先の土曜日、競馬場内で行われた県競馬組合運営協議会において、収支計画の見直しと新たなコスト削減案が承認されたことが報道されました。その記事をみたところ、コスト削減の具体案として書かれていたのは出走頭数の制限(重賞以外で10頭以下に)、水沢内馬場の車載型映像スクリーン(ムーヴィジョン)の廃止、ファン優待バスの本数を削減など。例としてあげられていたのがいずれもファンにとってマイナスな、はっきり言えばファンの岩手競馬離れを加速させかねない内容ばかりで驚いてしまいました。もちろん人件費や事務費など内部のお金も減らすのでしょうが…
より良い案を持っている訳でもない私がここで言っても口先だけになりますが、レースやサービスがお客様の目に見えて低下するとなると、何かとても不安になってしまいます。
先週の続報になりますが、この削減案の中で誘導馬の廃止もひとまず決定してしまいました。なんと!こちらは即実行ということで、先日の25日月曜の11レースが最後の誘導となってしまいました。
話は少し逸れますが、今シーズン、馬場入場のあと逆回りで返し馬を行う出走馬が増えたことにお気づきでしょうか?気性の問題で入場しても行進ができない馬は、これまでほとんどはスタンドと反対方向(盛岡・水沢とも1コーナー方向)へ走り去っていましたが、最近はスタンドの前を通過して4コーナーのほうへ逆走することが多くなりました。これはファンからの「レース前の馬の動きを近くでよく見たい」との声に組合が応え、厩舎側に協力を要請したのだそうです。このような対応は大変良いことだと思うのですが、誘導馬の廃止はこれに逆行することになるでしょう。基本的に出走馬は並歩(なみあし)で行進、Uターンして駆歩(かけあし)で戻ることになっており、脚さばきを吟味するにはこれが一番良いわけですが、比較的おとなしい馬でも誘導馬がいないことで落ち着いて行進が出来なくなる可能性が少なくないからです。
これまで誘導馬として働いていたのはティエッチマインド号とエイダイラビ号。ティエッチマインドは元岩手のA級馬ですからこの馬のファンだという方もおられるのではないでしょうか。そして12歳のマインドはともかく、お年寄りのラビ君は、おそらくもう行くところが無いかも…
今までみんなにお馴染みだったものが、告知も無く突然消えてしまうというのはちょっと寂しすぎますよね。廃止が致し方ないのであれば、せめてちょっとした引退式でもやってもらえないのでしょうか。
組合では来週から誘導馬無しでやってみて、出走馬の様子やファンの反応を見るそうです。誘導馬やその他の削減案についてご意見やアイディアをお持ちの方は、岩手競馬公式ホームページの下の方にある、「ご意見・お問い合わせはこちらから」のバナーをクリックして下さい。
(文/写真・佐藤 到)
「岩手競馬ルネッサンス」の一環かどうかわかりませんが、盛岡開催になってからレースの中継映像のなかに、向正面の馬群を正面から捉えた映像が流されるようになりましたね。あれ?以前もありましたっけ? 私の記憶違いでなければ、今までは審議があった際に公開されるだけだったと思うのですが。
正面から望遠で撮影した映像は、実際より遠近感が圧縮されて見えるという特徴があります。これは競馬の場合どうなるかというと、直線をまっすぐこちらに向かってくる馬群の中で進路変更をした馬がいると、実際には十分な距離をとっていても画面上では後続馬の鼻先をカットしたように見えかねないということ。これを恐れて、従来パトロールカメラの映像は審議のときにも場内に流さなかったのですが、これが昨年あたりから公開されるようになり、そして今年は通常の中継の中でも数秒間だけですが映るようになりました。あるものを使おう!と組合の方が思ったのかどうかはわかりませんが、せっかくの迫力ある構図をファンのみなさんに見せないのは勿体ないですよね。
ところで、先日ちょっと小耳に挟んだのですが、一連のコスト削減の流れの中で“誘導馬”が廃止されるかもしれません。
現在、組合ではなんとか削れるところはないかと懸命に頭をひねっているところですから、「廃止反対!」と声を挙げるつもりはありません。ですが馬好きのひとりとして、そして一度きりとはいえ誘導を経験した者としては、もし廃止になったらとても寂しいでしょうね…
しかし誘導馬のいない競馬場ってあるんでしょうか? “見た目として格好がつかない”というのはおいといても、誘導する馬がいなければ先頭の出走馬自身が行進を先導することになるわけで、それって馬によっては結構な負担になるんではないですかね。
私が乗馬を習っていたときの話ですが、2〜3頭が隊列を組んで歩く練習がありました。自分が後にいて前の馬についていくとき、馬はスムーズに指示に従い楽々と動いてくれるのですが、先頭を交代したとたんに私の乗った馬は歩くスピードが落ち、進行方向も定まらなくなってしまいました。もちろんこれは私が下手だからなのですが、考えてみればもともと馬は群れで行動する草食動物。ごく限られたリーダー格以外の個体は、ただ前についていくという性質なのです。元騎手の某調教師も「誘導馬がいてくれて何度も助けられた」と語っていました。
存廃は今週の競馬会議で決められるそうです。別にアメリカの競馬場みたいに出走馬ごとに各1頭の誘導馬がいるわけじゃないんだから、と思ってしまいますが…そういう問題じゃないんでしょうね。
(文/写真・佐藤 到)
公式ホームページや地元テレビのローカルニュースでは既に報道されていますが、6月10日日曜日のレース終了後、オーロパークの馬場を使って「さんさ太鼓パレードギネスに挑戦」というイベントが行われました。私は以前に勤務していた写真店の関係で、公式記録係のひとりとしてこのチャレンジを撮影することになっていました。
“さんさ”というのは盛岡地方伝統の夏祭り。むかし、この辺りを荒らしまわっていた羅刹という鬼が退治されたのを喜んだ人々が踊りを踊ったのが起源といわれ、現在では8月のはじめに盛岡市役所前から大規模なパレードが行われています。普通、お祭りの太鼓というと伴奏の役割となりますが、さんさでは太鼓は重要な主役の一部。全ての踊り手の半数近くが太鼓を抱え打ち鳴らしながら踊りまくります。夏のさんさパレードは4日の期間中に交代で参加しますが、今回はそれに出場するさんさ太鼓が一度に集結。目標2000個で募集され、これをクリアすればこれまでの世界記録1951個を抜いて新記録になります。
当日、オーロパーク上空には雷雲が発生し、時折激しい稲妻が走るのが見え最終レースの頃にはにわか雨も降り出しましたが、浴衣姿の踊り手はそれにもめげず次第に増えてきました。レース終了後、演舞者は出走馬よろしく装鞍所を通ってパドック入りし、ここで太鼓の確認と台帳への署名を行います。そしていよいよチャレンジの舞台となる練習走路へダートコースと芝コースを横切って入場。参加者の中には初めて競馬場に来たという方も多いとみえ、あちこちで「へぇ〜ここを馬が走るんだぁ〜」とか「芝と砂があるんだね」などという声が聞こえました。
練習走路には、輓馬大会を開催するための障害がつくられていますが、今回はこの小山の上で“リード太鼓”が踊り、演舞者はこれを見ながら太鼓を叩くという手はずになっています。というのも、障害を中心に練習走路に広がった参加者は全長約200m、つまり1ハロンにわたり、そのまま耳で合わせようとすると音が伝わるコンマ3秒程の時間ぶん遅れが生じてしまうのです。ギネスの記録はけっこう厳密なもので、ちゃんと揃った演技が3分間続かないと記録として認められません。実際には参加者100名にひとりの監視員が付いて演技をチェックし、動きが合わない演舞者は人数から除外されるのです。そこで中央のリード太鼓の他に4ヶ所のやぐらが等間隔に組まれ、この上に立つ補助演奏者がリード太鼓に合わせ、その周辺の参加者がやぐらの補助演奏者にあわせるという手はずになっていました。
いよいよ夕闇に包まれたオーロパークで、さんさ太鼓の演奏が始まりました。2度の練習のあと、本番として叩かれた演目「七夕くずし」はぴたりと揃い完璧な演技。念のためあと2回繰り返された演奏もすべて上手くいき、チャレンジは見事に成功しました。老若男女さまざまな団体や個人で参加した太鼓の叩き手の気持ちがひとつになった瞬間でした。集計を終え発表された人数は、計2596人!これによって従来の記録を620個上回る新記録が達成されました!!
このとき私は、ギネス申請用の全景写真を撮るためスタンドの4階にいました。はじめは特別観覧席のベランダで撮ろうと思ったのですが、行ってみるとあまりに幅が広すぎて画角に入り切りません。どこか斜めから撮影できるポジションはないかと考えた末、結局、パドック側の建物外側にあるキャッツウォークに梯子を伝って出ることにしたのです。
自分は高所恐怖症ではないですが、ここはさすがに怖かったですね。なにしろ脚元がメッシュで下がまるみえ。それだけならまだしも、その金網が歩くとゆわんゆわんとたわむんですから… でもおかげで良い記録写真が撮れました。そのときの写真が↓これです。すごい人数ですよね。
さて記録達成の後、参加者は家路につくわけですがこれがまたすごかったです。なにしろ2千6百人余が一斉に移動するのですから大変です。パドックが馬ではなく人で埋め尽くされる(馬で埋め尽くされることもあり得ませんが)というのを初めて見ました。それでもあとからあとから浴衣の人たちが走路から出てきます。ここで改めて2千6百人という数の凄さを実感しました。
それから遅い時間のイベントとなったにもかかわらず、スタンドで記録達成の瞬間を見守った見物客の多かったことにも驚かされました。スタンドの座席はほぼ満員だったのではないでしょうか。ちょっとした交流重賞並の人数でした。このなかから少しでも、競馬場って面白そうだから今度は馬が走るのを見に来てみようかな、と思ってくれればいいですね。
(文/写真・佐藤 到)
さあ、いよいよ熱戦の舞台はオーローパーク! 先週からみちのくレース岩手競馬の盛岡開催が始まりました。不便な山の中と言われる盛岡競馬場ですが、行ってしまえば、やはりこんな気持ちの良い競馬場はなかなか無いと思いますね。特に先の3日間は天気にも恵まれ、抜けるような青空とすがすがしいそよ風をたっぷりと全身で味わいながらの観戦となりました。まぁ、あまりに環境が気持ちよすぎて馬には身が入らず、馬券は外しっぱなしでしたが…
いっぽう盛岡市街では、今度の土曜日6月9日に待望の街中場外発売所がオープンします。場所は盛岡最大の繁華街・大通りと交差する映画館通り。その名の通り昔から市内の映画館が集中する場所で、秋には「みちのく国際ミステリー映画祭」が毎年開催されています。この場外発売所も映画館のひとつが近所の複合ビル内に移転した跡地を利用したもので、周辺で働くサラリーマンが昼休みにちょっと買ったり、ショッピングがてら寄り道したりするのには都合の良い場所なのではないでしょうか。
またオープン初日となる9日は盛岡地区の大イベント・チャグチャグ馬コが行われる日でもあります。馬コの行列は大通りも歩くことになっており、馬コ見物の行き帰りにサラブレッドの応援もという流れもいいんじゃないでしょうか。
ところで岩手県競馬組合では、この場外発売所のネーミングを募集しています。(岩手競馬公式ページ) 募集というか6つの候補案への投票なのですが、その候補というのが次のとおり。
MACHIBA マチーバ【街中の馬場の意】
TENMA テンマ【天馬の意】
BAGGY バジー【馬事の意】
UMACCO ウマッコ【馬の意】
MADDOCK マドック 【窓口+パドックの造語】
CONVIVA コンビバ【コンビニエンス+馬(バ)の造語】
だそうです。「馬コ」なんて岩手らしくていいなと思うのですが(ストレートすぎるかなぁ)、私が一番気になったのは「BAGGY」。バジーという言葉から「バグジー」(BUGSY)という映画のタイトルを連想してしまいました。この映画の主人公、ベンジャミン・バグジー・シーゲルという人物は、何もなかったネバダ州の砂漠のド真ん中に世界一有名な歓楽街「ラスベガス」をつくった男の名です。もしこの名前が採用されたら、ギャンブルの聖地ラスベガスの成功と発展に、岩手競馬もあやかれるかな?なんて思ったりして…
みなさんも気に入ったネーミングがありましたら、ぜひご応募下さい。
(文/写真・佐藤 到)
いよいよ今年度初の盛岡競馬開幕ですね。
思えば昨年11月の盛岡最終日、「まさか、オーロはこれが最後なんてことになったりしないよな…」などと思いながら後にした競馬場でしたが、なんと3月には危うくそれが現実と化しそうになり、直後の9回裏逆転によって再び今週末からオーローパークでの競馬を見ることが出来るというわけです。そう考えるとこの地で競馬が行われるという事にとても有り難みを感じると共に、まだまだ油断ならない現状を忘れず、気を抜かないでいかなければと思います。
水沢と盛岡。性格が異なるレースコースが2つあるというのは岩手競馬の大きな“売り”になのではないでしょうか。左回りが駄目な馬が右回りで激走とか、水沢で届かなかった馬が盛岡で差し切るなんてことは1場開催の他地区では見られるはずもなく、見る側にとって面白いのはもちろん、馬の個性を生かせる・試せるという意味で関係者や馬自身にとっても大変有意義です。もちろん芝コースの存在も大きいですね。経費節減の観点からは1場に統合という考え方が出てくるのも当然なのですが、大きなセールスポイントを簡単に捨て去るようなことだけはしないで欲しいと思います。
さて、初日の6月2日には開幕イベントとしていろいろな企画が用意されているようですね。(公式ホームページをご覧下さい)
騎手によるお出迎えは一昨年にも行われましたが、馬像の前に全騎手が整列した様はなかなか壮観でしたし、その後には騎手が触れ合う機会もあってお目当てのジョッキーとお話ししたり記念写真を撮ったりとファンにも好評でした。
それから昨年度グレードレースの際に販売された限定スイーツが再び登場するようです。下の写真は昨年のテシオ9,10月号のトピックスにも掲載しましたが、白黒ページでなんだかよく分からなかったで今回はカラーでどうぞ ^^)
このスイーツ、本格フレンチのシェフが作っていて、お値段もそれなりに張るのですがその価値アリの逸品です。
では、本場においでの方もモニターの前でご覧になる方も、オーローパーク盛岡競馬をお楽しみに!
(文/写真・佐藤 到)