5月6日 第8回阿久利黒賞(3歳オープン 地方競馬全国交流 水沢1600m)
1着 リュウノツバサ
本来はスタートセンスのいい馬だが、よもやの出遅れ。村上忍騎手は「一瞬、ヒヤッとした」そうだが、無理に前に進出せず中団インでジックリ構える。
2コーナー過ぎ、内から外に持ち出して徐々に先陣に詰め寄り、3コーナーではエイプリルボーイ、ゴールデンクリークの直後につける。直線では最内エイプリルボーイ、中ゴールデンクリーク、外リュウノツバサが横一線で並び、3頭の叩き合い。エイプリルボーイが100m手前で一杯となり、ラスト50mでリュウノツバサが半馬身差ほど抜け出したが、ゴールデンクリークも渋太く粘る。結局、その差のままでゴールに入り、リュウノツバサはトライアル・スプリングカップに続いて連勝。岩手版皐月賞、一冠目を手に入れた。
「出遅れたが、気のいい馬なので中団につけることができた。後ろの馬(コンバットキック)も気になったが、2コーナーで相手をゴールデンクリークに絞ってスパート。半馬身抜けてからもう一伸びできず、どうかなと思ったが何とか我慢してくれた。この戦法ができれば距離が延びても心配ないかも」(村上騎手)
リュウノツバサは先行力がある半面、道中折り合いを欠くケースがままあり、それで末をなくしてスプリングカップまで未勝利だった。しかし今回は掛かるシーンはまったくなく出遅れが逆に功を奏し、収穫の大きい一戦となった。
正直、スプリングカップは展開に恵まれた印象は否定できなかったが、今回は強い―の一語で想像した以上に力をつけているかもしれない。
次走は状態を見てからだが、岩手ダービー・ダイヤモンドカップ(6月2日 盛岡ダート2000m)へ直行する可能性が高いと新田調教師。
2着 ゴールデンクリーク
前走・スプリングカップでは中団に控え、ずっと周囲が壁になる不利。それで2着惜敗した反省を生かして3番手外の絶好ポジションにつける。3コーナーでエイプリルボーイに並び、直後リュウノツバサの動きを見ながらエンジン全開。エイプリルボーイはひとまず交わしたものの、リュウノツバサとの叩き合いで先着を許してしまった。
「4コーナーでは勝てると思ったが、最後はフワフワしていた」と板垣騎手。今シーズンは走る方に集中し、精神面の成長が大きいと評価したが、まだ幼さが残っていたか。こちらも岩手ダービー・ダイヤモンドカップで真価が問われることになる。
3着 エイプリルボーイ
絶好の1枠にも入り、当然のように逃げの手に出る。道中も行きたがる素振りをあまり見せず、マイペースに持ち込み直線でも最内で粘ったが、ラスト100mで一杯となった。ただ、当日は逃げ馬がほぼ全滅に近く、決してエイプリルボーイには向く馬場ではなかったが、それでも3着なら上々。「折り合いがつくようになったので、前のようにバッタリ止まらなくなった」と阿部騎手。そのコメントどおり、以前は暴走気味の逃げだったが、こちらにも成長のあとがはっきり。
4着 リュウノアシェイブ
輸送の影響もなかったそうで、マイナス2キロで出走。レースは6番手を追走し、各馬が動いたのに合わせてスパート。直線でもマズマズの伸びを見せたが「初の右回りに戸惑ったかも」(村松騎手)だったようで4着にとどまった。村松騎手はこうもコメントした。「走る感じの馬」と。
5着 コンバットキック
前半はいつもどおり待機策を取り、後方2番手を追走。向正面からロングスパートをかけたが、ペースがさほど速くならなかったのも痛かった。これは追い込み馬の宿命で距離延長と舞台替わりのダイヤモンドカップで期待したい。
4月29日(火) 重賞「第8回留守杯日高賞」(3歳牝馬 水沢1600m)
(留守杯日高賞ゴール 写真・佐藤到)
1着 カネショウプルート
マサノパンダが逃げ、直後2番手を追走。「掛かるクセがあるので、折り合いだけを気をつけた」(村上忍騎手)そうだが、掛かったのは1周目スタンド前だけ。あとはぴったり折り合いがつき、3コーナー過ぎにマサノパンダ鞍上・菅原勲騎手の手が動いていたが、馬なりで楽につけ、直線に入ってラスト100mで先頭。あとは後続をグイグイ突き放し、2着に6馬身差の大差をつけて圧勝した。
カネショウプルートは過去10戦を消化し、着外はわずか1度のみと抜群の安定感を誇る半面、決め手に欠けてずっと未勝利。最後の爆発力が課題だったが、今回の強いこと強いこと。村上忍騎手いわく「イレ込みが激しいタイプなので馬体を増やすように調整をしたが、それが成功した」、プラス肝心のレースでもうまく折り合いついたのが勝因だろうが、まさにこれまでのうっ憤を一気に晴らした感じだ。
次走は選択肢がいろいろとありそうだが、まずは馬の状態を見てからと村上実調教師。
2着 ピンクゴールド
休み明け初戦がなんとマイナス18キロ、そして前走・菜の花賞ではさらに7キロ減って412キロで出走。骨格を見ると440キロは欲しい馬が大幅な体重減だったが、それでも菜の花賞2着が底力の証だった。そして今回はセーブ気味の調整が功を奏して18キロ回復の430キロで出走できたのが最大の収穫。
レースではいつもより前の競馬に心がけて後方3番手を追走。向正面からロングスパートをかけ、直線大外からいい感じで伸びてマサノパンダ、マツノマオを交わす。1着カネショウプルートとの差は如何ともし難かったが、ようやく本来のシャープさを取り戻してきた。
3着 マツノマオ
道中は3番手インでジックリ脚をためる戦法がズバリ的中。直線でも最内をコースに選んで2着争いに加わり、重特で初めて好勝負を演じた。「菜の花賞はレースにならなかったが、今回はこの馬本来の良さを出せたのでは」と板垣騎手。
4着 マサノパンダ
逃げたい馬は他にもいたが、ハナを譲らず果敢に先行策。道中は淀みない流れで進め、3コーナーで後続を突き放しにかかろうとするが、カネショウプルートは馬なりで楽に追走。これにはマサノパンダも苦しく、直線でも粘ったが、ラスト100mで力尽きた。しかも今回は450キロを割って449キロで出走。前回に比べてパドックで気合いが目につき、カネショウプルートとは逆にイレ込みがあったのも敗因か。
4月13日 第8回菜の花賞(3歳牝馬 水沢1600m)
(菜の花賞ゴール 写真・佐藤到)
1着 マサノパンダ
ミラクルジョンコが積極的に逃げ、その外2番手を追走。折り合いもうまくつき、3コーナー過ぎに早め先頭に立ったところ、ピンクゴールドが直線入り口で並びかけて一瞬、交わすシーンもあった。しかしラスト100mで再び突き放して1馬身半差。理想的なポジションといい、馬体を併せてからの伸びともすばらしく、パーフェクト内容で初の特別タイトルを手に入れた。
「大外枠がどうかと思ったが、スッと2番手につけたようにスピードがある。道中の手応えも上々でしたし、並ばれてからも頑張ってくれた」と菅原勲騎手。
調子の波が激しいのが牝馬だが、特にこの時期が顕著。実際、トーホウノゾミはまだ戦列に復帰していないし、ピンクゴールドも前回よりさらに体重を減らしていた中、マサノパンダは順調そのもの。追い切りでは相変わらず動かないが、デビューから着外に沈んだのは芝の2戦のみ。他ではすべて入着を果たし、休み明け初戦の前走もモエレハナオー、リュウノツバサに次ぐ3着に善戦していた。
マサノパンダは父がダートでの活躍馬が多いマジックマイルズ。母ジョージバンダ(その父ミルジョージ)は現役時代、北関東オークスを制するなど通算13勝をマークした強豪。NARグランプリ年度代表馬にも輝いたベラミロードと同期で最強牝馬世代とも言われていた。
改めて記すが、牝馬は体調の良し悪しが結果に直結するケースが多く、マサノパンダは本番・留守杯日高賞でも有力視されるに違いない。
2着 ピンクゴールド
前半は脚を貯めることに徹し、向正面からロングスパートをかける。この馬の良さは追い出してからの反応のすばらしさ。行き脚ついてからの伸びはシャープだったが、さすがにマイナス7キロの影響が大きかったのか、最後の爆発力に欠けた。それでも1番人気に支持され、2着確保が底力と見るべきだろう。
今後の課題は馬体回復以外になし。前走(3月20日 3歳A級)では2ヵ月半の休養明けだったにもかかわらず、大きく馬体を減らしてマイナス18キロの419キロ。中間に腹痛を起こしたのが原因だったそうだが、今回は約3週間の間隔が開き、回復するだろうと大方は見ていた。ところが、ふたを開けてみるとさらに減って412キロ。骨組みを考えれば440キロは必要な馬だけに一日も早い回復を待ちたいところだ。
3着 ミラクルジョンコ
枠差(3番枠)も利して果敢に先手を奪い、前半3ハロン38秒台。気持ち速い感じもあったが、道中マイペースに持ち込む。しかしマサノパンダに3コーナーで交わされ、そのまま失速するかと思ったが、直線でも渋太く3着に粘った。
4着 モエレアンドロメダ
今回からマルタンガールとブリンカーを着用。これまでどおりポツンと最後方からの競馬。向正面で満を持してスパートをかけたが、3コーナーでジェベルロバーツがつまづき、落馬寸前の不利。そのアクシデントの影響を受けたモエレアンドロメダは一度態勢を立て直さなければならなかったが、直線では最内を突いて鋭く伸びてミラクルジョンコとはクビ差の4着。これで今後のメドが立った印象。
4月5日 第20回栗駒賞(オープン 水沢1600m)
1着 タイキリオン
トウショウグローズが逃げ、前半3ハロン40秒前半の超スローペースに落ち、タイキリオンは絶好の3番手をキープ。ラスト800mからようやくペースが速くなり、3〜4コーナーで2番手セイントセーリングが脱落。直線に入ってもトウショウグローズが粘ったが、ラスト200mまで。ジワジワと後続を離して余裕のゴールを決めた。
「早い時期から乗り込んで体調は万全。ただレースと調教は別なので息が持つかだけが心配だったが、今日は強いレースを見せてくれた。マイルまでならダート芝関係なしにいい競馬をしてくれる」と板垣騎手。
次走は5月6日、シアンモア記念に直行。年齢が年齢だけに無理なローテーションは組みたくない、と酒井調教師。
2着 マンジュデンコウベ
前半は中団に控えていたが、向正面から早めにスパート。それが結果として功を奏し、キッチリ2着を確保した。前回、水沢1800m戦ではメンバーが甘く圧倒的な1番人気に支持されたが、伸びを欠いて3着止まり。鞍上の菅原勲騎手も首をかしげていたが、それもあって仕掛けを早めたのでは。あと課題はいかにスローだったにせよ、前半は折り合いにちょっと苦労する場面もうかがわせ、本来の爆発力を生かすためには我慢がきくかにかかっている。
3着 トウショウグローズ
先にも記したように超スローペースに落として気分良くスイスイ。ここでは格下のイメージが強く低評価だったが、沢田騎手の絶妙なペース配分が功を奏して3着に大健闘。
4着 ダイワフォーチュン
ポツンと最後方が指定ポジションだったが、流れが遅かったため離されないで後方2番手を追走。追い出しもいつもより早かったが、上がり37秒前半の競馬ではどうしようもなかった。決して力負けではない。
4月7日 第34回スプリングカップ(3歳オープン 水沢1600m)
1着 リュウノツバサ
リュウノフリーダム、リュウノゼウスがハイペースを形成したが、こちらは離れた3番手外をキープ。3コーナーで早めスパートをかけ、2頭を交わして先頭。その後は2馬身ぐらいのリードを取ってそのままゴールへ。「終いの勝負になると苦しいと思ったので、セーフティリードを心がけた」(村上忍騎手)。これが好判断となり、デビュー6戦目にして初の特別タイトルを手に入れた。
手前を替えない、掛かるクセがある、まだ後肢が弱いなどの課題面を残しながらの勝利だけに今回は価値が高い。距離はマイルがベストの印象だが、今後の成長次第ではビッグタイトルも決して夢ではない。
2着 ゴールデンクリーク
前半、ハイペースだったため控え気味にレースを進めたが、次から次へと外から被せられてきつい競馬を強いられる。勝負どころの3コーナーでも外に出せず、スパートが遅れる。普通ならば2着もなかったレースだが、直線を向いてようやく外に出すや一気に伸び、敗れて尚強し。最後まで気力が衰えなかった点に収穫もあり、地力アップは明白。次走・阿久利黒賞での巻き返しに期待したい。
3着 テンショウベスト
前半は中団インで我慢してゴールデンクリークとほぼ同じところからスパート。先行すると終いが甘くなってしまう傾向があったが、今回は控えることによってゴール前の伸びは実にシャープ。この戦法の方が合っているかもしれない。
5着 モエレハナオー
やや出遅れ気味のスタート。5番手外を追走したが、直線ではいつもの反応が見られずに終わった。前回はリュウノツバサとのマッチレースを制し、今回も人気を集めたが、マイナス5キロ以上に馬体がしぼんだ印象。おそらくで言うが、前回厳しい競馬を制した反動があったのではないか。
6着 コンバットキック
馬体重が前走(1月2日・金杯)比プラス19キロ。見た目では太く映らなかったが、パドックでの入れ込みが目立った。本領発揮は次走以降になりそうだ。
1月14日 重賞・第8回トウケイニセイ記念(水沢1600m)
(トウケイニセイ記念ゴール 写真・佐藤到)
1着 テンショウボス
中団キープはいつもどおりだったが、若干事情が違っていたのは1枠だったこと。団子状態になった場合、内に包まれる可能性もあったが、2コーナーで馬群がバラけたのも幸い、向正面でうまく外に出した。3コーナー手前から徐々にスパートをかけ、直線では早め先頭に立ったタイキリオンとマッチレースに持ち込む。そうなるとテンショウボスの必勝パターンで、内で粘るタイキリオンをジワジワ突き放して1馬身半差。完勝の内容で自身の連勝を5に伸ばした。
「馬場状態もテンショウ(ボス)に向いていたので前半は抑えた。1枠が気持ち不安だったが、展開がバラけて外に出せたのでこれで大丈夫だと思った。最後も締め括れたのでまずはホッとした」と小林騎手。
次走はフェブラリーステークスか佐賀記念。「この馬にベストな条件になる方を使いたい。場所は未定だが、今後は美浦近くのトレセンか、南の方で乗り込みたい」と佐々木修一調教師。
2着 タイキリオン
好ダッシュを決めて、普段の競馬より前の4番手を追走。道中の手応えも抜群で先陣グループにいたニシノグレイシャ、ナイキアヘッド、ダンディキングを3コーナーで交わして先頭。これはテンショウボスが動いたから当然の選択、4コーナーを回っても脚色は衰えなかったが、相手が相手だけに仕方なし。むしろ最後まで粘って2着確保を讃えるべきだろう。
3着 マンジュデンコウベ
掛かり気味になりながら菅原勲騎手が我慢させ、5番手をキープ。テンショウボス、タイキリオンがスパートをかけたのを見て追い出したが、2頭とは反応の差が明らか。直線でもマズマズの脚を使ったが、3着確保が精一杯だった。
フサイチギンガ初勝利!!
11月23日、フサイチギンガはデビュー戦(水沢850m)を迎え、3着に入線したものの、直線で大きく外方逸走。これではまともにレースを使えないと佐々木修一調教師は苦渋の判断。遠野馬の里で去勢手術を行い、12月25日に帰厩。最終追い切りを1月11日に消化して何とか出走にこぎつけた。
フサイチギンガはスタート直後に早くも外に行こうとしたが、それを必死に抑えてコーナーを無事に通過。中団キープから向正面で前に進出し、4コーナーで先頭。アスベルが一旦抜け出すシーンもあったが、ラチ沿いなら左ムチを入れても大丈夫だろうと菅原勲騎手が気合いをつける。その効果もあって2戦目にして待望の初勝利を飾った。
「課題も多かったが、結果を出せてホッとした。去勢後で正直、無理をさせたところはあったが、能力が高い馬なので乗り越えてくれると信じていた。あとは冬の休養で精神面の成長に期待したい」と佐々木修一調教師は語った。