格外のレーサーが、ここに現れた。
優勝戦は3枠の青山周平がトップスタート。鈴木は2番手に出て、青山をマーク追走。3番手は永井大介、4番手に中村雅人が続く形。序盤から中盤にかけては逃げる青山に鈴木が食らい付いていく態勢。3番手以下は徐々に離されていった。先頭を走っていた青山だが、それほどペースは上がらず、すぐ後ろでプレッシャーをかける鈴木に対しコースを守るのが精一杯。しかし、鈴木も青山のインに仕掛けるタイミングがなかなか見つからない。そして、最後にドラマが待っていた。最終周回の4コーナーで鈴木が青山のナカに車を向ける。これが功を奏し、ゴール線の前でチョイ差しが決まった。
3番手を走っていた永井は、レース後半にかけて前2車との差を詰めていけたが、最終的には4着入線。3着には、スタート8番手からのレースになった高橋貢が猛追を見せて食い込んだ。中村は4番手スタートから一つ着順を落とし5着。早川清太郎、高橋義弘、松尾啓史は見せ場を作ることができなかった。
それにしても鈴木は強かった。今年に入り、これまでGIを3つ制している。当然、SGでも通用する走りを見せていたが、タイトル奪取までには至ってなかった。今回、初制覇できた要因は自信の増幅。記念レースの優勝戦の出走回数が増えるごとに落ち着いて乗れるようになってきた。今回の優勝戦も、最後まで焦ることなく、交わすタイミングを誤らなかった。また、鈴木はトップスタートからの逃げ切りタイプではなく、道中も冷静に追い込めるオートレースの醍醐味を味わわせてくれるタイプ。これからもファンの心を熱くさせるレースをたくさん見せてもらいたい。
32期の新人・吉原恭佑が大金星!
飯塚で行われたGIプレミアムカップの優勝戦は、伊勢崎の新鋭・吉原恭佑が制した。重走路の難コンディションを、吉原が我慢のレースで乗り切った。これで吉原はタイトルホルダーの仲間入り。
優勝戦は、事前の予報通り重走路で行われた。スタートを決めたのは地元の荒尾聡。最初の2周は各選手がコース取りに迷う形で、入れ替わりが激しかった。そこから、だんだんと、各々のコース取りが決まり、吉原はインコース徹底。荒尾と高橋貢は真ん中から外めのコース取りで競り合っていた。4番手以下は大きく離されて、早々と優勝争いからは離脱していった。
高橋と荒尾の競り合いは、最終的に高橋の勝ち。マイペースで走る荒尾の一瞬の隙を突いてインに飛び込んだ高橋に軍配が上がった。ここからは、高橋と吉原のマッチレース。直線の後半で伸び返す高橋に対し、吉原は突っ込みで差を詰めていく。最終周回までどちらが勝つのかは分からなかった。結果としては吉原が真っ先にゴール線を切った。
これで吉原は嬉しい記念初優勝。しかし、たまたま今回は優勝できたわけではない。ここに来るまでにはしっかりとした過程があった。吉原は常に勝利を目指して精進している。走法、乗る方に関してはかなりストイックに取り組んでいる感じが受けられる。どんなレースも負けたくはない気持ちで臨んでいる。この向上心は一流オートレーサーに不可欠な資質。まだまだ成長の余地はある。あると言うかありすぎる。この優勝戦のレースで、今後のオートレース業界に楽しみを与えてくれる選手になった。
鈴木圭一郎が今年3度目のGI制覇!
伊勢崎の第23回ムーンライトチャンピオンカップは、浜松の新鋭・鈴木圭一郎が制した。試走は良走路で、一番時計の28をマーク。エンジンは申し分なかったが、レース発走までに走路が濡れて重走路に。それでも好ダッシュから一気に抜け出し、レース序盤でケリを付ける形。見事な勝利だった。
0ハン先行は三浦康平。大きなコース取りでペースを上げたいところだったが、10線からトップスタートを決めた鈴木が早々と交わす。そこからは独走状態。コースを外さず、かつ、ペースを上げて逃げに入る。ただし、木村武之だけは徐々に差を詰めにかかってきた。残り2周はだいぶ差がなくなってきたが、なんとか振り切って優勝を決めた。
金子大輔、青山周平の外枠両者は序盤で好展開を作れず、最後まで苦しいレースを強いられてしまった。前田淳もスタート後の1コーナーで好位を奪えず、見せ場を作ることができなかった。田村治郎はレース終盤で意地を見せ、3着に食い込む健闘。谷川一貴は苦手の重走路で力を出せなかった。
今回の優勝戦では鈴木の対応力の高さが証明された。試走後の走路状況の変化は、選手にとって悩みのタネのひとつ。タイヤもエンジンのセットも良走路を想定してのモノ。それが重走路になったら、どこまで突っ込んでよいか、どこまでグリップを開けてよいか、その判断は難しい。最も若い期である鈴木がそれに対応できたのは、総合戦力が大きく上昇したことを示す形。ファンの想像以上の成長を見せている。これからがますます楽しみな選手だ。
中村雅人がSGグランドスラム達成!
第20回SGオートレースグランプリは、川口の中村雅人が制した。中村はこれで6度目のSG制覇。更に、現行SGを全て制すグランドスラム達成となった。レースを振り返ってみたい。
スタートは最内の岩崎亮一が外枠勢を突っ張って出た。しかし、1周バックで、2番手スタートを切っていた鈴木圭一郎が岩崎のインに突っ込んで行く。試走一番時計の3・29を叩き出した鈴木が、ハイペースの逃げに入る。スタートで3番手に出ていた中村も岩崎を交わし、鈴木を追撃にかかる。レース前半は鈴木の逃げに対し、中村が距離を計りつつ、仕掛けのタイミングを探していく。徐々にその差が詰まり、しっかりと捌く態勢を整えていく中村。そして、万全の態勢になった時、中村は迷わず鈴木のインに飛び込んで行った。これが綺麗にコーナー回り切り、首位を奪取。その後は鈴木を引き離すまではいかなかったが、差を保ちながら逃げ切りゴール。3着には序盤で3番手に立った青山周平が入線。新井恵匠が高橋貢を逆転し4着ゴール。スタート決めた岩崎はズルズルと後退し結果的には6着。永井大介と池田政和は序盤から見せ場を作れず、終始後方のままだった。
今回も中村の強さが際立ったレースだった。試走タイムこそ一番だった鈴木。序盤の展開が良かったとは言え、その逃げを捕まえてしまった中村は流石の一言。大舞台での勝負強さを見せつけられた。来期の全国ランクは青山周平にトップを譲ってしまったが、レースの総合力では中村の方が上ではないか。5日間のシリーズで、しっかり仕上げてくる整備力。ここ一番でのスタートの集中力。レースが始まってからの柔軟性。トップレーサーにどれも欠かせないファクターを備えている。
準優勝だった鈴木も、これからの楽しみを残した一戦となった。最終的には中村に捕まってしまったが、SGの優勝戦で1回は先頭に立てた。今回は中村の迫力が上だったが、スピード的には全く遜色ないモノを持っている。スタートの切れも問題ない。もはやSGを獲るのは時間の問題だ。
冷静な走りで青山周平がダイヤモンド制覇!
飯塚GI・ダイヤモンドレースは伊勢崎の青山周平が制した。試走一番時計に加え、序盤で好位を奪えたのが最大の勝因。先頭を走る鈴木圭一郎を落ち着いて攻略しての完勝だった。
先述の通り、試走は青山が一番時計の30。鈴木圭一郎と早川清太郎が32、中村雅人が33、池田政和が34、伊藤信夫が35、久門徹が36、そして岩田行雄が37だった。
スタートは最内の岩田が先行。しかし、鈴木が6枠からカマシ気味に出て、1周バックストレッチでは岩田を差し込み先頭を奪取。そこからはペースを上げての独走に入っていた。ほとんどの選手を引き離し、軽快な逃げに入っていたが、ただ一人、鈴木を追撃する選手がいた。青山だった。青山は、鈴木との差を徐々に埋めていった。そして、鈴木を射程内に捕らえると、間髪いれずにイン突っ込んだ。これが功を奏し、先頭に立つ。その後は、後続を更に引き離し、完璧な勝利となった。
このレースでは青山の成長が感じられた。今節の3日目、先頭を走る佐藤貴也に対し、最終周回の3コーナーで強引にイン突っ込んだが、回りきれず3着に番手を下げてゴール。走りの面での焦りが、結果的に着順を下げることになってしまった。しかし、優勝戦では前を走る鈴木に対し、しっかり回れる距離になってからインに突っ込んだ。これならコーナー回りきれず、番手を下げることもない。3日目の経験がすぐに優勝戦で生かされる形になった。この学習能力の高さは一流レーサーに必須条件。まだまだ快進撃は続きそうだ。