稽古戻りの乱れ髪?
7月18日、朝調教の見学のため開催中の岩見沢競馬場にお邪魔した。同行したのは、『馬産地ビジネス』『馬産地放浪記』などの著者・河村清明さん、ビッグレッドファームの蝦名マネージャー夫妻、それに川崎の馬主である鈴木さん、わが北海学園大学の競馬サークルVIP!の中地くんと竹中くん、それに小生の総勢7人。
そもそものきっかけは、河村さんが「ばんえいに出撃しませんか」と小生を誘ったことにある。せっかくなら、朝調教からしっかり見せてもらおうということになった次第である。
このところ、小生つくづく思うのであるが、「ばんえい」という競技は「馬のかけっこ」というよりも「馬のお相撲」なんじゃなかろうか。もちろん、2頭の馬が取っ組み合うわけじゃないが、呼吸をはかりつつ「うんしょっ!」と荷物をあげるところなんぞはほんとお相撲的だと思いません? 馬にしても、しっかり高カロリーのメシ食って、厳しい稽古を積んで体をつくる……まさにお相撲さんそのものですがね。
さて、一行は、早朝5時に札幌を発ち、6時に岩見沢競馬場に到着した。夏の朝は早い。曇り空ながらも日はとっくにあがっている。広報のSさんに案内していただき内馬場へ。いる、いる、たくさんの馬が黙々と稽古を積んでいる(当たり前だ、馬がぺちゃくちゃ喋るわけはない)。周回コースをずりびきしている馬もいれば、障害コースを駆け上がる馬もいる。これが冬なら朝靄の中、体からもうもうと湯気を立てているところなんだが、さすがに夏場は体から湯気が立ち上ることはない。
以前、帯広や北見で朝調教を見学させてもらったことがある。まだ暗いなかで、馬体から湯気が立ち上り、そうこうしているうちに陽が昇り、朝日に馬体が輝いている……いやあ、ほんと絵になる風景だ。
「相撲取りさんどこ良うて惚れた。稽古戻りの乱れ髪」という都々逸があるそうな。確かに朝稽古の後の力士なんぞというのはなかなか風情があって粋な感じがするものだ。お相撲さんがモテるのはこのあたりなんだろうね。ばんばのずりびきを四股踏みとすれば、障害練習はさしずめ鉄砲とかぶつかり稽古といったところだろうか。いやあ、けっこう、けっこう、まことにいいものですなあ。
午前11時。いよいよレース開始。小生と竹中くん以外の5人はいずれもばんえい競馬初体験。とはいえ、河村さんは名うての馬産地ライター、蝦名さんはあのコスモバルクを育てたビッグレッドファームのマネージャー、鈴木さんは静内でおこなわれる北海道市場で馬を買いつけに来た馬主さん、中地くんはカゼニフカレテの生産牧場の息子さん、いわばいずれも馬のプロである。
恥ずかしながら、小生、馬を見る目のないことでは人後に落ちない。最近ではもうすっかりあきらめてしまって、パドックもほとんど見なくなってしまっているのだが、さすがに馬のプロたちだ。パドックで真剣に馬を見つめている。ばん馬とサラブレッドは違うと思うんだけどねえ……。
いやいや、一概にそうともいえない。ばんえいファンなら、ばん馬生産に大きな足跡を残したマルゼンストロングホースという馬をご存じであろう。スーパーペガサスの母の父だ。この馬をアメリカから買ってきたのが、橋本聖子センセイのご尊父・丸善橋本牧場の橋本善吉氏だ。橋本善吉氏は牛を買いに行ってマルゼンストロングホースを買って来たのだという。これは小生が橋本善吉氏から直接聞いた話だから確かだろう。牛を見る目で馬を買って成功するくらいだから、サラブレッドを見る目のある人なら、同じ馬だし、何とかなるのかも。そう思って見ていたら、えらいもんです、彼ら、しっかり、パドックで目星をつけてけっこう的中させていた。小生? 小生はいつもどおり、しっかり撃沈。エンジュオウカンが負けるかもしれないという読みは正しかったが、まさかミスターハヤサキが2着に突っ込むとはねえ……(>_<)