第14回 IT頭脳の経験値 入澤和也
今回は、重賞2着など最近調子を上げている入澤騎手です。
--- ご出身は北見と書かれていますが……。
俺、最初に間違えてさ。育ちが北見なもんだから、出身地北見って……それ見た親父が「お前岩内町だべや」って(笑)。
1歳の時に北見に来たから覚えていない。
初めて馬に会ったのは小4の時。兄貴が厩務員やってたの。そこに遊びに行って。
そこで馬に目覚めて、中学卒業してから厩務員になろうと思ったの。でも親に高校行けって反対されて。
--- 高校を卒業して競馬の世界には入らなかったのですよね。
社会勉強しにね。ハハハ。電気科だから、就職よかったからね。
横浜でプレイステーションのIC作ってたの。半導体。開発課で、5年いたかな。
24の時、リストラで……規模縮小で、地方に行くか退職かって。
俺は北海道に戻るって言って退職した。
でも、すぐには厩務員やってない。厩務員になる前にね、北見競馬場で従事員。走路のパトロールビデオあるしょ? レース中の。あれに関わって。リッキーもかぶって。俺の頃は古いリッキーだけどね。
厩務員にすぐなってもよかったんだけど、そんなあせってもなかったから。
--- なんと、リッキーだったとは!(笑)。いろいろと経験されていたのですね。リストラって載せてもいいでしょうか?
リストラ騎手って新聞に載ったくらいだからね。
春の北見開催はじまって残り1週間くらいから厩務員になって、あとは競馬場についていった。
騎手試験は26の時に受けて、2年目に受かった。
--- はじめから騎手になりたいと思っていたのでしょうか。
ここ来たからにはね。兄弟4人も厩務員になったからね、一人くらいは騎手になった方がいいんじゃないかって。
--- 4人も? 何人兄弟なのでしょう。
4人兄弟。男4人。俺は3番目。
--- さて、勝負服はどのようにして決めたのでしょうか。
兄貴が選んだの(笑)。
木村卓司さん(元調教師・元騎手)を小さい頃から知ってて、世話になって。木村さんは紺で1本輪。
最初平田厩舎だったから、平田先生の勝負服の緑色。だから木村さんの色違い。
--- 思い出の馬を教えてください。初勝利はライデンスズカですね。「ライデン」といえば岩内郡の田中猪之助さんの生産馬が多いですが、つながりがあったのでしょうか。
いや、たまたまかな。その時平田厩舎の所属に千葉さん(均調教師・元騎手)がいたんで。
(岩内出身の)千葉さんは田中さんと子どもの頃から仲がよかったの。
千葉さんに勝てる馬まわしてやるって言われて。
あと、思い出の馬ね〜。誰かな……ハルツヨシ。差し脚が素晴らしかった。ゴール前できっちり差す。
この時だけは差したかどうかわからなかった。本当の接戦だから。
本当、好きなのは逃げなの。ばんえい競馬って先に行ったもんが勝つってパターンが多い。
--- では乗りたい馬はいますか? 引退した馬でも、現役馬でも。
キンタロー。小4の時に、初めてレースを見に来たときにキンタローが活躍してたの。
--- 入澤さんはそんなに背が高くはありませんが、そこをカバーするために何か考えていることはありますか?
体を大きく動かして馬にアピールするようには心がけてる。
柔道やってたからね。体は柔らかい方だと思います。
--- 竹ヶ原騎手や松田騎手など、昔柔道をされていた騎手って多いですよね。
足腰鍛えてるからね。
--- ではプライベートについて教えてください。今は家族で競馬場にお住まいなんですよね。お子様はそろそろ1歳ですね。入澤騎手に激似だとか。
フフフ。疲れる(笑)。
競馬場にいたら人見知りしないわ。
--- 色々な方が世話してくれる環境、今の社会ではなかなか経験できないですからいいですよね。
歌が得意だとか。
最近行ってないからね。子守唄? 歌ってないな(笑)。
ジャンルはなんでもOKだよ。
お酒は弱くはないと思います(笑)。
釣り? 行きますね。秋鮭(あきあじ=北海道弁で鮭)。厩務員と行くけど、行くヒマないから……。
普段仲いいのは……、中山さん(直樹騎手)、辻本騎手。家族ぐるみで。
--- 中山騎手とは入籍した日が一緒だとか。
たまたま。市役所で、書類出して後ろ振り返ったらいた。
前からずっと仲良かった。
--- 入澤騎手はばんえい騎手には珍しいパソコン使いですよね。タイム取ってデータ作ったりとか。
そこまではやってないわ(笑)。
パソコンは会社入った時からやってる。遊ぶ程度だよ。昔ほど使いこなせなくなった。
結構、過去のVTRとか調べたりしますよ。
急にこの馬乗ってくれって言われて、わからない馬とかいたら。
--- mixiで日記も書かれていますね。
みんな覗きに来てくれる。ちょっとでもばんばのアピールになればいいなと思ってやってる。
ばんえいも、まずは続くことが大事だからね。売上げ、上がってくれればいいんだけど、世の中がこういう状況だからね……。
節減できるところは節減する。馬や人は最低限だから、他のところを。
すっかり騎手姿が様になっているので、長い会社勤めの後に騎手になられたとは驚きでした。しかもリッキーだったとは……。
でも、その道のりが回り道ではなかったということがわかります。
そして、なんとなく都会的な印象があったのですが理由がわかりました。
訛りがないんだ……。
取材・文・写真/斎藤友香