この15日、札幌競馬場で行われた北海道スプリントカップの取材に行ってきました。このレースはここ何年か連続で現地で見ていまして、いつも初夏の北海道らしい良い天気に恵まれていたんですけれど、今年は曇り空。そのうえレース直前には土砂降りの雨になるという、運の悪い事になってしまいました。
レースの方はというと、優勝したのはJRAのアグネスジェダイ。2着もJRA、そして勝ち馬と同厩舎のシーキングザベストという結果でした。地方所属馬は、ベルモントファラオが3着に入ったけれど勝ち負けにはちょっと手が届かない、という感じでしたね。
アグネスジェダイの次走はクラスターCの予定。シーキングザベストもメンバーによってはクラスターC出走の可能性があります。シーキングザベストは1000mでは持ち味がでなかっただけに、1200mでの走りを見てみたいものです。
さて、今週の月曜日は重賞・特別戦が無く、メインレースはA1級のエクセレント競走となっています。8頭立てとちょっと寂しいんですけれど、その分狙いを絞りやすいという事でいきましょう。
このレースの本命はローランボスコを推します。4月のまんさく賞を圧勝した後、盛岡の2戦がふるいませんでしたが、これはやはりローランボスコは左回りがもうひとつだという事に尽きるでしょう。今度の舞台は右回りの水沢、ここ2戦とは違ったスムーズなレースができるはずです。
また、シアンモア記念の時は強力な遠征馬がいたせいもあってか、流れに乗り損ねてレースにならなかった印象がありました。前走のあすなろ賞では早め早めに先行していくレースを心がけて5着に粘り込んでいますから、調子の方も決して落ちてないと判断できます。今回のメンバーならオープン特別勝ちの実績も武器になりますし、なによりオープンで揉まれてきた経験を効かせたレースを見せてくれるでしょう。
対抗は思い切ってツインズジョーカーを。この馬、以前は船橋所属で左回りを中心に走ってきましたが、基本的に平坦コース向き、かつ右回りは巧者といっていい巧さだと思います。ここ2戦は度外視して、狙い直すならここでしょう。馬体重が絞れてくればなおプラス材料。
以下となるとまずはマツリダブロッコ。エクセレント競走では6勝を挙げている“エクセレント競走の鬼”です。今シーズンは中一週・実質連闘・中一週・中一週、そして今回も中一週と強行軍で来ていてそろそろ疲れが見え始めたのが気になりますが、エクセレント競走では殆ど掲示板を外したことがない堅実派だけに狙いを外しきれないですね。
もう一頭はタカエイチフジ。転入初戦の前走では、前地で5月まで走っていただけのことはあると思わせる好仕上がりで強豪相手に2着でした。今回はその時ほどうまくはいかないと思いますが、前走だけの走りができれば十分上位に食い込めるでしょう。
ということで買い目は、4枠4番ローランボスコから3番ツインズジョーカー、8番マツリダブロッコ、1番タカエイチフジへ。ツインズジョーカーの体重がしっかり絞れているようならそちらを頭で狙ってみるのも面白いかも。
18日メインは短距離特別「第32回姫神賞」(水沢ダート1400m)。このレースの1、2着馬には7月2日、同じ条件で行われる重賞・栗駒賞への優先出走権が与えられ、その先にはG?・クラスターカップ(盛岡ダート1200m)と続く短距離路線が敷かれている。先日15日、G?・北海道スプリントカップ(札幌ダート1000m)が行われ、JRAアグネスジェダイ、シーキングザベストと森秀行厩舎が1、2フィニッシュを決めたが、地方競馬もダート短距離戦線が本格的に始動した。
さて姫神賞。主軸にタイキシェンロンを指名する。前走・みちのく大賞典ではコース適性ひと息の盛岡、そして距離2000mも不安視されたが、2番手追走からコアレスハンターの2着に粘り、地元の意地を見せてくれた。
これまでタイキシェンロンは通算22勝をマークしているが、その勝ち星のうち16勝が1400〜1600mまでに集中。右回りになると、さらに顕著で<19.3.3.4>。水沢に限れば<9.3.2.1>。唯一の着外は船橋から遠征した昨年の青藍賞6着のみと、恐ろしいまでの水沢巧者ぶりを見せてきた。
もっとデータを探ってみよう。水沢1400mは4戦3勝3着1回。一昨年、栗駒賞を制し、冬の重賞・早池峰賞2勝。3着敗戦は一昨年の早池峰賞でトキオパーフェクトを捉え切れなかった一戦だったが、それでもクビ、頭差の僅差だった。
今回は地元同士の戦いで勝負付けの済んだメンバーでほぼ死角なし。断然の主役を演じてくれるだろう。
(写真はみちのく大賞典出走時のタイキシェンロン)
タイキシェンロンの軸は確定。ヒモ捜しの一戦となり、その一番手はニッショウウララだ。大勢はベルモントシーザーだろうが、今シーズンのニッショウウララは一味違う。驚いたのは前々走・あすなろ賞2着。好スタートを切ったが、先行争いがごちゃごちゃとなり、一旦5番手まで下がる。これまでのニッショウウララならそのまま失速するパターンだったが、直線で盛り返して2着に食い込んだ。
ニッショウウララはデビュー戦で水沢850m51秒1のレコードをマークし、その記録はいまだに破られていないのだが、常に気性難と背中合わせ。ゲートで暴れてみたり、外からかぶせられるとズルズル下がったり。時に強いレースを見せるのだが、好走が続かず信頼性に乏しかった。しかし厩舎スタッフいわく『今年はズブさが出て、それが良い方に向いている』の言葉どおり、年齢を重ねて落ち着きが出てきたのが、目下の充実度につながっている。もちろん身上とするのは天性のスピード。ニッショウウララにとって今回の水沢1400mはもってこいの条件となる。
一方、2番人気に支持されるであろうベルモントシーザー。南関東から5月に転入し、A級戦、あすなろ賞と2連勝。続くみちのく大賞典では2000mは長すぎると言われていたが、それを跳ね除けてタイキシェンロンとの2着争いの末、首差3着に惜敗した。
この岩手3戦とも道中、掛かるところを見せ、折り合いに苦労するシーンがあった。となると折り合いを気にしなくていい今回の1400mは合うだろうし、右回りは旧地・大井で経験豊富。やはり2番手は譲れない。
しかし勝手な見解だが、ベルモントシーザーは本質的にマイラーではないだろうかと思っている。逆にニッショウウララはスプリンター。とすれば距離適性の差が出るのではないか…と推理してみたのだが。
以下は4歳馬オリエントボス、芝が主戦場だったが、1400m戦で3勝ゲイリーファントム、古豪トキオパーフェクトらが続くが、上位3頭とは開きがあり、押さえ程度になるだろう。
3連単は3を1着固定に12、1を2、3着折り返し。穴で6、7、4を3着押さえ
馬複は3−12、1−3の2点に絞る
<お奨めの1頭>
11レース キタノソナタ
転入2戦目の5着以外、すべて連対と抜群の安定感を誇っている。ここも信頼の軸
水沢コースへ替わって2週目に突入したが、予想どおり展開が大きくモノを言うようだ。前週3日間の傾向はやはり先行有利。特に内ラチから2、3頭分ほど外を回ってきた馬の伸びが顕著だった。それに対して馬場の中どころから外をコースに選んだ馬は伸びがひと息。この傾向をしっかり抑えておきたい。
17日のメインはC1級馬による1600m戦「第7回北山崎特別」、12頭立て。スタート地点は3コーナー引込み線奥で、200mの直線を走って1周目4コーナーに入る。3コーナースタートの1800m戦ほど極端ではないが、水沢1600mも基本的には内枠が有利となる。
有力どころに4歳馬が集中し、いずれの馬も好調キープとおもしろい一戦となったが、主軸にハセノコンドルを指名したい。中央4戦未勝利4着1回が最高の成績で岩手転入初戦は4月10日。格付け賞金の関係で最下級C3に編入されてメンバーにも恵まれたが、水沢1400m戦をアッサリ逃げ切り、2着に0・8秒差。余裕たっぷりでゴールに入り、続く4月23日はC2級へ昇格したが、全く意に介さず快勝して2着に0・6秒差。そして前走はC1級と一戦ごとにクラスアップしたが、好スタートから2番手抜け出しを決めて3連勝を飾った。
マイルは未経験の距離だが、中央時代の4着1回は芝1800mでマークしたもので不安材料にはならないし、しかも絶好の1枠も引き当てた。
エルコンドルパサー産駒が岩手で素質開花と疑いなく将来、オープン入りへの土台をしっかり固めておきたい。
相手は同じ4歳馬マチカネダイキチが演じる。中央3戦0勝から昨年12月、岩手入り。これまで芝ダートを問わず<4.3.2.0>とすべて3着以上にまとめ、安定度抜群。ここ2戦は3、2着と足踏み続けたが、水沢に戻って巻き返しに転じる。また4走前、同条件(水沢1600m)で行われたC2・田瀬湖特別でタイム差なし2着に入った実績も強気にさせる材料だ。
前記2頭を逆転、首位まで考えられるのがアクアフェアリーだ。岩手でデビューし、芝とダートでそれぞれ1勝。冬期間は名古屋で9戦2勝から今年4月に再転入して5戦4勝。目下3連勝と波に乗っている。再転入後、唯一の敗戦は田瀬湖特別7着だが、この時は出遅れを喫したもので基準外と見ていいだろう。
マルカスティンガーも侮れない存在だ。ここ2戦は4着止まりで自慢の末脚が不発に終わっているが、これはあくまでも展開のアヤ。コース、距離問わず豪快に捲くってくるのがこの馬。仮に前半がハイペースになれば直線一気のシーンまであるかもしれない。
他にクレセントムーン、前回快勝マルカクールも軽視できず、波乱の要素も考えておきたい。
3連単は1を1着固定に11、10を2、3着折り返し。3着押さえで12、6、4としたが、1は展開次第で2、3着の可能性もありそうだが…
馬複は1−11、1−10、1−12、1−6、10−11
<お奨めの1頭>
11レース ミチノクレット
近2走は6、5着と精彩を欠いたが、これは苦手の盛岡なので仕方なし。5勝マークの水沢でエンジン全開。
馬の頭部に装着する馬具というとメンコやブリンカー、シャドーロールなど様々です。詳しい解説は「テシオ」誌上で本誌横川が書いておりますのでそちらを読んでいただくとしますが、最近目立って増えている馬具にチークピーシズとパシュファイアというのがあります。
チークピーシズは頬皮(目の後ろのあたり)にシャドーロールと同様の“ふわふわ”を巻き付け、ブリンカーと同じく後方の視界を遮るもの。もともとは、ブリンカーは装着するのに事前登録が必要なのに対して、チークなら直前に使うか使わないかを決められるということで普及したそうですが、現在はシャドーロールの申請も必要ないので、厩舎の好みによって選ばれているようです。パドックではこのチークピーシズの上にメンコをかけることもありますが、この状態を正面から見ると何ともユーモラス。顔の幅が倍になったように見えて、失礼ながら「オタフク」に思えてなりません。
一方、目全体を黒いネット状のもので覆ってしまうのがパシュファイア。視界を遮ってレースに集中させる効果を狙ったものですが、馬の表情が見えないというか、見慣れないうちはちょっと不気味な印象さえありました。
さて、岩手競馬を見ている皆さんの中には、馬具に関して最近「あれはなんだ?」と疑問に思っているものがあるのではないでしょうか。それはレストオブセールという馬の左目に装着された、プラスチック製の半球形をした物体。関係者はあれを「カップ」と呼んでおり、ブリンカーの一種と分類されるようです。(ブリンカーも「ハーフカップブリンカー」「フルカップブリンカー」という呼び方があります)
レストオブセール
彼が初めて登場した4月はまだ気温が低く、内側が白く曇っていたため「あれで見えているのか?」と思ってしまったのですが、実際は透明な材質のため視界は確保されています。千葉四美調教師にうかがったところ、レストオブセールはもともと左目に問題があり、砂はもちろん風が当たっただけでも悪影響が出るので保護のためにカップを装着しているのだそうです。ちなみに片方でも目が見えない馬は競走馬になれないのですが、レストオブセールは弱視ながらも視力は失われていないので大丈夫。少々のハンデにはなっても、自身の能力で乗り越えて欲しいですね。
また、競走馬になってから失明した場合ついては片方だけなら平地のみ出走可能なのだそうで、中央ではルーベンスメモリーという馬が走っています。「隻眼の〜」というとキャラクター的にはちょっとカッコイイ感じもありますが、日常世話をしている厩舎の方々にとっては、いろいろと気を使うことも多いのではないでしょうか。人馬共々、頑張って欲しいと思います。
(文・写真/佐藤到)
<次走へのメモ>
6月11日 岩手ダービー ダイヤモンドカップ
(関口房朗氏)
『ダービーウィーク』のトリを務めた「岩手ダービー ダイヤモンドカップ」。当日はフサイチ軍団の総帥・関口房朗氏が水沢競馬場へ来場。9レース終了後には関口氏を囲んだトークショーが行われ、イベント会場に多くのファンが集まった。関口氏のユーモアあふれるトークに場内は沸きあがり、また“岩手でもフサイチの馬を2頭、預けます。男に二言はありません”と声高に話すと、ファンから大歓声と拍手が巻き起こった。
トークショーの中で関口氏は『競馬は夢とロマンがなければ』と熱く語っていたが、これこそが今の地方競馬に欠けていたことで、しかも最も重要なこと。自分自身も改めて肝に銘じなければならないなと思いました。
(岩手ダービー ダイヤモンドカップ 1着オウシュウクラウン)
1着 オウシュウクラウン
久々の水沢遠征でテンションが高くなったのか、「パドック、返し馬でイライラしていた」と小林騎手が語ったとおり、抜群のスタートを切って理想の2番手を追走したが、1周目2コーナーで早くも掛かって追走。逃げたのがダンディキングではなく、ダンストーンアレスでこれは想定外だったが、向正面まで折り合いに苦労し、3コーナーで早々とダンストーンアレスを交わして先頭。4コーナーまで持ったままで進み、サイレントエクセル、テンショウボスが接近してきたのを見てからスパート。しかし折り合いを欠いても気力は全く衰えず、直線で後続を再度突き放して待望の重賞タイトルを獲得した。
レース後、「折り合いが大変だったが、今年は体もしっかりして成長を実感する」と小林騎手。里帰り後、今回で3戦を消化したが、芝でもダートでも同世代では一歩抜けた存在となった。今後も岩手3歳戦線をリードしていくに違いない。
これでG?・ジャパンダートダービーの優先出走権を獲得した訳だが、地元レースをにらみながら慎重に決断したいと桜田浩三調教師。
2着 サイレントエクセル
冬期間の休み明け初戦となった重賞・日高賞で久々に本馬を見た時、馬体が寂しくなったな…が正直な感想だった。シーズン直前、順調さを欠いたというのが理由だったが、それでも勝って役者の違いを見せつけた。続く盛岡・やまびこ賞ではさらに体重が減り、デビュー以来、最低の436キロで出走し、テンショウボスの2着に敗れた。
しかし今回は輸送のない地元競馬でもあったが、442キロまで回復。見た目でも馬体に張りが戻っていた。それがレースにも結びつき、オウシュウクラウンをマークする3番手を追走。テンショウボスが仕掛けたのを見てスパートをかけて接戦となった2着争いでクビ差先着。レース内容も文句なしだった。オウシュウクラウンとの勝負付けは済まされたが、次位候補の有力馬の一角に復活した。
3着 テンショウボス
サイレントエクセルの直後につけ、先にスパート。「勝ちに行った分、最後の伸びが甘くなったが、納得のレース」と阿部騎手が語ったとおり、成長確かなところを見せた。ただ、今回は地元競馬にせよ前走比(やまびこ賞)プラス11キロ。若干太め残りだったかも。
6着 ダンディキング
得意の水沢に戻って2番人気に支持されたが、ダッシュがきかず1周目2コーナーで大外ダンストーンアレスに前をカットされる。それもあって中団からの競馬となってしまい、直線も伸び切れず6着に沈む。やはり逃げれなければこの馬の持ち味は生きないかもしれない。