この月曜日は岩手所属馬とJRA所属馬の条件交流競走が2レース組まれ、ダブルメインの形になっています。ただでさえ難解な条件交流戦でもあり、今回はいつもの前置きはせず、すぐに予想に行く事にしましょう。
まずは8Rのフレンドリートロフィー・アメジスト賞。「フレンドリートロフィー」は岩手3歳1勝級対JRA3歳未勝利馬という条件で行われますが、やはり未勝利戦シーズンも先が見えてきた時期とあってか、未勝利脱出を目指すJRA勢の意気込みはすごいものがあります。
実際、昨年のこの条件では6戦中岩手1勝・JRA5勝。一昨年は5戦中岩手0勝・JRA5勝。さらに遡って2003年を見ても、5戦して岩手1勝・JRA4勝。つまり3年間で16戦して岩手2勝対JRA14勝とJRA勢が圧倒的に優位という結果になっています。岩手勢はどうも気圧され気味ですね。そして今回も、どうもJRA勢有利の布陣のように感じます。
本命は3枠3番ストロングアサクサで仕方ないでしょう。前走は気持ちよく行きすぎて失速したもので決して能力不足ではないですし、何よりこの盛岡でのレースに、あの岩田騎手を用意するという点に陣営の“本気度”を感じました。3枠という好枠、周りは控えめに進む馬。これはストロングアサクサの単騎逃げ濃厚と見ます。
対抗はウエスタンスナイプ。大外8枠は不利ですが、最近見せている先行しようという意志をかって2番手評価。はじめに少々無理をしても、行ききれば何とかなりそう。
以下、最内枠1番ミスタードトウ、そして8番アルファリゲル。このアルファリゲルは血統的にも戦績的にも短距離が良さそうな印象ゆえヒモか押さえとしましたが、これまでのレースで見せている先行力はおもしろそう。あまり軽視はしたくないですね。
買い目は3番から13、1、8。3番を頭にして後はBOXでいいと思います。
10Rのフレンドリーカップ・アンタレス賞は、こちらは岩手A2級対JRA500万下条件というレース。フレンドリートロフィーに比べれば岩手勢もよく頑張っていて、ほぼ互角といえる戦いをしてきていますから、ここは岩手の馬を応援しても良さそう。
そこで本命は3枠4番ミススズランでどうでしょうか。今シーズンは少しずつ調子を上げ、前走もドラグーンに敗れたとはいえ、展開ひとつで差が逆転していたかもしれない好内容。牝馬ながらねばり強い走りをする点を高く評価したいと思います。
対抗も岩手からドラグーンを。JRA勢がいるとペースが楽にならないかもしれませんが、まだ底知れない所を感じさせるし、強い馬と走ればさらにいい内容を見せるかも。
JRAのリージェントゲストは手堅い先行力を持っていますが、最後の伸びが少し甘い所が気がかり。トーセンマウンテンも同様で、マイル戦だとペースが合わない可能性があります。この2頭は一応押さえで。
こちらの買い目は4番ミススズランから1、3、5。もう一頭なら2番サージェリーを加えましょう。
21日のメインは岩手伝統の一戦「一條記念 みちのく大賞典」のトライアル「第7回あすなろ賞」、ダート1800m戦。春のマイルチャンピオン決定戦・シアンモア記念1、2着馬エアウィード、タイキシェンロンはみちのく大賞典へ直行する模様で、第2グループからどの馬が抜け出すか――がレースの焦点となる。
第一のポイントは、シアンモア記念出走組とA級平場戦組、A2からの上がり馬との力量比較だが、やはりシアンモア記念4着のブラーボウッズを上位に採りたい。
画像の確認
(写真はシアンモア記念出走時のブラーボウッズ)
今年3月、中央準オープンから岩手転入し、初戦はエアウィードの2着にまとめ、まんさく賞で人気を集める1頭だったが、運動中に挫石が発生して出走を取り消し。
その影響もあったのか、シアンモア記念では出遅れを喫し、後方2番手からの競馬。それでも直線で盛り返し、0・5秒差4着。上がり3ハロン37秒9の脚を駆使し、改めて底力を誇示した。
今回は順調に乗り込まれているのに加え、メンバー的にも明らかに恵まれた組み合わせ。このあすなろ賞を勝って、みちのく大賞典へ弾みをつけたいところだ。
中心はブラーボウッズで迷いなし。2着争いが微妙となったが、シルクディヴァインを指名してみたい。昨年6月、みちのく大賞典10着に敗れて以降は平場戦に徹し、ここ1年間の成績は<2.3.3.0>と抜群の安定感。また一昨年のあすなろ賞覇者であり、みちのく大賞典でも2着に入ったこともある。今年、すでに9歳を迎えたが、無理をしないローテーションで馬自体の張りは衰えていない。再度、表舞台に立つチャンスをつかむか。
マツリダブロッコも元気一杯だ。今シーズンは3戦2勝2着1回。タフに使われながらも毎回、自己の能力をキッチリ出し、平場戦なら勝ちを計算できるタイプ。ただ、重賞・特別に出るとパンチ力不足は否めず、入着までがこれまでの足跡。しかし、ここは手ごろな相手とも言え、好勝負に持ち込める。
アッサリ首位まで狙えるのがゲイリーエクシードだろう。中央5勝、グレードレースにも駒を進めた実力馬で昨年10月に転入。目にも鮮やかな芦毛の馬で岩手3勝をマーク。盛岡で唯一の4着は重賞・北上川大賞典(優勝エアウィード)だけ。今年は佐賀4戦を経て再度、岩手入りし、前回はA2特別・緑風賞を快勝。A1級復帰初戦となるが、過去実績は一番手といっても過言ではない。
他に久々を2着にまとめ、上昇必至のエビスイーグル、追い込み一辺倒で信頼性は低いが、一発を秘めるレストオブセールもマーク欠かせないだろう。
3連単は5を1着固定に2、3着に3,1、4、2へ手広く流したい
馬複は3−5、1−5、4−5、2−5
<お奨めの1頭>
4レース リンリンランラン
懐かしい名前だなぁ。双子のアイドルで、動きが実に可愛かった
20日(土)メインはオーロパーク自慢の芝を舞台に行われるA2級馬による特別「第14回FM岩手杯」(芝1700m)。1着馬には6月3日、オープン特別・かきつばた賞(芝2400m)への優先出走権が与えられる。
ポイントは第一に芝への適応力。盛岡芝はダート1600mの内コースに作られ、1周1400m小回りのためコーナー、コーナーがきつい。とりわけ1コーナーへ入る時の角度がきつく、不器用なタイプは遠心力に負けて外方へ逸走するケースもまま見受けられる。まずはこれを頭に入れていただきたい。
今回のメンバーで盛岡芝の実績一番手は、なんと言ってもダイヤモンドヒカリだろう。ダートは通算<3.2.2.40>(盛岡ダートは<0.1.2.14>と未勝利!)に対し、盛岡芝は<8.1.3.6>。通算8勝は現役ではもちろんのこと、引退馬、移籍馬を含めても最多の勝ち星をマークし、“盛岡芝の鬼”と異名を取るほどの巧者で知られている。
しかもこのFM岩手杯は2連覇(2003年度はB1級条件、以降はA2級で実施)を果たす相性抜群のレース。条件クラスでの3連覇は過去に例はなく、その偉業達成に燃えている。
とはいえ今年すでに8歳。盛岡芝の適性度には敬意を払いたいが、今シーズンはダートで2戦して3・2秒、3・1秒と大敗の連続。いかにここが待ちに待った一戦でも本命視は危険ではないか。結論は対抗=○が無難だろう。
で、小生は主軸にジェーピーバトルを抜擢したい。デビューは3歳6月と遅かったが、下からコツコツと白星を積み重ね、芝に初お目見えしたのが意外にも2年後、26戦目の7月、ジュライカップ(B1級)。岩手にずっと在籍してこのキャリアは非常に珍しい。しかし初の芝をモノともせずに快勝し、続くパストラルガーデンカップ(同じくB1級)も連勝。隠されていた芝適性ぶりを如何なく発揮した。
その後、日程の都合でダート戦を使わざるを得なかったが、今シーズン初戦7着を叩いて前走は変わり身を見せて2着。調子を上げてこの一戦に臨んで来れたのも心強い。
不安材料は同条件(芝1700m)の持ちタイム1分46秒7はやや平凡。ダイヤモンドヒカリ1分45秒5に比較すれば1秒以上も遅い。それでもレースは生き物だから持ちタイム不足は相手次第で何とかなると解釈したい。
対抗は前記ダイヤモンドヒカリ。その2頭に割って入るか、もしくはアッサリ首位まで可能なのがヤマヨダイナミックだろう。盛岡芝は初体験だが、北関東在籍時(北海道1勝)に積極的にJRAに挑戦。セントポーリア賞では日本ダービー3着ハイヤーゲームの1秒差7着、山藤賞4着などの過去実績がある。岩手転入は昨年9月でA1では頭打ちだったが、今季A2スタートで格付けに恵まれ、3戦1勝2着1回とマズマズだし、陣営も“待っていた芝”というほど期待を抱いている。
以下、JRA未勝利だが、芝(京都)で2着に入ったこともあるミサキノハンター、芝は生涯初だが、切れる脚を武器にしているサンシャインヘイロも不気味な存在だ。
3連単は10、7、8のボックス買いに10を1着固定で2着7、8折り返し、3着に9、1
馬複は7−10、8−10、7−8、9−10、1−10
<お奨めの1頭>
7レース マルカスティンガー
今季初戦こそ4着に敗れたが、以降3連勝中。C1昇給戦だが、まったく不安なし
5月から岩手競馬の舞台は盛岡・オーロパークに移りました。ご存じのようにオーロパークは10年前に現在の場所に建設されたものですが、それ以前に競馬が行われていた旧盛岡競馬場は、盛岡の中心部に比較的近い、住宅街の隣にありました。
旧盛岡の特徴的なコースやそこで繰り広げられた名勝負については、いろいろなところで語られていますのでここでは書きません…。というかテシオ創刊と同時にこの世界に踏み込んだ私は、旧盛岡で競馬を見たという経験がないんですよ。実は学生時代、私は旧盛岡競馬場から割と近い場所にアパートを借りていまして、その気になれば歩いてでも行ける距離だったのですが、その頃は競馬というものを何も知らず出向く機会なく過ぎてしまいました。実際のところ当時の私にとっては、競馬というと日曜の夕方、ときどき周辺道路に大渋滞を引き起こすことのほうが印象強く、切実な問題だったのです。しかしあのとき詰まって動かない車の中にいた人たちの顔は、みちのく大賞典でトウケイニセイとモリユウプリンスの死闘を観戦し、競馬の醍醐味を堪能した満足げな表情だったのかもしれませんね。
前にも書きましたが、もっと早く競馬の魅力を知っていれば、と今は残念に思います。しかし現在のような厳しい状況において、一般人が競馬にどういうイメージを持っているか理解するのは大切なこと。競馬の面白さを知らなかった当時の自分をしっかり覚えておこうと思っています。
さて、新盛岡競馬場オーロパーク。ここを初めて訪れる方、とくにバスやタクシーで行こうとすると、なんだか自分がとんでもなく山の中に連れて行かれるような気分になって、道中とても不安になることでしょう。それほど現在の競馬場は市街地から離れたところにあります。これについては賛否評論ありますが、しかしその山の中を抜けて目にする立派で綺麗な競馬場の印象をより強めているとは思います。
北上山地の奥深くに分け入り、人里から遠く離れた山中に忽然と姿を現す巨大建造物。それはまるで、遠野物語に出てくる“迷い家”のような…とは言い過ぎですが(周辺には民家もありますし)、都会からこの地を訪れたファンや関係者の印象はこれに近いものがあるのではないでしょうか。
カメラマンの立場で言いますと、走る馬の背景に高層マンションや高速道路の高架が写ることが無く、春は新緑、秋は紅葉と四季の自然の山々がバックになるのがとても良いところです。これは岩手で撮影していると当然のように思ってしまうのですが、他所の競馬場に遠征して写真を撮るとはっきりと気付かされます。水沢競馬場にしても向正面の先は北上川の堤防で人工物はほとんど見えませんし、この点については岩手の競馬場は本当に恵まれた環境だなぁと思っています。
3歳ベストスプリンターを決める一戦・1400mの短距離戦。そこに前走ではスピードにまかせてぶっちぎったダンディキング登場、という事で興味津々のレース。結果はダンディキング2着、勝ったのはブラックショコラとなったのだが、レース内容は期待に違わず、3歳馬のレースとは思えない、ハイラップでの高速決着となった。
レースの結果から見れば、やはりブラックショコラとダンディキング、この上位2頭の力が抜けているという事になるが、掲示板に入った他の3頭も、それぞれに自身の良さを発揮しながら短距離に対応する走りをしており、それなりに能力の片鱗も見せている。いずれの馬も短距離戦では今後とも注目すべき存在と見ていいだろう。
1着:ブラックショコラ
このレースの前半3ハロンのラップは34秒9、ハロン11秒台も2つ並ぶような“超”がつくハイペース。それをついて回ってなお、上がり3ハロン37秒台の脚を繰り出すのだから強いとしか言いようがない。
「前走はスタートが悪くてレースにならなかった。今回はスタートだけに気をつけ、うまくいったので“これなら”と思った(菅原 勲騎手)」との事だが、今回のレースを見る限り明らかな短距離の差し馬タイプ。距離短縮が大きなプラス材料になっている。
次走は未定ながら、岩手ダービー・ダイヤモンドカップ(6/11 水沢競馬場)を念頭に置きつつ、馬の状態を見て考えると千葉博調教師。
2着:ダンディキング
劇走後のレースでも特に調子落ちなく挑み、最後まで自慢のスピードを発揮したのだが、またしても念願の重賞タイトルに一歩手が届かず、の結果に終わる。
スタートダッシュが今ひとつだったのが応えたかに見えたが、鞍上が言うには「前走ほどポンとダッシュがつかなかった。けれど、この距離では周りも速いから、簡単に前に出て行けない」ということで、距離短縮の1400mという条件が意外と影響したのかも。
それに、レース終盤も決して脚が上がっているわけではない。今回は距離や盛岡コースという条件が勝ち馬に味方した、と見るべきだろう。
3着:ディアブロハンター
この馬の見せ場は3〜4コーナー、ダンディキングを楽に追い上げて2番手に上がったあたり。この馬にしても前半からハイペースについて行って、それでこれだけの走りをしているのだから立派。「距離はマイルくらいでも走るが、短い方がずっと良さそう。芝も合うのでは」と須田英之騎手。しかし、レース中に鼻出血発症のため6/12まで出走できないのが残念な所。
4着:ナイキザフォース
取り消し明けのレースという点が気になったが、馬の状態の方は特に問題なかったようだ。前半の手応えに比べて後半勢いを欠いたのは、やはりこの距離でもまだ長いという事なのかも。次走、陣営の意向では芝を走らせてみたいとの事で、はまなす賞(5/28 盛岡芝1600m)になりそう。
5着:ムーンプライド
最後はさすがにバタバタでなんとか5着を守りきった、という感じになってしまったが、注目すべきはテンのスピード。決して出ムチを入れたりしたわけでなく、むしろ内のダンディキングの出方を窺うような所もありながら、それでいてハロン11秒台の高速ラップを刻んでいる。もっと距離が短いレースでの走りを見てみたいものだ。
(文/横川典視 写真/佐藤 到)