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ばんえいジョッキーファイル(10) 藤野俊一

2008年8月28日(木)

第10回 笑いが絶えない重賞請負人 藤野俊一

 今回は、最近ではニシキダイジンでばんえいグランプリを制したのをはじめ、数多くの名馬でたくさんの重賞を制している藤野騎手です。

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スーパークリントン

--- 騎手になったきっかけを教えてください。出身は森町(旧砂原町)ですが、ばん馬大会にも参加されていたのでしょうか?

 うち、農家だったんだよね。牛と馬いたからね。実家の近くに馬主さんがいて。森はそんなんでもないけど、函館の方とか多いね。
 小学校の時はばん馬大会出てたよ。今の会場(森高校裏)ではなくて、青葉ヶ丘公園の近くの方でやってたの。
 オレ畑起こしたこともあるしな。

--- 馬耕をやられていたのですか。他にやっていた騎手はいるでしょうか?

 いや、いないんじゃないか。やってたのは小学校5年生くらいかな。
 あれ難しいんだよな。畑プラウで起こしてさ……起こすのはいいんだよね。馬がひとりでまっすぐ歩いてくれないとできないんだ。
 でも高校行ってからね、生き物とかさわらなくなったんだわ。遊びが忙しくてね(笑)。
 ハタチの時に競馬場来たんだな。仕事辞めて遊んでる時に近くの馬主さんが来て、遊んでるんなら競馬場行けって言われて来たんだ。

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--- では、最初騎手になるつもりだったのでしょうか。

 いや、ただ競馬場来ただけ。騎手試験は、受けては落ちて、何年も受かんないで、7年目にして受かって。
 5年目に(1次試験の)学科だけ受かったんだ。でも、2次の面接で落ちて。なんでって……普段の生活態度悪かったからでないか(笑)。

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--- 騎手デビューはどのような感じだったのでしょうか。

 今と違って、冬は開催やってなかったから能力テスト終わって4月からだったんだ。
 はじめは乗ってないよ。最初ね、1開催乗れんかった。
 その頃、騎手試験に合格すると那須の教養センター行かないとならなかったの。1週間かな。
 帰る前の日に酒飲んで見つかって、自粛せいって言われて……1開催乗れんかった。
 そして初めて馬乗るって時に、寝て寝て寝て、検量遅れてな。ハハハ(爆笑)。
 朝調教して、起きたんだけど、レースの時間に間に合わんくらい寝過ごして戒告になったの。レースは2着になったんだよな。
 緊張? 寝過ごしたくらいだから全くなかったんでないか(笑)。
 最初の頃は1頭か2頭くらいしか乗れんかった。

--- デビューの頃から大物感があったんですね(笑)。では、思い出に残る馬を教えてください。

 最初に重賞とった馬だな。キクスピードか……。
 その次のヤマノルビーは地元の馬主さんだったな。

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--- 藤野さんはたくさん重賞を勝たれていますよね。重賞請負人と言われていますが、意識していますか?

 オレそんなに勝ってるっけ。いい馬乗せてもらってるからでないか。

--- 中でもファンの多い2頭の馬について教えてください。まずはシマヅショウリキ(ばんえい記念連覇など重賞9勝)。

 シマヅね。友達の親父さんが持っていたのさ。能力テストからずっと乗せてもらったの。調教もつけて。
 登坂力が素晴らしい。いろんなオープン馬乗せてもらったし、(スーパー)ペガサスにも乗ったけど、登坂力じゃ全然かなわないね。
 体不自由なんだわ。生まれつきね。左だったかな……腰の辺りが不自由だったの。
 生まれつきだから競走能力にはたいした影響なかったの。後からなったら影響あるけども。
 寝たら起きれんから、牧場のじいさんが毎日、時間になったら起こしに行くんだってよ、仔っこ馬を。そのうち体力ついたら自分で起きれるようになったんだと。

--- それでよくあそこまで……。心臓が悪かった覚えがあります。

 そうだ。2度も頂点極めたもんな。年ちょっといってからはさ、鼻の毛細血管弱かったんだわ。鼻血出して調教中に倒れてみたりね。
 心臓悪かったの、帯広でなかったかな。障害降りて中止してね。(旧)7歳の時かな。

--- それでは、スーパーペガサスについて教えてください。

 ペガサスは……途中から乗せてもらった馬だからな。
 見てて乗りたい馬だったよ。まさかオレにまわってくると思わんしな。
 どんな馬場にも対応できたね。そうじゃなかったら重賞19回も獲れないわ。
 足痛くなるのが大変だったな……。
 オレより厩務員の渡辺さんが大変だったんでないか。毎日見るんだぞ。

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スーパーペガサス

--- では、プライベートについて教えてください。趣味はなんでしょうか?

 趣味? ねぇ(無い)。 寝ることか?

--- 釣りとかは……新聞に料理が得意だと出ていましたが。

 おお、海釣りな。料理得意だって? あー、たまにね。火起こすの得意だぞ(笑)。
 食品衛生管理者か? おお、取ったぞ。細川(弘則騎手)と一緒にな。
 それな、岩見沢の競馬場あった時にさ、騎手みんなで金出しあって、ソフトクリームを販売するかって話が出た時に、ちょうど岩見沢で講習会あるって聞いたから、偶然休みだったし取りにいったの。一昨年の岩見沢。
 子どもが来ても食べるものないとかいうからさ。子どもが長い時間いたら、大人もいてくれるしな。

--- そういえば岩見沢では焼鳥焼いたりしていましたよね。今の競馬場をこうしたいとかありますか?

 若い馬主増やさんとならんな。
 毎週土曜日はフリーマーケットやったりさ。ここでやったらさ、金かかんないし。子どもが集まるイベントに親ついてくるよ。

--- ソフトクリームもフリーマーケットも実現させたいですね。
 では最後に、渋い勝負服について教えてください。

 これねー。オレが決めたわけでないんだ。あまり模様ついたの好きでなかったから、こんな感じにしただけで。ただそれだけだ。
 山本さん(正彦騎手)の色もオレ決めたんだよ。昔黄色だったんだよな。
 (周りの騎手に向かって)オレ、渋いよな?!

(すると某騎手から「飲んだところ見たことないのか!」(笑))

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 濃いえんじ色の勝負服、ソツのない騎乗。渋い騎手だと思っていましたが……。
 過去のやんちゃぶりに、取材中も笑いが止まりませんでした。トップジョッキーなのにイメージ壊しちゃったかな?
 結果を残しても自らは飄々として周りを立てる態度に、信頼を置く馬主さんや関係者が多いのかもしれません。
 それにしても、飲むとどうなるのか、見たいような、見たくないような……。


取材・文・写真/斎藤友香

今週の見どころ(8/29〜8/31)

 30日(土)は「道新十勝川花火大会」(19:00〜19:50)が行われるため、30日、31日(日)の両日とも、第1レースの発走予定時刻が14:10に繰り上がり、以降のレースの発走時刻も変更となります。詳しいレース発走時刻につきましては、ばんえい十勝ホームページでご確認ください。
 帯広競馬場でも大パノラマで花火をご覧いただけますので、ぜひお出かけください。なお雨天の場合、花火大会は31日に順延となります。

 8月29日(金)のメイン第11レースは、らわんぶき特別(300万円未満)。出走9頭中、前開催の夕焼特別(300万円未満)のメンバーが6頭を占めます。そのレースは、残り30メートルから一騎打ちを繰り広げたライデンロック、アアモンドヤワラが1、2着。障害3番手に続いたコブラダイオーが勝ち馬から8秒9差の3着に入り、4着ニシキタカラ(3着と9秒差)以下はさらに離されました。
 今回は、アアモンドヤワラが同日の世代限定戦に出走で不在、ライデンロックが回避で、コブラダイオーにチャンスがめぐってきました。安定した障害力で今季300万円未満特別2勝目を狙います。
 強力な同型馬不在で今回は楽に先行できそうなニシキタカラが相手として有力。早めに障害をクリアできれば末脚切れるキヨマサ、軽い馬場は向きそうなヤマトチカラも侮れません。

 8月30日(土)のメイン第10レースは道新十勝川花火大会開催記念(400万円未満・18:55発走予定)
 オレワスゴイはこのクラス初戦だった入道雲特別(7月25日)で、1番人気を裏切り10着に敗退。初経験となる680キロ、古馬中堅クラスの厳しい流れなどが影響したかもしれません。前々走の3歳重賞・ばんえい大賞典は再び680キロのトップハンデハンデで惨敗しましたが、前走の3・4歳オープンでは、唯一の3歳馬ながら670キロで障害先頭から2着に健闘しています。今回は680キロを曳くのが3回目、400万円未満特別も2回目で、大きな変わり身が期待できそうです。
 前開催の十勝川特別(400万円未満)を制したイッスンボウシは近5走の同条件特別で3着以内4回、十勝川特別2着のキングシャープも近5走の同条件特別で4連対と堅実な走りをみせており、今回は、この3頭による上位争いとなりそうです。
 力上位のグレートサンデー、障害次第では決め手あるタケノホウシュウの食い込みもありそうです。

 この日の最終第11レース(20:00発走予定)に、3歳以上オープン混合が組まれています。
 オープンから6頭、500万円条件から4頭が出走しますが、このメンバーなら、実績上位のミサイルテンリュウが圧倒しそう。底力あるトモエパワーは不向きな軽量690キロですが、上位進出も期待できるでしょう。
 500万円条件からはアローコマンダーに注目します。このところ大敗続きですが、障害さえまともなら差のない競馬ができるはずです。

  8月31日(日)のメイン第11レースは第1回とかちえぞまつ特別(オープン・20:00発走予定)。前々走シーサイド特別(オープン・馬場水分5.8%)、前走ばんえいグランプリ(馬場水分2.9%)と連戦している馬が5頭いる組み合わせ。今回は、負担重量、馬場状態とも前々走に近い条件となりそうです。
 ホシマツリは、その前々走は障害を先頭でクリアしたものの、フクイズミに差されて2着でした。しかし今回は、フクイズミがそのレースから5キロ加増、ハナ争いのライバル・ニシキダイジンも同じくプラス5キロとなっており、勝利のチャンスでしょう。
 相手筆頭はフクイズミ。軽い馬場で先行勢が止まらない流れになると厳しいですが、今季1度も4着を外していないように、ここも大崩れはなさそうです。
 しぶといタケタカラニシキ、軽馬場得意の追い込み馬ホクショウダイヤや、別路線組では最軽量タイ700キロを生かしたいトカチプリティーも争覇圏です。

ばんえいジョッキーファイル(9) 阿部武臣

2008年8月21日(木)

第9回 努力と自信が呼び込んだ結果 阿部武臣

 今回は、今年に入って活躍が目立っている阿部武臣騎手です。

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--- 騎手になられたきっかけを教えてください。生まれは宮城県古川市ですね。きっかけは、近くで行われている馬力大会でしょうか?

 そう。古川でもあったし。近いから山形、岩手とか多かったかな。青森は遠かったからあまり行かなかった。
 じいさんが馬使って山で材木屋やってて。それでも俺が物心ついた時は同じ町には5頭位しかいなかったから……。
 初めて(馬力大会に)参加したのは小学校6年くらいかな。内地ってそりに乗らないで、口もってやるじゃない。中学生くらいから口持ちをやってた。
 中学生になってからかな、ばん馬で周っている家畜商を見て、周りの人にはじめてばんえい競馬があるって教えてもらった。

--- 宮城県出身の騎手は多いですよね?

 3人。(阿部騎手の他に安部憲二騎手、村上章騎手)でも3人もいたら多い方だよね。
 高校出てから、馬やるんだったら本場の北海道で勉強してからって思って。
 最初、騎手試験受けて受かれば騎手になれるって知らなかったから。2年目から試験受けて5年かかった。勉強しないで遊んでばっかいたから(笑)。

--- この頃は騎手試験を受ける人がたくさんいてレベルも高かったですからね。それにしても、家に戻って馬をするつもりで北海道に来られたのですか!
 では、思い出に残る馬を教えてください。

 まず、初勝利の馬(カツエコマ)と重賞の馬かな。

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2006年ばんえい記念(980キロ!)キタノコクホーのラストラン 

--- 重賞はキタノコクホー(02年銀河賞)と、記憶に新しいホッカイヒカル(08年柏林賞)ですね。

 キタノコクホーはね……厩務員の時から馬主さんと知り合いだったんだよね。
 町の飲み屋で会ってさ。良く行く飲み屋さんで、マスターが「こいつ内地から来て、遊んでばっかりいて騎手も受かんねーんだ」なんてしゃべってね(笑)。
 それから騎手になって、10キロ減(減量特典)なくなって乗れなくているときに、その馬主さんがさ、「俺は騎手がころころ変わるの好きでないからお前どうだ」って話が出てきて。(その馬主さんの馬が)2頭いたんだよね。ダイサンホウリュウっていう馬に最初乗してもらって。
 その頃、キタノコクホーってたまたまひっぱってなかった(結果が出ていなかった)んだよね。その頃ポンと乗せてもらったら、ぐあっと行って、それからずっと乗せてもらった。
 ホッカイヒカルは、ちょうど馬場が最適だったんだ。

--- それを読んだレースをしたのは騎手の腕ですよね。それを含めてここ最近ご活躍ですが、今までと違うと感じる点はありますか?

 余裕持って乗れてる。慣れてきて、辺りがよく見える。最初の頃は慣れた慣れたって言っても、周りの馬を端から端まで見れるようにはならない。
 それがこの人はどう乗ってるかとか、外からレース見ているのと同じ目線で見れるようになったかな。
 馬の癖を前より考えるようになったし。(自分が乗っている馬を)他の人が乗ってたらこの騎手はこうやってるとか、乗らない馬でもあの騎手はどうやって勝つのかな、って。
 1頭1頭の能力と、騎手の癖とか考えていくわけでしょ。この馬場だったらこうだとか、この馬はこのくらいの動きするから、とか。
 そうでもしないと勝ち鞍挙げていけないんじゃないかな。
 ビデオも見るし、あとは坂本さん(東一調教師・元騎手)にいろいろ聞いて。

--- 坂本調教師には、騎手時代からアドバイスをもらっていたのですか?

 やっぱりヨメさん(坂本騎手の娘さん)もらってから。
 アドバイスは……ちょっとしたことかな。他の騎手がやらないようなこととかを少しずつ。
 頭(1着)取っても怒られるし。あれじゃだめだっていうのはしょっちゅうあるからね。そうなってくれば、自分も考えて乗るようになるからさ。頭取っても面白くないっていうのあるからね。もうちょっときれいに勝ちたいとか考えて乗るようになる。

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--- 坂本厩舎所属で阿部騎手の乗る馬の中に、ファンの多いイケダガッツがいます。個性的なレースをする馬ですが(第1障害を1頭だけ遅れて通過するも、道中挽回して第2障害下では他の馬に並ぶ)、なぜでしょうか?

 レースでも走らない馬っているしょ?
 ああいう馬でも練習すれば走るんだよね。なんかの拍子に走ることが嫌になったとか……。
 イケダガッツももともとは走ったんだろうけど。それでも頑張ってるほうだよね。でももう年かな?
 ファン多いよね。独特だからね。あの体型で(笑)。

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イケダガッツ

--- 趣味を教えてください。

 魚釣り結構好きだね。海に行く。
 家族とか、騎手仲間とか。家は旭川だけど子どもはちっちゃいから競馬場にいるよ。4歳と2歳。家族サービスしつつ。
 最近日中暇な時間ができてきたから。今では厩舎の仕事はあまりやらない。

--- 騎手でも厩舎作業される方としない方とがいますが、ある程度乗れてくると厩舎作業はしないものなのでしょうか?

 うん、間に合わなくなるし。無理してやればやれるけど、乗る方に専念したいよね。それはみんな思ってる。
 乗れないとき、忙しい思いして厩舎作業やってたから……。

--- そうなのですね。坂本家族と一緒に出掛けたりするのでしょうか?

 坂本さんとはご飯食べるくらいかな。逆に、俺行かないで孫だけ連れてってもらって。
 もう孫にべったりなんだわ。初孫だしね、すごいよ(笑)。

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坂本東一調教師と

--- ところで、武臣騎手はいつもさやわかですよね(笑)。短い髪の騎手が多い中髪をなびかせて…

 茶髪だしね。年甲斐もなく(笑)。

--- いえいえ、素敵です。羽賀研二さんに似ていると言われませんか?

 羽賀研二ね! 言われる。最近また言われだした(笑)。昔から言われたんだよね。

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--- ところで、武臣さんって珍しい名前ですよね。由来は?

 死んだばあさんがつけた。どういう意味か聞いたことないんだけどね。

--- 武臣騎手は騎手の方からはタケと呼ばれていますが、テレビで「ばんえいの武」と言われていましたよね。どう思います?(笑)広めてみていいですか?

 (笑)いいですよ。


 とても楽しそうに競馬の話をするのが印象的でした。充実しているのでしょうね。写真を選んでいても以前と今年では表情が違うなぁと感じます。
 長い間の陰の努力が実を結び、自信と余裕という新しい武器を身につけたイケメンジョッキーに、あらためて惚れ惚れしてしまうのです。


取材・文・写真/斎藤友香

今週の見どころ(8/22〜8/24)

 今週日曜(24日)には、金沢競馬場でばんえい競馬の場外発売(金沢競馬終了後、第6〜12レースをリレー発売)が行われます。その金沢競馬場では、『ばんえい十勝 in KANAZAWA Horse Park』と題し、安部憲二、山本正彦両騎手(予定)が騎乗してばん馬のソリ曳き実演を行うほか、当情報局の重賞予想でもおなじみの斎藤修、山崎エリカ両氏によるトークショー&場立ち予想会、ばん馬と綱引き大会など数多くのイベントが行われます。近くの方はぜひお立ち寄りください。

 8月22日(金)のメイン第10レースは夕焼特別(300万円未満)
 中心視したいのはコブラダイオー。今季2戦目(5月16日)の勝入混合300万円未満を制して以降、第2障害で崩れるレースが続きましたが、徐々に障害巧者ぶりが復活。近3走の300万円未満では2勝、4着に敗れたレースも勝ち馬(キタノイチオク)からわずか1秒6差に健闘と、目下絶好調といえる近況です。今回も先行しての押し切りに期待できるでしょう。
 今季このクラスで9戦してすべて5着以内と堅実なニシキタカラ、登坂力には定評のあるキタノイチオク、相手なりに走れるアアモンドヤワラらが相手として有力。前走ばんえい大賞典を制したライデンロックは3歳馬の20キロ減があっても690キロですが、能力的に昇級初戦から上位進出が狙えそうです。

 8月23日(土)のメイン第10レースは風鈴特別(オープン混合)
 オープンクラスの7頭中5頭が、7月21日のJRAジョッキーDay特別(オープン)の出走馬。そのレースはほぼ同時に先頭で障害を越えたツジノコウフク、ニシキダイジン、差なく続いたホシマツリによるゴール前追い比べとなり、ホシマツリ、ニシキダイジン(ともにこのレースには不出走)が1、2着。ツジノコウフクが3着に粘り、4着以下はやや離されました。
 注目はそのツジノコウフク。前走シーサイド特別(オープン)こそ、オープン一線級相手で、しかも馬場水分5.8%と不向きな馬場だったこともあり8着でしたが、そのレースを除く近5走のオープンではすべて3着以内に好走しています。今回は乾いた馬場となりそうで、しかもこの相手関係なら負けられないところでしょう。
 ミスターハヤサキも前走(8月9日)オープン混合(1着)のように早めに障害をクリアできればチャンスがありそうです。
 前走ゴールデンホース賞(栗毛馬選抜)を快勝し今回がオープン昇級初戦のバンゼンも争覇圏。500万円条件のライジングサンも能力的に差はありません。

 8月24日(日)のメイン第11レースは第20回はまなす賞(3・4歳オープン)。4歳馬が9頭、3歳馬はオレワスゴイ1頭、オープンから300万円条件までの10頭が出走を予定しています。
 柏林賞3着など、4歳オープン6戦中5戦で3着以内のミサキスペシャル、5月中旬から前々走まで4歳オープン2戦を含め9戦連続連対だったマルニゼウスが近走成績、負担重量からいって人気を集めそうですが、ここはペガサスプリティーに注目します。昨季は3歳牝馬三冠の第2戦・ばんえいプリンセス賞を優勝、白雲賞(2月3日・4歳オープン)では、同重量のミサキスペシャル(2着)からコンマ2秒差3着など世代限定戦で上位を賑わしていました。今季開幕以降、4歳オープン戦には不出走で、最近の力関係が分かりづらいところはありますが、最軽量(タイ)660キロは有利で、確実に使える脚で上位進出が濃厚です。馬場水分4.0%以上では連対率70.8%とメンバー1の軽馬場巧者だけに、当日雨でも降れば、さらに好走の確率が高まります。
 相手はやはりミサキスペシャルマルニゼウスが有力ですが、世代限定戦はもちろん、オープンクラスでも堅実なレースを続けるアローファイターの底力も侮れません。またスピードが生きる馬場なら最軽量(タイ)を生かした牝馬プリンセスモモの先行逃げ切りも一考でしょう。

 この日の第10レースに第21回いちい賞(2歳牝馬オープン)が組まれています。先週の青雲賞は牡馬限定でしたが、今週は牝馬限定戦です。
 牡馬同様こちらも混戦模様。実績上位のサクラエビスワタシハスゴイタワノアヤカが人気を集めそうですが、今回注目したいのはデビューから4戦4連対と勢いに乗るウィナーミミ。前々走の2歳A-2は勝ったワタシハスゴイから1秒2差の2着、前走2歳A-2では先週の青雲賞で3着になったアオノレクサス(1着)と1秒9差2着と、強豪相手に互角の勝負をしています。人気になりそうな3頭より5キロ軽い510キロは有利に映り、初のオープン挑戦を勝利で飾る可能性も十分でしょう。

馬券おやじは今日も行く(第48回) 古林英一

2008年8月20日(水)

ミサキテンリュウの重大使命

 8月上旬のとある日、小生は富山市ファミリーパークを訪問した。富山市ファミリーパークと聞いて、すぐにミサキテンリュウの名前を思い出した貴方、かなりのばんえいファンですな。

 ミサキテンリュウとハヤトリキは2005年3月、富山市ファミリーパークにやってきた。ミサキテンリュウは1995年5月に北見でデビューし、2003年2月に引退するまで200戦21勝という成績をあげている。ハヤトリキは2001年4月にデビューし、2004年11月に最後のレースを走っている。なかでもミサキテンリュウは競馬場内で馬車リッキー号を曳き、みんなに愛された馬であった。

 富山にトレードされたミサキテンリュウとハヤトリキに科せられた任務は動物園の単なる客寄せではなかったのである。実は彼らには重大な任務を担うべく富山に転勤したのであった。今回、富山市ファミリーパークの山本茂行園長にいろいろをお話をうかがい、彼らに期待されている任務がわかった。それは現代における動物園の使命に関わる重大任務だったのである!

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ミサキテンリュウ・ハヤトリキが曳く馬車

 以下は園長にうかがった話である。動物園という施設が果たしてきた役割は歴史のなかで変化してきた。まずは世界各地から珍獣を連れてきて見せるという役割である。この流れは1970年代のパンダやコアラまで続く。次に科せられた役割は絶滅に瀕している希少生物の繁殖である。希少生物の絶滅を防ぐために世界各地の動物園が果たしている役割は大きい。またその延長に在来種(トキやコウノトリなど)の復活もある。

 山本園長らはさらに新しい役割を提起・実践しようとしている。それは人と動物の歴史を文化として継承する拠点としての役割である。ペット(昨今ではコンパニオンアニマルという)としての動物ではなく、人間社会をつくってきたパートナー(家畜)としての動物に注目した試みである。

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放牧地でくつろぐミサキテンリュウ。右側が馬車のコース

 山本園長は富山ファミリーパークを、擬似的な自然空間ではなく、里山のある動物園として、人間以外の生物と人間の関わりを考える最前線として位置づけている。ついでにいえば、山本園長にご教示いただき改めてわかったことだが、わが国には国立の動物園はない。国立の動物園がないということは、文化的もしくは教育的観点から考えるという政策がわが国にはないということの現れであろう。ここでパートナーとしての動物として最適だと考えられたのが馬、なかでも農用馬であった。

 これまで動物園にはいわゆる家畜、特に大家畜はあまりいなかった。牛や馬はわざわざ動物園で見るものではなかった。私事であるが、小生、この8月に無事生誕50周年を迎えたのであるが、その小生が小学校の低学年の時代まで大阪近郊でも牛が田を耕す光景がみられた。だが1970年頃には田を耕す牛はほぼ姿を消していた。

 富山市ファミリーパークには現在ばん馬の他に木曽馬が2頭いる。この木曽馬を使って水田を耕作しようという試みもおこなわれている。今では農村部でも田に入ったことのない子供たちが殆どだという。彼らにとって貴重な経験となるだろう。農業・畜産業の理解なくして「食育」もへったくれもあったものではない。

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農家から寄贈された耕作用馬具

 全く当然のことながら、家畜にはそれを飼養し、御する人が必要である。産業現場から家畜の姿が消えて久しい。もちろん富山にばん馬を御することの出来る人はすでにいない。

 ばん馬にふれたこともない職員にばん馬の飼養管理と制御技術をレクチャーしたのは大河原和雄騎手であった。大河原さんご本人によると、ただ付いていくだけと思って富山に行ったら、「しばらく居れ」と服部師といわれ、そのまま滞在することになったのだという。大河原騎手はそのまま10日間富山に滞在し、ばん馬にふれたこともない動物園の職員たちに飼養管理と御者の訓練をおこなった。ちなみに、詳細を調査したわけではないので確たる証拠はないが、おかげで大河原騎手は富山の飲み屋街に最も精通した北海道民になった模様である。

 大河原騎手の指導の甲斐あって、ミサキテンリュウとハヤトリキは富山で無事に大役を務めている。飼育担当の沢井さんにもすっかり懐いている様子であった。心配された夏の暑さも慣れたようである。馬車は富山市ファミリーパークの呼び物のひとつとなっており、彼らに科せられた任務を十分に果たしている。もし富山に行かれることがあれば、ぜひミサキテンリュウとハヤトリキに会いに行っていただきたい。

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飼育担当の沢井さんとミサキテンリュウ

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