岩手の二大看板レース「ダービーグランプリ」が復活したのは3年前。1986年に創設したダービーGPは出世魚にも例えられ、年々グレードが上がる一方だった。
地方交流時代にもスイフトセイダイ、トミシノポルンガ、ミスタールドルフなどの強豪が名前を連ね、JRAにも門戸を開放して以降もゴールドアリュール、ユートピア、カネヒキリ、そしてイシノサンデーとダート界を代表する馬たちがズラリ。
しかし2007年、全国にまん延した馬インフルエンザによる地元重賞での実施を余儀なくされ、翌年には休止。存廃問題に揺れ、首の皮一枚で存続した岩手競馬の状況を考えれば、この選択もやむなしだった。
その一方でダービーグランプリの復活を望む声は高く、2010年、原点回帰して地方競馬交流で復活。ロックハンドスターが地元の期待に応えて優勝。新三冠を制し、ファンも大歓声で祝福した。
翌年は岩手へ里戻りして素質開花したカミノヌヴォーが圧勝。南関東在籍時には到底勝てない相手たちをねじ伏せた。両馬とも桐花賞まで制圧。年度代表馬の座も射止めた。果たして今年、岩手勢3連覇を果たすか、これが最大焦点となった。
その筆頭格はロッソコルサ。中央1勝から今年春に転入。いきなり3歳特別を連勝して一躍注目の的。勇躍、岩手ダービー・ダイヤモンドカップへ駒を進めたが、南関東から帰郷したアスペクトに屈して2着。
以降、善戦を続けながら、あとひと伸びが足りず僅差で負けていた。その負の連鎖を吹っ切ったのが不来方賞。アスペクトが調子を落としていたのは確かだが、好位追走から4角先頭。そのまま押し切って待望の重賞タイトルを手にした。
ロッソコルサは芝ダートを問わないタイプだが、反応が鋭いのは右回り。コース替わりは大歓迎だし、小回りだけに先行できるのは強み。古馬一線級とも互角の勝負を演じてきたことを考えれば勝ち負けは必至だろう。
ただ不安がない訳ではない。不来方賞はメンバーも甘く、得意パターンに持ち込んだが、今回は3歳馬とは言え全国の強豪が相手。最後の爆発力が勝敗を決するだけに単勝負はリスクが高い。
それならばニシノファイターが優位と判断した。2歳時に川崎・鎌倉記念を制し、今季は北海優駿、王冠賞の二冠を制覇。今季2戦の着外は古馬重賞で折り合いに若干難しい面をのぞかせていた。
それでもスンナリの流れになれば地力を発揮。絶好の内枠を引き当てたことも勝利を後押しする。地元の道営記念には見向きもせず、ここ1本に絞って調整。相当の勝算を持って臨んでくるに違いない。
アルドラは21戦9勝2着5回。北日本新聞杯、サラブレッド大賞典と3歳重賞を2勝。レースぶりも豪快で一昨年ロックハンドスターの2着ナムラアンカーを上回る実績。父は両馬ともマイネルラヴ。こちらは牝馬だが、交流レースにも積極的に出かけ、強い相手にも揉まれてきた。ミスタールドルフ以来、2度目の金沢優勝なるか。
東海3頭の中ではブライトシンプーが最も怖い存在。東海ダービーはマイネルセグメントの頭差2着だったが、その後の成長ぶりが目覚しい。岐阜金賞の勲章も手にして登場。小回り名古屋、笠松でも追い込みを決めているのが不気味。
ショコラヴェリーヌは逃げ馬だけに大外12番が痛い。前半で脚を使ってしまうのは厳しいが、小回りなら相殺できるか。第1回、トミアルコが北関東三冠馬サラノオーの追撃を封じて逃げ切ったが、そのシーンを思い出す。
◎(3)ニシノファイター
○(8)ロッソコルサ
▲(4)アルドラ
△(12)ショコラヴェリーヌ
△(6)ブライトシンプー
△(1)ユウキタカラオー
<お奨めの1頭>
11R トートアフィシオン
水沢、盛岡、盛岡芝で1勝ずつをマーク。前走は芝1000m・五葉山賞を競り合いから勝負強く押し切った。1300mはもちろん守備範囲
24日メインは重賞へ再度格上げされた「第24回栗駒賞」。舞台が水沢1400mへ替わり、これまでの成績を一旦クリアーにしなければならない。適性重視か、総合力重視かで評価がガラリと変わる。その意味で波乱の要素をたっぷり含んでいる。
最終的に重視したのは総合力。トーホクキング、カミノヌヴォーが本線。距離不足は絶対能力でカバーできると見た。
トーホクキングは昨年秋から本格化を迎え、みちのく大賞典制覇でついに重賞ウィナーの仲間入りを果たした。続くマーキュリーカップでも見せ場を作って5着に健闘したが、その後は取りこぼしの連続。
南部杯9着はともかく、青藍賞3着、けやき賞4着などシャープなマクリ脚が影を潜めてしまった。しかし前走・絆カップでは久々にマクリがさく裂。前半の超ハイペースにも助けられたが、直線半ばで一旦先頭。
誰もが勝利と復活を疑わなかったが、ポツンと最後方を追走したトウホクビジンの大外強襲に遭って2着。悔しい負けだったが、復調の兆しをうかがわせた。
今回の不安は距離1400mに尽きるが、トーホクキングは追い込み馬ながら水沢コースが得意。同条件で行われた春の新緑賞(B1)でも高橋悠里騎手が豪快なマクリを決め、1馬身半差で完勝。タイムは平凡だったが、最も強い内容だった。久々の美酒を味わうか。
カミノヌヴォーは絆カップ9着。2番人気にこたえることができなかったが、前半3ハロン35秒3の超ハイペースに巻き込まれたのが敗因。あとはプラス6キロと体重が増えていたことも反応を鈍くさせたとも解釈でき、体が絞れてくれば巻き返して当然だろう。
ダイワマックワンは桂樹杯4着、OROカップ8着、OROターフスプリント2着。いずれのレースも末が甘くなっての敗戦。前後してダートで2勝マークし、現状はダートがベストの印象。1400mも適性高く、上位争い必至。
スーパーワシントンはOROターフスプリント3着だったが、前走・盛岡マイル戦をハイタイムで快勝。同じ1400m・岩鷲賞でダイワマックワンにハナ差先着3着など、いつでも全力投球のタイプ。ここでも軽視できない。
怖いのは格上馬ゴールドマイン。今回が走り頃の3戦目を迎え、前走・絆カップでも結果6着だったが、0秒7差。叩かれた良化度は明らかだった。一昨年の岩鷲賞を優勝し、昨年の栗駒賞でも2着。一発の可能性は十分にある。あとは近走の充実ぶりからライトマッスルも押さえが必要だろう。
◎(2)トーホクキング
○(8)カミノヌヴォー
▲(10)ダイワマックワン
△(12)スーパーワシントン
△(3)ゴールドマイン
△(1)ライトマッスル
<お奨めの1頭>
9R ブラウシュタイン
転入後、圧巻の4連勝をマーク。一連の走破タイムもすばらしく、初の水沢でも追いかける手
今週から冬の水沢開催がスタート。"待ってました"と言わんばかりに一気に冷え込みが厳しくなりました。そしてコース状態の方もいかにも「冬の水沢」という感じで、土曜日は締まった不良馬場の時計勝負、日曜は泥だらけの不良馬場で行ったモン勝ちの"位置取り競馬"と予想する方を翻弄してくれます。
この時期は基本的に「不良馬場」を前提にして予想を組み立てていくのですが、天気によって、ほんのちょっとした気温の上下でコロコロと様相を変えるこの時期のコース状態は、事前の想定と完全に異なってしまっている事も少なくありません。
毎年この時期はそんな事を書いているような気がしますけども、やはり冬の水沢は当日のコース状態も良くご覧になったうえで最終決断をされる事をお奨めしておきます。もう少しすると「水が浮きまくった田んぼ馬場」が普通になるので逆に考えやすくなるのですが(得意・不得意が明確に出やすい)、今くらいの時期が一番やっかいでしょうね。
●10Rの買い目
馬単(3)=(8)、(3)=(4)、(8)=(4)、(3)→(1)、(8)→(1)、(4)→(1)
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18日メインは過去39回の歴史を誇る伝統の2歳重賞「第40回南部駒賞」(水沢1600m)。岩手2歳№1を決定する一戦で創設は1973年。盛岡(旧)1100mで行われ、第1回優勝はバーバー産駒カネシランだった。
2000年から東北交流で実施され、上山代表が3連覇を決めた。そして現在と同じ地方競馬全国交流へ昇格したのは2004年から。2年連続で北海道勢が優勝を果たしたが、2006年のパラダイスフラワーを皮切りに、トーホウノゾミ(トーホウエンペラー産駒)、ワタリシンセイキ、ロックハンドスター、ベストマイヒーロー、アスペクトと6年連続で岩手勢が優勝。その06年から遠征馬は北海道所属馬のみ。完全に岩手vs北海道の対決図式が定着した。
今年は北海道から4頭が参戦し、レベル比較が重要なポイントとなる。この2歳世代の北海道勢は全国を席けん。エーデルワイス賞でワンツーフィニッシュを決め、鎌倉記念2、3着。JRA札幌・すずらん賞ではシーギリヤガールが優勝。また先月の岩手、北海道交流・知床賞でもミネサランサジャが制するなど、相当レベルを誇っている。
以上のことから北海道優位の見解が妥当だろうが、主軸に岩手の大将格ロックハンドパワーを指名する。前走・若駒賞で大逃げを打ったワタリルーブルを3コーナーから捕らえにかかると、一気に差を詰め直線半ばで先頭。余力を残して2着に3馬身差をつけた。
これがうれしい初重賞制覇。デビュー当時はひ弱い面が残っていたが、一戦ごとに良化。まだ成長途上で課題はいくつかあるが、例年の南部駒賞優勝馬と比較しても勝るとも劣らない。また若駒賞優勝馬が4年連続で制していることも心強い。
逆転筆頭はミータロー。デビューから2連勝を飾り、函館2歳ステークス(12着)、クローバー賞(10着)と2戦連続でJRAへ挑戦。また前走は川崎・鎌倉記念へ遠征し、初の左回りをモノともせず見せ場作って3着に善戦した。何よりも強みは強豪メンバーと戦ってきたこと。岩手とは比較にならないほどの逞しさがある。
ヴェルシュナイダーは5戦2勝。ビギナーズカップ、若駒賞と連続2着に敗れたが、若駒賞はスタートで前を塞がれる不利。結果、ロックハンドパワーに0秒5差もつけられたが、まだ勝負付けは済んでいない。
オグリタイムはタイムパラドックスの初年度産駒。デビュー3戦目から圧巻の4連勝を飾った。サンライズカップ6着、平和賞11着と着外に沈んだが、平和賞は左回りに戸惑ったと解釈。走り慣れた右回りで反撃に転じるか。
コスモアックスは知床賞3着。装鞍所で初めて実馬を見たが、すばらしい体が印象的だった。それ以前の4戦は振るわなかったが、レースに集中し始めているのが不気味。夏場に体調崩したアクイラが前回快勝でようやく復調。スンナリ逃げの手に出れればアスペクトの弟という血統背景からも大駆けがあって不思議はない。
◎(5)ロックハンドパワー
○(7)ミータロー
▲(11)ヴェルシュナイダー
△(6)オグリタイム
△(10)アクイラ
△(2)コスモアックス
<お奨めの1頭>
5R ブリリアントロビン
ハイレベル北海道で2勝2着3回の好成績。転入前のエーデルワイス賞(JpnⅢ)でも9着ながら1秒4差。まずはお手並み拝見
今週17日から舞台は盛岡から水沢へ。年明け1月14日まで約2ヶ月間、ノンストップでシーズン最終日まで突っ走る。
改めて言うまでもないだろうが、盛岡と水沢は真逆のコース形態。1周1600m左回りバンケットコースから1周1200mのフラットコースへ替わる。しかし、小回りでも追い込み馬が届くケースも多々。それが水沢の特徴なのだが、中間の雨がどう影響するか。先行有利か、それとも差し有利か。そのあたりの傾向をいち早くつかみたい。これがコース替わり対策の最善手となる。
17日(土)、初日メインはB2級馬による「ノベンバーカップ」。コース替わりに加え、舞台は1400m。短距離の範ちゅうへ入る条件が勝敗に大きく影響し、適性が重要なファクターとなる。
以上のことを踏まえ、主軸にクイーンザリッチに推す。ここ4戦は好、凡走の落差が激しいが、これは本質的にスプリンター型だから。3走前は先手を取れず、ハイペースの2、3番手を追走して直線一杯となって6着。前走も4番手に甘んじた上、1800mの距離がこたえた7着。ある意味で仕方なしの結果だった。
その2戦をはさんで4走前水沢1800m戦の2着はうまく折り合いつけて流れ落ち着いたから。また前々走は得意の1400m戦で全能力を発揮。3番手追走から逃げ込みを図ったブローザウインドをキッチリ差し切った。
このレースを含め、1400m戦は盛岡、水沢を問わず8戦5勝2着3回と連対パーフェクトを継続。逃げがベストだが、控える競馬でも1400mならこなせるのが強み。適性の高さを存分に発揮する。
ウイントゥヘヴンは転入2戦とも3着。どちらも逃げの手に出たが、1800mの距離が長く末が甘くなったレースだった。しかし今回の舞台は1400m。名古屋時代に同距離で<6.5.3.2>と抜群の安定感を誇り、距離短縮は大歓迎。転入前の2戦は差し競馬での2連勝。逃げて良し、差し良しの自在脚で首位を狙う。
ドウデスは1枠を引き当てた。岩手初戦は5着に終わったが、2戦目の盛岡ダート1600m、芝1000mのもみじ賞を連勝。自慢のスピードが冴え渡った。水沢は未知数だが、絶好枠から一気逃げ切りのシーンまで。
セイファートは中央ダート1800m1勝。前走は1200mの忙しい競馬が不安視されたが、出遅れながらも豪快なマクリで快勝。強烈な破壊力を披露した。今度は小回り対応がカギを握るが、弾みついたのは間違いない。
レッドキングダムはディープインパクト産駒。中央未勝利から転入し、初戦2着に続いて前回快勝。待望の初勝利をマークし、これで弾みついた。気になるのは距離が1800mへ一気短縮され、セイファートと同様、小回りをどう克服するか。素質は当然だが、一級品だ。
◎(5)クイーンザリッチ
○(4)ウイントゥヘヴン
▲(1)ドウデス
△(9)セイファート
△(12)レッドキングダム
<お奨めの1頭>
5R ロータスドリーム
転入初戦こそ3着に終わったが、2戦目から圧巻の2連勝。スピードの違いを見せつけた。距離延長も能力の高さで難なく克服